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【特別企画】PS4 1TB HDDを1TB SSHDに換装したらどうなる?

新旧2モデルのSSHDを使い、「Fallout 4」など5タイトルで読み込み速度を比較

 プレイステーション 4でヘビーに遊ぶゲーマーにとって、内蔵HDDのスピードは常に気になる要素だ。オンラインゲームは1タイトルで数十GBの容量を持っていくし、1人プレイ用のゲームでも、今はアップデートでHDDの容量がどんどん削られていく時代だ。

 PS4ではユーザーが自らHDDを換装できる。一昔前なら、「ゲーム機の内部をいじったら保証がなくなります」となったものだが、PS4ではHDDを換装しても保証が切れないだけでなく、HDDの換装方法が書かれたリーフレットが本体に同梱されている。換装したHDDが正しく動作するかは自己責任とはいえ、公式に認められたアップグレード方法である。

 HDDの容量だけで言えば、現在は1TBの大容量HDDを搭載したモデル(CUH-1200BB01)も用意されている。しかしHDDでは容量のほかにもう1つ気になる部分がある。データ読み書きの速度だ。ゲームによっては起動時やシーンの切り替わりなどで、データの読み込みに数十秒もかかるものもある。HDDの読み込み速度がもっと早ければ、ロード時間が短縮され、快適なゲームプレイが可能になるはずなのに……。

 そこで今回は、HDDメーカーであるSeagateの協力を得て、HDDを同社製のSSHD(ソリッド・ステート・ハイブリッド・ドライブ)に換装してみることにした。SSHDは、フラッシュメモリを使ったSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)とHDDを組み合わせた製品で、読み書きが高速だが高価なSSDと、安価で大容量だが読み書きの速度で劣るHDDの利点を併せ持つ製品となっている。

 換装のベースとなるPS4本体は、先述の1TBモデル。試用するSSHDも、同じ容量となる1TBの2製品を使用する。1つは8GBのフラッシュメモリを搭載した「ST1000LM014」、もう1つは32GBのフラッシュメモリを搭載した「ST1000LX001」だ。ちなみにPS4に搭載されていたのは、Seagate製HDD「ST1000LM024」。換装しても容量は変わらないが、SSHDに換装して使用感に違いが出るのかどうかを検証するのが今回の目的だ。

まずはHDDをSSHDに換装する

PS4の1TBモデル。このHDDを同容量のSSHDに換装する

 まず最初に、PS4でのHDD換装手順をご紹介する。PS4の公式サイトに正しい作業手順が書かれたページがあるので、本稿はあくまで参考としてご覧いただきたい。

 換装に使えるHDD(今回はSSHD)は、2.5インチサイズもので、厚さ9.5mm以下、容量160GB以上となっている。大容量のHDDの中には厚さが15mmなど厚いものもあるので、購入の際には念のため注意が必要だ。今回使用するSSHDはどちらも厚さ9.5mmで、問題なく換装できる。

 換装作業に必要なものは、小さめのプラスドライバー(精密ドライバーほど小さくなくていい)と、USBメモリなどのUSB接続できる外部ストレージ。後述するシステムソフトウェアのインストールに使用するもので、900MB以上の空き容量が必要になる。またセーブデータの移行にも使用できるので、余裕を持って2GB以上あると安心だ。

 実際の作業では、まずはPCでの作業が必要になる。PS4の公式サイトから「アップデートファイル(再インストール用)」をダウンロードし、用意したUSBストレージ内に「PS4」フォルダを作成、さらにその中に「UPDATE」フォルダを作成し、そこにダウンロードした「アップデートファイル(再インストール用)」をコピーする。

 続いてUSBストレージをPS4に接続する。USBストレージは前面にある2つのUSB端子のいずれかに挿せばいい。セーブデータのバックアップ方法は、PS4のメニューの「設定」から、「アプリケーションセーブデータ管理」、「本体ストレージのセーブデータ」、「USBストレージ機器にコピーする」と選んでいく。PlayStation Plusに加入していれば、オンラインストレージへのバックアップも可能だ。

 セーブデータのバックアップが済んだら、メニュー画面の「電源」から、「電源オプション」、「PS4の電源を切る」を選び、PS4の電源を落とす。電源の上にある長いランプがオレンジ色に光っている時はスタンバイ状態で、電源が切れていない。ランプが完全に消灯して電源が落ちたのを確認したら、USBストレージや各種ケーブルをPS4から取り外す。

