オンラインゲームレビュー

「侍道」風味が満載の純国産和風MMORPG
一風変わった回避重視の戦闘スタイルが魅力

「Blade Chronicle: Samurai Online」


 “クリックゲームはもう飽きた”という刺激的なコピーとともに登場した「Blade Chronicle: Samurai Online(以下、ブレイドクロニクル)」は、「侍道」シリーズで知られるスパイクとゲームズアリーナが開発・運営を行なっている純国産の和風ファンタジーMMORPGだ。プレーヤーは幕末に似た架空の和風世界を舞台に、「皇国」と「新政府」に分かれて、斬るか斬られるかの真剣勝負を繰り広げる。フィールドには「妖物」と呼ばれる変異した化け物が徘徊していて、「妖物」にかかわるストーリーもある。

 戦闘は、相手と間合いを取って攻撃をかわしながら、マウスを使って連続攻撃や固有技を繰り出すという独特な方法で行なわれる。成長の方式も一風変わっている。本作ではキャラクターを成長させるのではなく、武器を鍛えることで技を覚え、ステータスを上昇させていく。武器は「型」というタイプに分かれていて、複数の「型」を成長させることも可能。回復や支援術、魔法のような術攻撃を行なう「型」も存在する。

 「ブレイドクロニクル」は、1回目のオープンβテスト(以下、OBT)がトラブルで中止になった後、テクニカルテストとOBTを短期間行ない、5月21日から慌ただしく正式サービスが開始された。課金は基本料無料のアイテム課金方式だ。発表されて以来、和風の純国産ゲームということで期待を集めていたが、トラブルのため必ずしも万全のスタートとはいかなかった。このレビューでは、「ブレイドクロニクル」の特徴やプレイした感想などを序盤のプレイを振り返りつつ紹介していきたい。


【スクリーンショット】
今までにない幕末の純和風な世界観が魅力


■チョンマゲ、花魁、城下町―純和風の世界観が魅力

ゲームの案内役となる少女。スタート時のイベントが終わったあと会いに行くと、インベントリを拡張するクエストを受けることができるので、忘れず訪ねたい

 「ブレイドクロニクル」の舞台は、極東に浮かぶ島国、日ノ本。300年間の太平を打ち壊す黒船の来航により、力の弱まった幕府は、武士による幕威回復を図る「新政府」と、帝をまつりあげた新しい国づくりを目指す「皇国」の2つに分裂して争うことになる。プレーヤーはどちらの勢力にも属さない中立の町「美玖」からスタートする。

 戦闘チュートリアルが終わると中立都市「美玖」に降り立つ。「美玖」は「皇国」にも「新政府」にも属さない中立都市で、5つの街に分かれている大きな城下町。初期の街としては十分すぎるほどの広さがあり、しかもかなり入り組んでいるので、道を覚えるのは容易ではなく、最初は地図と首っ引きになるだろう。街中にいる「籠屋」が無料で別の町の「籠屋」まで転送してくれるが、それでもスタートからしばらくはずっと街中を走る続けていた。「美玖」にはあちこちにクエストをもったNPCが立っているので、近場のNPCに話しかけてクエストを受けてみる。クエストは街の外のフィールドで何かを倒して来いというものと、街の中のお使いが多い。中には生産にからむ材料をとってくるクエストなどもある。

 サーバーはずっとテストに使われていた「KUSANAGI」に加え、新たに「MURASAME」がオープンした。「MURAMASA」の方が後発なだけ人数が少ないが、「KUSANAGI」ではプレーヤーが既に高レベル帯に移っているので「美玖」近辺に限れば違いはそれほど感じられなかった。今回は、後発の「MURAMASA」サーバーでプレイした。


施設の配置が便利な「舞香町」には露天を出すプレーヤーが集まっている。頭の上のきんちゃく袋が露天の印だ
プレーヤーからの買い物。売っているのは材料が多い。装備は自分が装備できるものかチェックしてから買おう戦っている最中でも露天表示を出すことができる


■武器のチョイスで戦い方が大きく変わる

型はクエストで増やすことができる。最初のクエストは「美玖」で受けられる
武器ごとに使える技が異なる

 本作のキャラクターは基本的に全員が武芸者という設定なので、職業という概念はない。代わりに「守護の型」、「壮術の型」、「重撃の型」、「巧迅の型」、「念術の型」という5つの「型」がある。「守護の型」はスタート時点で全員が習得しているが、それ以外の型は「型習士」から教えてもらわなくてはならない。複数の「型」を覚えることが可能だが、一度に複数の「型」を使い分けることはできない。「型」にはそれぞれ対応する武器が決まっている。

