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ライフシムの側面は意外と控えめ!? 「プチプラネット」βテストプレイレポート

伸び代も可能性も見えてきたHoYoverseの最新作!

【「プチプラネット」βテスト「居心地テスト」】
11月7日~ 開催中

 HoYoverseは、スマートフォン/PC向けに配信を予定しているマルチプラットフォーム対応のスローライフゲーム「プチプラネット」において、初回となるβテスト「居心地テスト」を11月7日から実施している。HoYoverseと言えば「原神」、「崩壊:スターレイル」、「ゼンレスゾーンゼロ」などのヒットタイトルを手掛けるブランドだ。

 そんな同社が今年8月28日に発表した「崩壊」シリーズの最新作「崩壊:ネクサスアニマ」は、SNSを中心に話題となったが、その翌月の9月23日に突如として発表されたのが「プチプラネット」となっている。本作はHoYoverse初となるスローライフゲームとされており、前述したいずれのタイトルとも毛色の異なる完全新作。今回は11月7日から実施された、βテストを早速プレイしてみたのでその所感についてお届けしていく。

 なお、製品版はスマートフォンおよびPCでの配信が決定しており、この他のプラットフォーム展開も検討中。一方で今回の「居心地テスト」についてはiOSおよびPC向けの実施となる。記事にて紹介する内容はβテスト版に基づいており、最終リリース版と異なる場合がある。

【『プチプラネット』居心地PV|ここは、「夢」が見える星!】
【『プチプラネット』星づくり・クラフトプレビュー映像】

「星」を自分色に染め上げる自由度に可能性! 探索×生活が絡み合うスローライフゲーム

 精霊の導きによって「ルミーコーポレーション」のメンバーたちと邂逅を果たしたプレーヤーは、無人の星を開拓し、そこでの日常を謳歌しながら“自分だけの星”を育てていくことになる。本作は建物の建設や作物の収穫、さらにはキャラクターとの交流など様々な要素を取り入れた「スローライフゲーム」と謳ってこそいるが、単に自分たちの居住空間を拡充していくだけのゲームではない。“星々を巡る”ことによって、結果的にプレーヤーの個性が星に反映されていく、創造性の溢れるゲームでもある。

 本作では、自宅の内装や設置家具へのこだわり、アバターのファッションコーデを楽しむことはもちろん、自分が住まう星の景観すらもカスタマイズすることができる。収集・収穫・クラフト・交流など、従来型スローライフゲームに備わる主要素の並びから1つレイヤーが上がり、探索を絡めた広域なDIYが楽しめるようなタイトルと言えるだろう。

プレーヤーをゲームの世界に呼び込んだ精霊「オウムアムア」
星の海へと連れ出してくれる「エササーニ」
星の育成を総合的に取りまとめる「モーバ」
お店の経営で生活をサポートする「グレン」
キャラクタークリエイト
探索要素

 しかしながら「星の景観」と言われてもイマイチピンと来ない人も多いはず。ゲーム性から連想して、もっともイメージに近いのは「町づくり」だろうか。たとえば、NPCが経営するお店の場所や、住人の家の位置や向き、公共物の設置ができる。加えて、星に自生する草地の模様デザイン、星空に浮かぶ星座の形とったものまで、景観に対しプレーヤーの“好き”を存分に詰め込んで反映させられる。

 つまり、ある程度成形された村や町を増改築するのではなく、未開拓で精々木々花々が生えている何もない星を、自分色に染め上げていく過程こそ「プチプラネット」の本質的な楽しみ方というわけだ。言うまでもないが、登場キャラクターたちが“皆モフモフ”としたアニマルなキャラクターたちであることも一部のプレーヤーの楽しみとして数えて良いだろう。カワイイは正義、だ。

