東京ゲームショウ2009レポート
「ファイナルファンタジー XIV」プロデューサー田中弘道氏インタビュー
TGSトレーラーの内容から、バトルシステム、グラフィックス、クラス、そして注目のβテスト情報まで気になる話題を聞く!
日本のオンラインゲームファンにとって現在もっとも注目されるタイトルが「ファイナルファンタジー XIV」であることは異論の余地のないところだろう。今年のE3のSCEAのプレスカンファレンスで電撃的に発表され、ここ数年、世界的にポスト「World of Warcraft」不在の続くオンラインゲーム業界に久々に大きな話題を提供してくれた。正式サービス開始時期は2010年を予定。提供プラットフォームはプレイステーション 3とWindows PC。将来的にはXbox 360への提供にも含みを持たせている。
来年発売ということで、E3後の情報公開はまだ比較的ゆったりとしたペースだが、今年8月にドイツケルンで開催されたゲームショウ「Gamescom 2009」ではプレイアブル出展を果たしたことで再び話題を集めた。今回の東京ゲームショウでは、「ファイナルファンタジー XIII」に全社的に注力するためあえて出展は見合わせたということだが、今後ますます注目度が高まるタイトルになるのは間違いない。
E3に続いて2度目となるインタビューでは、打ち合わせのために会場に来ていた「ファイナルファンタジー XIV」プロデューサーの田中弘道と、同ディレクターの河本信昭氏に、E3では聞けなかった話や、その後に発表された内容について、そして東京ゲームショウで公開されたトレーラーの内容等について質問を重ねてみた。
βテスト前ということもあり、まだ未発表の情報ばかりで、話したくても話せないという雰囲気はE3の時から変わっていなかったが、「ファイナルファンタジー XIV」の輪郭がよりクッキリしてきたという手応えは感じられた。最後までじっくりお楽しみ頂きたい。
【「ファイナルファンタジー XIV」TGSトレーラー】 |
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■ 東京ゲームショウトレーラーについて。田中氏「あれは“魔導アーマー”的なもの」
インタビューに応じていただいたプロデューサーの田中弘道氏(右)と、ディレクターの河本信昭氏(左)。幕張メッセのロビーで行なった |
トレーラー後半に突如出現する浮遊物体。田中氏は「“魔導アーマー”的なもの」というが…… |
――まずは、今回東京ゲームショウで公開されたトレーラーについて質問させてください。冒頭の帆船で港町に上陸するシーンが印象的ですが、あれは何のシーンですか?
河本信昭氏: 「ファイナルファンタジー XI」では、まず所属する都市を選んでゲームをスタートするシステムでしたが、あれをイメージするとわかりやすいと思います。
――ええ、あれを見てサンドリアのプロローグシーンを思い出しました。海の都リムサ・ロミンサのプロローグシーンでしょうか。
河本氏: そう思っていただいてよろしいと思います。
――なるほど、すべての冒険者が船でエオルゼアへやってくるというわけではないのですね。
河本氏: そうです。リムサ・ロミンサに関しては海洋国家の港町ですし、海から来る方が物語として盛り上がると思いました。
――「ファイナルファンタジー XIV」では、プロローグシーンであのようなハイクオリティなカットシーンが入ってくるのでしょうか。
河本氏: はい。リムサ・ロミンサ以外もそうなります。
――残り2カ国のプロローグはどのような内容になりますか?
