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これが未来だ! 「Oculus Touch」&ルームスケールVR体験レポート

期待以上にしっくり。生の肉体感覚をVR空間に持ち込む衝撃の楽しさ!

9月17日~20日開催(17、18日ビジネスデー)



会場:幕張メッセ



入場料:1,200円(税込)

メイン会場のOculus VRブース

 TGS 2015では昨年の4倍以上となる規模の大型ブースで本格的な出展を行ない、多くの注目を集めているOculus VR。新世代VRシステムの旗手として世界最高クラスの才能を集め、Facebookから巨額の資金投入を受け、コンシューマーVR第1世代のVRHMD「Oculus Rift」を考えうる限り最高のものに仕上げようとしている。

 その「Oculus Rift」は来年第1四半期の発売が予定されているが、その後、Oculus VRが提供するVRシステムの“画竜点睛”となるのが、2016年第2四半期に発売される予定のVRコントローラー「Oculus Touch」だ。

 Oculus Touchは2ペアのデバイスを両手に持って扱うVRコントローラーだ。Oculus Riftヘッドセットと同じトラッキングシステムにより正確なポジショナルトラッキングを実現、さらにはタッチセンサー搭載により簡単なハンドジェスチャー、そして内部に搭載されたアクチュエーターによるハプティクス(触感)再現もサポートするなど、いま考えうるかぎりで最善の仕様を搭載している。

 果たしてその仕様は期待通り、あるいは期待以上に実現されているのか。6月の発表からずっと気になっていた読者の皆さんも多いと思うが、今回、Oculus VRがTGS 2015会場に用意した完全招待制のデモルームで、そのフルスペックぶりを体験することができたのでご報告しよう。

Oculus Touchは、メイン会場のOculus VRブースでも展示を見ることができる。ちなみに隣にあるのはOculus Riftの製品版だ。各デモルームで使われていた最終プロトタイプのCrescent Bayすら産廃に追いやる、圧倒的に素晴らしい装着感のHMDだ。

自然体のホールド感、圧倒的な表現力。VR世界に自分の肉体を持ち込む感覚!

デモに使われたアプリはOculus謹製の「TOYBOX」。インゲームスクリーンショットはこれしかない、あしからず。
体験中の筆者。両手に持っているのがOculus Touchデバイス。
「おお、俺の手がVRの中に……」と固まっているところ

 Oculus Touchの試遊ブースは2室しか用意されず、今回はVR関連メディアや関連業界関係者への完全招待制という形でお披露目が行なわれた。というのもOculus Touchはまだ実機の数が非常に少なく、海外のE3やGamescomといったイベントでも、ごく限定された形でしか公開されてきていない。もちろん、TGS 2015の今回が日本初上陸だ。

 デモ用に使われていたのは、Oculus VR謹製のOculus Touch専用アプリ「TOYBOX」だ。これは6月に開催されたOculus VRのプライベートカンファレンスで初紹介されたアプリで、物理シミュレートされた様々なオモチャが散乱するVR空間の中、両手で物を掴んだり投げたり弾いたりで自由に遊べるというもの。もともとはOculus Touchのデバイス開発時の検証用に使われていたアプリだが、あまりに面白いのでそのままデモアプリに昇格したものだという。

 機能的に似たコンセプトを持つSteamVRコントローラー(HTC Vive)を体験した経験からいうと、Oculus Touchのホールド感は、いま考えうる最高のレベルにある。

 棒状のSteamVRコントローラーやPlayStation Moveとの大きな違いは、そのナチュラルなホールド感。Oculus Touchは輪っかの中心にこじんまりとした操作ユニットという形状のおかげで、これを握った時にデバイスの重心がユーザーの手の中に来る。そして、どんな動きをしても手の中から重心が剥がれることがない。これが、ユーザーにとってVRコントローラーの存在を限りなく透明なものにしてくれるのだ。

 HMDをかぶると(今回のデモではOculus Rift製品版ではなくCrescent Bayだったのがやや残念だったが)、Oculus Touchを握った両手が、VR空間の中にそのまま存在しているように表示される。現実で自分が感じている肉体感覚と、全く同じ位置にVRの手があり、しかも、それがなめらかにトラッキングされているのだ。「おお、俺の手がVRの中にもある!」という感じである。

 その「手」を使い、オモチャが散乱したVRルームの中で、ボールを握って投げてみたり、卓球のラケットを片手に持ち、もう片手でボールやブロックをトスして打ってみたりと、いろいろな遊びが自然にできる。その感覚は想像していた以上に現実に近い。

