PCゲームレビュー

ますます細かくなったキャラクターメイキング
個性豊かなシムたちと共に人生を楽しもう!

「ザ・シムズ3」


 “シム”と呼ばれる仮想のキャラクターを作って、彼らの生活を観察する人生シミュレーション「シムズ」シリーズの最新作「ザ・シムズ3」の日本語版が発売された。本作は、自分だけの「シム」を作り、その「シム」のために家をデザインし、そこで暮らす「シム」たちにこまごまとした指示をだすことで「シム」の生活をコントロールする。今作では、キャラクター作成でいままで以上に細かいカスタマイズが可能になり、さらに5つの特質を組み合わせて個性的な性格を作り出したり、人生の目標を設定することもできるようになった。また周りの街とシームレスに行き気ができるようになり、よりリアルな生活感を楽しめる。アメリカでは発売初週だけで140万本を売り上げるビッグヒットを飛ばすなど、相変わらずの人気ぶりを披露した。

 本作には、最初からかなりの数の服装や、髪型のバリエーション、家具などのパーツが用意されているが、さらにユーザーが独自に作ったスキンやオブジェクトをネットからダウンロードして使う事ができるのも本シリーズの魅力だ。またゲーム中に撮影したスクリーンショットや動画をアップロードすることもできる。スタンドアローンのゲームながら、ネットを通じたコミュニケーションが盛んに行なわれるのは、このシリーズの特徴と言える。

 本稿ではキャラクターカスタマイズ、家のデザイン、個性的な「シム」の生活ぶりなど、「ザ・シムズ3」で新しく入った要素を中心に、本作の楽しさを紹介していきたい。


【オープニングのイベントシーンより】
オープニングムービーの光景をそのままゲーム内でも楽しめるかもしれない



■無限のカスタマイズで自分そっくりのシムも作成可能

体型から性格まで事細かな設定が可能だ

 「ザ・シムズ3」を始めるためにはまずアバターとなるキャラクター(シム)を作成する必要がある。これは1人ではなく、ファミリーを丸ごと作ることもできる。あらかじめ用意されたいくつかのシムやファミリーがいるので、それらの「シム」でゲームをプレイすることもできるし、一から自作することも可能だ。ちなみにプリセットされているファミリーには難易度が設定されていて、ファミリーを構成する人数が多いほど難易度が高くなる。

 だが、どうせなら自分で作った「シム」でプレイをしてみたいと思うはずだ。本作ではシリーズ前作とは比較にならない細かいキャラクターメイキングの項目が用意されていて、これだけで1つのゲームになりそうなくらいのボリュームがある。

 新しく「シム」を作る場合、まずはその「シム」の性別と年齢を決めるところから始まる。年齢は子供から老人までの6段階。子どもだけの家族を作ることはできないので、子供のシムを作る場合には最低1人は大人も作らなくてはならない。肌の色を決めると次は体型だ。体型は脂肪の量と筋肉の量で決定する。筋肉が少なく脂肪が多いと緩んだ太り気味の体系に、筋肉が多いとプロレスラーのような固太りの体系になる。ヘアスタイルは飾りつきと飾りなしでそれぞれ豊富なバリエーションが用意されている。髪の色は根本、毛先と部分ごとに設定できる。「シム」の服装はカジュアル、フォーマル、パジャマ、スポーツ、水着と個別に設定できるが、ヘアスタイルもそれぞれのシチュエーションに合わせて設定できるので、おしゃれな「シム」を作るために頑張ってみるのもいいだろう。

【スクリーンショット】
年齢によって同じ「シム」でも見た目が大きく変わる

【スクリーンショット】
体型を最大まで太らせると「シム」がかなり落胆する

 顔のカスタマイズはパーツごとに細かい微調整が可能で、目、鼻、口、あご、耳などのパーツを選ぶだけでなく、さらに眼尻、まぶた、鼻筋、口角など各部分ごとに細かく設定できる。メイクも唇、アイライン、アイシャドウ、チークと使う化粧品ごとの設定が可能。色はプリセットのほか、カラーパレットから好きに選ぶこともできる。メイクには顔に絵を描いたようなパーティーメイクもあるので、パーティーに呼ばれた時用にセットしておいても面白いだろう。服装は、上半身、下半身、靴、アクセサリーとスーツやワンピースなどの上下がセットになった服の5種類を設定できる。服は模様がついているが、この模様もマテリアル素材の中から選んでカスタマイズすることができる。もちろん色もパーツごとに自由に調整できるので、いろいろと試してみるといいだろう。