 次はついにHDDの換装作業に入る。まずは電源ボタンの左側にあるHDDベイのカバーをスライドさせて取り外す。1cmほどスライドさせられたら、カバーを手前から上に持ち上げるようにすると外れる。カバーはスライドさせるまでが非常に固いが、最後まで同じ方向にスライドして外れるわけではなく、少し動いたらいいということは覚えておくといい。

 カバーが外れると、手前側に○×△□が書かれたプラスのネジが1つ見えるので、これをドライバーで外す。続いて、ネジ止めしてあった場所を引っ張ると、HDDが載せられたトレイを取り外せる。トレイの側面に4本のプラスネジがあるので、これも外す。ネジの根元にはゴムの部品があるが、これは取り外す必要はない。ネジを4本外しさえすれば、トレイからHDDを取り外せる。

 あとは取り外しの逆の流れでSSHDを取り付ける。この時、取り付け方向を間違えないように注意。今回のSSHDだと、トレイに取り付けた際に基盤や端子部が見え、端子部が最初に外したネジと反対方向にあるよう取り付ければいい。これを間違えると当然ながらPS4には取り付けができず、力任せにやればPS4の端子部が破損する可能性もある。正しく取り付けができていれば、さほど力を入れなくても元通りにネジ止めできるところまで挿せる。

 取り付けが終わってHDDベイのカバーも戻したら、USBストレージや各種ケーブル類を再度接続する。そして電源を入れるのだが、その際に電源ボタンを7秒以上押し続け、2度目の「ピッ」という音がしたら離す。こうするとPS4がセーフモードで起動するので、メニューから「PS4を初期化する(システムソフトウェアを再インストールする)」を選ぶ。あとはしばらく待てばシステムソフトウェアのインストールが完了し、PS4が起動する。

 これで換装は終了だ。とはいえこの状態のPS4は新品同様で、何のゲームデータも入っていないので、ディスクを入れたりダウンロードしたりしてゲームをインストールし直す必要がある。また最初にバックアップしたセーブデータを戻すのもお忘れなく。「設定」から、「アプリケーションセーブデータ管理」、「USBストレージ機器のセーブデータ」、「本体ストレージにコピーする」でHDDにセーブデータを戻せる。

USBメモリはPCで使うものと同じでいい。前面にあるUSB端子に挿して使う
HDDベイのカバーをスライドさせて開ける。このくらい開けば十分だ
手前側を引き上げるとカバーが外れる
カバーを外すとHDDベイが見える
プラスネジを1つ外して、HDDを引き出す
取り外したHDD。左右にあるプラスネジを外す
4本のプラスネジを外せばHDDを取り外せる
今度は逆の手順で、換装するSSHD(写真左)をネジ止め
PS4本体にSSHDを挿し、ネジ止めすれば取り付け完了
セーフモードで起動し、システムソフトウェアをインストールする

長い待ち時間の解消にSSHDが確かに効く!

長い待ち時間をSSHDでどこまで減らせるか(画像は「Fallout 4」)

 続いてSSHDへの換装による読み込み速度の変化を検証する。測定には、「Fallout 4」、「Bloodborne The Old Hunters Edition」、「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」、「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」、「World of Tanks」の5タイトルを使い、ゲームの起動時間やプレイ中のシーン読み込みなどにかかる時間を測定した。

 測定においては、2つのSSHDと標準のHDDを同じPS4本体に換装し、5タイトルを同じ手順で実行していった。測定前には各ソフトの初期設定のために一通り起動し、終わったら電源を切ってPS4のメモリをクリアにし、再び起動してからテストを行なった。ソフトを1度起動してあれば、HDDからSSHDのフラッシュメモリにデータが保存され、読み込みの高速化が期待できる。

 測定内容および結果は下記のとおり。わかりやすく比較するため、測定データでは元々内蔵されていたHDDを「HDD」、「ST1000LM014」を「8GBモデル」、「ST1000LX001」を「32GBモデル」と表記する。またSSHDについては、念のため各2回のテストを実施している。

【測定内容】

「Fallout 4」
1. ゲーム起動:起動から操作を受け付けるまで
2. ゲームロード:NEWを選んでゲームがスタートするまで

「Bloodborne The Old Hunters Edition」
3. ゲーム起動:起動からSCEのロゴが出るまで
4. ゲームロード:CONTINUEでヨセフカの診療所に出現するまで

「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」
5. ゲーム起動:起動から「この作品はフィクションです」の文言が出るまで

