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PS3/Xbox 360/PS Vita「ジェットセットラジオ」プレイレポート
いよいよ配信! セガ奥成氏に解説を頂きつつPS3版&PS Vita版を体験
(2013/2/20 10:00)
2000年にドリームキャスト用タイトルとして発売された「ジェットセットラジオ」が、ついにPS3/Xbox 360/PS Vitaで2月20日より配信を開始した。
本作は、スケートシューズで架空の都市トーキョートを駆け、グラフィティ(スプレーによる壁画)を描くといったストリートカルチャーを取り入れた斬新な世界観で人気を博した作品。「マンガディメンション」というトゥーンレンダリングのグラフィックスも独特な魅力を作っている。
今回はPS3版、PS Vita版を配信前に体験させて頂いた。また、セガの奥成洋輔氏に本作について解説頂いたので、そちらも交えつつお伝えしていこう。
PS3/Xbox 360/PS Vita版「ジェットセットラジオ(以下、「JSR HD版」)」は、「デ・ラ・ジェットセットラジオ」(海外版で追加/改良されたステージなど新要素を追加して国内向けに発売された作品)をベースに、高解像度、ワイド画面対応がなされたダウンロード配信専用タイトル。
「デ・ラ・ジェットセットラジオ」をベースとあるが、「JSR HD版」は具体的にはどんな内容なのか? まず奥成氏にそこを伺ってみた。
奥成氏:ベースになっているタイトルというのは厳密に言うと無くて、「デ・ラ・ジェットセットラジオ」がベースと言えばベースですが、そこに初代「ジェットセットラジオ」のままの部分もあえて混ぜています。ゲームのシステム部分と、ステージや難易度、ストーリーは「デ・ラ・ジェットセットラジオ」です。
発売順として、初代「ジェットセットラジオ」のあとに海外版が発売されたのですが、その時にアメリカのステージが追加されています。初代「ジェットセットラジオ」のステージは日本の東京をモチーフにしていますが、海外版ではタイムズスクエアっぽいところやシカゴっぽいところを追加したんです。それを日本のユーザーさんにも遊んでもらえるように作ったのが「デ・ラ・ジェットセットラジオ」なんですよね。リリース順としては「初代」→「海外版」→「デ・ラ」→「JSR HD版」という流れです。
海外版ではストーリーも変更されていて、「ジェットセットラジオ」は日本の3地域のグループが争っているストーリーですけど、そこにアメリカのステージも加わったということで、ストーリーの真の黒幕的な存在は実は日本に来る前にアメリカで悪い事をしていたという設定に変わったんです。また、その黒幕的な存在を追ってきた人達と仲間になって戦うというストーリーも入りました。今回の「JSR HD版」もそのストーリーになっているので、そこは「デ・ラ・ジェットセットラジオ」がベースと言えます。
それと、初代ではゲーム中の登場人物やトリックの名前にカタカナを使っていたんですが、海外版を経たことで「デ・ラ・ジェットセットラジオ」では英語表記になっていました。この「JSR HD版」でもそこは英語です。あと、真の黒幕がアメリカから渡ってきたという設定になったのでボイスが英語になっていたんですが、「JSR HD版」では初代の日本語に戻しました。
また、海外版の時にやはりアメリカからやってきたという設定に変わった「コンボ」と「キューブ」というキャラクターがいたんですよ。彼らもやはり英語ボイスになっていましたが、この「JSR HD版」では初代のテイストの方がなじみ深いだろうということで、日本語にしています。
音楽も実は、初代だけで流れる曲とか、海外版だけの曲があって。初代には入っていたけれども「デ・ラ・ジェットセットラジオ」には入っていない曲というのもあったんです。そういう曲のほとんどを「JSR HD版」では収録しています。残念ながら2曲ほど入っていないので“ほとんど”なのですが……。過去作の全部を合わせると100%を越えるぐらいの曲数があったものを「JSR HD版」には100%入っていますよ、というところです。
というわけで、多くの部分は最終版だった「デ・ラ・ジェットセットラジオ」をベースにしているが、日本のプレーヤーに配慮して初代や海外版の要素も折り混ぜているというわけだ。
曲名 | アーティスト | 説明 |
---|---|---|
