SCEJ、PS3「TOKYO JUNGLE」社員食堂ジャック事前試食会を開催!
クリエイターの山際氏&片岡氏ミニインタビューつき!
今回は社員食堂・1日限定の企画だが、機会があれば是非一般向けにも検討していただきたい |
株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)は、本日発売のプレイステーション 3用サバイバルアクション「TOKYO JUNGLE(トーキョージャングル)」にちなんだ社内企画「SCE社員食堂ジャック」を実施した。本稿では、プレスを対象とした事前試食会の模様をお届けする。
さまざまな動物を選び、人間が忽然と消え去った都市・東京で生き抜いていくサバイバルアクション「TOKYO JUNGLE」。その発売にあわせ、社員食堂・1日限定という内輪向けではあるが、こういった企画はなかなか実践できるものではない。「ある意味、気合入ってるなぁ」と感心しつつ訪れたSCE社員食堂で取材陣を待ち受けていたのは、広報チーム、プロデューサーの山際眞晃氏、開発元の株式会社クリスピーズ代表取締役の片岡陽平氏、そして「TOKYO JUNGLE」をモチーフにしたオリジナルメニュー「ジャングルカレー」2品であった。
6月7日、SCE社員食堂限定で提供される「ジャングルカレー」は、ゲームにちなみ“肉食系”と“草食系”の2品を用意。肉食系は辛口ルーに鶏肉をワイルドにトッピング。草食系は彩豊かな野菜のトッピングが特徴で、マイルドな味わい。価格はどちらも490円という驚きの安さ。今回は、特製ジャングルスムージーとポメラニアンの肉球をココアパウダーで描いたミルクプリンがセット(いずれも別料金)になっていた。
記念ということで、まずはプロデューサーの山際氏と片岡氏がメニューを口に運ぶことに。「食べる様子をバシバシ写真に収めてください! それから感想をお願いします!」という司会進行のムチャぶりに困惑する両氏。取材陣も「こっちに目線ください! 半分かじってる感じで!」など悪ノリするが、両氏ともにサービス精神が旺盛すぎて、面白ポーズ&フェイスに集中するあまり感想がスッと出てこない。
発売を迎えた感想についてきかれると、片岡氏は「初めてディレクションを丸々1本やったので、楽しみ。世間の評価を全部受けるわけじゃないですか。(期待されていると思うが?)そうですね、ずっと長い間作ってきたというのもあって。3年くらいかかった。発売日の関係からマスターアップから半年くらいたってるので、なかなか実感はわかないのですが、体験会でお客様がプレイしているのを目の当たりにして、少しずつ実感しているところです。子供さんが笑ってプレイされているところを見ると『作ってよかったな』と感じます」とコメント。
山際氏は「思うこと? 面白かったといっていただけるまで積み上げるのが、結構大変だったんですよ。それが1年、2年くらい前かな? そのときは、ユーザーテストで『面白くない』という評価とか、みなさんの期待値に見合っていないことが続いて、その時期が1番大変だった。そこをなんとか(片岡氏と)二人三脚で乗り切って、今に至るところがある。そういった意味では感慨深い。楽しんでもらえれば嬉しなぁというのと、楽しんでもらえるものができたという点で、本当に嬉しいです」とコメント。
片岡氏は汚れた口元を紙ナプキンで奇麗にしつつ「一口しか食ってないのに、ちょっとまって! ……肉の味がする(片岡氏)」とシュールなコメント。一方の山際氏は「ゲームのなかでもニワトリが1番カロリーが高い。いいカレーだと思います!」と見事なコメント。この後は取材陣も試食メニューに舌鼓を打ちつつ、テーブル単位で媒体合同インタビューを行なった。
【SCE社員食堂ジャック!】 | ||
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正確には“社員食堂の一角を占拠!”といった感じか。手作り感満載のポスターとディスプレイがいいテイストをかもし出している |
配膳前の図。レギュラーサイズで単品490円は超破格だ | 上画像・右が肉食系、左が草食系。どちらもボリューム満点 | ココアパウダーで描かれた肉球がかわいいポメラニアンの肉……ではなくミルクプリン |
取材陣も試食。どちらもスモールサイズだが、ふたつで十分おなか一杯になれるボリューム。トレイペーパーも凝っている(上画像・中央) |
上画像・左が山際氏、右が片岡氏 | 両氏ともサービス精神が旺盛な人なので、結構ムチャなポージングでも喜んで(?)受け入れてくださいました |
■ 発売記念ミニインタビュー
――発売まで、だいぶ時間がかかりましたが?
山際氏 元々2Dで作っていましたから。コンセプトは変えていませんが、ゲームのデザイン的な部分はほとんど変えましたね。キャラクターは幸い3Dで作っていたので、その部分は全部使えたんですけど、背景とか奥行きであったりとかは、全部作り直しました。ビルの凸凹など、凄く時間がかかりました。
――結構、あせりませんでしたか? 面白くならない! って結構致命的なことでは?