 「守護の型」はノーマルの日本刀を持ち、挑発や防御力上昇など、パーティーの壁役となるような技能を覚えることができる。「壮術の型」は薙刀を持ち、パーティーメンバーを回復させたり能力を上昇させる術を使う。攻撃技もあるが、サポート能力に秀でた「型」だ。「重撃の型」は長刀を振るい、モーションの大きな大技を得意とする攻撃型の「型」だ。回転切りなどの範囲攻撃もあるので、NPC相手の狩りでは絶大な威力を発揮する。「巧迅の型」は小刀2刀流ですばやい攻撃を繰り出す。回避や命中、攻撃回数に秀でており、相手を弱体化させる術も覚える。「念術の型」は遠距離から術攻撃を繰り出す特殊な「型」だ。持っている武器は短刀や刀だが、直接攻撃には向いておらずmob(モンスター)と間合いを取りながらの術攻撃がメインとなる。

 武器には攻撃力や命中といったパラメーターに加えて、体力や防御力も設定されている。経験値で成長するのも武器なので、例えば「守護の型」の武器を20段まで上げていたとしても、「壮術の型」の武器が1段ならキャラクターの強さも1段になる。装備にも装備可能な段が設定されているので、新しい「型」の新しい武器を育てようと思ったら、文字通り初心に戻る必要がある。これが同じ「型」の武器なら、20段を装備して戦えば、帯刀している1段の武器にも経験値が入るので、比較的簡単に育てることができる。そうやって育てた武器を露天で売っているプレーヤーもいた。

 また、武器には名前がついていて同じ種類の武器でも銘によって性能から使える技まで様々な種類がある。例えば「守護の型」が最初に持っている刀「王心」は一撃必殺の大技を使えるようになるが、初期クエストで鍛冶屋からもらえる刀「阿紫花」だと、瞬間的に防御力を上げる技を使えるようになるといった具合に立ち回りが変化する。そのためソロで戦う時には攻撃技が使える武器を、パーティーの時にはサポート技の武器と使い分けることになる。武器の技は段を上げることで自動的に覚えていく。覚えた技はスロットに入れて使用する。覚えた時に特にメッセージやエフェクトは出ないので、段が上がったときにはとりあえずウインドウを確認してみるのがいいかもしれない。

 複数の「型」を習得しているなら、街にある自分の部屋で武器を持ち代えることで「型」を変更することができる。武器は最大3本を帯刀して持ち歩くことができる。そのうち1本を装備して戦うが、武器の体力がゼロになって刀が折れると、自動的に別の刀に持ち変える。すべての刀が折れてしまうと死亡するので、刀をたくさん持っていればそのぶんキャラクターの生命力が増えることになる。折れると経験値が入らなくなるためどうしても鍛冶屋に戻る必要がでてくる。しかし例えば夜だけしか現われないmobを狩っていたり、時間制限のあるクエストが進行中だったりすると、街まで戻る時間が惜しい。だからなるべく刀を折らないように、折れそうだと思ったらすぐに別の方に持ち替えながら逃げたり、刀の体力を回復させるアイテムを使ったりと、なるべく刀を折らない努力が欠かせない。


刀が折れないように、少し体力が減ったらすぐに座って回復武器が折れたら鍛冶屋へ。修理代金は段が上がるごとに高くなる素早く入れ替えられるように、技能スロットに武器をセットしておく
【スクリーンショット】
折れた刀は鍛冶屋で修理しなければ経験値が入らない。ミニマップのトンカチマークが鍛冶屋の目印だ


■攻撃を避けながら、相手に必殺の一撃を叩き込む

ロックをした状態でmobに近づくと、間合いをしめす輪が赤くなる
ロックをしてない状態では輪は緑色
たくさんの弱いmobを相手にするときには、ロックしない戦い方のほうが効率がいい