かわいい

 さて、こうした前提をお伝えした上で、βテストの所感を申し上げると、現実世界における生活を簡略化した、いわゆる「生活系シミュレーター(ライフシミュレーション)」としての手応えは思っていたより「控え目」だ。ゲーム性はロールプレイング的で、住人との関わり方も“私生活の友人関係”ではなく“目的のため協力し合う仲間”といった方が近い気がする。無論、ゲームの中で交流を重ねて、親密な交友関係に発展させることはできるし、そこから芽生える友情観のようなものも感じられるだろうとは思う。

 しかしながら、自由気ままな「スローライフ」を堪能するためにも、ゲーム序盤からプレーヤーに課せられるタスクは多岐に渡る。NPC側から誘発する受動的なイベントもあまり見られず、住人たちとガチ交流したければプレーヤーが能動的に機会を作り出すしかない。

 そんな住人たちも話しかければさまざまな依頼(家具・料理の製作、特定アイテムの要求)をプレーヤーに持ち掛けてくる。話をホイホイ請け負うと、気が付けばタスクは山積み状態である。プレーヤー心理としては報酬が魅力ならば、こうした依頼はキチンとこなしておきたいもの。依頼の報酬はファッションアイテムだったり、家具を製作するための「クリエイトカード」(設計図のようなもの)などさまざまだ。そのため、とにかく依頼達成に必要な素材収集へと出かけていくのだが、1日の中で収集できる素材の総量にも限りがある。

 やがて自分の星だけでは賄えない素材を集めるために、今度は探索エリアのハブとなる「星の海」まで車を走らせ、素材が眠る星々を隅々まで探索することになる。察しの通り、ゲームを始めたばかりの星には拠点と自宅くらいしかなく、何をするにもまずは素材集めが必要不可欠である。住人が増え始めたとしても、そもそも生活を満喫するような場所がないのだ。ほぼ野営地である。

 また、前述の探索では住人をパーティメンバーに編成し、NPCと協力しながら素材集めが行なえる。ゲームでは星を発展させるための過程で、住人たちとこうした探索を繰り返す流れが特徴的だ。それゆえにスローライフな生活だけが、本作のゲーム体験を占めている訳ではない。こうしたやるべきことの数々を考えると、少なくともプレーヤーの自由度が最大化するまで遊び込まなければ、星の住人に対する友人意識は芽生えづらい、というのが正直な感想である。

「星の海」
訪れた星で採取を重ねる
探索前の編成画面

 先に紹介したように、ゲーム序盤では星を彩るための土台づくりとして、NPCのモーバから主要なタスクを次々に依頼される。それらを達成すると、星を育む「ルカの樹」の成長アイテムが貰えるので、これを利用して星を育成していく。ルカの樹が成長するほど星をカスタマイズする自由度も徐々に増えるアンロック型のゲーム構造となっている。

 依頼達成の積み重ねが少しずつ星の成長に結実していく体験は、町のインフラ整備・拡充にも等しい。作中に登場する星の実サイズは小さくとも、自分の星が着実に発展し、開拓されていくファンタジックなスケール感に、どことなくHoYoverseのゲームらしさを感じる。

 星の成長に関連するタスクはモーバから引き受けるものに限らないのだが、そのほとんどがチュートリアルの側面を併せ持っているから。一通りのチュートリアルが完了するまでに多少なりとも時間を要するが、ゲームシステムの習熟と星の育成を重ねたことは、全プレーヤーが等しくゲームの仕組みと醍醐味を理解できる、ハイブリッドな導線と言える。これならゲームをあまり嗜まないカジュアルプレーヤーでも、「プチプラネット」のシステムと魅力を自然かつ並行的に理解していけるのではないだろうかと思う。

 ただ、本作は現実世界の時間とゲーム内の時間が同期している。引き受けた依頼内容によっては、現実世界でも翌日まで待たなくてはならない場面が出てくる。これに付随して、とりわけ気になる点を1つ挙げておきたい。現状では時間軸がゲームの世界と同期していることにより、朝から昼間の時間帯にゲームに触れられないユーザーが、“自分の星で青空”を見ることが中々叶わないのだ……。ここに関してはいち社会人プレーヤーからすると現状の状態では不満に感じる部分であった。初回βテストという事情を考慮しても、今後何らかの調整が入ることに期待したいところである。