河本氏: どうでしょうか(笑)。まだ作っているところです。
――それからBGMも印象的ですね。これらは植松伸夫さんが作曲された曲ですか? これはどこで使用される曲ですか。
田中氏: 植松さんの曲です。前半のイベント的なもの用です。まだ確定はしていないのです。後半はバトル的なもので入ると思います。ムービーのシーンとは直接関係はありません。
――トレーラームービーのプリレンダーの部分とリアルタイムレンダリングの部分の見分けが付かないぐらい全編ハイクオリティですが、今回の映像ではプリレンダーとリアルタイムの割合はどれぐらいなんですか。
河本氏: 尺だけで言えばリアルタイムの方が長い尺でまわしがちなこともあります。素材的には若干プリレンダーが多いくらいです。特にプリレンダーとリアルタイムがポッポッと切り替わるシーンがあるのですが、僕らが見てもなかなかわからない仕上がりになっています(笑)。
――ムービー後半では戦艦が砲弾を撃つシーンがありました。あれは何のシーンですか。
田中氏: 秘密です(笑)。
――今回は船を所有して海戦もできると?
田中氏: どうでしょうね(笑)。
――その後、空には空中戦艦やSF的な浮遊兵器のようなものが映り「ファイナルファンタジー」らしいシーンになりますね。
河本氏: 実を言うと今回のトレーラーのあの辺はまったく関係ないシーンをつないでいたりします。うまく繋いだなと思いました(笑)。
――E3のときから気になっていますが、あの浮遊している物体は何者ですか?
田中氏: ええと、あれは“魔導アーマー”的なものです。
――魔導アーマーといえば、過去に「ファイナルファンタジー VI」や「ファイナルファンタジー VII」を思い出しますが、「ファイナルファンタジー XIV」では、ああいった一種のSF的なエッセンスも入ってくるのでしょうか。
河本氏: 様々なエッセンスがゲームの中に登場すること以上に、こういうものがある世界に僕らが生活しているのだよということです。世界のコアになるものが最初に描かれることによってチーム全体としてもあそこを目指して夢が広がるものを作れるし、ユーザーの方もいつかあそこに行く夢を持って生活できればと思います。
――「FF XI」は完全なファンタジー世界でしたが、「FF XIV」は徐々に世界観が明らかになるにつれて「どうもそうじゃないな」と感じつつありますが、「FF XIV」はどのような世界観になるのでしょうか。
河本氏: “ハイファンタジー”です。リアルさよりも、派手さを追求したものになっています。僕たちは、あれはSFではなく、ファンタジーだと思って作っています。ファンタジーをもっと美しく作っていくコンセプトです。
――なるほど、すごくベタな質問ですが、魔導アーマーがあるからといって、今回、スキルやアビリティに超能力やサイオニックパワーのような新しい系統の技が出てくるわけじゃないということですか?
河本氏: (笑)。出てきてもそれは超能力とは呼ばないでしょうね。それに魔法と超能力の違いは何かといわれれば難しいですからね。
【TGSトレーラー】 | ||
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TGSトレーラーからの一コマ。左からミコッテ、ルガディン、エレゼン。それぞれ「FF XI」のミスラ、ガルカ、エルヴァーンの面影を残した種族だ |
■ 新しいバトルシステムと連携システムについて
バトルについて語る河本氏。見た目やインターフェイスはそれほど変えずに、システムを抜本的に入れ替えるようだ |
Gamescom出展に合わせて公開されたバトルシーンのスクリーンショット。画面下部の一見コマンドメニューに見えるアイコン群はマクロだという |
――GamesComのデモで印象的だったのはバトルシーンです。「FF XI」と比較して劇的に変わっていますね。
河本氏: あれを出すかどうかについては正直ずっとギリギリまで話をしていました(笑)。
――あれはどれくらい固まっている仕様なのでしょうか。
河本氏: 僕は5割行っていないと思います。
――ということは現在はまだ甘噛み状態であり、今後もどんどん変わってくるだろうと?
