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「デジモンストーリー タイムストレンジャー」試遊レポート&プロデューサーインタビュー
約10年ぶりのシリーズ最新作は開発の“狂気的”な熱量で生まれた
2025年6月19日 21:00
- 【デジモン タイムストレンジャー】
- 10月2日 発売予定(Steam版は10月3日発売予定)
- 価格: 通常版 8,910円
- 限定版 16,280円
- フィギュア付き限定版 28,380円
- 超特装版 45,650円
バンダイナムコエンターテインメントは、PS5/Xbox Series X|S/Steam用RPG「デジモンストーリー タイムストレンジャー」を10月2日に発売する(※Steam版は10月3日発売予定)。
本作は、「デジタルモンスター(デジモン)」を原作とする育成RPGシリーズ「デジモンストーリー」の最新作であり、前作「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の発売からおよそ8年ぶり、純粋なシリーズ最新作としては約10年ぶりのタイトルとなっている。
今回は、開発中の実機を一足先に体験できるメディア向けの試遊会が行なわれたので、そこで得られた所感について簡単にお届けしていきたい。また、本作「デジモン タイムストレンジャー」のプロデューサー・原 良輔氏へのインタビューも実施しているので、そちらも合わせてチェックしていただきたい。
懐かしいデジモンたちが雑踏に集う! アナログ感あふれる「セントラルタウン」を体験
「デジタルモンスター」は、1997年にモンスターを育てる携帯ゲーム機として誕生。その後は後続シリーズが続々と登場し、アニメやゲームシリーズなど様々な派生作品が展開され、作品やキャラクターを総称して「デジモン」と呼ばれている。本作「デジモンストーリー タイムストレンジャー」は、「デジモンストーリーシリーズ」のゲーム作品としては前作「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」から約8年ぶりの新作タイトルとなる。
今作の舞台は日本・東京。新宿・秋葉原といった現実を再現した「人間世界」と「デジタルワールド」を股にかけた物語を楽しめるのだが、今回の試遊ではデジタルワールド・イリアスの中央都市である「セントラルタウン」を探索することができた。この街は「メルクリモン」をリーダーに据え、多様なデジモンたちが集まって共同生活を送る町となっている。早速、周りを歩いてみると、ガブモンやアグモンたちをはじめとする、TVアニメシリーズでもお馴染みの懐かしさいっぱいのデジモンたちがのびのびと過ごしていた。
セントラルタウンの町並みはデジタルワールドという言葉からはほど遠い、“アナログなオブジェクト”が溢れる空間だ。上下左右で複雑に拡張された建築、雨どいや室外機といった生活インフラ設備の後付け感、手作り感のある簡易的なバルコニーと補強されている鉄骨、さらには粗大ゴミのように積まれたブラウン管テレビまで見られる。インフォーマルな住居群が印象的だ。
そんな町中で何か雑談を楽しんでいるデジモンたちが居れば、のんびりと日向ぼっこをしているデジモンや、真面目に労働中のデジモンの姿も確認できる。見渡す限りの多種多様なデジモンたちが、それぞれ自分の生活を送っているのだ。
セントラルタウンには治安の程度もあるようで、下層部の日照りが遮られやすいダウンタウンエリアでは、ちょっぴりコワモテ系なデジモンたちが比較的多め。デジモンたちはいずれもなにか物語性を感じさせる配置で、中にはアニメシリーズファンがニヤリとできるデジモン同士の組み合わせも。時間が限られていたため、実機全ての範囲を見ることはできなかったが、町中を歩いて回るだけでも、豊富に散りばめられた小ネタ探しが楽しい。
町のダウンタウンエリアをさらに奥へと進み、電波塔へ続く区画に向かうと、そこからは敵対関係のデジモンたちがフィールドに出現。本作ではシンボルエンカウントを採用しており、フィールド内でバトルを行なうかどうかは、基本的にプレイヤーの判断に委ねられる。バトルでは、敵シンボルへの「デジアタック」を行なってから戦闘に突入すると先手を獲得できる仕組みだ。