Let Mom Sleep | Hideki Nanaguma(長沼英樹) | |
Humming the Bassline | ||
That's Enough | ||
Sneakman | ||
Moody's Shuffle | ||
Rock It On | ||
Grace and Glory | ||
Sweet Soul Brother | ||
Magical Girl | Guitar Vader | |
Super Brothers | ||
Dunny Boy Williamson Show | Deavid Soul | 初代ジェットセットラジオのみで使われた曲 |
Miller Ball Breakers | ||
On the Bowl (A.Fargus Remix) | ||
Up-Set Attack | ||
Everybody Jump Around | Richard Jacques | |
Bout the City | Reps | |
Mischievous Boy | Castle Logical | |
Yellow Bream | F-Fields | |
Electric Tooth Brush | Toronto | |
Funky Radio | B.B. Rights | |
OK House | Idol Taxi | |
Just Got Wicked | Cold | 北米版(Jet Grind Radio)専用追加曲(デ・ラ未使用) |
Dragula | Rob Zombie | 北米版(Jet Grind Radio)専用追加曲(デ・ラ未使用) |
Slow | Professional Murder Music | 北米版(Jet Grind Radio)専用追加曲(デ・ラ未使用) |
Improvise | Jurassic 5 | デ・ラ・ジェットセットラジオ用追加曲(JGRでも使用) |
Patrol Knob | Mixmaster Mike | デ・ラ・ジェットセットラジオ用追加曲(JGRでも使用) |
Recipe For The Perfect Afro | Feature Cast | デ・ラ・ジェットセットラジオ用追加曲(JGRでは未使用) |
Funky Plucker | Semi Detached | デ・ラ・ジェットセットラジオ用追加曲(JGRでは未使用) |
曲名 | アーティスト | 条件 |
---|---|---|
The Concept of Love | Hideki Nanaguma(長沼英樹) | プラクティスモードをクリア |
Fly Like a Butterfly | ガムとコーンを仲間にする | |
Funky Dealer | チャプター1をクリア | |
Shape Da Future | チャプター2をクリア | |
Teknopathetic | チャプター3をクリア | |
Oldies But Happies | すべてのキャラクターを仲間にする | |
Like It Like This Like That | 最終ステージをクリアする |
PS3版から実際にプレイしてみると、まず画面の美しさに驚かされた。高解像度化(1080p対応)、ワイド画面対応がなされ、今世代機種でプレイするのに充分な画質になっているのはもちろんとして、本作の特徴であるトゥーンシェード調のグラフィックス「マンガディメンション」は、HD化という展開との相性が良かったようで、自然な美しさになっているのが好印象。高精細になってもジャギ感は無く、ワイド化も丁寧に視野が広げられていて引き延ばし感もない。まさに今世代の新作レベルに楽しめる画面となっている。
プレイの楽しさは過去作をプレイしている方なら言うまでもないが、スケートシューズでハイスピードに街を疾走し、ガードレールや手すりに乗ってグラインド移動しつつスプレーを集め、至る所にグラフィティを描き込んでいく。東京をモチーフに作られた街中を自由に疾走する楽しさ、作品全体のストリートカルチャーな世界観の魅力など、自由奔放な魅力が盛りだくさんの名作だ。
なお、海外ではこのPS3/Xbox 360の「JSR HD版」が先行して発売されているが、この日本版ではそれをまた手直しをしているとのこと。日本での発売が後になってしまったのはそこが大きな理由ということで、海外版をプレイして気になったところを「日本のユーザーが納得してくれるぐらいにもう少し……」との考えで細かいところも修正していったそうだ。