河本氏: 時間が許す限り、あるいはリリース後でも許されるならそうしていきたいです。「FF XI」でもそうだったと思います。
――「FF XI」はβ版から製品版になる過程でメニューなどもガラッと変わりました。今回も起こるのでしょうか。
河本氏: 起こると思います。
――見ていて気になったのは今回のインターフェイスの部分です。「FF XI」の面影がほとんどないですよね。
河本氏: イメージとして「FF XI」を踏襲している部分はあります。なぜあのメニューにしたかというと、マクロに近いのです。ユーザーが成長していってアビリティを手に入れる。アビリティを手に入れたらそのアビリティをセットするとあのUIになると。かつそれがマクロの一部にもなれば良い、自分のアビリティの組み合わせを表現できれば1番だねというのが僕らのスタンスです。
――最大いくつまで登録できるのでしょうか。
河本氏: これからですね。マクロとの組み合わせもどうしていくかも議論していかなければならない。
田中氏: 「FF XI」では200個でも足りないと言われましたから(笑)。
――「FF XI」では、モンクなどの特定のジョブが、バトル中にヒマだという批判がありました。今回のバトルシステムは、平等にまんべんなく忙しくなりそうですね。
河本氏: 忙しくなるのは確実だとは思います。ただ、通常攻撃を入力しつづけると思ってほしくなくて、ウェポンスキルをしょっちゅう撃つと思っていただきたいのです。縦で斬ったり横で斬ったり突いたりということを常に考えてもらいたいので、あえてオートアタックがないバトルシステムにしました。
――気になる連携システムはどうなるのでしょうか。
河本氏: こちらもぎりぎりまで入れる入れないの話しをしていたのですが、Gamescom版では入れませんでした。これからお見せできるタイミングがあるかなと思います。オートアタックがなくなったときの連携とは何だろうというのを再構築しています。「FF XI」の連携システムとはまったく異なる姿になると思います。
――まったく異なる姿とはどういうものですか。ヒントだけでもお願いします。たとえば、「エバークエストII」は1人でも手軽に連携ができたりしましたよね。ああいうイメージなのですか。
河本氏: 将来的にはそういったことも考えていますが、まずは友人とどういうタイミングで連携できたら楽しいだろうというところから考えています。
【ギルドリーヴ】 | ||
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ギルドリーヴにおけるバトルシーン。特定のモンスターを一定数撃破するというシンプルな内容。「FF XI」のアサルトに近いイメージだ |
■ パーティー同士の多対多の戦いを実現
「今回は敵もパーティーを組んでいる」という田中氏。安全なキャンプに陣取り、1匹ずつ敵を釣ってきてよってたかって倒すという「FF XI」のお馴染みの風景は、「FF XIV」では過去のものとなりそうだ |
これはいわゆる街のシーンだが、「FF XIV」では街とフィールドをわけるエリアチェンジがなくシームレスに繋がっているため、街の中までモンスターが入ってきてしまうようだ |
――「FF XIV」のバトルの最大の醍醐味は何だと考えていますか?
河本氏: 1番の醍醐味は、戦っているときに位置取りやタイミングを友人と一緒に考えていくことです。
田中氏: 今回は敵もパーティーを組んでいますので、それと相手をどう分断するかも考えることになります。
――特定のボスクラスだけでなく、通常のモンスターでもパーティーを組んでいることがあるわけですか?
河本氏: はい。今回ギルドリーヴをあえて最初に持ってきたのも、それを見せるためです。「FF XI」の狩りの場合、敵を1体だけどうやって連れてくるかがメインでした。今回そうではなく、複数のモンスターがやってきたときに果たしてどういう風に遊んでいくのかが考えられています。どういう位置取りをすればよいのか、どういう立ち居振る舞いをすればよいのかが大きなところです。
――パーティーを組んだ状態の敵は、どのモンスターを釣っても全員が襲ってくると?