山際氏 あせりました! やはり上からやいや言われました。大変でした。
――カジュアルタイトルをパッケージに変更しろというのは、相当厳しかったのでは?
山際氏 自分で(判断)したんです。色々な方々から「面白そう」、「キャッチーだ」といっていただいた。色々な人に触っていただきたいということで「そのぶん積み上げて面白くするから」と(周囲を)説得しました。
――大元からの1番の変化、変更点はどのあたりでしょうか?
山際氏 変化というか、調整していくところが絶対的に足りなかった。“サバイバル”というところで、まず“放り出す”というゲームシステム。目的もなく“生き残れ”と。それを、フィールドを用意しました、動物を用意しました、遊んでください、死ななければいいです……といわれても、自分遊びができる人をのぞけば、なかなか遊べる人はいない。“サバイバル=生き残っていくこと”に関連するシステム、目的を与えるところが1番変わった点だと思います。全部、そこに紐付くように考えたんです。
コスチュームも、人間が突然いなくなったら服とかが散乱しているだろうというのが発想としてありました。それを動物が着るのは異例ですけど(笑)。そういうふうであれば、着てもいいだあろうと。それを着ることが生き残ることにプラスに働けばより楽しめるし、着飾れるから楽しめるんじゃない? と。ベースデザインは、あまり変わっていません。
――おすすめの動物はありますか? これは面白いですよ、とか。
山際氏 おすすめは中型。1番扱いやすいんです。そこそこ敵を倒せるし、ハングリーゲージの持ちもいい。最初はそれがいいと思います。
――具体的には、どのあたりでしょうか? 大きいものになるとゾウとかいますし。
山際氏 イヌでいうと、ビーグルとか。最初は触れないんですけど。
――最初は肉食がいいんでしょうか? 私は肉食のほうがやりやすかったんですけど。肉食は獲物を能動的に捕らえられるんですけど、草食動物って草のところに肉食動物がたむろしていることがあり、どうにかして追い払うか別のところにいくか、判断が難しいところがありました。
山際氏 ただ、ゲームが進んでいくと凄く強い敵が出てくるんですよ。100年過ぎると……ネタバレになるからいいませんが、とんでもないのが出てくる。そうなると、能動的に狩れるかというと、一概にはいえない。草食はそういうのに左右されない。餌場を確保すればいい。上級者ほど草食のほうが生き残りやすくなるんじゃないかと思います。デバッグチームでやっていたときはヒヨコが1位でした。
――ポイント倍率がかかるんですよね。
山際氏 そうです。ヒヨコの倍率が高いんです。ポイントの入手しやすさと、ランクアップ。身体が小さいほど、ちょっと食べただけでランクアップできる。自分のランクが低いと、メスが出てきても振り向いてくれない。ヒヨコだとすぐランクアップできるので、出てきたメスがなびくので生き残りやすい。
――最初「ヒヨコでどうやって生き残るんだろう?」と不思議だったんです。
山際氏 めちゃめちゃ(足が)遅いですし(笑)。
――ぜひお伺いしたいと思っていたんですが、草食動物だけ2段ジャンプができますよね。あれだけが動物ゲームという観点から逸脱していて「なぜ機械的なシステムが入っているんだろう?」と思ったのですが。
山際氏 元々の狙いは純粋なアクションゲームで、あまり違和感を感じて入れたわけではないんです。「草食は機動力を活かしてほしい」というのを押し出したかった。その象徴として入れました。小型という縛りを入れていますので、カバとかは2段ジャンプできない。ただ、カバ自身は強いです。
――いまお話をうかがった限りですと、ヒヨコが最強?
山際氏 いや、最強ではないです。結構上手い人がやったので……っていうか、彼(片岡氏)がたたき出したんで。普通だとなかなか厳しいですね。
――上手い人がやればヒヨコでも最強になれる、っていうことですよね?
山際氏 生き残ることが1番なので、そういう意味ではヒヨコかな? と。ヒヨコはニワトリに変身するんです。1粒で2度美味しい。ヒヨコのまま交尾させるのはどうかな? と思ったので、ニワトリに変身させるようなシステムを入れたんです(笑)。
――ストーリーが面白いですよね。
山際氏 最初はもっと色々考えてやっていたんですけど、厳選したストーリーを入れました。
――企画段階でストーリーも考えていたんですか?
山際氏 ストーリーはパッケージ版にするときに入れたモードです。
――これを通して、1番伝えたかったこと、描きたかったことはありますか?
山際氏 それは片岡さんにきいてもらったほうがいいですね(と片岡さんと交替)。
片岡氏 描きたかったことですか!? ゲームにですか!? (なぜそんなことを? という表情で)いやー、もう楽しんでもらえればそれでいいですね! 思想とか、伝えたいメッセージとか、一切ないです。
――出発点はアクションゲームで、動物たちのサバイバル?
