先行レビュー
端々で伝わる“不穏さ”にそそられる。「ほの暮らしの庭」先行体験レポート
「村人を殺していいですか?」「それはダメ!」 趣向を変えた「チーム夜廻」インタビューも
2026年6月15日 18:00
- 【ほの暮しの庭】
- 7月30日 発売予定
- 価格: 通常版 7,920円〜
- 限定版 13,200円〜
- プレミアム限定版 24,750円〜
- ※価格はプラットフォームにより異なる
日本一ソフトウェアは、7月30日発売予定の田舎暮らし生活シミュレーション「ほの暮しの庭」のメディア向け体験会「彼ヶ津村 入村体験」を実施した。開発は同社「夜廻」チームが担当。対応プラットフォームはプレイステーション 5/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC(Windows、Steam)。
「ほの暮しの庭」は、彼ヶ津村で畑を耕して農作物を育てたり、狩りや釣りなどを楽しむ生活シミュレーション。村にいる人たちと交流する楽しみなどもあるが、楽しく生活を続けるには、村の「掟」を絶対に守る必要があるという。
本作は「夜廻」シリーズの開発チームによる新作ということで、「夜廻」シリーズを知る人の中には何か「こわいこと」が起こることを危惧する人も多いようだが、少なくとも「あんしん暮し」モードを選択した場合は、一切「掟」を破れないようになるため、結果として「こわいこと」は何も起こらないとしている。
もちろん通常モードでは村での田舎暮らしを満喫できることに加えて「掟」を破ることが可能だ。そして、「掟」を破らないことには、本作の魅力の1つである、キャラクターたちのストーリーについては満足に楽しめない作りになっている。
本稿では実際に「ほの暮しの庭」の舞台となる「彼ヶ津村」に入村体験(試遊)して楽しんできた様子などについて紹介したい。また、「ほの暮しの庭」開発チームの溝上侑氏と、勝又美桜氏にも、本作の意図や「夜廻」シリーズの今後などについてインタビューする機会を得たので、合わせてお届けする。
おんぼろ家から始まる彼ヶ津村での新生活はちょっとこわい?
主人公の見た目はリボンのような頭頂部の髪型が特徴的なキャラクターで、男だとも女だとも触れられていないが、とりあえず言えることは、かわいい。ゲームをスタートすると、おんぼろの家で寝ていた主人公が「リン」という女の子から起こされるところから物語は始まる。
屋外に出ると土地の対価に「働くこと」を要求される。その後、重要なワードと思われる「大切なもの」が見つかるとリンに言われるが、この時点ではその意味がはっきりとはわからない。そこにサングラスでちょんまげの男「キスケ」が登場し、主人公に仕事の指示や仕方を教えてくれる。
見た目に反して結構いいやつ! いわゆるチュートリアルというやつだ。このキスケの指示通り、土の上の邪魔な木を伐採したり、石を破壊してきれいにして、畑を開墾して、もらいものの「カブの種」をまいて、そこに水をかける。そこまでやったところで、キスケからはもう「自由」だから、あとは村で自由に暮らしを楽しめと言われる。
とはいうものの、ゲーム序盤は明確な目的もなく、特にやることもないので、奥の畑をきれいにする作業を始めることにした。土の上に点在する邪魔な木はオノで切り倒すことができ、邪魔な石ころはツルハシで破壊、種を埋められるように土を耕すにはクワを使用し、水をまくにはじょうろを使うなど、農具の役割は決まっている。
そしてこうした農作業を行なうと腹が減る。具体的には画面左上にあるハートマークの下にゲージがあり、これが0になると、農作業が何も行なえなくなる。疲れた時はあちこちに点在する山菜を取って食べればゲージを回復できる。このように仕事をして、腹が減ったら何かを喰らい、また作業に従事するというのが基本的なルーティンとなるようだ。
そうこうしているうちに1日は終わりを迎え、リンはところどころ文字がかすれて読めない意味深な「契約書」にサインをするように促してくる。ここで村の8つの「掟」が伝えられる。内容としては、「午後11時以降の外出禁止」、「見知らぬ者に近づくな」、「他人の秘密を暴くな」といったもの。特に8つ目の掟「願いには相応の代償が必要」というのはなかなかに意味深なものだが、これらを守ることで、村で平和に暮らせることが示唆される。
ここまでやってみて、ふと思う。「掟」さえ守っていれば、ずっと村で平和に暮らせそうだと。だが、一方で「掟」の一部は割と簡単に無意識のうちに破ってしまうものもありそうだという不安定さにも気が付かされる。この最初のシーンでは、キスケが500円を主人公に渡して「規則を破らないって約束、守れるよな?」と問いかける。するとこちらの回答は「うん」と「わかった」の2択となり、否定できない状態になってしまうのだ。なぜほぼ初対面のキスケの言いなりになってしまうのかとも思ったが、主人公はまだ幼いゆえか。
