★ PCゲームレビュー★


キャラクタを育てる喜びに溢れた
クエスト満載のシングルプレイRPG

マイト&マジック9 完全日本語版

  • ジャンル:シングルプレイRPG
  • 発売元:イマジニア
  • 価格:9,800円(英語版からのアップグレードは2,000円)
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000/XP
  • 公開日:9月20日(発売中)


 「マイト&マジック9」は冒険色豊かなストーリー、自由度の高い旅と絶妙なゲームバランスなどが特徴のシングルプレイRPGだ。クエストや戦闘で4人のキャラクタをじっくりと育てていき、さらに難度の高いクエストや強力な敵のいるダンジョンなどにチャレンジしていく。それぞれに特徴ある土地柄と、冒険が進むほどに広がっていくキャラクタの行動範囲などによって、広い世界を旅している気にさせてくれるRPGである。


■ 世界を救う勇者となるシングルプレイRPG

 「マイト&マジック9」の舞台となっているのは、チェディアンとよばれる地域である。ここには6つの氏族が暮らしており、それぞれに《ヤール》と呼ばれる氏族長を頂いている。有史以来、氏族間の争いや対抗意識は続いているものの、比較的穏やかに暮らしていたチェディアンの人々だったが、突如、西方のベルドニアから巨大な軍勢が近付いてきていた。ベルドニアはチェディアンを征服するつもりなのだ。だが、人々はまだベルドニアの侵攻を知らない。

 そこでプレーヤーたち冒険者一行は、危機をいち早く知ってしまったベルドニアの運命の勇者達となり、侵攻を食い止めるべく6つの氏族のヤール達に会わなくてはならない。なぜなら、巨大な軍勢を迎え撃つには、ヤール達が協力し合う必要があるからだ。ヤール達に信頼してもらうため、まずは彼らの望みを聞いて戦士としての証を立てていくことになる。このようなバックグラウンドストーリーのもと、プレーヤーは3Dフィールドを歩き回りながら、戦闘やクエストを通して4人のキャラクタを育て、巨大な敵からチェディアンを救う旅を続けるのである。

 今作は人気の高い「マイト&マジック」シリーズ最新作なわけだが、キャラクタ育成やクエストの面白さはそのままにグラフィックが一新され、これまで以上に広がりのある世界を楽しめる。また、操作ではFPS風の移動とマウスでのフリールックが可能であり、非常にプレイしやすい。グラフィックは最近のRPGに比べるとやや見劣りするものの、世界観と相まったいい味を出している。

 プレーヤーは、キャラクタをクエストと戦闘で得た経験値でレベルアップさせ、職業をクラスチェンジさせて強力な戦士や魔法使いに育てていき、そして、メインクエストを解くことでストーリーを進めていく。ある意味オーソドックスなゲームシステムなのだが、ネットRPG全盛の中で、ここまでじっくりとキャラクタの成長が楽しめるシングルプレイRPGは貴重だ。キャラクタメイキング時からすでに、キャラクタを育てるというRPGの醍醐味を味わえる「マイト&マジック9」をぜひプレイしてもらいたい。

プレーヤーは歴史の大きなうねりの中で、チェディアンを救う重要な役割を担う 世界各地を旅しながら様々なクエストをこなしてキャラクタを成長させていく 戦闘は、その場その場でターン制とリアルタイム制の好きな方を選べる方式だ



■ キャラクタの成長が醍醐味!

イマジニアの公式サイト内にあるクラスチェンジ表。戦士系、魔法系から2段階の成長を経る
 プレーヤーがゲーム中に操作するのは、4人のキャラクタで構成されたパーティーだ。4人のキャラクタは自分の好きなように種族や職業を選択でき、そこからクエストなどの経験値によってレベルアップをしていく。

 「マイト&マジック9」のキャラクタ育成で重要なのは、スキルと職業(クラス)だ。キャラクタは、様々なスキルを本を購入することで習得できるのだが、たんにスキルを手に入れただけでは実践であまり役に立たず、レベルアップ時にもらえるスキルポイントを割り振ることでスキル自体も成長させていく。

 スキルは一定レベルに達すると、各地にいるスキル師匠に熟練度を3段階アップさせてもらえ、そうすることでより強力なスキル効果を得られる。たとえば、宝箱の罠解除のスキルであれば、熟練度があがらないと難しい宝箱はあけられないし、剣のスキルであれば、熟練度があがらないとより強力なダメージが得られないのだ。