 成長する武器のシステムと共に、本作のもっとも大きな特徴は戦闘システムだろう。「ブレイドクロニクル」の戦闘には2つの方法がある。1つは相手をロックして、差し向かい間合いを取りながら戦う方法。もう1つは相手をロックしないまま攻撃する方法だ。相手をロックするには、マウスかキーボードのショートカットキーを使う。1度ロックしてしまえば、ターゲットはずっとそのmobに合ったままになり、近づけば自動的に相手と向かい合って戦闘態勢に入る。しかし視点の自由がきかなくなったり、相手に背を向けて逃げることができなくなるというデメリットもある。

 mobをターゲットすると、その足元に光る輪のようなエフェクトが表示される。ロックしたmobに近づくと、この輪の色が黄、オレンジ、赤と変化する。赤の間合いで攻撃を繰り出せば相手に当たる。ロック状態ではmobに背を向けることはなく、mobの周りで円を描くような動きになる。この状態ではサイドステップ、バックステップが可能になり、すばやく入力すればmobの攻撃を避けることができる。この回避アクションを駆使して、攻撃した後すばやく飛び退り、再び相手の間合いに入るという攻撃方法がロックをしている場合の基本だ。

 本作では一撃のダメージが大きいので、近接攻撃が主体となる「守護の型」や「巧迅の型」ではどれくらいうまくmobの攻撃をかわせるかが重要になる。うまく回避をすればノーダメージでmobを倒すことも可能だ。mobによって、攻撃をかわしやすいmob、かわしにくいmobがいて、攻撃が直線的でかわしやすい馬タイプのmobがいる場所では、いつも大勢のプレーヤーが狩をしていた。

 また、本作ではmobをターゲットしていなくても技を発動することができ、範囲攻撃でなくても、攻撃が当たる間合いにいるすべてのmobに1度にダメージを与えることができる。このためレベル差があるmobを狩る時など、ぶんぶんと刀を振り回しているだけで終わることもあった。この戦い方では常にmobと向かい合っているわけではないので、mobが攻撃範囲に入るよう動き周りながら戦わなくてはならないが、逃げ出しやすい、周囲を見渡しやすいというメリットもあるので、強mobと戦う時など、とりあえず殴ってみてからロックするかどうか決めたりもした。チュートリアル戦闘ではmobに近づいてロックをしてという手順を教えてくれるが、ロックをするかしないかは、戦闘スタイルや個人の好みによる。

 「美玖」の近辺にいるmobなら、それほど神経質に回避しなくても、棒立ちで斬っているだけでも勝つことができる。しかし段が上がってくると、1度で半分以上の体力を奪うような大技を使うmobも現われる。基本的なゲームデザインとして回避は必ず覚えなければならないテクニックだ。最初のうちはmobの攻撃タイミングが掴めなくて、うまく回避することができないが、だんだんと慣れてきてタイミングが掴めてくると回避が楽しくなってくる。攻撃も大切だが、それ以上にいかに避けるかが重要なプレーヤースキルとなる。

 ただ、回避行動を行なうために、mobで込み合っている場所で不用意に動き回っていると、周囲のmobが次々にリンクして襲いかかってくる。本作はかなり低レベルの段階からアクティブモンスターが登場するので、戦闘をする場所の確保はかなり重要だ。さらに、逃げだしてもmobはかなりしつこく追いかけてくる。街へ逃げ込むなどのゾーン移動をしなければ振り切れない場合もあるくらいだ。10段を超えた辺りから、追いすがってくるmobが背後から間合いの広い攻撃を仕掛けてきて逃げ切れず死亡することもあるので、逃げるときにも回避を意識しつつ、mobの攻撃タイミングを読んで右に左に避けながら逃亡しなくてはならない。

 一方、mobへの攻撃方法には通常攻撃、武器の固有技、連続攻撃の3種類がある。各武器には固有の連続攻撃パターンがあり、武器が成長すると2段斬り、3段斬りと回数が増えていく。攻撃はマウスを武器に見立てて相手を斬りつけるようにドラッグする。上から下へドラッグすれば、キャラクターは袈裟斬りのアクションをするし、下から上へドラッグすれば突きを出す。左から右へ、その後上へと動かせばコンボ攻撃となる。またスペースキーを押してドラッグすれば、動きに応じた固有技が発動する。画面上にはマウスの軌跡があたかも剣筋のように残るので、斬っている感覚が視覚的にも操作的にも味わえるというわけだ。

 ただ、この操作法にも弱点がある。1つはあまりにも大きくドラッグして、マウスの軌跡が隣のmobにまで及んでしまうと、攻撃を望まないmobにもダメージを与えてしまって、敵の数が増えてしまうことだ。これはなるべく小さなアクションで操作すれば解決するが、mobが重なったりしてどうしても当たってしまうこともある。もう1つは、スペースキーを押すタイミングとマウスを動かすタイミングがタイトで技が出にくいことだ。