なお、キスケは「出荷台」を作ってくれる。出荷台に自分で生産したものなどを入れることで、お金に換金できる仕組みになっているのだ。
そして午後11時を過ぎたところで就寝。すると夜中の2時にやたらと厚みのある「ドンドンドン!」というドアのノックの音がして目が覚める。すぐにドアに向かうも既に人の気配は消えている。突然画面が赤くなり、鎖のようなグラフィックも表示されて「掟」が破れないようになっていることがわかる。
そう。通常モードでゲームを開始した場合、最初の大きなイベントをこなすまでが1つの大きな区切りとなっているようで、それまでの間はどんなに「掟」を破りたくても破れないようになっているのだ。
翌日になると、リンが再び訪れ、「作業台」といくつかの「設計図」がもらえた。あとは設計図の材料を集めれば色々な道具がクラフトできるようになるわけだ。また、川で釣りができることも教わったので、さっそく釣りをやってみた。
釣りは糸を垂らしてしばらくすると、何かが引っ掛かる。そこでタイミングよくボタンを押すと、簡素なゲージが表示され、ゲージのライン上に配されたポイントでタイミングよくボタンを押し、成功すると釣果がゲットできるという仕組みだ。
ポイントとしては遅すぎるよりは早めのタイミングでボタンを押すこと、押すべきポイントの数を間違えないことくらいか。釣果はガラクタが引っ掛かる場合もあるし、魚がゲットできる場合もある。魚は食べて空腹を満たすことができるほか、出荷台で換金することも可能だ。
こうして釣りと荒れ地の掃除に明け暮れて2日目も終わった。夜は特に何も起こらなかったが、夜が明けるまでの間に、出荷台の換金の様子や、その日1日の作業に対して、区切りなどで報酬がもらえる場合があるようだ。今回は「野草採りがんばったで賞」というポストとともに、労いの手紙と100円がゲットできた。
翌日は特に何も起こらず、平和な1日を過ごした。ただ、気になるのはほかの村人たちで、声をかけてもまともに話をしてくれないし、飯屋も飯を食わせてくれないのだ。恐らく「掟」の1つ「見知らぬ者に近づくな」を守っているからだろうと思われるが、いつ「見知らぬ者」ではなくなるのかが気になるところ。
そんなことを思いつつ、家の中でベッドの位置を模様替えして就寝。すると再び午前2時に扉を叩く音が……こわいって!
今回は扉の向こうから何者かに声をかけられた。「願いを叶えるには、大切なものを失わなければならない」とのこと。ん?村の掟には「願いには相応の代償が必要」とあったが、若干言い回しが異なっている。
現段階ではこれが何を意味するのかはわからず、なんともモヤモヤした気持ちに。このシーンでは特に行動はできず、そのまま夜が明けた。
その翌日、初日に植えたカブが無事に実になった。するとリンがそれらのカブを持ってこいと連れていかれる。ここでほかの村人が話をしない理由として、「掟」が理由だと告げられる。やはりか。
そして向かった先の村はずれには1つの大きな穴が。リンはこの「穴の底にいらっしゃる神さま」に捧げ物を渡さなければならないという新たな事実を告げる。せっかく育てた野菜を「この祭壇に投げ込みなさい」と命ずるのだ。さらに、入れれば村の一員として認められる、と。
ここでリンは「願いを叶えようとするなら、対価を支払わなければならない」と告げた。昨夜の謎の訪問者によるあの言葉だ。
その後、周囲から村人たちが続々と集まってくる。捧げ物をしたおかげで村の住人に受け入れられたいという願いが叶ったのか、主人公は村の一員になることができたのだった。
以降は村人との会話も楽しめるし、お店で買い物をしたり、食堂でご飯も食べられるようになった。ようやく彼ヶ津村でのスローライフを本格的に楽しめるようになるわけだ。ここまで都合丸3日ほどゲーム内時間を過ごしたが、これでプロローグは終了。ここからいよいよ本編がスタートすることとなる。
丸3日のプロローグを経て動き出す本編
最初の「捧げ物」を終えたあとは、リンとキスケ以外の村人たちも積極的に主人公に声かけをしてくれて、村での農作業にますます身が入るようになる。それはとてもありがたいのだが、一方で夜中の訪問者の謎や「掟」の謎、そして「掟」を破ると何が起こるのかなど、新たな疑問が次々と脳内に浮かび上がる。
そもそも夜中の訪問者は「他人の秘密を暴くな」や「午後11時以降外出禁止」など、数々の掟を破っていると思われるが、なぜそんなことをするのだろうか。そして、これらの疑問を解こうとすると、必然的にこちらも「掟」を破ってしまうことになるのではないか。
