特別企画:Ultrabook「LuvBook X LB-X200S」でゲームをプレイしてみた!

「インテル HD グラフィックス 3000」はどこまで戦えるのか?


発売中

価格:89,880円



 株式会社マウスコンピューターは、Ultrabook「LuvBook X LB-X200S」を6月に発売した。重量985gと1kgを切った軽量さでありながら、価格を89,880円と安価に抑えたことで話題となっている商品だ。

 本機については既に僚誌PC Watchでレビューが掲載されているが、GAME Watchではオンラインゲームの切り口から再評価したい。ゲームに関わらない部分については、ある程度説明を省いていくので、詳細を知りたい方は2つの記事を合わせてご覧いただければ幸いだ。




■ 「Ultrabook」とは?

 まず基本的な話として、Ultrabookとは何かをご説明したい。Ultrabookは半導体メーカーのインテルが提唱するノートPCのカテゴリーで、一定の要件を満たしたノートPCがUltrabookを名乗れる。

 その要件とは、インテルの第2世代以降のCore iプロセッサを搭載すること、本体の厚さが21mm未満であること、休止状態から数秒程度で復帰すること、長時間のバッテリー駆動が可能なことなど。

 ノートPCのカテゴリといえば、以前人気を博したネットブックを頭に浮かべる人も多いと思うが、UltrabookはCore iプロセッサを搭載することで、Atomプロセッサを搭載したネットブックよりもかなり高い処理能力を有する。また休止状態からの迅速な復帰を実現するため、SSDを搭載している。

 意外なことに重量の厳密な定義はないようで、他社では2kg近くあるUltrabookも発売されている。その中で、条件を満たすスペックを詰め込みながら1kgを切る重さにしてきたということに、本機の価値がある。




■ 第2世代Core i内蔵の「インテル HD グラフィックス 3000」の実力を測る

本体を閉じたところ。天板・底板は光沢がある硬質素材

 では本機の主なスペックを見ていこう。

・CPU …… Core i5-2467M(2コア4スレッド/1.6GHz/TB時最大2.3GHz)
・メインメモリ …… 4GB(PC3-10600、最大4GB)
・グラフィックス …… インテル HD グラフィックス 3000
・SSD …… 120GB(ADATA製)
・ディスプレイ …… 11.6型ワイド光沢液晶(1,366×768ドット)
・キーボード …… 日本語キーボード(キーピッチ約19mm)
・USBポート …… 3.0×1、2.0×1
・バッテリー駆動時間 …… 約5.5時間
・OS …… Windows 7 Home Premium 64bit

 本機は専用のGPUは搭載していないので、CPU内蔵のインテル HD グラフィックス 3000がグラフィックス処理を行なう。ゲームのパフォーマンスという意味では、このインテル HD グラフィックス 3000がどれくらい頑張れるのか、というところが今回のポイントとなる。

 仕様としてはDirectX 10.1まで対応しているので、ほとんどのゲームが動作するはずだ。ただしゲームの推奨環境として名前が挙げられるのは、NVIDIAのGeForceか、AMDのRadeonで、インテル HD グラフィックス 3000での動作を保障するタイトルはほとんどない。本誌やゲーム運営会社にはゲームの動作保障はできないので、ノートPCの購入やゲームプレイはあくまで自己責任でお願いしたい。

 CPUやメインメモリは、よほど多くのソフトウェアを起動・常駐させていない限り、大抵のゲームにおいて不足はないだろう。SSDも容量が小さめに見えるかもしれないが、ある程度選別して使えばさほど問題にはならない。USBポートは3.0を含めて2個あるので、マウスを繋いでも空きはある。液晶は11.6型と小さい割には、解像度は標準的でゲームには十分だろう。

 本機の用途は、家でメインマシンとして使うのではなく、外出時に持ち出すのが一般的なはずなので、スペックに対してはある程度は割りきりが必要だ。その上で、外出時の空き時間に少しゲームをやりたいな、という気持ちをどこまで満たせるかが、ゲーマーにとってのポイントになる。




■ 定番の3Dベンチマーク「3DMark」を古い順から試す

 一言でゲームといっても色々な種類があるわけだが、グラフィックス的にさほど大きな負荷がないブラウザゲームや、2Dグラフィックスのアドベンチャーゲームなどであれば、ほとんどのケースで問題なく遊べるはずだ。ここで調べたいのは、3Dグラフィックスのゲームがどこまで遊べるのか、ということだ。専用のGPUを搭載していない以上、最新の3Dゲームが快適に動かせるというオチはありえない。

 そこでまずは、定番の3Dベンチマークソフト「3DMark」を、あえて古いバージョンのものから動かしてみたい。あまり古すぎるものは、Windows 7 64bitではインストーラーが正しく動かないものもあったので、きちんと動作できたものを順番に見ていきたい。

 まずは「3DMark2001 SE」から。こちらはDirectX 8に対応したベンチマークとなっている。もう10年前のベンチマークソフトとはいえ、古めのオンラインゲームにはDirectX 8で開発されているものもあるので、その一面では意外と信憑性のある数字と言えるかもしれない。計測スコアは「13139」。多くのシーンで60fps(frame per second、秒間フレーム数)を大きく超えており滑らかに動く。さすがに10年前は楽勝といったところ。