その一例を紹介すると、ステージクリア後にリトライが選べる仕様になっている。これができない海外版の仕様だと、隠し要素を出すためのチャレンジが結構難しい。トロフィー獲得や実績の解除にも影響するので、日本版でのほうが比較的易しくなっているということだ。ちなみに、PS3版ではトロフィーは9個。Xbox 360版の実績はもう少し多いとのこと。
続いては、PS Vita版をプレイ。PS Vita版は、PS3版とのセーブデータ共有、カメラ撮影した画像をグラフィティに使用、グラフィティを描く時にタッチ操作が使える、といった独自機能が特徴。ゲーム内容等はPS3/Xbox 360版と基本的に同じだ。
PS3版とのセーブデータ共有は、プレイステーションの「クロスセーブ」機能を使用して実現している。両機種ともにオンライン状態でプレイすると、オートセーブされた時にサーバーへとデータが送られ、どちらの機種でも次のプレイ時に最新セーブデータを読み込んでくれる。また、手動で行なう作業はなく、オンライン状態でプレイすれば自動で行なってくれるので手軽だ。
また、PS Vita版で作成したオリジナル画像の自作グラフィティデータもセーブデータの中に入っているので、クロスセーブでPS3版に読み込めば、PS3版でも自作グラフィティが使用できる。お気に入りの画像を街中に描けるのはなかなかに楽しいので、PS Vita版をプレイするならぜひ活用していきたい機能だ。
PS Vita版でも、高解像度化、ワイド対応による画面の美しさはやはり大きな魅力で、有機ELディスプレイの発色の良さがよりマンガディメンションの表現を綺麗に見せてくれる。そしてなによりも、「ジェットセットラジオ」を携帯機で手軽に遊べるのも非常に嬉しい。
グラフィティを描く時のスティック入力操作は、PS Vita版ではアナログスティックと画面へのタッチ操作の両方で可能。ただ、このタッチ操作は画面をスティックに見立てた操作になっているため、たとえば下矢印の指示の場合、画面を上から下にスワイプするのではなく、画面下側をタッチするのが正しい操作となる。そのため、上から下へスワイプすると先に画面上をタッチするため、失敗と判定されてしまう。そういうものと理解して操作したり、スティックで操作すれば気にはならないのだが、一見しただけではわかりにくいのが正直なところ。もうひと工夫欲しかったところだ。
この「JSR HD版」にはボーナスコンテンツも収録されている。その中でも注目なのは、プロデューサーを務めた菊池正義氏をはじめドリームキャスト版の開発スタッフが制作当時を振り返りつつ、当時のゲームシーン、音楽シーンを交えつつインタビューを行なっている約13分のムービーだ。これについて奥成氏に伺うと、
奥成氏:この「JSR HD版」用に撮り下ろして海外で制作されたドキュメンタリー風の映像です。iOS版にも入っていない、ここだけの映像です。
実は「JSR HD版」の開発の成り立ちとしては、海外チームからぜひ移植を行ないたいというオファーがあって、他のドリームキャストタイトル復刻プロジェクトとはちょっと違うラインで進められたんです。先ほどもあったようにその海外版をさらに手直ししていますが。
この映像もその流れから海外チームが制作したものなので、海外から見た日本のイメージが入っているというか。独特な映像になっていますね。日本の音楽シーンを紹介する映像なども間に入ってますが、僕ら日本人から見ると、これは2000年ではなくてもっと前だよね? というものも入っています(笑)。
確かに実際に見せてもらうと、2000年前後のアーケードゲームシーンから、初期バンドブーム(ホコ天あたり)などストリートシーンの流れも収められていて、いろいろな意味でユニークな映像となっていた。こちらも必見だ。
いよいよ配信される本作。日本での発売を待ってヤキモキしていたファンの方も多いと思うが(もちろん、筆者もその1人)、海外発売版よりもさらに日本のファンの人に納得してもらえるように細かな手直しをしていたというのは嬉しい話。待ちに待った甲斐のある出来となっていた。こうなれば「ジェットセットラジオフューチャー」の復刻にも期待していきたいところだが……。まずは、いよいよ配信開始となる「JSR HD版」を忘れずにチェックして頂きたい。
(C)SEGA