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【CEDEC 2013】「CEDEC AWARD 2013」授賞式レポート
特別賞にプレステの父 久夛良木健氏、ゲームデザイン部門賞に故・飯野賢治氏
(2013/8/22 23:48)
CEDEC 2013の2日目、毎年恒例の「CEDEC AWARDS 2013」の授賞式が行なわれた。「CEDEC AWARDS」は2008年から毎年開催されており、今年で6回目。ゲーム開発の進歩へ顕著な功績のあった技術および開発者を表彰し、開発者全体の士気向上を図るということが目的で行なわれている。今回は「著述賞」、「特別賞」、「エンジニアリング部門」、「ビジュアル・アーツ部門」、「ゲームデザイン部門」、「サウンド部門」、「ネットワーク部門」の全7部門から受賞者を決定する。
ノミネーションリストは聴講者アンケートで上位だった講演者から構成される「CEDEC AWARDSノミネーション委員会」とCEDEC運営委員会との協議で決定され、最優秀賞はCEDEC 2013の受講者の投票とCEDEC運営委員会の投票にて決定される。
今回のノミネートを見ると、「プロジェクションマップ」や「音声合成技術」などと一見ゲームとは直接関連しない技術も多くノミネートされていたのが印象的だった。
著述賞、特別賞
著述賞には「ゲームを動かす技術と発想」の著者、株式会社バンダイナムコスタジオの堂前嘉樹氏と、「ゲームの作り方 Unity で覚える遊びのアルゴリズム」の著者の、株式会社バンダイナムコスタジオの加藤政樹氏の2名が選ばれた。
堂前氏の受賞理由は「プログラマではない人や、プログラマを目指す人に対して、基礎となるコンピュータサイエンス、数学、物理をわかりやすく解説していること」。堂前氏は「プログラマー以外の人から見るとプログラムとはとっつきにくい存在だと思われています。ですが、プログラムは実は簡単な物の積み重ねでできてるということを伝えたいと思いこの本を執筆しました」とコメントした。
加藤氏の受賞理由は「本書はゲームを作る観点からのゲームアルゴリズムを解説するもので、さまざまなゲームジャンルの仕組を多くの TIPS を交えながら学ぶことができる事」。加藤氏は「ゲーム業界は厳しい状況が続いていますが、モノ作り自体が衰退したわけではないと思っています。作る楽しさや素晴らしさを知ってもらうために自分に何ができるかと考え、この本を執筆しました」と話した。
特別賞は「プレイステーション」の生みの親である久夛良木健氏が受賞した。「プレイステーション」を世界中に普及させ、コンピューターエンタテインメント市場の創出と発展に寄与したことを評価された。
久夛良木氏は「プレイステーション発売から19年が経とうとしています。当初我々が夢を描いていた以上の巨大な市場が生まれて、世界中の人々が面白いゲームを遊ぶことができる様になりました。プレイステーションの生みの親として、コンピューターエンタテインメントを育ててきた1人として皆様に感謝いたします」とコメントした。
「エンジニアリング部門」最優秀賞
「Oculus Rift Development Kit - 圧倒的で革新的なVR環境の提供」
「Oculus Rift」開発チーム(Oculus VR,Inc.)
受賞理由:
ゲームに特化したHMD。本格的な展開はこれからだが、デモレベルのソフトウェアにおいても圧倒的で、過去にない没入感を提供している。広い視野角を持った本格的なVRデバイスを普及可能な価格で提供し、オープンなSDKとともにゲームに新しい変革をもたらす高い可能性を評価。
受賞コメント:
欠席のためコメントなし。
ビジュアルアーツ部門
「アニメ ジョジョの奇妙な冒険」オープニング制作チーム(有限会社神風動画)
受賞理由:
「JOJO」の世界観をより特徴的にアレンジし、読者のイメージを上回る表現と、心地良い疾走感のある演出は「JOJO」ファンのみならず視聴者を引きつける力がある。3Dの空間を生かした大胆な演出と、2Dアニメーションのキャラクター表現の魅力、そして荒木飛呂彦先生の描く劇画タッチの全てを見事に昇華した映像はまさに、神風動画の真骨頂といえる。
受賞コメント:
「バンダイナムコゲームスから発売予定の『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』が高い評価を得ており、我々も後に続くことができて光栄です、ありがとうございました」
ゲームデザイン部門
「新規性の高いメカニクスデザインと、ゲームクリエイターという職業の一般への周知に対する功績」
飯野賢治氏(故人)
受賞理由:
インタラクティブムービーの手法を用いた「Dの食卓」、音で敵の位置を特定する「エネミーゼロ」、画像がないビデオゲーム「リアルサウンド~風のリグレット」など、数々の挑戦的なメカニカルデザインとメディアミックス的な作品作り。広くメディアにゲームクリエイターという存在を訴え、一般にゲーム開発者が認知されるようになった功績を評価。
受賞コメント:
「夫の死から早いもので半年が経ちましたが、この様な素晴らしい賞を頂き、改めて夫の凄さを感じており、妻として感謝の気持ちで一杯です。世間ではゲーム業界の風雲児などと呼ばれ、強気で攻撃的な人物と紹介されたこともありましたが、家庭ではよく『なんでもいいから褒めて欲しい』と弱気な一面を見せることがありました。今回の受賞は皆様方から最高に褒めていただくこととなり、本当に喜んでいると思います。この度は本当にありがとうございました」(妻・飯野由香さん)
サウンド部門
「CeVIO Creative Studio」開発チーム(CeVIOプロジェクト)
受賞理由:
革命的とも言える、豊かな感情表現が可能な音声合成技術をもとに、まったく新しいユーザー生成コンテンツ(UGC)展開の可能性を切り開いた。より視野の広い展開を見据え、コンテンツ作成ツール(CeVIO Creative Studio FREE)を無償で提供している。
受賞コメント:
「我々は誰にでも簡単にコストが低く手軽に音声合成ができるソフトを目指しており、既にフリー版は多くのユーザーの方にご利用いただいております。今日はこの様な栄誉ある賞を頂きありがとうございました」
ネットワーク部門
「ニンテンドーDSシリーズ」すれちがい通信技術 開発チーム(任天堂株式会社)
受賞理由:
ニンテンドーDS/3DSのすれちがい通信によって、ユーザ間のインタラクションの方法を増やしていき、ゲームの可能性を大きく広げた。特に他のゲームを遊んでいてもすれちがい通信できることは可能性を広げる。
受賞コメント:
「まさか最優秀賞を頂けると思っていなかったので感謝感激です。すれちがい通信の醍醐味は目の前の友達でもネットを介した遠くの人ではなく、たまたま近くを通りかかった人からデータがもらえるというところにあります。すれ違い通信の成功率があがる『すれ違い通史中継所』というサービスも始まったので、これからもより多くの方にすれ違い通信を楽しんでいただきたいと思います。」