【スクリーンショット】
当時はかなり重かったさまざまなシーンが、CPU内蔵グラフィックスで実に滑らかに動く

 続いて、DirectX 9のベンチマークとなる「3DMark03」。約9年前の公開当時には、ビデオカードのドライバの最適化によってスコアが大きく変わるなど、ベンチマークプログラムとしての質を問う話題も多かった。スコアは「9118」で、まだまだ十分に滑らかな映像を楽しめる。


【スクリーンショット】
まだまだ鑑賞に十分なフレームレートを維持している。今見てもなかなか美しい

 次はDirectX 9.0cのベンチマーク「3DMark06」。6年前に登場したプログラムで、グラフィックスのクオリティが上がっている。その分、処理もかなり重くなり、シーンによっては10fpsを下回ることも。スコアは「3670 (1,280×768)」。


【スクリーンショット】
静止画での映像は美しいが、動画としてはかなりフレームレートが下がってきて厳しい

 そしてDirectX 10のベンチマークとなる「3DMark Vantage」。4年前に公開されたもので、当然ながら「3DMark06」よりも重い。フレームレートはほとんどのシーンで1桁fpsまで落ちているが、それでもきちんとベンチマークを完遂できたわけで、PCとしては正しくDirectX 10対応であると宣言できる。スコアは「P1476」。


【スクリーンショット】
もはや動画ではなくコマ送り状態だが、それでもきちんとベンチマークを完走できる

 最新の「3DMark11」については、DirectX 11用のベンチマークとなっているので省略する。今回の結果を見て、「そんな古いのが快適に動いても……」と思われるかもしれないが、当時これらのベンチマークを試した身としては、「内蔵グラフィックスでも意外といけるんだな」という感想を持った。スクリーンショットを見てもらえればわかるが、プログラムは古くても映像のクオリティはそれなりに高い。




■ ちょっと遊びたくなるオンラインゲーム4本をテストプレイ

 ベンチマークに続いては、オンラインゲームを実際にプレイしてみた。空き時間にちょっと遊べる気軽さのあるゲームということで、4本を選ばせてもらった。繰り返しになるが、いずれのゲームにおいてもインテル HD グラフィックス 3000は動作環境として明言されておらず、動作保障はされないのでご注意いただきたい。なお、ゲームはいずれも最大解像度のフルスクリーンでプレイし、「fraps」を使って画面左上にフレームレートを表示している。

 まず1本目は定番のオンラインゴルフゲーム「スカッとゴルフ パンヤ」。サービス開始から7年以上が経過しているが、現在もコースの追加などアップデートが行なわれている。ゲームプレイではグラフィックスのクオリティを最高の設定にしても、45fps前後の高いフレームレートを維持しており、とても快適にプレイできる。


【スクリーンショット】
元々3Dゲームとしては軽い部類のゲームなので、本機でも最高画質設定で十分に動作してくれる

 2本目は麻雀ゲーム「雀龍門3」。麻雀ゲームといえば、2Dグラフィックスで軽快に動くものが多いが、「雀龍門3」はフル3Dグラフィックスで、牌の衝突を物理演算するなどしてリアリティを追求。その分、麻雀ゲームとしてはかなり処理は重い。筆者が持っているネットブックでは重過ぎて遊べなかったが、本機では30fps程度で安定しており、ストレスのない状態でプレイできた。


【スクリーンショット】
3Dで処理されたリアルなグラフィックスは本機でも堪能できる

 3本目は、先日正式サービスが開始された「ファンタシースターオンライン2」。最新のタイトルで、なおかつアクションゲームということで、グラフィックスの負荷も高めだ。試しにゲームのグラフィックス設定を最高にしてプレイしてみたところ、10~20fpsとかなり低めの数値で、入力にも遅延が発生するような状態に。そこでグラフィックス設定を最低まで落としてみたところ、今度はほぼ60fpsを維持できるようになり、入力遅延もなくなった。見た目にはエフェクトが減ってさっぱりした印象だが、プレイに支障はないと感じた


【スクリーンショット】
上段は最高画質設定のもの。これだとフレームレートがかなり低めになり、操作にも支障が出る
下段は画質設定を最低に落としたもの。エフェクトが減って見た目は寂しくなるが、プレイは一気に快適になる

 最後は海外製タイトルから、短時間でも遊びたいゲームの代表、ダンジョン探索RPG「Diablo III」をチョイス。見た目にはシンプルなゲームだが、フル3Dグラフィックスで多数のエフェクトを使用しており、それなりの負荷がある。こちらも最高のグラフィックス設定でプレイしたところ、10~20fps程度と低めの値。ただ操作の不快感はそれほどではなく、この状態でも何とか遊べる。グラフィックスの設定を下げてやると、フレームレートが1.5倍ほどになり、プレイもより快適になる。筆者はこれで満足できたが、より高いフレームレートを求めるなら、少し解像度を下げるのも手だろう。