片岡氏 そういう意味でいうと、アレなんです。旅するゲームが作りたくて。元々旅人のゲームを作ってて、旅人が惑星にロケットで不時着して、右も左もわからないところからスタートします。今思えば「風の旅人」なんですけど(一同笑)。5年前に「風の旅人」を作りたかったんですけど、あそこまでのものを提示できず(企画を)棄却されたんです。
――企画は出していたんですか?
片岡氏 ゲームとしてのロジックやカタルシスが足りないといわれて。「風の旅人」はセンチメンタル、ロマンという言葉を最大限に昇華して商品価値にしている。当時そこまでのことができなくて、ゲームとしてのロジック、わかりやすさを入れなければならないとき。ポンと放り出されて何もわからない世界というコンセプトを実現するとき、ゲームのロジックとしてマッチさせるとき“おなかが減る”という要素を入れるのが1番よかった。
おなかが減る、だから食料を探さなければいけない、とりあえず走り出す、ご飯を見つける、それを繰り返していくと徐々に世界が広がっていくというふうにしたら、ロジックが回るじゃないですか。倒す、食べる、みたいな。ただ、それで考えると、旅人ってちょっと面倒くさいんですよね。
――人間だから、色々考えちゃいますし。
片岡氏 ストーリーも必要になってくるので、そういうのは要らないなと。じゃぁ何が1番いいかなというと、動物だったんです。あとひとつ問題があって、その世界のアートワークがメチャ格好いいのができて、凄く魅力的な世界だったんですけど、それがメジャーになるかというと……自信がなかった。一部のおしゃれな人に楽しんでもらえるであろうことは想像できたんですけど、やるからには売れたかったし、売りたかった。
で、どうやってキャッチーな要素を入れていこうと思ったとき、動物ってめっちゃキャッチーじゃないですか! ポメラニアンを出すだけで……(一同笑)。っていうのはおかしいですけど、恐竜にしても虎にしても、嫌いな人はあまりいないし、これをプレイできるゲームも少ない。その世界をどうするか、というときに「人間がいなくなった東京、都市」って凄くキャッチーなテーマ。動物とそれを組み合わせると、キャッチーだけど斬新なタイトルができるという直感があって、これって売れるんじゃないか!? というこの世界の必然性が、そこで決まった。……だから壮大なメッセージみたいなものは、ないです(一同笑)。
――1番の根っこは“旅”だったんですね。そこを商品化して売るために、少しずつ工夫していったのですね。
片岡氏 押し付けがましいといってはアレなんですが「こっちの思うように遊んでくれ!」というのはやりたくなかった。遊ぶ側の介在する余地がある表現が好きなので、ゲームでもそういうものに挑戦してみようと思って。動物は丁度よかったです。物をいいませんし。(クマを見て)このコンテは僕が書いているんですけど、面白い話があるんですよ。クマのモーションを作ってくれたのが「フ○イヤープロレスリング」でプロレスラーのモーションを作っていた人なんです。だから、クマは異様にプロレスラーっぽい(一同笑)。
――こんな奇麗に直立しませんよね(笑)。
片岡氏 攻撃するときに立ちますからね! みんな四足でシュッ、シュッみたいにやるのに、こいつだけ「ウォー! ウォー!」みたいなモーション(フックを大振りするようなジェスチャー)! 攻略本も作られているんですけど、紹介文に「クマは初動が遅く非常に使いづらいキャラである」みたいなことが書かれていて「それはやめてください」と(笑)。
そこは狙っていて、実際は凄く使いようがある動物なんです。メチャメチャ強いんですけど、立ち上がりが遅い重量級のキャラ。そういう感じで、50種類のパワーバランスもちゃんとしなきゃいけない。どれを選んでも楽しめるアクションゲームになっています。
――恐竜が出てくるのが、凄く気になっていたんですけど……。
片岡氏 出したかったんです。ただ動物だけだと、飽きてくるじゃないですか。肉食動物、犬型ってだいたい似てるんですよ。ライオン、チーター、イヌ、どんなに獰猛な動物を出そうが、このシルエットの束縛から逃れられない。これを崩す攻撃モーションは作れないので、すべからく似てきてしまう。その点、キリン、ゾウ、ウマとか草食動物を入れて。肉食でもバリエーションを出したかった。ワニ、恐竜……ただ、それが結構アダになって。SCEAにプレゼンテーションする場があって、最後に恐竜が出てきてプレーヤーが殺されて終るコンセプトムービーを作った。見せた瞬間「なんで恐竜がいるんだ? 理由を説明しろ、どういうことだ」と言われて。結論からいうと、つっこまれたので出てくる設定を後から考えました(一同笑)。
――いいオチがついたところで、本日はお忙しいところをありがとうございました!
(C)Sony Computer Entertainment Inc.
(2012年 6月 7日)