 キーボードのショートカットに設定されている攻撃ボタンを使えば、この2つの問題は解決できてしまうので、攻撃や回避のタイミングがシビアになってくる段に差し掛かると、マウスよりもキーボードで操作することが多くなってしまった。ただ、これはおそらく開発者が望むプレイスタイルではないだろうから、マウスインターフェイスに関しては今後の改善が望まれるところだ。


ボスの段数は「??」と表示されるので、戦ってみなければ強さはわからないmobが固有技を使った後には大きな隙ができるので、攻撃のチャンスうまく攻撃をよければノーダメージ
【スクリーンショット】
間合いを意識しながら、技を駆使して闘う。避けるのがだんだんと快感になってくる



■お金稼ぎから勢力決定まで、目的にあわせてクエストをこなす

クエストの確認には、クエストウインドウを開いてクエストの名前をクリックしなければならない
生産のクエストもある。ある程度生産のスキルを上げてから受けたほうがいい

 本作では、戦闘では一切お金を稼ぐことができないので、特にクエストの報酬は貴重な収入源となる。そのため1度の出撃で効率よく稼ぐためにできるだけたくさんのクエストを受けまくってフィールドに出ることになる。

 クエストは、頭の上に「?」マークのフキダシが浮かんでいるNPCから受けることができる。地図にも「?」マークが表示されるが、ある程度近づかなければならないのでクエストを探して街中を走り回ることになる。クエストを受けると、マップ上に「!」マークでクエストの対象となるキャラクターの場所が表示されるので、今度はその場所へ行ってクエストをこなすことになる。お使いの場合はNPCの頭上に「!」マークが表示されるのでわかりやすいのだが、フィールドでは「!」マークを頼って現場に行くと、複数のNPCがうろついていることがあり、クエストウインドウを開いて何を倒すのかを確認しなくてはならない。複数のクエストを受けている場合、1つずつクリックして内容を読まなくてはならないので、少々面倒くさい。

 クエストには適正レベルのような基準となる指標がないので、行ってみると現在のレベルではとても倒せないmobがいたり、逆に弱すぎるmobで経験値がほとんど入らないということもある。最初に冒険が始まる「南天町」のクエストは初心者向けなので、まずは「南天町」のクエストをすべてクリアするのが良いかもしれない。

 クエストをくれるキャラクターは皆個性的で、意地悪だったり弱虫だったり意地っ張りだったりと、性格がかなりはっきりと描かれている。中には裸で寺の裏に隠れていたり、別のNPCと張り合っているキャラクターもいる。個性豊かなキャラクターは、本作の魅力と言えるだろう。クエストのセリフはぜひ読み飛ばさずに確認してみて欲しい。つい笑ってしまうようなものもある。「美玖」とその周辺だけで何十ものクエストがあるので、しばらくはずっと「美玖」とその周辺をうろうろすることになる。また「口入屋」で受けられるクエストは何度でも繰り返せるので、お金稼ぎにはもってこいだ。


収穫など生産関連のスキルは、クエストとして受けることで覚えられる袋拡張クエストでは、「よろず鬼没屋」という名前のモールでの買い物を体験できる





■生産はコアユーザー向け? スキル制で選べる11種類の生産要素

「釣り竿」と「エサ」を使う「漁獲」は堀や川で釣りができる
桑で畑を耕す「収穫」。BOT対策で、まれにわらの変わりに危険物が現われるので注意が必要だ

 お金稼ぎのもう1つの手段が生産だ。本作の生産には材料を集める「伐採」、「採掘」、「収穫」、「漁獲」という採取の要素と、「軽金鍛治」、「重金鍛治」、「裁縫」、「調理」、「錬金」、「皮骨細工」、「木工」という7つの生産要素がある。生産はスキル制で、そのアクションを行なうことでスキルポイントを獲得できる。ただし、スキルポイントには105という技能限界が設けてあるので、すべての生産を極めることはできないようになっている。

 それから生産材料を集める技能はクエストで覚えることができる。例えば「漁獲」なら、「釣り竿」と「エサ」など特定の採取道具が必要だ。採取道具には段階があって、最初は最下位の道具しか使うことができないが、すぐに壊れてしまうので近くにいるNPCから頻繁に道具を購入する必要が出てくる。採取ポイントには、BOT対策のアクティブmobが配置されているので画面から目を離すと危険かもしれない。

 生産は初期から複数の材料を必要としたり、他の生産で作った1次材料が必要だったりと、材料取得の難易度が高い。失敗すると材料をロストする危険があるが、うまくいけば業物が作れる。どちらかというとやりこみ要素的な意味合いが大きいかもしれない。クエストの中には、採取や生産に絡むものもある。またmobからドロップする属性石を持って鍛冶屋に行くと、武器を強化するとこもできる。属性は火、水、風、雷の4種類があるが、強化で付けられるのはそのうち1種類だけで、1度設定すると後はずっとその属性しか付けられなくなる。


