【特別企画】アメコミヒーローゲーム総特集

アメコミゲームはこれからが旬! 秋から来年の最新作もご紹介




映画が大ヒットした「アベンジャーズ」。ヒーロー映画の勢いは今後も止まりそうにないが、ゲームももっと盛り上がってほしい!

 スパイダーマンにアベンジャーズ、そしてバットマンと、最近では常に映画館を賑わせているアメリカンコミックヒーロー。映画では「ダークナイト」シリーズが完結し、「アベンジャーズ」の成功によって盛り上がりはさらに勢いづいた。その勢いは2013年以降も止まらず、「ゴーストライダー2」、「ウルヴァリン: SAMURAI」、「ソー: ザ・ダーク・ワールド」、「アイアンマン3」と怒涛のラッシュが続いていく。

 その一方で、彼らをテーマとしたゲームもこれまでにない盛り上がりを見せている。ラインナップとしては、ソーシャルゲーム「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」を筆頭に、Wii U版「バットマン アーカム・シティ アーマード・エディション」、プレイステーション 3/Xbox 360/Wii U「Injustice: Gods Among Us」など目白押しだ。

 映画やコミックスにはないゲームの良さは、自らがスパイダーマンやバットマンに成り代わって悪人たちをやっつけられる爽快感にある。アメコミヒーローゲームは言わばヴァーチャルな“ヒーローなりきり変身セット”であり、ヒーローの気分を味わう体験こそが、ゲームでしか楽しめない大事な醍醐味だ。

 ポイントは「いかにヒーローになりきれるか」。本稿では、そんな秋から来年にかけて遊べるアメコミゲームたちを、最近のアメコミゲーム事情と合わせて紹介する。特に「Injustice: Gods Among Us」は東京ゲームショウ 2012でプレイブル出展されており、実際に触れることができたので、この模様もお届けしたい。またDCコミックとマーベル・エンターテイメント(マーベル)の2大アメリカンコミックス企業を比べながら見ていくことで、アメコミゲームの未来も少しだけ占ってみたい。



■ そもそもアメコミって……?

アメコミヒーローはコミックスが原点。同じキャラクターを違うアーティストが描き続けるというのも特徴の1つ

 読者の中には「そもそもアメコミって……?」という方もいると思うので説明しておくと、約80年前から脈々と続くアメリカの漫画文化を総称してアメリカンコミックと呼ぶ。1938年にスーパーマンが誕生して以降、スーパーヒーローものはアメコミの一端を担ってきたジャンルで、このジャンルの2大出版社となるのが、マーベルとDCコミックとなる。

 マーベルはスパイダーマン、X-MEN、アベンジャーズなどを擁し、DCコミックはバットマンやスーパーマンなどが所属している。ヒーローたちは常にヒーローでいるわけではなく、ほとんどが普通の人間としての顔を持っている。スパイダーマンはピーター・パーカー、バットマンはブルース・ウェインといったように、人々を守るヒーローである傍ら、人間らしい面を所々で覗かせる身近さも人気の理由の1つだ。

 マーベルとDCコミックが日本漫画の考え方と大きく違うのは、作品と作品が1つの世界で繋がっているところにある。例えば、マーベルでは元は違う作品だったアイアンマン、キャプテン・アメリカなどが結集した「アベンジャーズ」があるように、マーベルのキャラクターたちは“マーベル”という世界(マーベル・ユニバース)に、DCコミックの面々は“DCコミック”の世界(DCユニバース)に生きている。

 それゆえにスピンオフ作品も多く、DCコミックでは正史とされる世界を中心に、ある世界ではヒーローの善と悪が逆転していたり、男女が逆転していたり、子供たちばかりだったりと、結構入り組んだ世界構成になっている。

 しかし、そういった事情を抜きにしても、ヒーローたちのカッコよさは変わらない。前置きが長くなったが、早速ヒーローたちのゲームを見ていきたい。



■ 格ゲーに3Dアクション、ソシャゲーとバラエティ豊かなマーベル

「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」。キャプテン・アメリカからゴーストライダー、デッドプールに至るまで、実に豪華なマーベル陣!
ゲーム版「アメイジング・スパイダーマン」の公式サイト

 マーベルと言えば、カプコンとタッグを組んだ「マーヴル・スーパーヒーローズ」に端を発する格闘ゲームシリーズが最も有名なゲームタイトルに挙げられるだろう。シリーズ当初はアーケードゲームとして稼働しており、アメコミに詳しくなくてもこのタイトルを遊ぶためゲームセンターに足繁く通った方もいるのではないだろうか。シリーズの最新作は、「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」。アメコミ調をコンセプトに作られ、参加キャラクターは総勢51名と膨大な数となっている。