【スクリーンショット】
顔のほとんどすべてのパーツを細かく微調整することができる

【スクリーンショット】
服装はシチュエーションに合わせて5種類が設定できる

「シム」の外見を決めたあとは、本作のウリとなるシムの「特質」と「好み」、「生涯の願望」を決めていく。「特質」はその「シム」の性格を決めるための要素だ。「特質」の違いにより、同じ状況でも別の行動を選択するという「シム」ごとの性格の差が生まれる。たとえば「カウチポテト」、「アウトドア嫌い」、「不精者」などを選ぶと、いつもテレビの前でだらだらするような「シム」になる。「きれい好き」だと汚れると怒りだし、「ベジタリアン」だと肉料理を食べようとしない。

 特質は最大5つ設定できるが、子供の「シム」はキャラクター作成の段階で設定できる数が少なく、成長に合わせて新たに獲得していくことになる。「好み」は、食べ物、色、音楽について決めることができる。「生涯の願望」は、本作から導入された新たな要素で、「シム」が人生の目標とするようなおおきな願いのことだ。「シム」たちはこの願望を実現させるために努力することになる。

【スクリーンショット】
63種類の「特質」、「好み」、「生涯の願望」を組み合わせてオリジナルの性格を生み出そう

 これで1体が完成だ。ファミリーを作る場合は、同じ調子で家族の人数分だけシムを作っていく。家族を作るときに面白い機能は、遺伝情報の伝達だろう。父親と母親の「シム」を先に作ると、その2人の遺伝情報を伝えた子供を作ることができるのだ。子供は両親の特徴を受け継いだ外見や特質を備えている。双子も作成可能で、そうやって作った子供をさらにカスタマイズすることも可能だ。すべての「シム」を作り終えたら、最後に彼らの関係を編集する。親子や兄弟にするもよし、赤の他人の共同生活にするもよしと自由に選べる。ただし、子供が年上の人間の親になったり、年代的に近すぎる2人を親子にすることなどはできない。

 シム同士の関係を作り終えると、作り上げた家族のポートレートが完成する。そのままこの家族を使ってゲームをスタートできる。今回は、両親と長男長女のごく一般的な家庭と、ちょっと太り気味でゲームとコンピューターが好きな男3人と女の子という少し変わった同居生活をしているルームシェアの2組を設定してみた。


家族の関係を設定すると、自動的に素敵な集合写真を作ってくれる

【スクリーンショット】
オリジナルの「シム」は、時間をかけて作るからこそ思い入れもひとしおだ


■予算内で必要なものを揃える。「シム」たちが満足する家作りとは?

 「シム」を作り終わったら、次に作るのが彼らの暮らす家だ。家は、ゲームの中心地点となる重要な場所だ。「シム」が暮らす家をカスタマイズしていくのも本作の楽しみの1つ。最初に家の立地を決めて土地を購入する。そこに自分だけの家を建てていくわけだが、どうしていいのかまったくわからない初心者用に建売住宅も売っている。最初は建売住宅をカスタマイズするところから覚えていくといいだろう。

 家作りは土地を壁で囲うところからスタートする。適当なサイズに囲ったら、中を区切ってリビング、ベッドルーム、バスルーム、トイレルームなどを作って各部屋にドアを取り付けていく。明かりがないと「シム」が文句を言うので、各部屋の壁や天井に電気を灯す。高級品を買っているとあっというまに予算が尽きてしまうので、最初はなるべく安い材料で我慢だ。床を貼り、壁紙や外壁タイルを張る、最後に屋根を付ければ立派な家が完成する。壁紙やタイルは、貼り残しがあると「シム」から不満の声が上がる。なお、本作では「スタイル作成」という新要素を取り入れ、壁やソファ、床の色なども。あらかじめ用意されたマテリアルの中から自由に変えることができるようになった。

 家ができたら家具を配置していく。家具は実にたくさんの種類が売られているが、調子に乗って買い捲っていると予算を使い切って、生活費がなくなってしまう。最初のうちは「シム」が無職で収入がないので、少しは残しておかないと、借金返済のためにいきなり家具を差し押さえられてしまう羽目になる。「シム」が生活していくのに最低限欠かせない、冷蔵庫、食品棚、コンロ、風呂、トイレだけは確実に購入して、あとは予算と相談しながら好きなものを配置していけばいい。筆者はケチってトイレを壁で囲わなかったのだが、トイレに行く「シム」が毎回他の居住者を家の外に追い出したので、やむを得ず壁を作った。「シム」も見られるのは嫌らしい。


【スクリーンショット】
家作りは「シム」シリーズの大きな楽しみのひとつ。お金を稼いでどんどん豪華にしていこう家具は「シム」たちの通り道を確保しながら配置する不要なパーツはかなづちアイコンで売却することができる