「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」
6. ゲーム起動:起動からログイン画面が出るまで
7. ゲームロード:キャラクター選択後、グリダニア:新市街に登場するまで

「World of Tanks」
8. ゲーム起動:起動からタイトル画面で操作を受け付けるまで
9. ゲームロード:ゲーム開始を選択し、Wargaming.netのロゴが表示されるまで

「Bloodborne The Old Hunters Edition」ではCONTINUEからキャラクターが出現するまでを測定
「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」では起動直後の長い読み込み時間を測定
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」ではキャラクター選択から出現までの時間を測定
「World of Tanks」ではゲーム開始時の読み込み時間を測定

【測定結果】

「Fallout 4」
測定内容HDD8GB型(1)8GB型(2)32GB型(1)32GB型(2)
1.ゲーム起動23.7秒22.0秒23.0秒21.9秒21.8秒
2.ゲームロード40.6秒22.1秒21.9秒22.5秒22.0秒
「Bloodborne The Old Hunters Edition」
測定内容HDD8GB型(1)8GB型(2)32GB型(1)32GB型(2)
3.ゲーム起動17.1秒17.0秒15.9秒15.7秒16.6秒
4.ゲームロード23.5秒14.6秒14.4秒14.7秒15.0秒
「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」
測定内容HDD8GB型(1)8GB型(2)32GB型(1)32GB型(2)
5.ゲーム起動66.4秒54.5秒54.3秒50.6秒54.8秒
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」
測定内容HDD8GB型(1)8GB型(2)32GB型(1)32GB型(2)
6.ゲーム起動25.4秒23.6秒23.6秒25.5秒24.3秒
7.ゲームロード21.5秒15.0秒14.4秒15.6秒14.3秒
「World of Tanks」
測定内容HDD8GB型(1)8GB型(2)32GB型(1)32GB型(2)
8.ゲーム起動9.8秒9.1秒9.0秒9.3秒10.2秒
9.ゲームロード19.6秒18.1秒18.0秒18.4秒18.9秒

 「Fallout 4」、「Bloodborne The Old Hunters Edition」、「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」の3タイトルの結果を見ると、HDDと比較してSSHDの性能の高さがはっきりと現われている。特に測定2や5のように読み込み時間が長い場面では差が出やすい傾向が見られる。

 「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」と「World of Tanks」はオンラインゲームなので、通信状態の変化による影響を受け、比較的大きなばらつきが生じる。それでも測定7などではHDDとSSHDで大きな差が出ており、ここでも多量のデータ読み込みがあるシーンではSSHDが有利なのがわかる。

 「ST1000LM014」(8GBモデル)と「ST1000LX001」(32GBモデル)の差は、今回はそれほど大きく出なかった。フラッシュメモリの量では4倍違うのだが、今回の測定では5タイトルのデータが8GBのフラッシュメモリに概ね収まったため、あまり差が出なかったのではないかと思われる。数多くのゲームをプレイする人には、一部タイトルでフラッシュメモリ内に収まらずSSHDの恩恵を十分に受けられないものが出てくる可能性があるため、フラッシュメモリの大きな「ST1000LX001」が快適さを増してくれる点でよりオススメだ。

容量・速度・価格のバランスが取れたSSHD

HDDの換装は驚くほど簡単だ。ぜひ挑戦してみて欲しい

 PS4のHDDを換装する目的としては、容量アップと速度アップの2つが考えられる。容量については、PS4は500GBモデルをメインに展開しているので、倍になる1TBという容量はアップグレードとしては無難なものだろう。

 速度アップについては、HDDを他のHDDに換装してもさほど大きな変化は得られない。とにかく速度を求めるなら、フラッシュメモリのみでHDD部分がないSSDを選ぶという手もあるが、こちらは1TBモデルだと安くてもまだ2万円台後半(3月4日現在)で、HDDやSSHDに比べて価格が数倍に跳ね上がる。

 それに対して「ST1000LM014」は1万円前後、「ST1000LX001」は発売直後ながら1万4千円台。1TBのHDDは6千円前後から売られているので、その差額で速度を買う、というイメージだ。数千円の差は高いと見る人もいるかもしれないが、ゲーマーならこの数秒の差が、数十時間のゲームプレイにおいて最終的にどれだけ大きな差になるか理解できるだろう。PS4の性能を向上させられるパーツはHDD部分以外にはないことを思えば、追加投資としてSSHDは十分あり得るチョイスだ。HDDの換装を考えている人は、ぜひSSHDも検討に加えていただきたい。

(石田賀津男)