河本氏: それに近いと思います。もちろん、敵が1匹だけいて、それをどういう風に料理しようかというシチュエーションもあるとは思うのですが、それだけではなくて、パーティーを組んだ敵と一度に多対多で戦う状況をクリアしていきましょうということです。
――プレーヤー側とモンスター側のパーティー人数は最大どれくらいを考えていますか。
河本氏: 考えていますがこれからの調整だと思います。いっぱいいるなという状況も見ていますので、状況次第かなと思います。
――「FF XI」では、パーティーが最大6人、アライアンスが最大18人というのが1つの単位になっていましたが。
河本氏: それくらいの規模の戦いはやりたいと思います。むしろパーティーの人数の標準値を作らないようにしようということがコンセプトのうちにあって、パーティー最大6人といったそういった数字を提示するつもりはありません。効率どうこうで切れ目を作ってほしくない。2人だったら2人でよいし、3人なら3人でよいということを提示していきたいです。
――なるほど。それでは「FF XIV」では、「FF XI」にあったようなパーティー編成を促すための経験値ボーナスはなしにして、仮に1人であろうが6人であろうが平等に扱うということでしょうか。
河本氏: そうですね。経験値もスキル制にすることによって、自分と相手と敵の強さの差分が重要になってくるのであまり仲間に強い人がいるかどうかが重要なことではないです。
――今回どこでも剣の抜き差しができるとのことですが、これの意味するところは何ですか?
河本氏: 抜刀して戦いの状態で街中を歩くのはいやだよねという話しがありました。一方この状態でずっとやればいいのではないかという議論もありました。ここで収めた状態の速さと抜いたときの状態での早さで違ったりですとか、あとは回復はどうなるのといったことにも影響はあると思います。
――たとえば、武器を捨てて逃げ出すと早く逃げられるといったことがあるわけですか。
河本氏: 確かに武器を納めれば少しは速くなるかもですね(笑)。
田中氏: 今回はエリアの切り替えがなくシームレスですのでマップがフィールドと街とで分かれていないのです。ですから、フィールドで戦いながら街に入るということもやろうと思えばできるわけです。
――なるほど、そうなると今回は市街戦も頻繁に起きそうですね。
河本氏: 頻繁かどうかはこれからですが、起きることは間違いないですね。
■ 「クラス」の役割について。ギャザラーやクラフターだけで一生を送れる!
クラスについて語る河本氏。「FF XI」のジョブに変わる概念がクラスということになるが、パッチでの追加も考えているなど、比較的フレキシブルに対応できる概念になりそうだ |
注目される生産系のクラス群であるギャザラー(左)とクラフター(右)。生産者としてゲームを遊び続けることもできるようだ |
――今回ジョブの替わる概念としてクラスが存在しますが、大項目としてクラス群があり、その下にいくつかのクラスに細分化されています。まず、そのようなシステムにした理由を教えてください。
河本氏: バトルを最初に考えました。魔法使いがいるだろうし、戦士がいるだろうと。他に何ができるだろうと考えた時に、当然合成や採集型のものは考えたのです。それをどういう風にやっていこうというときに、「FF XI」ではジョブではなくスキルとして作られましたが、合成や採集だけで世界を冒険したいという要求は自分自身もプレーヤーとしてすごく感じていたのです。やはり合成するだけで世界を旅したいということがスタートにあるのです。それで分かれていきました。魔法使いと戦士は当然分けましょうという流れで分かれていきました。流れとしてはそのネタが増えていって整理した結果が大きいです。
――今回ジョブチェンジならぬ、クラスチェンジはいかがでしょうか。
河本氏: 武器を変えるだけでできます。ただ、武器だけ変えても、その武器に習熟していないと一気に弱くなります。
――今回クラスの総数はいくつになるのでしょうか。
河本氏: これからですね。正直に言いますと、正式サービス開始からそれ以降にこういう風に出していこうという話しはしています。「FF XIV」のクラスは、「FF XI」のジョブのように拡張版でなければ出せないというものではなく、パッチのような感じでどんどんクラスを増やしていきたいです。
