★オンラインゲームレビュー★

プレーヤーの絆を重視した「職業システム」
ファンの声で3年ぶりに蘇ったMMORPG

「アッピーオンライン2」

  • ジャンル:MMORPG
  • 開発/運営元:SeedC
  • プラットフォーム:Windows XP、Vista
  • 利用料金:無料(アイテム課金制)
  • サービス開始日:6月25日

 「アッピーオンライン2(以下、アッピー2)」はSeedCが開発/運営しているWindows用MMORPG。このゲームは、前作「アッピーオンライン」の存在を抜きには語れない。「アッピーオンライン」は2002年から2006年までサービスされていた2DクォータービューのMMORPGだ。

 日本では堅調なサービスを行なっていたが、2006年に開発会社の事情でやむを得ずサービスを停止することとなり、多くのユーザーに惜しまれつつ終了した。しかし、復活を望むファンの声は根強く、復活のための署名活動が草の根で行なわれた。運営会社のSeedCにとっても思い入れの深い作品だったようで、ついに自社開発による「アッピー2」の制作を宣言するに到った。そして2009年6月25日に正式サービスがスタートした。

 「アッピー2」の舞台は、前作から200年後の同じ世界だ。リンゴ型のモンスター「アッピー」を始め、前作に登場したモンスターが多数登場する。画面も前作と同じ2Dクォータービューで、結婚などのシステムも継続されている。また、「アッピー」というゲームの根幹をなす、もっとも特徴的なシステムである「職業システム」も前作同様実装された。「職業システム」は武器の修理や病気の治療などをプレーヤーが行なうというもので、人とかかわりを持たずにはプレイを継続できないようになっている。

 たくさんのファンに望まれて生まれた「アッピー2」が、はたしてファンの望んでいた安息の地になっているのか。このレビューでは、「アッピー2」の特徴的なシステムを紹介しつつ、序盤までの雰囲気や、プレイの感想を紹介していきたい。



■ 3年を経てよみがえったMMORPG。ファンと一緒に作る開発体制が魅力

プレーヤーが最初に降り立つ場所には、クエストをくれる女神ルゥラがいる

 「アッピー2」は、オンラインゲームとしては少しレトロな印象を受ける2Dクォータービューを採用しているが、これは実は意図的なものだ。このゲームで最も重要視されているのは、いかに斬新な最新作を生み出すかではなく、いかに前作に近づけるかという部分なのだ。たとえば、「アッピー2」をスタートすると最初にサーバーを選ぶことになるが、「朝焼け」、「紅の氷」、「月の雫」という初期3サーバーの名前はすべて前作と同じものだ。サーバー名に限らず、さまざまな部分で連続性のある続編であることが意識されている。

 前作は“ユーザーといっしょに作るゲーム”を謳い、開発が積極的にユーザーの声を取り入れてきた。「アッピー2」でもその文化は継承され、開発を発表した段階からユーザーからアイデアを集めたり、オフラインイベントで直接意見を聞いたりとユーザーとの距離が近い形で開発が進められた。例えば、ユーザーからデザインを募集した「ナイトアッピー」のようなモンスターがいたり、ユーザーの要望によってチャット機能が2種類から選べるようになるなど、あちこちに意見が反映されている。

 キャラクター作成時に選べるのは「戦士」、「魔法使い」、「探検家」の3クラス。「戦士」は近接攻撃や盾を持っての防御、「探検家」は槍や弓を使ったロングレンジからの攻撃、「魔法使い」は術攻撃を得意としている。キャラクターの比率で言うと「魔法使い」が他2職よりやや多い印象だ。キャラクターメイキングはクラスと性別を選んで名前をつけるだけの簡単なもので、外見のバリエーションは装備などでつけることになる。


最初に選べる3つのクラス。人気は強い術攻撃を使う魔法使い

 ゲームはマウスとキーボードのショートカットを駆使して操作を行なう。チャットはEnterキーを押してチャットを行なう「エンターチャット」と、チャットはダイレクトに入力できるがショートカットを使うときにCtrlキーを一緒に押す「ダイレクトチャット」の2種類があり、使い慣れた方でチャットを楽しむことができる。チャットの種類はギルドチャット、パーティーチャット、シャウトなど基本的なものは揃っている。

 ただ、こうしたチャットの豊富な機能については、若干わかりにくいところがある。チャットの切り替えは文頭に「!」や「#」の記号を入れて行なうが、ホームページにあるチュートリアルを読まないと最初は気づきにくい。前作はゲーム内ヘルプが充実していたが、今作ではヘルプはいまだ準備中で簡単なキーボードの説明が出るだけなのが残念だ。スキルの覚え方や、転職の仕方などはホームページのチュートリアルに詳しく説明されているので、ゲームを始める前にそちらをじっくり熟読しておいたほうが良い。

