【連載第45回】大人による大人のための洋ゲー連載

Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」

どこまでもストイックにカロリー消費!
「Wii Fit」と対局をなすエクササイズゲーム
「EA Sports Active: Personal Trainer」

  • ジャンル:エクササイズ
  • デベロッパー:EA Canada
  • パブリッシャー:Electronic Arts
  • プラットフォーム:Wii
  • 価格:59.99ドル
  • レーティング:ESRB:Everyone(全年齢対象)
  • 発売日:5月19日(北米版)

 実際に体を動かすスポーツゲームとして話題を呼んだ「Wii Fit」の登場から1年半あまりが経過し、“Wiiでエクササイズ”はすっかり世界的に普遍的な現象となった。そんな躍進ぶりを黙って見ていないのが、サードパーティーの大御所・米Electronic Artsだ。

 今回紹介する「EA Sports Active: Personal Trainer(以下EA Sports Active)」は、ビデオゲームの世界的有名ブランドである「EA Sports」を擁する同社が送り出す運動ゲーム。それは「Wii Fit」よりも更に一歩踏み込んだ本格派フィットネスゲームに仕上がっている。

 先日開催されたE3ではWiiに対抗したモーションセンサーコントローラがPS3、Xbox 360の両陣営から発表され、「Wii Fit」のような体を動かすフィットネスゲームは今後も成長傾向が続くことが予想される。本フランチャイズが世界的に成功した暁には日頃運動量が不足気味のゲーマー諸氏の健康状態もグッと改善されること間違い無し!?だ。

 筆者も年相応にメタボ気味の体にムチを打ちエクササイズに励んでみた。果たして効能やいかに? そしてゲームとしてキチっとプレイして面白いものになっているのかは本編を読んでのお楽しみなのである。

【お断り】
 当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています
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■ パッケージ買う前に己の本気度を再確認!

パッケージは結構デカい
内容物はこのとおり

 最初に断っておくと、「EA Sports Active」は“Fitness Game”というカテゴリのゲームの一種ではあるが、世間一般的に定義されるような、スコアを競ったり対戦したりという類いのエンターテインメントではない。体を実際に動かして、画面上に表示される消費カロリーの数値をいかに目標よりも高く燃焼できるかという、燃焼系本気度満点のスポーツゲームだ。

 パッケージにはゲームソフトに加えて、ヌンチャクを足に固定するためのレッグストラップと、レジスタンスバンド(要するにゴム紐だ)が1セットずつ同梱されており、プレイスタイルからして「Wii Fit」との差別化を明確にしている。

 「EA Sports Active」がプレーヤーに求める要素は2つ。「継続力」と「体を動かしたいという欲求」だ。親切丁寧なレクチャー付で導入の敷居は低いが、実際にプレイをし始めてみると、実にストイックなエクササイズをひたすら続けていくため、「Wii Fit」のように楽しみながら運動する「ゲーム的な何か」を本作に求めるのは間違いだ。

 1日30分、30日間を1区切りに効果的なエクササイズを実戦したい、消費カロリーの数値をじっと見つめつつ燃焼しまくりたい、そんな本気度の無い人以外は手を出してはいけない。よく考えてから購入に踏み切らないと、たちまち放り出すことになるだろう。アグレッシブな行動力無しにこのゲームは成り立たない。

 「EA Sports」と言えば、NFL、NBA、FIFAなど一連のフランチャイズで欧米を中心に大きなシェアを誇るスポーツゲームブランドなのは、ゲーマーであれば誰でも知っているだろう。この誰でも知っているブランドの名称を冠するということは、本作が「実験的な何か」ではなく、作り手側もガチンコで挑んでいるという現われだ。

 本作の開発自体は一連のスポーツフランチャイズを手がける同社スタジオでは最大勢力を誇るEAカナダが手がけている。陣頭指揮を執るのは、EAスポーツブランドのヘッドであるピーター・ムーア本人だ。本作はSEGAから始まり、Microsoft、そしてEAと常に現場の第一線で活躍してきた彼の新しいスポーツゲームのあり方を示していると言っても過言ではないだろう。


レッグストラップはロゴ入りの特別品MS時代のピーター・ムーア氏。きっと今はEAロゴの刺青が入っているだろう
スポーツゲームも収録されている今年は燃焼系ゲームがアツい!?


