CEDEC 2011レポート

「CEDEC AWARDS 2011」授賞式開催
「Unity」、「SF IV」、日野氏らが受賞。特別賞に「ポケモン」


9月6~8日 開催

会場:パシフィコ横浜


「CEDEC 2011」委員長の吉岡直人氏

 9月6日から9月8日までパシフィコ横浜にて開催されているゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2011」。会期2日目となる9月7日に、優秀な開発者を称える「CEDEC AWARDS 2011」の授賞式が開催された。

 今年で4回目となる「CEDEC AWARDS」は、「CEDEC 2010」において聴講者アンケートが上位だったセッション講演者と「CEDEC 2011」プログラムワーキンググループの各分野のプロデューサーによって組織される「CEDEC AWARDSノミネーション委員会」の選考でノミネートと最優秀賞が決定された。表彰されたのは、実績を称える「特別賞」、優れた著作に送られる「著述賞」の2部門と、ノミネート候補から最優秀賞が選ばれる「プログラミング・開発研究部門」、「ビジュアルアーツ部門」、「ゲームデザイン部門」、「サウンド部門」、「ネットワーク部門」の計7部門。

 授賞式に先立って挨拶を述べた「CEDEC 2011」委員長の吉岡直人氏は、「今年はキャッチフレーズを『Cross Border』として、ゲーム開発の専門分野だけではない方を招いた講演を行なっております。今回の各優秀賞のノミネートも、このキャッチフレーズに沿うような選出傾向にしています。4度目となる『CEDEC AWARDS』は、開発者自身が開発者を称える世界でもユニークな賞として、皆様にも定着してきたのではないかと思います」と語った。




ゲームフリーク代表取締役の田尻智氏
ポケモン代表取締役社長の石原恒和氏

 特別賞を受賞したのは、長年に渡って多くの子供を楽しませてきた「ポケットモンスター」シリーズの生みの親、株式会社ゲームフリーク代表取締役の田尻智氏と、同シリーズのプロデュースをしている株式会社ポケモン代表取締役社長の石原恒和氏。田尻氏は受賞について、「『ポケットモンスター』を作ったのは、もう15年も前の事になります。名作を残したいとの思いから、動物や昆虫を採集するという原体験を活かし、今の時代の技術にも通じる通信機能を入れたことが、今回の受賞に繋がったと思います」と述べた。

 石原氏は、「私自身は、プロデューサーという作り手を支える立場ですが、『ポケットモンスター 赤・緑』を纏め上げた田尻さんをいかに支えるかを考え続けた15年でもありました。今回、こうして田尻さんと共に受賞できて光栄です」と語った。




著述賞を受賞したオンラインゲーム開発者の中嶋謙互氏

 著述賞を獲得したのは、「オンラインゲームを支える技術―壮大なプレイ空間の舞台裏」を著した、オンラインゲーム開発者の中嶋謙互氏。「日本人の著作から、世界に通用するレベルの技術書が生み出されたことを高く評価する」として授賞に至った。中嶋氏は「今回は素晴らしい賞をいただいて感謝しております。この本を発売してから半年ほど経つのですが、ゲーム業界だけでなく、多くの方に反響をいただいています。様々な分野の方にリアルタイムのウェブの開発を知っていただいて、それがその方の仕事にも役に立つと感じてくれたことに驚き、またそれが今回の受賞理由になったのかなと思います。これからも、ますますオンラインゲームの技術を高めていきます」とコメントした。




Unity Technologies CEOのDavid Helganson氏

 プログラミング・環境部門で最優秀賞に選ばれたのは、ゲーム開発エンジン「Unity」の開発チーム。アマチュアからプロ、モバイルからハイエンド機まで幅広い範囲を網羅できる可能性が評価された。Unity Technologies CEOのDavid Helganson氏は、「丁度昨日、東京に日本支社を設立したところです。去年『CEDEC』に参加した時には皆様と知人になるだけでしたが、今年は皆様によく知っていただいて、とても喜んでいます」と述べた。




カプコン アシスタントプロデューサーの綾野智章氏

 ビジュアルアーツ部門最優秀賞を受賞したのは、レベルの高いモデリング技術を水彩画的なリアルタイムグラフィックスで表現した「ストリートファイターIV」シリーズ。株式会社カプコン アシスタントプロデューサーの綾野智章氏は受賞について、「最近は効率化が叫ばれていますが、『ストリートファイターIV』シリーズの開発は職人技の部分が大きいです。しかし、だからこそ、この職人技をもって世界と戦っていきたいと考えています」と述べた。




レベルファイブ代表取締役社長の日野晃博氏

 ゲームデザイン部門の最優秀賞は、「イナズマイレブン」などで見られたアニメへの展開や、実際の書籍をゲームに取り入れた「二ノ国 漆黒の魔導士」など、メディアミックスのコンセプトを多く取り入れた、株式会社レベルファイブ代表取締役社長の日野晃博氏が受賞した。日野氏は、「日頃、ゲームの企画段階からどうやって楽しんでもらえるかを考えながら取り組んできたので、このゲームデザイン部門で受賞できたことを嬉しく思っております。これからも、ゲームがエンターテイメントの世界で認められるよう努力をしていきたいと思います」と話した。




CRI・ミドルウェア代表取締役専務の押見正雄氏

 サウンド部門最優秀賞を受賞したのは、「日本製のミドルウェアとして、世界レベルの存在」と評された、サウンド開発ミドルウェア「CRI ADX2」。開発元の株式会社CRI・ミドルウェア代表取締役専務の押見正雄氏は、「このようなミドルウェアという地味な会社が賞をいただけるとは驚いております。我々は愚直な技術者集団ですが、15年間コツコツとやってきた成果かと思います。『グランディア』というタイトルに使われたのが最初でしたが、そこからゲームのサウンドは随分と進化しました。どれも開発者の方の情熱だと思いますし、その情熱を支えられたのであれば誇りであり、喜びです。これからも、素晴らしいタイトルのお手伝いができればと思います」と語った。




アマゾン データ サービス ジャパン マーケティングマネージャの小島英輝氏

 ネットワーク部門で最優秀賞を得たのは、3月に東京データセンターを開設したクラウドサービス「Amazon EC2/S3」。授賞の主な理由としては、「サービス自体は昔からあるが、ゲームのために使える遅延の低い環境が整ったこと」が挙げられた。アマゾン データ サービス ジャパン株式会社マーケティングマネージャの小島英輝氏は、「なかなか実体の見えにくいクラウドですが、『Cross Border』が必要という皆様をぜひ支えていきたいと思います」と話した。


(2011年9月8日)

[Reported by 安田俊亮]