 そして、スキル熟練度をアップさせるには、職業も重要な役割を担っている。キャラクタはまず、戦士系統と魔法使いという2種類の職業のどちらかを選び、クラスチェンジのためのプロモーションクエストをこなすことでそれぞれの上位職へとクラスチェンジしていく。

 職業の系統ごとに合計2度のクラスチェンジを行なえるのだが、上位職になるとレベルアップごとにあっと驚くほど強くなるし、これまでは学べなかった熟練度のスキルも職業にあわせて習得できるようになる。そのため、6つの氏族を協力させるという最初の目標と並行して、キャラクタを育てるというのもプレイの大きな目的となるのだ。

 また、ゲーム中は街などで傭兵を雇える。画面の右側に顔グラフィックが表示されているのがそれだ。彼らは月にいくらという料金でパーティーに参加してくれ、直接戦闘に参加したり、ゲート魔法でパーティーを移動させたり、得られる経験値やお金を増やしたりといったことをしてくれる。彼らを上手に利用することで、さらに冒険がしやすくなっている。前作の「マイト&マジック8」では廃止されてしまったシステムだけに、シリーズファンには嬉しいポイントである。

一番最初のキャラクタメイキングの時すでに、最終的にどんな職業になるかをイメージしておく 経験値が貯まったら訓練所でレベルアップ。ゲーム内で一番お金のかかる行為だ


スキルレベルが上がったら、各地にいるスキルの師匠で熟練段階をアップさせる 上位の職業へとランクアップ。それにはプロモーションクエストをこなさなくてはならない スキルはスキル屋で本を購入してキャラクタに使用する。その職業で極められるスキルをつける



■ 冒険味あふれるクエストとダンジョン

 「マイト&マジック9」はクエスト抜きには語れないゲームである。プレーヤーが操作する4人のキャラクタは、クエストでたくさんの経験値をもらえるからだ。クエストクリアのためにダンジョンなどで戦闘を行なって成長し、そしてクエストクリアの報酬としてまたたくさんの経験値をもらえるのである。

 ゲームの最初の大目的は、各地にいる氏族の長《ヤール》達を説得することだ。彼らに共同戦線を張らせるためには、それぞれのヤールに信用してもらわなくてはならないので、彼らの課してくるクエストをびしびしこなしていく。また、ヤール達のクエスト以外にも、街の人などから頼みごとをされる場合もあり、そういった細かなサブクエストでも経験値とお金を稼ぐことができる。

 クエストの内容は、盗賊退治あり、ラブレターのお届けあり、スパイ捜索あり、といった感じにバラエティに富んでいて、決して戦闘だけの内容ではない。また、ダンジョンや敵のいる建物にしても、罠や秘密の通路があったり、驚くような仕掛けがほどこされていたり、新しい場所に着くたびドキドキしながら探索できる。

 クエストの展開もありきたりではなくて、たとえば、氷の国の巨人を退治するクエストがあったのだが、巨人の館に行くとズシンズシンと地響きをたてながら歩き回る巨人がおり、こんなのと戦うのかとがっくりしていたら、あっと驚く展開で結末を迎えた。

 また、牢屋に収監されてしまった重要人物を助けに行った時は、彼が死なないようにかばいながら牢獄の外にでなくてはならず、大変な思いをしてクエストクリアした。この他にも、教会で修道士達ががっちり守っている秘宝を盗んだり、研究所で秘薬を作ってリッチになったりなど様々なクエストが用意されている。

 6人のヤール達から受ける、ストーリーを進めるのに必要なメインクエスト、街の人などから受けるストーリー進行には関係のない、でもキャラクタの成長には重要なサブクエスト、そしてクラスチェンジのためのプロモーションクエスト。「マイト&マジック9」はこのクエスト3本柱を思う存分に楽しみながらキャラクタを育てていくのが特徴である。

 ゲームは6つの氏族のヤールを説得し、彼らが城に一堂に会してからも続いていく。ゲーム後半になればなるほど、さらにやりがいのあるダンジョンやクエストが登場してしまい、一度プレイにはまったら、なかなかゲームから抜け出せなくなるだろう。

一番最初に仲間になるフォラド・ダール。最初の島から脱出するヒントを与えてくれる プレーヤーにはチェディアンの氏族を結束させるという使命が課された 氏族の長に認めてもらうためには各ヤールにつき2つのクエストをクリアせねばならない


