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ターゲットは10代女性、寿命はわずか1週間! 北米の恋愛ゲーム最新事情

スマホにキスをする!? スマホ時代の恋愛ゲームはこんなに進化していた!?

3月2日~6日開催



会場:San Francisco Moscone Convention Center

 日本を含む、世界の多くの国や地域で、タブー視されがちな恋愛ゲーム(Affection Game)と呼ばれるゲームジャンルがある。日本では恋愛シミュレーションゲームというジャンルで、限りなくプラトニックな内容にすることで、かろうじて市民権を得ているが、北米を含む海外では未だにタブーとされる。「ときめきメモリアル」をはじめとした日本産の多くの恋愛シムが海外展開がうまくいかないのもそこが理由と言われる。アダルトには寛容と言われる北米でも、ゲームに限っては日本よりも遙かに間口が狭いのだ。

アメリカン大学のLindsay Grace氏
スマートフォンにキスをする人々がいる
代表的なキスゲーム「Kissing Test」
「Kissing Test」は13カ国でトップ100入りを果たししている

 「Smartphone & Tablet Game Summit」では、北米市場を対象に、スマートフォン向けの恋愛ゲームの状況をリサーチした結果が報告された。アメリカン大学に所属するLindsay Grace氏は時折ユーモアも交えながら、開けっぴろげなトークはいかにもGDCサミットならではという感じで、かつあまり参考にならないレポートになりそうだが、非常にレアな報告と言うことでご紹介したい。

 Grace氏の報告では、2012年を境に北米でスマートフォン向けの恋愛ゲームが爆発的に増えたのだという。これはちょうどスマートフォンの普及にリンクしており、市場の潜在的なニーズをかぎ取ったデベロッパー達が次々にスマートフォン向けの恋愛ゲームを生み出していったようだ。

 そもそも「スマートフォン向けの恋愛ゲーム」とは何だろうか? 答えは、私も事実を知ってびっくりしたのだが、“スマートフォンそのものに直接キスをするゲーム”だ。ゲーム画面の女性とデートやハグを目指すのではなく、非常に直接的で、日本の恋愛シムともまったく異質かつ直接的なものだ。

 Grace氏のつまびらかな報告によれば、これまでに500以上の恋愛ゲームが生まれ、それらゲームの多くの目的はいかにしてキスを成就するか。しかもそれは密かに、情熱的に、ロマンスたっぷりに、経験者らしくキスをしなければならない。スマホ画面には、キスをする形をした唇が“つやっつや”に描かれ、その“唇タッチ”によって判定が行なわれ、その点数が決まる。この時点で多くの読者が記事を読むのを辞めようと思っただろうが、まだこれは序の口なのでもうちょっと我慢して欲しい。

【様々な恋愛ゲーム】
実に多種多様な恋愛ゲーム

 さて、これら恋愛ゲームは、北米だけで350万のインストールがあり、しかもそのシェアにして90%までがAndroidにおいて行なわれている。iOSが少ないのは事前審査が厳しいため、その多くは配信前にリジェクト(差し戻し)されるためだ。

 中にはキックスタータープロジェクトの「Big Haggin'」のような、恋愛行動のひとつである“ハグ”をテーマに、熊のぬいぐるみを両手で抱きかかえた状態で、それを動かして横スクロールタイプの2Dアクションをクリアしていくような健全な恋愛ゲームも存在するが、トップ100にランクインする多くの恋愛ゲームは、液晶パネルにキスをしたり、舌で舐めたりするゲームばかりだという。

 しかも驚くことに、これら恋愛ゲームは、カルトな人気を集め、100万以上のダウンロードを達成した“ヒット作”が生まれているだけでなく、その数は年々増えている。トップ10入りするタイトルも年々増えて行っているということで、Grace氏は、真面目に恋愛ゲームを、キス、いちゃつき、ハグ、SEXの4種類に分類。最新のデータによれば、キスは142、いちゃつきは9、ハグは2、SEXは10となっている。

【Big Haggin'】

【隆盛を誇るAffection Gameたち】

 現在も300以上のキスアプリがGoogle Playに存在するという。数字が曖昧なのは、それらはしばしばリムーブ(削除)されているためだ。このため正確な数字は出しようがないのだが、常に1番人気のキスゲームのテーマはジャスティン・ビーバーにキスをするアプリ。言うまでもなくライセンスのない違法アプリであり、見つけ次第削除されていく。しかし、その度に新しいジャスティン・ビーバーアプリが生まれていくようだ。 また主流なゲームメカニクスは、いかに第三者の目を盗んでキスを成就するかという“KISS & EVADE”モデル。これが全体の80%に達しているという。

 ここまででおぼろげながら全容が掴めてきたが、北米におけるスマホ向け恋愛ゲームのデベロッパーは、リジェクト、リムーブ前提で、数打ちゃ当たる方式で次々に似たようなゲームをガワ替えでリリースしていることがわかる。収益はフリープレイの広告モデルが主流で、いかに魅力的なタイトルやイメージでユーザーを釣り、多くのステージをプレイさせて広告を表示させるかがすべてのようだ。

 Grace氏の報告によれば、1ステージ当たりのプレイ時間は平均2分。ライフスパンはわずか1週間。短いもので一夜限りのタイトルもあるようだ。

【人気テーマはジャスティン・ビーバー!?】
言うまでも無くすべてライセンス未取得のものばかり

【それゆえに短命なAffection Gameたち】
削除は時間の問題なゲームばかり

 ここまでの内容で最大の疑問は、「こんなゲームを誰がプレイしているのか?」だろう。答えはなんと女性だ。しかも、11歳から16歳までの女の子が73%を占める。この年頃の女性は、お姫様やメイク、キスに対してあこがれがあり、デベロッパーは手を変え品を変えながら、この3つのキーワードをアプリサーチに忍び込ませる。いわば年頃の女の子の妄想を手助けするアプリが北米における恋愛ゲームの本質のようだ。一方、男子はどうなのか。Grace氏は、男子の場合、いきなりSEXを希望するためゲームの対象とはなりにくいと考察。確かに納得感があるところがある。

 Grace氏は、締めくくりとして、今後の恋愛ゲームの展望として、ゲームとしての多様性と実社会への配慮を挙げ、説明書きにも注意が必要だと述べた。「ただし、Google検索ではすでにすべて弾かれているが」と述べ、笑いを誘っていた。

【なんと主たるユーザーは若い女性】

【評価は両極端】
絶賛する人と貶す人が両極端なのがAffection Gameの特徴

(中村聖司)