――現在のクラス群ですと、いわゆるヌーカーに相当するシーフや、タンクに相当するナイトの居場所がないような感じですが、このあたりはどうなるのでしょうか。
河本氏: ヌーカーやタンクなどのそれぞれの役割に向いたクラスというものはあります。このクラスであればその役割が強くできますね、というものはありますが、ただしそれしかできないようにはしたくないのであえてああいった分類をしています。このクラスでアタッカーとしての役割をこなしたいので、今日はアタッカーがいないのでアタッカーをしよう、タンクがいないのでタンクのアビリティをいっぱいつけてタンクの役割をしようといったことが簡単に行なえるのが、今回の基本コンセプトです。
――今回クラフターやギャザラーのような生産系のクラスが目を引きます。生産や修復といった要素は当然実現されると思いますが、対象となる素材や行為の範囲はどのくらいのものを考えていますか? 木こりとして木を切る、布で服を作るというのはわかるのですが、その先々、いったいどのあたりまでを想定されていますか。
河本氏: そうですね、まずは想像できるものはすべてやりたいです。拡張自体も最初は装備品などになりますが、その先も考えたいです。たとえば、家具や、その先にあるような大きいものも作れるように考えたい。それが無いといずれはそういう人たちの目標物もなくなってしまいますからね。
――それは生産好きには嬉しいですよね。クラフターやギャザラーで一生を終えられる人は出てくるのでしょうか。
河本氏: 出てくると思います。そういう人たちが世界を冒険できることをメインコンセプトにしていますので、その人たちがモンスターに襲われずにどこまで奥地に赴けるかということもサポートもしていきたいと思っています。もちろんバトルのスキルも手に入れて両方を使いこなしながらいくのも時間のある人であればそういうプレイスタイルでされても良いと思います。
――ここまで職業的な概念が変わってしまうと、「とんずら」や「あやつる」といったお馴染みのアビリティは出てきそうにない雰囲気ですね。
河本氏: そんなことないですよ、「とんずら」は絶対出てくると思います(笑)。あくまで例ですが、「とんずら」を使ったから「シーフですね」と呼ばれるかもしれません。考え方を変えてみるのもアリだと我々も考えています。
――なるほど、必ずしもクラスは武器に紐付けられているばかりではないわけですね。
河本氏: 武器に紐付けられてアビリティを覚えられています。アビリティをどういう風に組み合わせるかによって新たなスタイルが決まってきますということです。
――なるほどなるほど。「FF XI」はジョブチェンジシステムによって無限のやりこみを実現しました。今回、それに相当するシステムは何になるのでしょうか。
河本氏: それがまさにクラスだと考えています。ジョブチェンジやサポジョブが「FF XI」が成功した一番の理由だと私は考えています。そこをどのように進化させるかがポイントだと思います。他のものをやってみたいと思うためにアビリティがあって、それを気軽に変えられるように武器にありますので、根底にあるものはジョブを長く楽しんでもらいたい、という考えと同じです。
――アイテムが消耗するとのことですが、消耗は消失までいってしまうのでしょうか。
河本氏: 消失はいろいろと仕掛けを考えています。
――アイテムが消耗していくゲームは他にもたくさんありますが、消耗したら鍛冶屋で直してまた使うというオーソドックスなイメージでよいのでしょうか。
河本氏: そうですね。そのために合成がメインの人たちにどういう風に活躍してもらおうかというものもありますし、逆にそれができなかった場合にどういった形で対処できるかも考えています。
――確認しますが、「FF XIV」はすべてのアイテムは消耗品だと考えてよろしいのでしょうか。
河本氏: 大まかにいうとそう思っていただいて良いです。武器であろうと防具であろうと道具であろうと。
――それでは非常にレアな武器も消耗するし、直すこともできるだろうと?
河本氏: やはりエクスカリバーを直せるのは名誉ですよね。ただし、非常に高いスキルを必要とすることになると思います。
■ 気になるグラフィックスについて。PC版の必要スペックはどうなる?
