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ついに会えたなクソ野郎ども! 「GTAV」先行体験レポート

濃縮されたダメ人間達のるつぼ。そして最凶のキング・オブ・ダメ人間が登場する!

濃縮されたダメ人間達のるつぼ。そして最凶のキング・オブ・ダメ人間が登場する!

証人保護プログラムですっかり勝ち組のマイケル
スラム出身のフランクリン。友達のラマーはすっかりギャング気取り
「GTA」史上最凶のトレバー。何をするかプレーヤーには予測不可能だ

 そして“「GTA」らしさ”といえば“愛すべきダメ人間達”である。下品で下劣で最低で、それでいながら愛嬌がある人間を書かせたら「GTA」シリーズにかなう作品はない。彼らとの出会いこそ「GTA」の楽しさである。

 まず、主人公のマイケルが家族ひっくるめて全部ダメだ。銀行強盗の証人保護プログラムで超贅沢な生活をしている。元銀行強盗が超セレブというのは、アメリカが抱える矛盾そのものだ。それなのにこいつはその贅沢な生活に飽き飽きして、新たな刺激を求めているのだ。

 ゲームのオープニングはマイケルが精神科医に愚痴っているところからである。そのワガママなな言い分にはあきれるしかないし、聞いてるだけで大金をせしめる精神科医の存在も現代のアメリカ社会への皮肉たっぷりである。おまけにマイケルの息子はニートでゲームオタク、娘はポルノも辞さない芸能界志願者、妻はテニスコーチと絶賛浮気中である。

 もう1人の主人公・フランクリンは、前作「GTAIV」のニコを彷彿とさせる、本人よりむしろ周りから積極的にやっかいごとが振ってくる受け身タイプの主人公で、とりわけ友達のラマーが超絶のアホである。これから盗みに入る家の位置を人に尋ねたりするのだ。人に車を売ってはフランクリンとラマーに盗ませて回収するという最低なビジネスをしているシミオンは、「今月の優秀社員」としてフランクリンを表彰しようとし、ラマーは「何で俺じゃねえんだ」とマジギレする。「うわーこいつ頭が悪いなあ」と心の底から感じさせられる。「GTA」シリーズはこういったダメ人間を描かせたら右に出る作品はない。その代表的な人物がラマーだ。

 ダメ人間は街中にも溢れている。「GTAV」には「変質者と不審人物」という、あまりに的確なNPC達が「?」マークでマップに表示される。彼らに出会うことで様々なイベントが展開する。彼らとコミュニケーションを繰り返すことで、ミッションを与えてくれるNPCに昇格する場合もある。パパラッチの片棒を担がされたり、マリファナをすすめられ一口吸ったら宇宙人とガトリングガンで戦う異世界に引きずり込まれたりする。どんな人間が出てくるのか、想像できないところが楽しすぎる。

 こういった「ダメ人間大行進」をたっぷり楽しめる本作だが、ラマーを超える超絶人物であり、プレーヤーの頭をハンマーで叩いたかのように脳を揺さぶる「最凶人物」が登場する。それはNPCではない。なんと3人目の主人公トレバーである。

 彼の初期ミッションは常に多くの構成員を持つ敵対組織と戦うのだが、その理由は「俺があいつらを邪魔だと思ったから」である。トレバーに目をつけられると言うことは死を意味する。組織に属するものにとってトレバーの行動はきわめて理不尽である。それなのにトレバーはほぼ1人で組織に勝ってしまうのがスゴイ。ここまでむちゃくちゃな理由で戦いを挑む切れた主人公は、「GTA」シリーズですら今までいなかった。

 トレバーは猫なで声で相手に懇願しているときに、自分の言葉に勝手に気持を高ぶらせて銃をぶっ放し銃撃戦を始めたりする。トレバーはプレーヤーにとっても次に何をするか予測できないキャラクターだ。「GTA」シリーズはカットシーンでキャラクターがいきなり決断し、「じゃあ後はあんたがやってくれ」と銃撃戦のまっただ中に放り出される展開があるが、トレバーほどプレーヤーを振り回す存在はこれまでなかった。主人公としてトレバーを操作しているにもかかわらず、彼の狂気に迷惑する周りの人々に感情移入してしまうと言う、なかなかない体験ができる。

 「GTA」シリーズは実生活にいたら近づきたくない人物ばかりだが、その中でも彼は最上位に君臨するだろう。そして、今作をプレイした人は皆が口を揃えて「トレバーは最高!」という。もちろん筆者も同意見だ。最も「GTA」らしい人物が、今作で登場する。期待して欲しい。

 「GTAV」はコントローラを握り、最初のミッションをプレイした瞬間から一気に「GTA」ワールドに引きずり込まれ、そしてそのまま止めどなく捕らわれていく作品だ。美しく壮大な世界と、そこに存在するダメ人間達、さらにその頂上に歯をむき出しにして笑うトレバーが待っている。筆者はすでに魂までこの世界に捕らわれている。ぜひこちらに来て欲しい。

【「GTAV」トレバー】

【キング・オブ・ダメ人間たち】
トレバーは誰も止められない。ちなみに彼の宝物はスーパーヒーロー「インポマン」のフィギュア
フランクリンが連れている犬は、ラマーから押しつけられた
3人がどう出会い、彼らがどう戦っていくかがストーリーの中心となる
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(勝田哲也)