この辺りのさじ加減こそが、「ほの暮しの庭」に秘められた「夜廻」を踏襲しているとも言える要素ということなのだろう。そして、本当にこわいのがダメな人は、この一線さえ越えなければ平和な農場ライフが送れるというわけだ。
前述したが、最初から「あんしん暮し」モードを選択すると、夜中の訪問者も訪れなくなるほか、筆者が思わず絶叫した(体験会で他の方も多数いらっしゃったので心の中で)ヤギちゃんのエピソードもさらにこわくないようにぼかして表現されるようになるようだ。何より、「掟」が絶対に破れなくなるため、ストーリーが進まず、農場ライフだけをエンジョイできるようになるとのことだ。
ということで、ここから先のストーリー展開については、実際に自分で「彼ヶ津村」を訪れて、触れてもらうこととして、そのほかの要素についても簡単に紹介していきたい。
まず本作の魅力の1つが、やはりビジュアルだ。まず、登場人物たちがみんなかわいい。メニュー画面からは本作に登場する村人たちの一覧が確認できるのだが、どのキャラクターたちもかわいくて話を聞いてみたくなるし、何か含みがあるならその裏もちょっと見てみたくなる、そんなキャラクターたちがたくさん登場するので、やっぱりストーリーを進めたくなる。
また「彼ヶ津村」の描写についても、どれもかなり描き込まれた凝ったビジュアルとなっている。古びた商店の佇まいや、朽ちかけた建物の様子、きれいな川の雰囲気、山々の表現など「日本の田舎」の再現度がかなり高いので、こわいストーリーを進める前に、まずは村中をあちこち巡り歩きたくなる。
そして、今回プレイした最初の3日間では、ほとんど農場体験ができていないが、村人と話ができるようになると、さらに色々な農作物が育てられるようになるし、家畜を飼ったりといったこともできるようになったり、自分だけの土地を買ってさらに農作業がはかどる展開になりそうだ。
そして、村での生活が進んでいくと、今度は色々な依頼を引き受けるといったお仕事もできるようになったり、野生動物を狩りで捕まえたりと、できることがどんどんと増えてくる。正直、生活シミュレーションの部分だけでも十分に遊べるゲームとして仕上がっているようなので、「こわい」のが苦手な人も、「あんしん暮し」モードで楽しそうな農場ライフをエンジョイしてみてはいかがだろうか?
なお、今回筆者は通常モードでプレイしていたこともあってか、実を言うと、明確な「こわい」演出以外にも、例えば村を歩いているだけで、ちょっとこわい雰囲気の音や声などを聞くことがあった。このあたりも「あんしん暮し」モードなら緩和されるようなので、安心して遊べると思われる。
目指したのは緊張と緩和のサイクル。「不穏さ」へのこだわりと新たなブレーキのバランス
今回「ほの暮しの庭」の入村体験をするのに際して、公式Xなどで情報収集していると、「ほの暮しの庭」のかわいいビジュアルの裏には間違いなく「こわい」がある、といったコメントなどをリプ欄などで多く目にした。なるほど、「夜廻」シリーズファンほど、「夜廻」チーム開発の新作が楽しい生活シミュレーションだという情報を信用していないというわけだ。
ファンたちの察しのよさには感心しつつも、なぜ「夜廻」シリーズなど「こわい」ゲームを世に出してきた開発チームが一転してこの不思議なスローライフな生活シミュレーションを出すことになったのか、筆者も気になっていたところである。
今回、「ほの暮しの庭」の開発チームから、本作の企画・ゲームデザインを担当した溝上侑氏と、本作の開発責任者である勝又美桜氏のお二人に、「ほの暮しの庭」の「真意」や、「夜廻」シリーズについてのエピソードなどについてインタビューする機会を得たので、その様子についてもお届けしたい。
――今回の新作がスローライフな生活シミュレーションになった意図をズバリ教えてください。
溝上氏:プロジェクトの発端は、ずっと『夜廻』を作っていて、そこから発展した何かが作れないかという着想でした。トップビューで見下ろす形式やグラフィックの相性が良いことから、『夜廻』と生活シミュレーションを組み合わせてみようというのが始まりです。
――本作における生活シミュレーションとホラー(夜廻要素)の割合はどれくらいなのでしょうか?
勝又氏:生活シミュレーションとしての生活シミュレーションをベースに、現在の割合は生活シミュレーションが8割、ホラーが2割というプレイ時間になっています。本作における生活シミュレーションとしての要素はかなり強いです。
――8対2という割合にした理由は何ですか?
溝上氏:農場で可愛い動物を育てたりして安心している時に、急に不穏なことが起こるという、「緩和と緊張のサイクル」を目標にしたからです。ここはこだわった部分ですね。安心だよと言っておかないとびっくりしてもらえませんから(笑)。
――今作の「こわさ」は、これまでの『夜廻』シリーズとどう違うのでしょうか?