夜空はとてもキレイ。でもたまには青空が見たい

まだ見ぬ「星」を探して! 宇宙(そら)を車で巡る行く探索の醍醐味

 前項で触れた“探索要素”について、もう少しだけ詳しく紹介していきたい。ゲーム中はルカの樹を成長させていくと、車に乗車して星の海を探索できる要素が解放される。ただし、車を動かすためには消耗アイテムの「ルミアバッテリー」が必要となる。ルミアバッテリーの入手方法はゲーム内のショッピングモールで購入するのが基本だが、1日の購入上限数が決まっている上に、デイリーミッションの消化やクエスト(実績要素)達成で得られる希少な通貨「ルミー」を消費する。

 ルミーは、家具&ファッションアイテムの購入用途としても利用価値があるため、これを消費するのは正直に言って迷う。ルミアバッテリーは、言うなれば運営型タイトルの多くで見られる“スタミナ”のようなものだろう。ただ、スタミナ的な概念の割には、筆者のプレイ範囲内でバッテリーが自然回復する要素は確認できていない。結局のところルミーを消費する必要があるのかもしれない。

 改めて触れ直すが、プレーヤーが探索する星々「スターランド」には、自分の星に住まわせた住人を最大2人まで同行させられる。スターランドごとに地形は異なり、採取できる物も異なる。プレーヤーは車のバッテリーが続く限りさまざまなスターランドを探索し、素材を集めていくわけだ。依頼に必要な素材が全く手に入らないこともしばしばあるが、スターランドごとに車の強化に必要なアイテムを入手できるから、探索そのものが無駄になることはあまりない。

 車を強化すると段階的にバッテリーの最大容量が増えるほか、より深くまで星の海を探索できるようになる。未開のスターランドでは、より珍しい素材や新たなキャラクターたちとの出会いが待っているはず。気がつけば自分の冒険心までもくすぐられているのが、本作の探索要素なのだ。

車は外見のスキンも変更できる
自分の星に生息していない生き物を探して収集するのも楽しい
新たなモフモフとの出会いも……

 スターランドはプレーヤーの所有する星と比べると、非常にコンパクトなエリアの規模感である。プレーヤー1人でも十分探索を終えられる面積で構成されているのがポイントだ。高低差に富む地形から魚を釣れる池が多めな地形、あるいは鉱石の採掘スポットが多数見られる地形だったりと、ロケーションは実に多種多様。中でもNPCが住み着いているスターランドは、他のエリアよりも面積が広めであり、生活感を感じさせる家具やオブジェクトが配置されていたりする。「なるほど、チェアに腰をかけながら畑を見守っていたのかな」といったように、その星にいるキャラクターの日常が容易に想像できる。

 スターランドのキャラクターと親交を深めていけば、彼らを自分の星の住人にすることだって可能だ。「プチプラネット」の住人たちは、皆親しみを持てる可愛らしいキャラクターばかり。積極的に交流を図りたくなる不思議な魔力を持っている。彼らの存在感が、交流のモチベーションを促進してくれているかのような感覚を覚えたほどだ。これまでのタイトルでもキャッチーなキャラクターを次々と生み出してきたHoYoverseの技巧が、こうしたところで活きている気がしてならない反面、筆者に“その趣向”の素質がある気もしている。

仲間とあちこちの「スターランド」を物色
生体調査を行う「モルス」。モチーフの生き物が知りたい

見知らぬ誰かとフィーリングで通じ合えるかも。いろんな形の交流が楽しめる「スターマーケット」

 ゲームを進めて解放される「スターマーケット」は、不特定多数のプレーヤーたちと交流できるオンラインエリアとなっている。スターマーケットをゲーマー向けに分かりやすく置き換えるならば、オンラインゲームでのロビーのような存在に近しい。いろんな人と出会える触れ合いの場としての役割を持っており、このエリアでは、プレーヤー同士の交流を「遊び」に変換する、さまざまなスペースが各所に設けられていた。