このデジアタックは、敵デジモンとプレイヤーのデジモンの間に、一定以上の能力差があればバトルに突入することなくフィールド上で敵デジモンを倒せてしまうのがポイント。もちろん、経験値や報酬なんかもちゃんと手に入る。フィールドに戻ってもストレスフリーで、素材集めに集中できるだろう。
バトルシステムは前作に続いてターン制のコマンド選択バトルを採用。大きな進化と言えば、本作からはデジモン固有のスキルに加えて、プレイヤー側でデジモンに任意のスキルを付け替え可能な「アタッチメントスキル」が登場した。アタッチメントスキルは装備アイテムのようなもので、デジモン1体につき複数個装着できるスキルだ。このシステムによって、プレイヤーは自分の好きなデジモンで戦いやすくなった。
バトルはデジモンたちの種族相性による3すくみに加え、属性相性が要となる。アタッチメントスキルのおかげで敵との相性が不利なデジモンであっても何らかの選択肢が残りやすく、バトル中は多彩なアプローチが行なえる。
試遊会ではボスバトルも体験することができた。セントラルタウンの電波塔で通信を妨害している、巨鳥型のデジモンであるパロットモンと戦いを繰り広げていくことになる。このバトルでは、戦闘中に「落雷」が発生し、その雷を吸収して回復するパロットモンを如何に効率良く削っていくかがカギとなっていた。弱点属性は当然マスクされているので、手持ちのデジモンでさまざまな攻撃を当て、パロットモンに対し有効なスキルを探していく。
ボスバトルは強力な攻撃スキルを阻止するギミック要素のほかに、「CP(クリティカルポイント)」と呼ばれる概念が存在していた。ボスはCP上昇に伴って、行動回数が増えたりステータスが強化されたりしてしまう。ボスのCPを減らすには、逆に自パーティのデジモンたちのCPが増える行動を選択する必要があるようで、ここが一種の駆け引き要素となっている。どのような行動選択がボスのCPを下げられるかも重要な攻略要素と言えるわけだ。いずれにせよ、ボス戦に相応しい歯応えある戦闘が楽しめたので、そのほかのボスバトルにも期待が持てそうな所感であった。
プロデューサーインタビュー。オリンポス十二神を軸に描く新たな神話――世界観構築に費やした8年
――今作は久しぶりとなる「デジモンストーリー」シリーズの最新作ですが、このタイミングで今作を出そうと思った理由やきっかけはありますか?
原 氏:8年前の「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」は、その2年前に発売された「デジモンストーリー サイバースルゥース」に追加コンテンツを実装したもので 、純粋な最新作としては“10年ぶり”となります。「タイムストレンジャー」の構想自体は、2017年の「ハッカーズメモリー」発売ごろからありましたが、構想期間を含めると結果的に7、8年かかりました。
本当はもっと早く出したかったのですが、お待たせしてしまった最大の理由は本作で描くメインテーマ「デジモンと人の絆」をより際立たせる設定の深掘りと、「オリンポス十二神」を中心とした物語や世界観構築に時間が掛かってしまったためです。その分、皆さんには期待していただきたい部分でもあります。
――シリーズ初心者や久しぶりに「デジモン」に触れるファンに向けて意識しているポイントなどはありますか?
原 氏:本作は従来の「デジモン」ファンはもちろん、初めて「デジモン」に触れる方にも楽しんでいただきたい作品となっています。デジモンと人の絆を一番のメインテーマに掲げていますが、これは“「デジモン」でしか描けない物語”だと思っています。この物語を完結させた後に、「デジモン」ならではの魅力に気づいていただけるんじゃないかと考えています。
また、主人公は秘密組織「ADAMAS」のエージェントという設定ですが、物語冒頭ではデジモンの存在を認知していません。ADAMASは組織としてデジモンの存在を認知しているのですが、その一員である主人公は知らないというところから物語が始まります。「デジモンとは何か?」「この世界でどう扱われているのか?」といったことを、プレイヤーと一緒に知っていく流れなので、「デジモン」初心者でも大丈夫です。
――本作は海外の「デジモン」ファンからも注目されていますが、開発者として海外市場を意識したポイントや、地域によるファン層の違いを感じている部分はありますか?