 戦闘は、オートバトルをベースに、任意のタイミングでスキルを発動するオーソドックスなスタイル。スキルもまた前作からの継承なので、前作のプレイ経験者なら迷わずプレイできそうだ。使えるスキルの数はスタート時には1つだけで、順次「スキル書」を使って増やしていくことになるが、総数はそれほど多くないうえに、スキルをセットするスロットは10しかないので、スキルの構成で悩むことはほとんどなさそうだ。

 また、どうしてもフルメンバーのパーティーを組まなければ進めないという場所は少なく、ソロや数人で軽く遊べる狩り場が多い。全体的にライトな作りで、戦闘をガッツリ楽しむというよりは、仲間とワイワイチャットをしながら遊ぶようなプレイスタイルが向いているゲームだ。



■ 協力しなければ生きていけない。絆を作る「職業システム」とは?

 「アッピー2」で最も特徴的なシステムが「職業システム」だろう。本作では戦闘系のクラスとは別に、「医者」などの職業に就くことができる。職業には1次職と2次職があり、1次職は「植物採集」、「鉱物採集」、「狩猟」の3種類、2次職には「医者」、「鍛冶屋」、「錬金術師」、「細工師」がある。職業はクラスとは関係なく組み合わせることができるので、例えば「戦士」+「植物採取」+「医者」や「魔法使い」+「狩猟」+「錬金術師」などいろいろなパターンが考えられる。「職業システム」を特徴づけているのは、これら2次職だ。

 本作では戦闘をしていると武器や防具の耐久度が減っていき、0になるとその装備品は使えなくなってしまう。またモンスターに殴られると病気にかかってしまうことがある。病気にかかるとステータスが低下する。それを直してくれるのが「鍛冶屋」や「医者」だ。職業スキルを持っているプレーヤーは「ジョブポイント(以下、JP)」を消費して、他のプレーヤーの武器を修理したり、「JP」と薬を使って病気を治したりすることができる。街には、同じことをしてくれるNPCはいないうえに、自分で自分を修理したり治療したりすることはできないので、必ず誰かに頼む必要がある。このため街ではいつも修理や治療、装備の強化を依頼するチャットの声が絶えない。

 修理や治療といった職業スキルは、「鍛冶場」や「病院」といった町にある特定の施設内でしか使うことができないので、施設内はいつも混み合っている。知り合いがいなくても、施設にいって周囲チャットで「修理してください」とお願いすれば、誰かが応じてくれる。人は多いのに無言で不気味な街というのはMMOでは珍しくない光景だが、「アッピー2」は周囲チャットでの挨拶やお礼を言う声がどこからか聞こえてくるのが日常だ。こののんびりした雰囲気が、「アッピー2」の最大の魅力だろう。

 職業に就くには、まず条件を満たした状態で「図書館司書」からライセンスを購入する。それを持って「裁判所」へ行き、登録すればいい。2次職も同じように「図書館司書」からライセンスを購入して「裁判所」で登録する。1次職は登録した時点で採取が可能になるが、2次職ではライセンスとは別に「図書館司書」からスキルを購入して、攻撃系のスキルと同様に「スキルトレーナー」の所で覚える必要がある。

職業を決めるには、司書スピカから購入したライセンスを裁判所に登録すればいい
採取はJPを消費する。採取レベルが上がると、採れるものが変化する
「医者」は薬とJPを消費して病気を治す
修理はJPを消費するだけなので、比較的気軽に頼むことができる


■ 序盤のレベル上げはソロが主体。街中ではギルドの勧誘も盛ん

門を出てすぐの場所も初心者には危険地帯だ

 さて、キャラクターメイキング後に最初に降り立つのは、「ドルロレ」という国にある「水都ナーレ」だ。前作では「ナーレ村」だったが、200年の間に村から都へと発展したらしい。「水都ナーレ」には東と南に2つの門がある。しかし門の外にいるモンスターはレベル7以上でレベル1の初心者が出て行ってもすぐに倒されてしまう。まずは街の北西にある波止場から「初心者修練所」へ移動して、戦闘になれるまではここでレベルを上げたほうがいい。「初心者修練所」にはレベル1のリンゴ型モンスター「アッピー」など、低レベルでも倒しやすいモンスターがいる。倒せば薬や装備もたくさんドロップするので、序盤に必要なものは戦闘をしているだけでだいたい揃ってしまう。

 レベルを上げていくと、クエストをくれるNPCが現われる。たいていは「○○を何匹倒してこい」といったお使い系のものだが、適正レベルより少し高い敵がターゲットになっていることが多く、ほいほいとお使い気分で行ってしまうと、思わず苦戦して倒されてしまうというシーンが多々あった。クエストの報酬の大半はお金やアイテムで、決しておいしいとは言えないので、無理にクエストを進めるよりも、まずは少し格下の敵を狩っていった方が効率よく経験値をためることができる。