【スクリーンショット】
収穫した作物はその場で生産に使う事もできる



■NPC「周作」が現われたら、勢力変更クエストにチャレンジ

 ある程度「美玖」のクエストをこなしていると、「美玖」から少し離れた場所にある「十郷村」に周作というNPCが現れる。この周作から受けられるのは、物語の本筋に関わるクエストで、それまでの単発クエストとは違ってストーリー仕立ての連作クエストになっている。プレーヤーは洞窟にいるmobを倒した後、「美玖」の上役に頼まれて妖物の徘徊する妖界へと「美玖」の城主を探しに行く。13段程度あればソロでもクリアできるが、パーティーを組んでいけばより確実に進むことができる。このクエストをクリアすると、それまで進むことができなかった場所へ入れるようになり、「皇国」の本拠地である「遠海」と、新政府の本拠地である「古賀」へ向かうことができるようになる。

 本拠地への道には強力なmobがたくさんいるので、まだ段が低いなら出発前にどちらへ属するか決めておいたほうがいいかもしれない。勢力に属するまでは、死亡したときの帰還ポイントが「美玖」のままなので、死ぬとまた「美玖」から走りなおさなくてはならなくなる。本拠地の街には門番がいて、話をすると勢力に所属するよう勧められる。承諾すると街の中に入れるようになり、名前の横に勢力を示すアイコンが付く。さらに自動的に勢力チャットに入れるようになり、自宅を本拠地へ引っ越したり、死亡したときの拠点を代えることができるようになる。勢力に属すると、その後は敵対勢力のプレーヤーから問答無用で襲われるようになる。1度勢力に属してしまうと、寝返りには有料アイテムが必要となる。


十郷村に現われる周作からストーリークエストを受けられる初めてのダンジョン。ものものしい雰囲気が新鮮だ「美玖」の城主、九弦を助けるために、妖界へ赴くことに

【スクリーンショット】
ストーリークエストでは、カットシーンが挿入されてムービー形式で話が進んでいく



■戦闘は文句なく面白い、しかし完成度の点でいまだ課題あり

 今回は序盤を中心にご紹介した。ゲームの売りになっている戦闘システムは最初こそとっつきが悪いが、慣れてくると駆け引きの要素が生まれてきて、新鮮な気持ちで楽しめる。敵から受けるダメージは大きいが、避けることで0にできるというスリリングさが、剣劇ものらしい緊張感を生むことに成功している。

 しかし課題は多い。クエスト報酬でもらえる経験値が少ない、レベル差によって敵の強さが極端に変わる、BGMのバリエーションが少なく、風景も単調なのでどこへいってもあまり代わり映えがしない、フィールドの広さと移動スピードがかみ合っていない、「美玖」が広すぎて延々と走っている時間が長いなど、序盤にストレスがたまりやすい要素が集まっているように思えた。斬新な戦闘システムや武器の持ち換えなどは慣れてくると面白いので、そこまでたどり着けるかが最初の関門になるだろう。コンシューマーゲームを作っているメーカーの作品らしく、操作系はキーボードやマウスよりもむしろコントロールパッドでの操作に適しているような印象を受けた。現在はコントロールパッドに対応していないが、今後考慮して欲しい要素のひとつだ。

 そういった操作系を含めUIが少々見づらいのが気になった。特にクエスト関連で必要になるアイテムや、目的となるNPCの名前、mobの名前などを確認するためにいちいちクエストウインドウをカチカチと操作しなければならないのはストレスになった。また装備品のバリエーションが有料アイテムを含めても少なく、みんな同じ服装をしている部分も気になった。総評としては「良くも悪くもまだ発展途上」というのがプレイしてみての感想だ。しかしチャレンジングな戦闘方法など、独自の方法を追求し、今までにないオンラインゲームを作ろうとしている姿勢は高く評価できる。オンラインゲームという文法になれて、使いこなすことができるようになれば、熟成した環境の中で思う存分回避しながらの熱い戦闘が楽しめる良作に化ける可能性はある。今後の発展に期待したい。

【スクリーンショット】
農家、温泉、籠屋など和を感じさせる世界観が好きなら、1度試してみてはどうだろう

(C)Spike / DWANGO / GAMES ARENA


(2009年 6月 22日)

[Reported by 石井聡 ]