■ レッグストラップとレジスタンスバンドを装備して使い方を覚えよう

持ち方には注意
トロフィーもやる気を増進させる

 さて、「EA Sports Active」では、Wiiリモコンとヌンチャクを使用する。Wiiリモコンは手に持ち、ヌンチャクはレッグストラップを使って足に固定し、さらにエクササイズによってはレジスタンスバンドを用いて負荷を加えていく。言葉にするとややこしいが、実際にはすべて直感的に操作できる。

 レッグストラップは右太ももに巻きつけて足に固定するが、欧米の成人男性でもOKな長さなので、多少太くても問題なく装着できる。何かの拍子にずり落ちないようにストッパー代わりのマジックテープも完備されているため安全面もバッチリ。レッグストラップの表面にはカンガルーポケットが付いており、ここにヌンチャクを差し込んで使用する。

 そしてレジスタンスバンドは両端を同梱のグリップをつけて使用する。とはいえ、製品に同梱されているのはスポーツ用品店で売られているような上等なものではなく、単なるゴムバンドなのでしっかりグリップを結んでおかないと、エクササイズ中にグリップが取れて、ドリフのコントに出てくる「ゴムパッチン」みたいな罰ゲームを強制的に食らうことになるので注意されたい。

 Wiiリモコンは手に持って使用するが、各エクササイズはWiiリモコンとヌンチャクの動きによって体の動作の検知を行なうため、定められた通りの使い方をしないと体の動きが正常に認識されない。使い方や取り付け方は、映像や画像で確認できるが、操作と運度方法に慣れるまではちょっと苦労するかもしれない。

 また、オプションとしてバランスWiiボードにも対応している。とはいえ、実際のエクササイズでは使用せず、単にキャラクタメイキングの際に体重の入力が楽になる程度なので、「EA Sports Active」のために購入する必要はない。主役はあくまでも前述2つのアイテムと、プレーヤーのやる気そのものだ。

 ただ、エクササイズのメニューには、レジスタンスバンドを使った負荷運動のほか、ランニングやジャンプといった項目もあるため、実は「Wii Fit」よりも場所を取り、なおかつ騒音も出やすい。集合住宅などでは衝撃を吸収するマットを予め用意しておくことをオススメする。


Wiiリモコンの持ち方が悪いとうまく反応しないことも用具の左右はしっかりと確認して使おう


■ 「30日チャレンジ」で脂肪燃焼に喜びを感じろ!

自分のアバターをエディット
30日チャレンジで贅肉を燃やせ!

 「EA Sports Active」には大きく分けて2つのモードがある。1つが「30日チャレンジ」であり、もう1つが「プリセット&カスタムワークス」だ。前者は30日間を1つの区切りとしてスケジュール通りにエクササイズをこなしていく一種のキャンペーンモードだと考えれば良い。後者はエクササイズを自由に選択して独自のメニューを作って実戦して行くモードだ。

 プレイスタイルとしては「30日チャレンジ」で日々のスケジュールを消化しつつ、物足りないと思ったり重点的に運動したい部分を「プリセット&カスタムワークス」でフォローするような形が理想的だ。チャレンジモードは1週間に1度休みも設定されているため、無理のないトレーニングが可能になっている。

 「Wii Fit」であればMiiを自分のアバターに使うところだが、本作ではアバターとなるキャラクターが専用で用意されている。顔や体型、ファッションを用意されているパーツから組み合わせることができるがバリエーションはそれほど多くない。重要なのは身長/体重/年齢の3点で、ここにウソがあると正しいカロリー消費量が得られない。あくまでリアル志向で設定を進めていただきたい。

 さて、アバターを作り終わると、プレーヤーの面倒をみてくれるトレーナーを選択できる。男性/女性が選べるがここはお好みで選ぶと良いだろう。ビデオも2人分用意されている点は芸が細かい。しゃべってる内容は英語で字幕もないが「レフト!」、「ライト!」、「ジャンプ!」などのかけ声が理解できればそれで十分だ。各エクササイズのやり方は初回にトレーナーが実演してくれるのでそれを真似すれば良く、マイナスボタンを押しっぱなしにすればいつでも観なおすことができる。