旅しているうちに意外な人物に出会うことも。人への手助けがキャラクタの成長を助ける 各地にいるヤールは一癖ある人物ばかり。彼らの願いをかなえるのは大変だ 受けたクエストは自動的にジャーナルへと記録され、いつでも確認することができる



■ ターン制とリアルタイム制どちらも選べる戦闘

 「マイト&マジック9」で大きな特徴となっているのは、その戦闘システム。プレーヤーは3Dフィールドをてくてくと歩いてまわるのだが、敵はフィールド上に点在していてリアルタイムに遭遇し、そのまま戦闘が始まる。

 だが、ここでEnterキーを押すと時間がストップし、ターン制の戦闘に切り替えられるのだ。これなら慌てることなく、じっくり考えながら戦える。敵モンスターはキャラクタの後ろに回り込んだり、ちょっと身を引いたりするなど、中々手ごわいAIを備えているので、敵が強くなるにつれて徐々にターン制の戦闘が多くなるだろう。

 もちろん、時間を止めずにそのままバトルを続けることもできる。ターン制の戦闘ほどには精度の高い戦いはできないのだが、待ち時間が全くなく臨場感のある戦いを楽しめるのがポイントだ。弱い敵などに対しては、リアルタイム制のほうがざくざくと倒す爽快感が増すだろう。


■ グラフィックはいまいちながらもRPGとしては◎

 さて、クエストでドバッと経験値を得たり、キャラクタのスキルをじっくり育てていくという、ゲームを楽しむ基本的な部分はこれまで通りで嬉しい「マイト&マジック9」なのだが、それだけにゲームグラフィック、キャラクタ情報画面でのキャラクタグラフィック(従来のものはキャラクタグラフィックが大きく表示され、装備品の付け替えも楽しめた)、お店でのアイテムの扱い(グラフィックが小さいなど)にはやや不満が残った。グラフィックエンジンにこれまでの6、7、8とは全く異なったものを採用しているためだが、従来作品からのファンとしては文句の残る部分だろう。

 ただし、こういったグラフィック面以外に関して言えば、非常にプレイしがいのあるシングルRPGであることを強調しておきたい。「マイト&マジック9」は、今年のヒット作である「Morrowind」ほどには茫洋としておらず、けれども簡単には遊びつくせないボリュームと難易度をもっている。

 軟弱者をふるい落とすようなゲーム開始直後から、それを抜けて世界がパアッっと開けるような感覚を覚えるゲーム序盤、キャラクタが徐々に強くなってくるゲーム中盤という風に、中だるみなくゲームに夢中になっていられる。いつでも微妙にお金が足らず、ダンジョンなどでいいアイテムを手に入れたときの喜びがひとしおなのも素晴らしい。戦闘の苦しさとクエストで経験値が大量に入る喜び加減など、アンバランスに思える部分も含めて、どこをとっても絶妙なゲームバランスなのである。

 「マイト&マジック9」は、キャラクタをどう成長させていくか、どのスキルを優先して育てていくかなどに頭を悩ませながら、とことん冒険の旅を続けられる、じっくり長くプレイできるRPGだ。MMORPGと違って、好きな時に短時間でもプレイできるのがシングルRPGの良いところなので、異国にちょっと旅しに行くような気分で、ぜひプレイしてみてほしい。

チェディアンにはそれぞれに特色のある街やダンジョンが存在している。サーカス団が来ていたり、雪と氷に閉ざされた街があったりと様々

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【マイト&マジック9 完全日本語版】
  • CPU:Pentium III 400MHz以上
  • メモリ:64MB以上(128MB以上を推奨)
  • HDD:750MB以上
  • 解像度:800×600ドット 16ビット以上
  • ビデオメモリ:16MB以上


□イマジニアのホームページ
http://www.imagineer.co.jp/pc/
□「マイト&マジック9」公式ホームページ
http://www.imagineer.co.jp/pc/products/mm9/
□関連情報
【4月30日】名に恥じない傑作クエスト群が魅力
人気シングルRPGシリーズの最新作「マイト&マジック9 英語版」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020430/mm9.htm
【4月9日】イマジニア、「マイト&マジック9 英語版」から完全日本語版への無償アップグレードキャンペーンを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020409/mm.htm
【4月4日】イマジニア、「Might & Magic IX 英語版」を4月26日に発売
80ページ相当の日本語マニュアルが付属
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020404/mm9.htm

(2002年10月1日)

[Reported by 西尾ゆき]


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