――「FF XIV」のウリとしてはなんといっても美しいグラフィックスが挙げられると思います。ただ、グラフィックスはこだわり出すとキリがない分野ですが、どのあたりが落としどころだと考えているのでしょうか。たとえば、PC版はDirectX 11に対応したりするのでしょうか。
田中氏: 今はDirectX 9で作っています。今後、DirectX 10をどこまでやっていくかという感じです。複数のコンシューマ機を検討していますが、現行の機種では互換上やっぱりDirectX 9でないとということがありました。
――なるほど、ベースはDirectX 9世代として、上限の部分についてはたとえばWindows版だけグラフィックスが違うということはありえますか?
田中氏: そうですね。将来的には5年10年というスパンでやっていくものですから、新しい技術への対応はどこかでやる必要があります。
――なるほど、そうなると推奨環境は凄いことになりそうですね。
田中氏: ええ、今のCore 2 Duoでは将来的には厳しいかもしれない(笑)。PCはスケーラブルですし、将来はCPUがメニイコアの時代になりますので、そちらにある程度照準を合わせていかないと、今のスペックで合わせてしまうと5年後にすごく陳腐化してしまうと思います。「FF XI」の時もリリース時はハイスペックすぎるというお叱りがありましたが、「FF XIV」でも、そこは将来を見据えて作っていきたいというスタンスです。
――Windowsではグラフィックスオプションはふんだんに用意されそうですね。
田中氏: そうです。たとえばOSは、Windows VistaからWindows 7への過渡期でもあり、32bitと64bitが混在している状況です。デバイスドライバの対応状況によってはグラフィックスボードのマッチングなどに色々問題が出る時期だと思います。それが2010年という中でどれくらい世代交代するかですね。
――刺激的なキーワードが色々出てきましたが、メニイコア、Windows 7、64bit OSといった要素は、「FF XIV」はすべて対応すると考えて良いですか?
田中氏: はい。人によっては遊べないということがなるべくないように、そこは広く取っていきたいです。
河本氏: 「FF XI」のときはコンシューマ版を元にWindows版を作っていましたが、今はWindowsを元にどのようにコンシューマ向けに調整するかを考えています。まずはこのあたりを目標に作っていってスケーラブルにするという考え方です。
――フレームレートはどのくらいになるのでしょうか。特にPS3版でどうなるか気になるところですが。
田中氏: SCEさんと共同で作業している最中です。最終的にどこまでいくかはわからないです。
――PS3であれだけのクオリティとパフォーマンスを実現するメドはすでについているのでしょうか。
田中氏: そのままというわけにはいかないと思います。PS3版用のグラフィックスをある程度用意するつもりです。
――WindowsとPS3版ではグラフィックスはある程度違ってきますか?
田中氏: テクスチャに関してはPS3専用のものを用意することが決まっています。
――表示解像度は1080pと考えてよろしいのでしょうか。
田中氏: PS3版は720pになるかもしれません。Windows版はCPUとグラフィックスボードの性能次第ですね。
――アートディレクターに吉田明彦さんを起用されましたが、理由を教えてください。
田中氏: 特に深い理由はなかったりしますが(笑)、「FF XII」が終わったタイミングと、「FF XI」から河本をはじめ「FF XIV」に異動したタイミングがほぼ一緒だったので、そこから主なメンバーが集まりました。
――まだすべての世界観は見えていませんが、すでに強烈なイメージを植えつけつつありますね。
河本氏: 僕らが見てもすごいなと思います。
――すべてのパートに対して吉田さんが監修しているという理解で良いのでしょうか。
田中氏: そうですね、だから宣伝素材を出す時も毎回すべてチェックしてもらっています(笑)。
――今回アートに関してこういったところを見てほしいといったものはありますか。
河本氏: 個人的な意見ですが、遠いところを見てほしいです。シームレスな世界で遠くに見える街に向かって歩いていくのは遠いなと思いながらも感慨深いです。