溝上氏:今作は『夜廻』シリーズと違い、村人がちゃんと喋るシナリオメインの作りです。お化けで脅かすというよりは「不穏」や「怪しい」といった種類のホラーになっています。「なんでそんなものを欲しがっているの?」というような、端々から伝わってくる不穏さが売りですね。
――開発者側の目線で、プレイヤーに特に体験してほしいポイントはどこですか?
溝上氏:ヤギはこのゲームの“象徴”みたいな存在で、そういう村なんだという怖さを表しています。これまでの『夜廻』とも少し違う新しい楽しみ方ができると思います。登場人物が多く、彼らが抱える秘密や隠し事を描いていくシナリオになっています。
――公式が「こわくない」と強調する「あんしん暮し」モードについてですが、こわいストーリーがベースにある中で、このモードではどこまで物語に触れる流れになるのでしょうか?
勝又氏:「あんしん暮し」モードは掟を破らないモードなので、シナリオ的なエンディングはありません。ずっと生活シミュレーションとして遊べるモードです。本作は“掟”がシナリオに深く関わってくるので。生活シミュレーションだけで100時間くらい遊べる内容にしています。
――通常モードの序盤をプレイした際、結構怖い気がしたのですが……「あんしん暮し」モードではそのあたりはどうなっているのでしょうか?
溝上氏:「あんしん暮し」モードでは、序盤の怖い演出も抜かれています。夜中に起こされたり脅かされたりといったことは一切起きず、ヤギなどの怖いビジュアルもソフトになっています。こわいのが苦手な方でも安心して遊べるように、かなり気を使いました。
――「夜廻」開発チームの皆さんは、以前はどのようなものを作っていたのでしょうか?
溝上氏:私が『夜廻』の1作目を作ったのが入社2年目の2015年頃で、それ以降、徐々に仲間を増やして今の「チーム夜廻」ができていきました。
――今回、本作(『ほの暮しの庭』)を作ったという流れを踏まえて、今後の「夜廻」シリーズはどうなるのか教えてください。
溝上氏:『夜廻』シリーズが終わったわけではなく、今回はあくまで、『夜廻』チームが作る別系統の作品という位置づけです。「明るいものを作ってみようぜ」というノリで始めた結果が今作なんです。
――今回は溝上氏と勝又氏の2人が中心となって開発を進められたそうですが、お二人の間での役割分担ややり取りはどのようなものでしたか?
溝上氏:私はずっと暗いゲームばかり作っていたので、生み出すものが全部『夜廻』っぽくなってしまうんです。人にいたずらしたり、プレイヤーの感情を動かしたいという欲求があって(笑)。
勝又氏:私は逆にホラーが嫌いで、生活シミュレーションが大好きなんです。だから、溝上からの「村人を殺していいですか?」という提案に、「それはダメ!」とブレーキをかける役割をしていました。農場担当としての線引きをしていましたね。
――最後に、本作を楽しみにしているプレイヤーへメッセージをお願いします。
溝上氏:社内テストでもシナリオの評判が良く、続きが気になるという声が多いです。一般的な生活シミュレーションは、いわゆる作業ゲーになりがちですが、今作は不意に浴びせられるシナリオを追いかけたくなるゲームになっています。謎の音や住人の隠し事など、想像して楽しんでください。1周終わった後、2周目で意味を確かめるような遊び方もできると思います。
――ありがとうございました。
ホラーとスローライフが高次元で融合、時間を溶かす覚悟で挑みたい一作
以上、「ほの暮しの庭」の「彼ヶ津村 入村体験」(メディア向け体験会)の様子と、開発者インタビューをお送りした。体験会でのプレイは1時間ちょっとだったが、目の前の農作業と釣りであっという間に時間が過ぎ去ってしまった。
筆者は現在、非常に迷っている。生活シミュレーションがベースで深みのあるストーリーが付いてくるなんて、本作は間違いなく、筆者にとっての「ツボ」な作品なのだ。しかし、過去にこの手の農場ゲームで時間を溶かしまくり、仕事に支障が出まくった経緯もあるので、うかつに手が出せないのだ。どうしたものか……。
「ほの暮しの庭」はホラー要素が苦手な人でも「あんしん暮し」モードなら、日本の田舎でのスローライフが楽しめる生活シミュレーションとしてかなり完成度が高い1本だ。もちろん従来の「夜廻」シリーズファンたちは、ぜひ「掟」を破りまくって、本作のこれまでと異なる「不穏な」こわさの正体を確認してみてほしい。
(C)2026 Nippon Ichi Software, Inc.































































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