 トレーナーを決めるといよいよ実践に入る。体力や体調に合わせて大まかにハード~中間~軽めのトレーニングを選ぶことができる。カロリーをたくさん消費したい場合はキツめに、疲れているけど体は動かしておきたいという時には軽めのトレーニングを選ぶ。無理せず持続させることが本作の1番重要なプレイ方法なのだ。

 エクササイズはカーディオ(有酸素運動)、アッパー(上半身)、ローワー(下半身)、スポーツと4つのジャンルが用意されている。30日チャレンジの場合はそれぞれがバランスよく組まれていたり、例えば上半身を重点的にやったりと、スケジュールによって構成が異なる。ひたすら有酸素運動をしたい場合はカスタムでメニューをつくってこなせば良いだろう。

 なお、本作にはフィットネス業界では著名なBob Greene氏を起用しており、エクササイズメニューの考案に携わっているだけでなく、実際にゲーム中にも登場する。日本ではほとんど無名に近い同氏だが、実績のある人が監修・出演すれば、プレーヤー側も本作に盛り込まれているエクササイズやアドバイスに対して真剣に向き合う気になるからだ。この辺も「Wii Fit」とは異なる本気度合いが見て取れる。


Bob Greene監修による実践的メニュー満載スクワットは回数が多いと結構キツい
ゴムパッチンにはご用心ダンスはスピード感もあって結構楽しい
ボールを取って投げるテンポの良さが大切目標カロリーを超えて燃焼できれば勝利だ!!


■ 継続は力なり。「今日のメニューは何かな?」と思えるようになろう

運動方法がわからない時はビデオをチェック
たまにプレーヤーを刺激する映像も登場

 1日のメニューは、内容にもよるが、大体30分前後で終るようになっている。ビデオなどでエクササイズの方法を観ているともう少し時間がかかるかもしれないが、所用時間はそんなものだ。1番軽いメニューの目標消費カロリーはおおむね100カロリー前後で、長めのランニングが入るとそれを若干超える程度となる。

 日々の鍛錬目標は毎日の目標消費カロリーをいかに超えるか、これに尽きる。各エクササイズのやり方はトレーナーがお手本で示してくれるため特に戸惑うことはない。プレーヤーはただひたすら画面左上に表示される消費カロリーを見て自分の燃焼っぷりを計っていくのだ。ゲーム的な要素は、ダンスやバスケットボールなどちょっとしたものはあるが、基本はあくまでも与えられたメニューの中でいかに効率よくカロリーを消費するか。どこまでもストイックに追求させられるのだ。

 「EA Sports Active」が「Wii Fit」と異なる点はまさにココで、「Wii Fit」が体重とBMIの推移しか提示せず、なおかつゲーム的な要素を持たせることに重視したつくりになっているのに比べて「EA Sports Active」は、体を動かした結果としてのカロリーの消費、さらにその先にある引き締まった体作りをご褒美に据えた、あくまでストイックなフィットネスソフトだ。

 日々のエクササイズは適度に汗のかける内容で、なまった体に「みっちり」鍛えるモードは辛い。ランニングのロングなどは、いきなりへこたれそうになった。まずしばらくは軽めのストレッチ系メニューで体を慣らす方が良いだろう。それでも出不精の不健康人間がキッチリメニューを消化すると、しっかり筋肉痛になるあたりは、いかにも運動しているという気分になれる。

 普通のゲームのようにコントローラーだけ持っていれば良い訳ではないので、体を動かすという点において面倒臭さが先行する人は多いだろう。しかし3日~4日我慢してプレイし続ければ、誰でも継続すること自体がクセになりはじめ「今日のメニューは何かな?」と自然に考えられるようになる。プレイを重ねるほど綿密に考えられて作られていることがわかってくる、なかなかの策士的ゲームなのだ。


目標達成の状況も一目瞭然お好みのメニューを構成することもできる


■ 「昨日の睡眠時間は?」、「今日は何食べた?」。データ取りも重要な要素

日々の食生活にメスを入れる!?
ファーストフードは大敵!