【スクリーンショット】
家作りの最中「シム」たちの時間は一時停止している

願望スロットのアイコンにマウスカーソルを乗せると、「シム」が何を望んでいるかがわかる

 家具は種類別と目的別にカテゴライズされている。種類別なら、明かり、娯楽、家電といった具合で、目的別なら子供部屋用、リビング用といった形で部屋のタイプにあわせて選べるようになっている。同じ家具でも色のバリエーションがあるのは嬉しい。必要最低限の家具以外に設置することで「シム」のスキルを上げることができるものや、「シム」のステータスを改善できるものなどがある。能力を上げる家具は、絵画のスキルを伸ばすイーゼルや、論理的思考を強化するチェス、パソコンでは小説を書いたり仕事を探すこともできる。

 またソファやカーテン、絵画などは「シム」をリラックスさせて、楽しい気分にしてくれる。「シム」の方から、あれが欲しいこれが欲しいと「願望」を出してくるので、それを叶えるために家具を購入することもある。例えば、望遠鏡が欲しいと思っている時に叶えてやると、シムの満足度が上がる。安物の家具よりは高級な家具の方がステータスに及ぼす影響が大きい。家具はいつでも配置換えや買い替えをすることができるので、「シム」たちの生活を見ながら、使いやすいようにどんどんカスタマイズしていける。フロやベッドなども、配置によっては「シム」がたどり着けず使用できないことがあるので、通路はなるべく余裕を持った作りにしたほうがよさそうだ。


【スクリーンショット】
「シム」たちは家の中で思い思いの時間を過ごす


■完全管理の生活を送るか、それとも「シム」たちに任せるか

「シム」の気分や体調は顔の右にある「ムードメーター」と、「ムードレット」内のアイコンで確認できる
アウトドア嫌いの「シム」は外にでるのが苦手。自然に苦しめられてしまう

「シム」たちはプレーヤーが指示しなくても各々好き勝手な行動を取る。お腹が減ると料理を作るし、体が汚れると風呂に入る、眠くなると勝手にベッドにもぐりこむ。だが、指示してやらないとできないこともある。例えば就職するための仕事探しは、新聞やパソコンから仕事を探すようプレーヤーが指示を出さなくてはならない。ずぼらな「シム」は食事をした後の皿をあちこちに放り出したり、テレビをつけっぱなしで寝たりする。料理や皿を放っておくとやがて痛んで悪臭を放ち始める。そのままにしておくと「シム」のストレスがたまって病気になりやすくなるので、片付けは必要だ。お金を儲けられるようになれば、有料サービスのメイドを雇ってもいい。メイドは1日1回訪ねて来て、勝手に家の片付けや掃除をしてくれる。そんな有料サービスもプレーヤーが指示を出して行なうことになる。

 筆者の場合、あまり管理しすぎると、せっかく設定した「シム」の個性が生きないので、指示は必要最小限にして様子を見守ってみた。「シム」は空腹になって冷蔵庫から材料を出して勝手に何かを作り出した。しかし料理スキルが足りず、コンロで火事が発生、「シム」は炎をみながら狼狽するばかりなので、あわてて指示を出し消防車を呼ばせた。他にも、だらしない「シム」は体から異臭を放っているのにフロに入らず遊んでいたりする場合も強制的にフロに入ってもらった。


【スクリーンショット】
描きあがった絵は売ると収入になる。スキルがあがると販売価格も高くなっていく「コンピュータの天才」の特質を持つ「シム」なら、パソコンをクロックアップさせることもできる壊れた洗面所を直すように指示すると、もくもくと修理に励む

 大人の「シム」は生活費を稼ぐために働かなくてはならない。仕事は「シム」にとっての「生涯の目標」に通じるものなので「シム」の性格や能力にあった仕事を選んであげたい。働き口は毎日無料で届く新聞や、パソコンで探すことができる。仕事に就くと、仕事の時間に送迎の車がやってきて、職場まで運んでくれる。真面目に仕事をこなしていれば昇給するし、職場でのコミュニケーションを重視してれば友人が増える。ある程度経験を積むと、より給料のいい仕事に転職していく。仕事は皿洗いから研究所の職員まで「シム」の「特質」にあわせて選べるが、中には犯罪行為に手を染めるような仕事もある。続けていくと、やがて組織の一員となって裏社会で生きていくことになる。筆者の「シム」も気がつくと1人がスリになっていて、どうしようかと頭を悩ませているところだ。


【スクリーンショット】
「シム」たちの日常生活は、トラブルや思わぬ発見に満ちている


■シームレスにつながる街並み。街にはたくさんのチャンスがある

 本作では、プレーヤーの「シム」が住んでいる家と他の「シム」が暮らす街はシームレスにつながっている。視点を街に合わせると、いつでも他の「シム」が活動している街を見ることができる。街には、プレーヤーの「シム」以外にもたくさんの住人が生活している。そのため普通に家で生活していても、隣の住人が出掛けて行くのが見えたり、友達が遊びに来たりする。街には、学校や警察署、美術館やレストラン、ブックショップ、スーパーマーケットなど数多くの施設がある。時には「シム」の職場になることもあるそれらの施設は、自由に遊びに行くこともできる。休日など、友達を誘って釣りに行ったり、公園でスポーツに興じるのも楽しい遊び方だ。