 モンスターを倒しても獲得できる金額は微々たるものだが、その代わり装備やアイテムがたくさんドロップするので、それを売っていればお金に困ることはない。比較的狩りやすい「シルバーアッピー」や「ビッグアッピー」などがいる場所では、多くのソロプレーヤーが狩りをしている。ただ、ソロで延々と同じ敵を倒していると、どうしても作業感が出てきてしまうので、早めに知り合いを作っておしゃべりをしながら狩りをしたり、パーティーを組んで少し強い敵を倒すようにしないと飽きてしまうかもしれない。街の広場や銀行の前ではよくギルドの勧誘をしているので、思い切って入ってみるのもいい。

クエストは街にいるNPCから受けられるNPCへ売却した装備品は中古としてリサイクルされる街の外で受けられるクエストもある

 モンスターからは、装備品だけでなく、スキルを覚えるための「スキル書」も入手できる。「スキル書」は図書館司書から買うこともできるが、序盤に必要なスキルはほとんどドロップで手に入る。「スキル書」を手に入れたら、「スキルトレーナー」に頼んで覚えさせてもらう。覚えたスキルは、「スキルツリー」にセットしてレベルを上げることで強化していくことができる。レベルを上げるには「スキルポイント」が必要で、このポイントは2レベルアップのたびに1ポイント獲得できる。もらえるスキルポイントには限りがあるので、どのスキルを強くするのかは、慎重に考えたい。どうしようもないほど失敗したと思ったら、スキルツリーを初期化するアイテムは、有料アイテムモールで販売されているので、それを使って登録しなおすのも良いだろう。


スキルの説明は一覧から見ることができる弱点を目指して技を繰り出すウィークターゲット強化したいスキルはスキルツリーに登録する
水都ナーレの北西にある埠頭から、初心者修練所へ移動することができる
初心者エリアには、倒しやすいレベル1の敵がいる。装備はかなりドロップするので序盤ではほとんど買わずに済む


■ 前作ファンを満足させる要素は充分、更なるプラスアルファに期待

 現在実装されている国は「ドルロイ」のみで、まだ正式サービス開始から1カ月程度だが、そろそろ狩り場の不足が目立ってきている。その理由のひとつとしては、次の狩り場の敵がいきなり強くなるため、レベルを上げてもなかなか狩り場を移動できないことが挙げられる。このため、レベル20前後でも、城を出てすぐの場所である「ドルロレ平原」と「安息の平原」の中央部あたりまで行くのがやっとで、冒険というには少々スケールが小さいように思える。

 さらにレベルが上がれば「竜の巣」や「雪花の島」など徐々に狩り場は増えていくのだが、そのために城の周辺部でずっと同じ敵を相手にし続ける必要があるのは、ユーザーフレンドリーではないのではないか。将来的には、前作にあった他の大陸「ティモーレ」、「イデア」、「アヴィディタ」も実装されていくことになるのだろうが、今のところは狩り場不足が問題になりつつある。

 また正式サービス開始直後には病気にかかりやすい仕様で、医者が足りずGMが出動して治療にあたる一幕があった。その後何度か調整が繰り返されているが、今のところはまだ医者が程良く治療スキルを上げられつつ、プレーヤーがストレスに感じないベストバランスを模索している状況だ。ユーザーと一緒に作っていくMMORPGという名前に恥じないよう、どの程度ユーザーの意見を取り入れて満足させるような開発ができるのかが、今後の最も大きな課題だと言える。

 前作をプレイして、その後ずっと復活を待望していたユーザーにとっては、ようやくホームタウンに戻れたような安心感があるのか、正式直後には同窓会のような雰囲気がチャットからも感じられた。前作から引き継がれたさまざまな要素など、前作のファンが楽しめる部分は十分用意されている。今後は、前作を知らない新規のユーザーをどこまで引き込めるかが重要だ。2DのMMORPGが好きという層は確実に存在しているので、そういった層からどのくらいプレーヤーを取り込めるかは、今後のバランス調整と拡張にかかっている。

 公式ホームページには「開発に参加」というメニューがあり、アイデアを送ったりアンケートに答えたりすることで、自分の意見を開発に届ける事ができる。かつての「アッピー」が育てたような、優しい連帯感を持ったコミュニティが育つかどうかは、ユーザーが積極的にゲーム作りに参加したいと思えるような環境を、運営や開発が作っていけるかどうかにかかっているだろう。


緻密で美麗な2Dグラフィクスで描かれた世界を楽しもう

(c) 2009 SeedC,Inc. All Rights Reserved.

(2009年 7月 23日)

[Reported by 石井聡 ]