 ところで、本作はマルチプレイも可能になっている。どういうことかと言うと、単純に2人がテレビの前に並んでエクササイズするだけだ。ただ、パッケージに同梱されている周辺機器は1人分しかないので、別途調達する必要がある(レッグストラップとレジスタンスバンドのセットで19.99ドル)。

 「EA Sports Active」が持つ健康管理の面白いところは、ゲーム内だけのエクササイズで完結していないところだ。どういう事かというと、日常生活のアンケートと「EA Sports Active」以外での運動も加味して初めて毎日の結果が完成するようにつくられている。

 具体的に言うと、毎日の食生活(食事は何回とったか、うち野菜は何回食べたか、ファーストフードは食べたかなど)や睡眠時間、椅子に座っている時間などをアンケート形式でとってグラフ化してくれる。毎日きちんとアンケートにこたえていれば自分の健康度が一目でわかるようになる次第。

 その他運動に関しては、その通りのものでスポーツやフィットネスなど軽~重度の運動をやったかどうかをチェックすることで、プレーヤーの健康管理を一元化してしまおうという代物になっている。日頃から運動量の多い人がどれだけ本作を頻繁に使うか微妙なところではあるが、ゲーム中のエクササイズだけが全てではないということを気づかせてくれる良いツールではないだろうか。

Active以外のワークアウトもチェック1カ月単位でグラフ化ができる
その日のチェック項目で完遂度が示される楽しく、適度にハードな運動を楽しもう


■ 「EA Sports Active」はプレーヤーをやる気にさせる!

 「EA Sports Active」はフィットネスゲームというジャンルにおける大きな課題であるプレーヤーの継続性という点で明快な解決策を提示している。ひとつ目は先行者である「Wii Fit」のバランスボードを必須アイテムにしなかったこと、2つ目は毎日継続させるためにエクササイズの敷居を可能な限り低く設定したこと、3つ目は「脂肪の燃焼」というスコアを全面に出してプレーヤー側に目的意識と達成感を持たせたことだ。

 バランスボードは優れたアイテムだが、毎回キャリブレートをする必要があったり、プレイする際にはバランスボード自体を引っ張り出してくる必要があり、使い回しの良いアイテムとは言いにくく、アイテムの存在自体がプレイへの障壁にもなっている。

 自発的に体を動かす本作のようなゲームの場合、プレーヤーは何かしらの理由を見つけてサボりたがるものだが、個人的な経験から「Wii Fit」の場合はバランスボードの存在が面倒くさかった。「EA Sports Active」の場合はレッグストラップは一瞬で足に巻けるし、レジスタンスバンドも手に持てばいいだけなので取り回しが楽で邪魔にならない。

 エクササイズは軽めのメニューにすれば燃焼カロリーは100Kcal以下になるが、あまり大きく体を動かさなくても「とりあえず体を動かした」という充実感と、トレーナーの褒め殺しでモチベーションを落とさず、次もやってみようかなという気分になる。

 最も重要な点としては目的の消費カロリーと、実際に燃焼したカロリーを常にプレーヤーの前に出して比較させることで、燃焼度合いをゲームのスコアと同じような扱いにすることで、次はより高く燃焼したい!とプレーヤー自身にやる気を引き出すことに成功している。

 ゲームモードの中でも「30日チャレンジ」は、明確なコースメニューをプレーヤーに提示し、ゲーム内インストラクターによる指導とEAお得意の映像による演出で「やる気」を盛り上げるところも本作のツボといえよう。

 本作は日本版がエレクトロニック・アーツより「EA Sportsアクティブパーソナルトレーナー Wii 30日生活改善プログラム」という名称で8月6日に発売予定だ。音楽ゲームに続く新しいジャンルとなるか、ゲーマーを自認する方であれば、ぜひチャレンジしてその目と身体で確認してみていただきたい。

すでに欧米ではアペンドディスクの発売も決定し、更に豊富なエクササイズ種目が増えることが予想される。各プラットフォームからモーションセンサーデバイスが登場することで本作のようなトレーニングゲームは今後増加が予想される。急成長が期待されるジャンルだ

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