【スクリーンショット】
「シム」たちの暮らすサンセットビーチは自然に囲まれた小さな街隣の家を訪問することもできるシムはずっと指定された場所で時間を過ごすので、適当な時間に帰宅を促す

【スクリーンショット】
カフェ、墓地、市役所など様々な施設がある

 「シム」は他人との関わりを望むことがある。そんな時は積極的に友達を呼んだり、出かけたりして友人を増やすチャンスだ。「シム」は放っておいても勝手に会話して、親交を深めていくが、プレーヤーが会話の内容を指示することもできる。中には「追い払う」といったつっけんどんな反応も用意されている。この「シム」ならきっとこんな反応を示すだろうという予測のもとに、「シム」の会話を選択するのもロールプレイとしては面白い。他の「シム」との関係は、いつでもUIで確認できる。一緒に住んでいても仕事ですれ違いが多い「シム」よりも、学校や職場で時間を共有する「シム」との友好度が上がりやすいのは、いかにも現実的だ。

 子供のシムは一定の期間を過ごすと誕生日を迎えて成長する。成長する時には盛大なバースデイパーティを開いて祝福してあげたい。誕生日の告知がでると準備を始めることになる。なるべく大勢の友人を持つ「シム」にパーティーを主催させて、開始時間を設定する。料理やバースデーケーキは建築モードのアイテムの中にあるので、購入して設置する。お金に余裕があるなら、花を飾ったりしてパーティーらしく部屋をデコレートしてもいいだろう。準備万端整ったら、招待客を出迎える。今回は開始時間の設定が早すぎたのか、招待客が訪問し始めた時に「シム」はまだ寝ていた。それでも、大いに盛り上がったパーティーに対して、招待客の反応は上々だった。

【スクリーンショット】
パーティーの主催者は「願望」にもパーティ関連のものが出る料理を乗せるテーブルは家具として購入できる無事成長した少女を全員が拍手喝采で祝福する

【スクリーンショット】
オープニングムービーの光景をそのままゲーム内でも楽しめるかもしれない


■視点を変えて、細やかな「シム」の仕草を愉しむ

カメラを近づけると、上からではわからない細かい挙動が見えてくる
「シム」はプレーヤーが望んだ人生を歩むとは限らないが、そこが本作の面白さだ

 通常は管理のしやすい見下ろし画面を使うことが多いが、本作ではカメラの位置を様々に指定できる。カメラをもっと寄せて視点を下げると、まるで自分もその部屋の中にいるかのような臨場感を味わうこともできる。近づいてよく見ると、「シム」たちの挙動の細かさに驚かされる。例えば料理をするとき、冷蔵庫から材料を出して調理をするのだが、「マカロニチーズ」と「パンケーキ」、「秋のサラダ」では材料も手順も微妙に異なっている。パソコン机の前に座っても、ゲームをして遊んでいる時と原稿を書いているときでは手つきや姿勢も違う。

 感情をあらわにして怒ったり、嘆いたりしている時には、表情もちゃんと変わっている。冷蔵庫の閉め方ひとつとっても、几帳面な「シム」とずぼらな「シム」ではやり方が違う。ずぼらな「シム」は両手がふさがっていると、足でよっこらしょと締めてしまうのだ。そんな行動や表情の1つ1つが個性的で、こんな時あいつならこうするだろうな、とまるで自分もその家に住んでいるかのような親近感を感じる。

 本作のウリである「生涯の目標」に向かって「シム」たちを導くという新たな要素によって、長期的な視野を持ちつつ毎日を過ごすというプレイが可能になり、本作は人生シミュレーションとして大きく前進した。「シム」たちはただ毎日を日々の生活費を稼ぐために過ごすのではなく、それぞれが未来を夢見ながらそこに向かう努力をする。だが、「シム」たちを管理して成功へと導くことが本作の目標ではない。ダメな「シム」はダメなりに、精一杯生きている人生を一緒に体験し、喜びや悲しみを共有し、「シム」たちとよき友人になることこそが、本作が目指す所ではないかと思う。

 本作をプレイしていると、人生は1方向にだけ進んでいくものではなく、無数の出会いやチャンス、運不運が折り重なり紡がれていく広い面のようなものなのだと思える。プレーヤーに代わって様々な可能性を試してくれる「シム」たちとの付き合いは、果てしなく続いていきそうだ。


【スクリーンショット】
細やかなしぐさや表情が、ゲームにリアリティを与える

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(2009年 6月 23日)

[Reported by 石井聡 ]