【スクリーンショット】
上段は最高画質設定。フレームレートは低めだが、プレイ感はさほど悪くない
画質設定を最低に落とすと、若干フレームレートが改善する。見た目に劇的な変化はない

 以上、4タイトルをテストしてみたところ、いずれも適切に設定さえすればプレイは可能な状態になった。後者2本はグラフィックスの質を落としているが、出先で少しプレイする程度のことなら用は足りる。今後は「ゲームをやるなら何が何でも単体GPU搭載のPCを!」と言わず、使用頻度なり遊ぶゲームなりに応じて、本機のようなCPU内蔵グラフィックスのPCも選択肢入れてもいいのではないかと思う。これだけ動かせて1kg未満というのは、適材適所であれば大いに魅力的だ。




■ 弱点もあるが、トータルでの完成度は高い

 最後に、ベンチマークやゲームプレイの際の使用感をお伝えしたい。まず注目すべきは高速なアクセス。SSDのおかげで起動はすこぶる早い。ゲームの読み込みもかなり高速だ。120GBという容量は後々不満が出るかもしれないが、かなり安くなったUSBメモリやクラウドサービスなどの外部ストレージに頼るという回避策もあるので、運用で何とかできる範囲だろう。

 キーボードはストロークがかなり浅めだが、しっかりしたクリック感があり、キーピッチも十分で入力は快適。気になるのは方向キーの形が特殊なところで、これを使うゲームの場合は普段と違う感触に注意が必要だ。また電源ボタンがキーボードの右上に用意されており、筆者は何度もBackSpaceキーと押し間違えた。ただ押してもいきなり電源が落ちたりレジュームがかかったりはしないので問題はない。

 ディスプレイは薄型ながら視野角もそれなりに広く、ゲーム用には満足のできる画質。グレアパネルなので蛍光灯など外光の映りこみはあるが、これも一般的なもので特別気になるほどではない。

 ゲームプレイで気づいたのは、意外と音がいいこと。さすがに低音は出ないが、ノートPCにありがちな「とりあえず鳴る」という安っぽい音でもない。本体サイズの割にはかなり頑張っている。

 ゲームやベンチマーク中に負荷が高くなると、かなりの勢いでファンが回る。その薄い見た目からは「どこにファンを仕込んだの?」と聞きたくなるほどだが、本体背面に細長いスリットがあり、そこから排気している。ファンの回転数は負荷に応じて変化する。フル回転時にはやや耳障りなくらいパワフル。

 音よりも気になるのが、熱だ。排気口のちょうど真上になる、本体とモニターの繋ぎ目辺りの部分は金属パーツになっているのだが、高負荷時には手で触れないくらいの熱さになる。キーボードも、上段の2~3列は触ってわかるくらいの熱がキートップに伝わっている。3Dゲームはどうしても高負荷となるため、キーボードに指を置いてプレイする人はこれが気になるかもしれない。

 ただ、手首の部分はゲーム中も全く熱を持たない。廃熱を本体後方へと徹底的に集めており、この小さな筐体の中ではかなりうまく廃熱していると言える。普段はほとんどファンも回らず無音に近いし、熱も金属部を触って暖かい程度にしかならない。つまり廃熱はほぼゲームプレイ時だけの問題と言える。

 気になる点はあるにはあるが、やはり圧倒的な軽さと薄さは十分に魅力がある。そもそもこれをゲーム用に買うということはないだろうし、主目的があった上でゲームも意外と遊べるというのが利点なので、あとは自分の用途に合わせてどこまで割り切るかだけだ。PCとしての完成度は高く、薄型軽量ながらも剛性があり、折りたたんで手に持った時に幸せを感じられる1台に仕上がっている。

 なお秋葉原などにあるマウスコンピューターのダイレクトショップでは、実機を触れる環境も用意されているので、可能ならばそこでベンチマークを動かしてもらうなどして状態を確かめてみるといいだろう。


【本体写真】
キーボードとタッチパッド部。タッチパッドのボタンがないように見えるが、手前側がクリックできるキーボードのレイアウト。方向キーの形状が特殊。電源ボタンは右上のキーに割り当てられている薄型の本体なので、キーのストロークはかなり浅い。ただクリック感はしっかりある
本体右側。USB2.0などがある本体左側。こちらにUSB3.0や電源コネクタがある本体背面。左右のスリット部分が排気口になっている
本体底面。少し出っ張りのあるゴム足がついている液晶の視野角は十分確保されているACアダプタはかなり小型で、デザインもいい

【スカッとゴルフ パンヤ】
(C)2004 Ntreev Soft Co.,Ltd. All Rights Reserved.
Pangya is registered trademark of Ntreev Soft Co.,Ltd
(C)2004 Gamepot Inc., All Rights Reserved.
【雀龍門3】
Jan Ryu Mon(TM) is a trademark of NCsoft Corporation. Copyright (C) 2009 NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute and transmit Jan Ryu Mon(TM) in Japan. All rights reserved.
【ファンタシースターオンライン2】
(C) SEGA
【Diablo III】
(C) 2012 Blizzard Entertainment. All rights reserved.

(2012年 7月 13日)

[Reported by 石田賀津男]