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「人喰いの大鷲トリコ」、上田文人氏の解説によるデモプレイを実施
(2015/6/19 14:12)
E3で2015での目玉の1つは、間違いなくPS4「人喰いの大鷲トリコ」の最新情報の発表だろう。最新映像が公開され、発売も2016年と告知された。今回、クローズドブースでディレクターの上田文人氏のゲームの解説と、デモプレイが行なわれた。
「人喰いの大鷲トリコ」は遺跡を舞台に“大鷲”と呼ばれる巨大な生物と、少年の絆を描いたアクションアドベンチャー。開発はSCEゲームスタジオ。ゲームデザインは「ICO」、「ワンダと巨像」を手がけたスタッフが参加している“ジェン・デザイン”が担当している。
デモプレイは横たわっている大鷲を少年が見つけるところから始まる。大鷲は何本か体に槍が刺さっている。傷ついている大鷲は少年に敵意はなく、少年が体の周りを回るのを目で追っている。少年は大鷲の体をよじ登り、突き刺さっていた槍を引き抜く。大鷲は槍を引き抜かれたときは大きな悲鳴を上げたものの、体を起こし、少年の体に自分の頭をこすりつける。
上田氏は「これが大鷲と呼ばれる生物です。モチーフは特になく、一般的に飼われている犬や猫、そして鳥をミックスして作り上げました。ただ、ペット動物が持っているかわいらしさだけでなく、野生動物が持つ凶暴さや怖さも感じられるように、その中間くらいを狙って作りました」と語った。
少年は大鷲がいた広間の周囲を探索する。広間の出口は扉で閉ざされている。少年は遺跡の上部に通路を見つけると、大鷲に向かって声を上げ上を指さす。大鷲は前足を上げ遺跡の上部にかける。少年は大鷲の体をよじ登ることで閉ざされた扉の先に進めるようになる。少年は扉の反対側にスイッチを見つけ作動させることで扉を開ける。こうして大鷲は通路へ進むことが可能となった。このように少年と大鷲は力を合わせて進むのが基本のゲームデザインとなっているという。
この後はトレーラーで紹介しているのと同じ場面が展開する。目もくらむような足場を大鷲は少年の命令通りにジャンプし、追いかける少年の体を受け止める。さらに先には大鷲の“嫌いな”目の描かれたオブジェクトを少年が破壊するシーンが展開する。
上田氏はこの目に見えている場所はすべてステージとなっており、大鷲と共に上に向かっていく。時々こういった目のくらむような高さの演出が盛り込まれているのは怖い場所でも、大鷲にしがみついて越えられるという雰囲気を出すという意図もあったという。ムービーでは確認しづらいが、デモプレイでは大鷲がオブジェクトを威嚇するとき、大鷲の目が赤く発光するのが確認できた。また大鷲の感情を表現するかのように全身の羽毛がざわざわと動くのも印象的だ。
少年が離れると大鷲は甘えるような「クーン」というような声を出す。少年が近づくとうれしそうに鼻面を近づける。また、少年が大鷲に向かってジャンプをして大鷲が受け止め損ね、あわやという時にしっぽを少年に向かって差し出して少年を助けるシーンがあったり、足場が崩れるときは音楽が危機をあおるように転調したりと、演出も盛り込まれている。デモプレイのラストでは、大鷲が崩れる足場から落ちそうになり、少年が柱を押して足場を作ることで大鷲を助ける。少年は大鷲の体にしがみつき、大鷲は全身に力をみなぎらせて遺跡を登っていった。
デモプレイの終わりに上田氏は「前作、前々作との共通点は、ビデオゲームの世界、画面の中の世界に新しいキャラクターを作り、そのキャラクターをいかに魅力的に、実際に存在しているかのように表現したいというところです。それは、これまでずっと追い求めているテーマです」と語った。
この後は質疑応答となった。筆者は「開発が遅れている理由」を質問した。上田氏は「理由はたくさんあって一言では語れないんですが、フレームレートや、メモリ管理など技術的な問題がありました。これだけではないですが、PS4というハードになり処理負荷の問題や、最適化の作業が楽になったのは確かです。しかし、PS4だからゲームの内容が変わったというわけではなく、決まったビジョンに向かって、ハードに左右されない普遍的なものが作りたいという思いはありました」と応えた。
このほかに本作には“成長要素”があること。敵が存在するが、その他のキャラクターの登場は秘密。フィールドはオープンワールドではなく、リニアスタイルのマップであること。大鷲との関係性を壊してしまい、ゲームの進行に影響を与えるといったことはないことが明らかになった。ただしプレーヤーの行動で大鷲と少年の関係は微妙に変化するという。
今回、「人喰いの大鷲トリコ」を見ることで、その世界に深く引き込まれた。少年のちょっと生意気そうに大鷲に命令する姿や、大鷲が少年をいかに好きかが伝わってくる細かい仕草、遺跡の静謐さや、崩れるときにの危機感など、“空気”そのものが魅力的なのだ。ペットとコミュニケーションをとる楽しさ、巨大な生き物と対峙する冒険心を刺激するシチュエーション、ゲームメカニクスの楽しさと、様々な魅力を持っているのが楽しい。「早くこのゲームがやりたい」と強く思った。