原 氏:特定の国や地域というよりは、日本と海外でその違いを感じています。日本では「オメガモン」が非常に高い人気を持つ一方、一昨年「DIGIMON CON2023」で取ったアンケートでは、「マグナモン」が海外でめちゃめちゃ人気だったんです。日本・海外共通で高い順位にいたのは「ベルゼブモン」で、共通言語として親しまれている印象を受けました。
本作では、出来るだけ多くの世界中のファンの方々になるべく楽しんでいただけるよう、「デジモンストーリー」初となる英語ボイスを追加しています。また、対応言語のテキストに関してもシリーズ過去最多の11言語で対応しています。
――450体以上とシリーズ最大数のデジモンが登場するとのことですが制作時の苦労についてお聞かせください。
原 氏:「デジモン」の家庭用ゲームというところでは最多の数となります。「サイバースルゥース」から一部モーションの流用こそあれど、3Dモデルはほとんど確実に作り直しました。というのも、前作はPS Vitaを基準に制作していたので、現行ハードでそのまま使うのはかなり無理がありました。ですので450体以上をほぼ作り直しています。
バトル演出はもちろん、町にいるNPCデジモンそれぞれに固有モーションを作っていますし、仲間として連れて歩くためのモーション作成も必要です。ライドで乗れるデジモンたちに対しても、それぞれに乗り方を用意しているんです。本当に“狂気”を感じる開発陣の熱量によって作り上げられています。
――本作では“時間”が重要なテーマになっているようですが、それを選んだ狙いや背景を教えてください。
原 氏:先ほどからも申し上げているように、“人とデジモンの絆”を最も感じていただきたいという思いが一番上にあって、それを際立たせる手法の一つとして「時間」という要素をピックアップしました。企画初期から「オリンポス十二神」と合わせて決まっていて、これをベースに構築していくことになりました。
――「オリンポス十二神」にスポットが当たった理由は何でしょうか?
原 氏:「サイバースルゥース」では「ロイヤルナイツ」と呼ばれる、デジタルワールドを守護する13体のデジモンたちが登場していました。その強さに匹敵するのが今回登場する「オリンポス十二神」です。過去にスマホアプリで少しだけ描かれたことがありましたが、深くは語られていないので、今回はしっかり深掘りしてあげたいと思いました。
「デジモン」には他にも深掘りされていない設定がたくさんあるのですが、その中でもオリンポス十二神は存在感が強かったので、今回の題材に上げさせていただくことになりました。「デジタルワールド・イリアス」の設定も含め、今作を機にデジモンの世界観が一つ広がったのではと感じています。
――バトルバランスについて、今作で戦闘システムを過去作から意図的に変えた部分があれば教えてください。
原 氏:前作では特にバトルバランスに関するご指摘をユーザーさんからいただいていました。「特定のデジモンの特定の技が強すぎる」というのがあり、結果的にその技を使っていれば勝ててしまっていました。ですので、今作ではそこをしっかり改善するために、「アタッチメントスキル」という自由に付け外しが可能な技の枠を各デジモンに設けています。
これによって自分の好きなデジモンで好きな戦略を組めるようになっています。好きなデジモンが居ても、実力面から編成し辛かった課題は解決できたんじゃないかと思います。現代的な「育成RPG」に寄ったバトルバランスにに調整出来たのではと考えています。
――今作を機に「デジモンストーリー」シリーズをどのような方向性で展開していく予定ですか?
原 氏:「デジモンストーリー」シリーズが、数ある「デジモン」のゲームの中で、もっともーソドックスな育成RPGとして開発を行なっているため、基本的にはその方向性を変えることなく、同時に“新たなチャレンジ”も取り入れていきたいと思っています。今回も相当な挑戦をしていますので、ご期待いただければと思います。
――最後にゲームを楽しみにしているファンの方々に向けてメッセージをお願いします。
原 氏:今作は約10年ぶりとなる「デジモンストーリー」シリーズの最新作です。「デジモン」ファンの方も、かつて「デジモン」が好きだったけど離れてしまった方、初めて「デジモン」に触れる方にとっても楽しめる作品になっていると思いますので、ぜひご期待ください!
――ありがとうございました!
(C)本郷あきよし・東映アニメーション
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