 まず、広場にはリズム感と記憶力を試すスコア制のミニゲーム「リズムチャレンジ」を誰かと遊べる。舞台中央のキャラクターの動き、そしてリズムを覚えて、「A(左)」「W(上)」「D(右)」と、3つのキーを正しく、かつテンポ良く押し分けていくのだ。たとえば、キャラクターがリズムに合わせて上・上・左の動きを繰り出したのなら、プレーヤーターンでも同じリズム感で上・上・左の動きになるようキー操作を行なう具合。やっていることは単純明快だが、リズム感と記憶力が同時に試されるので、難易度「普通」でも失敗する人が続出するほどには競技性がある。

 しかも、プレイ中の様子は広場の中でリアルタイムな見せ物となっている。扇状に大量のチェアまで設置され、ゲーム内で大会でも開かれたら盛り上がりそうな雰囲気だ。プレーヤー同士の対戦を、そんな観客席からただ眺めているだけでも、それなりに楽しめるだろう。ミニゲームは最大4人プレイに対応しているが、人が集まらなければプレーヤー数が欠けてても遊べる。対戦後に誰かからリアクションを貰えると嬉しいし、それがフレンドのきっかけになるやもしれない。

スターマーケットの広場
「リズムチャレンジ」

 また、この広場には抽選券でラッキーナンバーを当てて景品を狙う「マジカルハット・ルーレット」、誰とでも自由に会話を楽しめるフリーチャットな焚き火エリア、さらにプレーヤーたちが集まって、自由に音楽を演奏できる楽器まで置かれていた。マジカルハット・ルーレットの運試しは、リズムチャレンジと同様にその場で公開される。誰かの運試しに相乗りする遊びもOK。1回のルーレットで誰か1人でも金賞が当たると、抽選券が山分けされるメリットがある。

 試みとしてユニークなのが、スターマーケット内の「ワイルドコーヒー」だ。ここは少人数のプレーヤーがプライベートな空間で会話を楽しめる“喫茶店”である。面白いのはバリスタのキャラクター・ナロにチャットAIが搭載されている点。ナロがフレンド同士の会話に反応し、聞き手としてリアクションをしてくれるのだろうと思う。

 残念ながら今回のβテストでは日本語の会話に対応しておらず、英語が全く分からない筆者にとって、ナロが一体どんな反応を見せてくれたのかがイマイチ伝わってこなかった……。新鮮な試みを純度高く体験できなかった点は悔やまれる。このように、スターマーケットはまだまだ実験的な特色が随所で見られるものの、今後本作のソーシャル要素としてどのように拡張されていくのかが今から楽しみで仕方ない

「マジカルハット・ルーレット」。ルーレットの前でひざまづいて祈る人も
「ワイルドコーヒー」のバリスタ「ナロ」

 「プチプラネット」はまだまだ初回βテストというフェーズではあるが、ゲームとしての骨格は現時点でも良くできていると思える。HoYoverseの強みと言うべきカートゥーンなタッチ、またはアニメ調表現が「デフォルメデザイン」に落とし込まれ、幅広い世代にウケそうなポテンシャルをひしひしと感じられた。

 また、ソーシャル要素は基本的に言語を使った交流の強制力が少ないという印象を受ける。これまた筆者の主観で申し訳ないが、ゲーム内チャットで会話することが苦手なので、本作のようにゆるく交流できたり、エモートアクションだけで意思表示できたりする気軽さは本当に助かる。正式な配信時期は未定で鋭意開発中の本作。アクションRPGを作り続けてきたHoYoverseにとって、本作がどのような思想をはらんだタイトルとなるのか、今後の展望に引き続き注目していきたい。

多額のローンを組まされることはないようだ