――今回は、果ての果てまでしっかり描画するのでしょうか。
河本氏: 世界全部がシームレスというわけではないのですが、「FF XI」のリージョンクラスでの広さまで歩いていけるので、そういう意味でかなり遠くの山を見てたどり着けるわけです。本当に遠いけど。
■ とっても気になるβテストについて。βテストはまずはWindows版から
――今回GamesComでプレイアブルで出したのは驚きでした。ドイツでプレイアブル出展を行なった理由を教えてください。
田中氏: たまたまタイミングが合っただけです。僕らのマイルストーン的には、そろそろある程度プレイできるようにしようということがありました。ここまでできたのなら試遊で出せるのではないかと話していました。
――その一方で、TGSではプレイアブルが出ませんでしたが。
田中氏: 今回は「ファイナルファンタジー XIII」をガッツリ触っていただこうというスクエニとしての選択です。
――開発側としてはちょっと残念ですよね。
田中氏: いえ、むしろほっとしています(笑)。
河本氏: このタイミングで出すという経験があまりなかったもので、どこまでやりましょうかというのと、ドイツのユーザーさんにどういう風に見てもらえるかがわからなかったものですから。向こうとやりとりしながら向こうのマシンで動きませんといったことがなんだかんだありましたから(笑)。
――現時点でβテストについて何かお話できることはありますか。
田中氏: なるべく早く遊んでいただけるように努力いたします。Gamescomで出したものなどは、α版として出しています。あまり形ができてしまいますとこちらも動きが取れなくなってしまいます。βよりも前の段階のものを遊んでいただいて、いろいろご意見を頂こうかなと思っています。
――βテストの規模と対象地域はどれぐらいを想定していますか。
田中氏: 規模については最初はそれほど大きくはできないと思います。対象地域は全地域です。
――その時点から4か国語に対応してワールドワイドでの運営体制を整えるわけですね。
田中氏: そうです。継続的にβテストをやり続けるわけではなく、不定期で時間を区切っていつからいつまで入ってくださいといって3時間や4時間ほどで目的別にやりたいと思っています。
河本氏: 「FF XIV」ではとにかく細かく細かく実験をしていって、皆さんにだんだん成長していく姿を見ていただきたいなと思っています。
――テストの対象はPS3とWindows両方でしょうか。
田中氏: 初期はWindowsのみになると思います。
――デベロップ版の披露から正式サービス開始までどういった活動を行なっていくのでしょうか。
田中氏: βテストを時間限定からデイリーかウィークリーで24時間体制にもっていって、それからストレステストです。それを段階的に1万人、2万人、4万人、8万人と広げながらやっていく。最後のオープンβに関しては完全にフリーでやっていきたいです。
――デベロップ版からオープンβテストまでどのくらいの期間を想定していますか?
田中氏: 最初は半年くらいと言っていましたが、結構短くなるかもしれない(笑)。
――となると、2010年サービス開始といってもそれはお尻のほうではなく、夏くらいには正式サービスを迎えているかも知れませんね。
田中氏: それはどうですかね(笑)。βテストの間に皆さんの意見を頂いてその内容次第になると思います。
――ずばりデベロップ版は年内に始動しますか。
田中氏: どうですかね。それは開発の頑張り次第です。
――運営に関して「FF XI」とは異なる試みをやってみようというものはありますか。
田中氏: 「FF XI」の場合はリリース時はRMT(リアルマネートレード)が今ほど深刻ではありませんでした。今回は頭から対策はきちっとやっていきたいと思います。ワンタイムパスワードも最初から導入していきます。
――ユーザーさんに一言お願いします。
河本氏: GamesComではドイツの皆さんに先に触れていただきましたが、日本の皆さんに触れていただくのはもう少し先になると思います。鋭意開発しておりますのでもう少しお待ちください。
田中氏: 開発の尻を叩きます(笑)。頑張ります。
――頑張ってください。ありがとうございました。
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(2009年 9月 28日)