 ただ、今回デモルームのセットアップにやや難があったようで、筆者の体験中にトラッキングがやや飛び飛びになることもあったが、スムーズに動いている状態での感覚は、まさに「自分の肉体そのものがVRに持ち込まれた」としか言い様がないほどにすごい。

 そしてデモアプリとして使われていた「TOYBOX」の面白いところは、はじめからマルチプレイを前提にしていることだ。2つのデモルームはオンラインで連結されており、別の部屋の参加者が、同じVR空間内に現れる。映像としては薄ぼんやりと相手の頭と両手が表示されているだけなのだが(ファミコンソフトの『ジョイメカファイト』を思い出してほしい)、それが実際の人物そのものの動きをしているので、グラフィックスがものすごくシンプルでも、しっかりと「人」に見える。そしてOculus Touchに搭載された各指のタッチセンサーにより、指差しとか親指立てとかのシンプルなジェスチャーが、何も考えずとも自然にでき、それもコミュニケーションに使えるのだ。

 さらにOculus Rift製品版(そのプロト版であるCrescent Bayも)には、HMD内部にマイクが仕込まれており、HMDだけつけていれば互いにボイスチャットもできる。そうして同じVR空間内に居合わせる2人は、いつのまにやら物を投げ合あったり、レーザーガンを使った射的ゲームを放棄して、互いに銃撃戦を始めてみたりと、もうやっていることはリアルでそこにいたらやるだろうな、ということと同じ。しかもVR空間なので部屋が散らかることもないし、ラケットで打つボールがどっかいっても自由に新規生成することもできる。

 限りなく肉体的であり、リアルそのものの体験でありながら、現実の制限を超えた、VRならではの魔術を行使できる感覚。例えばこれまでのゲームコンテンツでは、世界がリアルに作られていればいるほど、その上で繰り広げる荒唐無稽な振る舞いがより面白くなるという傾向があるが(例えば「GTA」シリーズがその哲学を実践している代表例だ)、Oculus Touchによる体験は、自分自身の肉体感覚というリアルをベースとしているだけに、その上で行なわれる非現実のアクションの印象がひときわ深い。人として、現実に対する価値観そのものがシフトするような感覚がある。

 また、今回プレイした「TOYBOX」デモは、すべての動作がハンドジェスチャーのみで可能であり、子供から大人まで、ゲーマーかノンゲーマーかによらず、人類なら誰でも最初から“やりかたがわかる”。これがVRの本当の凄さなのだと、痛感した次第だ。

 これだけナチュラルな肉体投入感を実現してくれるOculus Touchは、また、両手にそれぞれ用意されたアナログスティックと複数のボタンの存在により、両手合わせるとXbox Oneコントローラー等のレガシーなゲームコントローラーと同等の操作が可能である。Oculus Touchの素晴らしいのはそこで、つまりナチュラルなハンドジェスチャーを実現しながら、同時に、移動等を含めたレガシーなFPS等の操作を完全に両立できるのだ。これはゲームデザインの幅を非常に広げてくれる要素であることは間違いない。

 最大のライバルであるSteam VRコントローラーとくらべても、物理デバイスとしての完成度はOculus Touchが優ると思う。ただし、トラッキングの精度や確実性については、SteamVRのLighthouseテクノロジーのほうが優れているように思えた。この点、コアゲーマーとライト層でニーズが違う部分があるため、それぞれのローンチ後、一定のすみ分けが行なわれることも間違いなさそうだ。

 そして今回のデモで面白かったのは、Oculus Riftの赤外線カメラベースのトラッキングシステムでルームスケールVRを実現するため、2つのカメラを並べて使用していたことだ。これによりトラッキング精度や範囲、フェイルトレランス性が向上するとのこと。SteamVRのLighthouse技術でも2つのベースステーションでルームスケールVRを実現する仕組みになっているが、Oculusでも同じことができるというのは嬉しい驚きである。

 それにしても、Oculus Touchの感触は期待以上のものだった。筆者と同時並行的に体験した各VRメディアの記者勢も、口々に「最高だった」「予想以上だった」と、興奮を隠せない様子だった。VRヘッドセット自体には慣れきった人でもこうなのである。この凄い体験が、VR未体験のゲーマーの皆さんに届く日がいまから待ち遠しい。

なお、このクローズドデモもHMDはCrescent Bayで、画質は良いが装着感はやや窮屈。快適至極な製品版はまだ相当に貴重らしい……

Oculus RiftでルームスケールVRを実現する2カメラコンフィギュレーション。2つのセンサーカメラによる検出が互いに補完・補強しあい、トラッキングの範囲や精度が向上する仕組みだ

(佐藤カフジ)