 キャラクターの特徴を捉えた動きがそのままゲームの魅力となっており、スパイダーマンなら相手を猛スピードで蹴りつけながら蜘蛛の巣に貼り付け、ハルクなら巨大な岩ごと隕石のように突っ込むなど、派手さの中に演出への気配りがあり、お気に入りのキャラクターを操作するだけでも楽しいアメコミゲームの傑作の1つだ。

 近年は、マーベルからは映画公開に合わせたゲームの発売が恒例になっている。最も新しいのは、映画「アメイジング・スパイダーマン」に合わせたXbox 360/プレイステーション 3用の「The Amazing Spider-Man: Video Game」(日本未発売)。オープンワールド型で、街を自由にウェブスイングして疾走し、平和を乱す悪者を見つけては市民を守る活動をする、という内容。

 移動の肝となるウェブスイングは、地面が迫ったかと思えばビルの屋上を飛び越えているような、広いニューヨークがまさに小さな箱庭になる、スパイダーマンらしい躍動感と疾走感に溢れている。街をいちいち移動するストレスなんか微塵も感じない仕上がりで、さらに悪い奴をあっという間にボコボコにしながらしっかりとユーモアも忘れないバトルもかなり楽しい。

 街をひとたびスイングすれば、気分はすっかりスパイダーマン。なりきり度はかなり高いので、日本未発売というのが非常に、非常に手痛いタイトルだ。

 なお、日本ではゲームロフトよりiOS用「アメイジング・スパイダーマン」が配信されている。グラフィックスなどはコンソール版からは劣るが、フル3Dのオープンワールドとしてニューヨークが再現されており、ウェブスイングなどのアクションを含めてなかなかどうして「スパイダーマン」らしさをしっかりと感じることができる。内容はこちらこちらでも紹介しているので、参考にしていただきたい。

【The Amazing Spider-Man: Video Game】

「アメイジング・スパイダーマン」をベースにしたオープンワールドゲーム。街を飛び回るスパイダーマンアクションが特筆すべき爽快感だが、日本未発売。なぜだ!?

【iOS版「アメイジング・スパイダーマン】

「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」

 そして、今回登場するのがディズニー/DeNAの「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」だ(紹介記事はこちら)。上記に挙げたタイトルが、主にマーベルキャラクターのアクションや動きを楽しむためのものだとしたら、より原作コミックスに近いアプローチをしているのが「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」となる。

 コミックスの表紙や描き下ろしのアートワークをビジュアルに採用し、そこにオリジナルストーリーも付与することで、体験として世界観に没入できるような内容となっている。好きなキャラクターのカードを集めるという楽しみももちろんあるが、単なるカードゲームに収めず、ヒーローが代わる代わるストーリーを引っ張って、自分がマーベルコミックスの主人公のような気分になれるのがいい。

 ヒーローの誰かになれるわけではないが、エージェントとしてマーベルの世界に入り込める、珍しいタイトルになる。この作品は日本だけでなく海外でも展開するということで、日本では知名度の低いキャラクターもどんどん登場する。ソーシャルゲームということで敷居は低いが、ヒーローからヴィランまで総出演するということで、コアなマーベルファンであれば必携となるタイトルだ。

 マーベルゲームの今後だが、先ほど触れたとおり、映画を基にしたゲーム展開が主力となってくるだろう。「アベンジャーズ」のゲーム化はなかったものの、「ゴーストライダー2」、「ウルヴァリン: SAMURAI」などのゲーム化は期待できる。「The Amazing Spider-Man: Video Game」並みのクオリティが出せるのであれば、十分に楽しめる作品になるだろう。もし発売されるのであれば、強く日本での発売も望む。

 さらに注目したいのは、「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」では、マーベルの親会社である米ディズニーがパブリッシャーとして顔を出し、DeNAと共同でタイトルを率いている点にある。今後、ゲームにも力を入れるディズニーがマーベルゲームを積極的にマネジメントするとすれば、映画ベースでないオリジナルのマーベルゲームも続々と登場するのではないか。「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」を皮切りとして、マーベルとディズニーが本格的にタッグを組んだゲームをもっと見たいものだ。


ゲームの中でもより原作に近い雰囲気を持った「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」。DeNAがパブリッシャーのためか、日本での展開が中心になっているというのが嬉しい


■ 決定版なるか! DCコミックはWii U版「バットマン」と「Injustice」に期待

「バットマン:アーカム・シティ アーマード・エディション」

 DCコミックは、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンなどを擁するパブリッシャーで、ゲームだと、「バットマン アーカム」シリーズをはじめとしたバットマンのタイトルがここ数年では制作されている。

 「バットマン アーカム」シリーズは、「バットマン アーカム・アサイラム」、「バットマン:アーカム・シティ」と続く2作品のこと。「バットマン アーカム・アサイラム」では刑務所の中を探索し、最高にして最強の敵ジョーカーを追っていく。「バットマン:アーカム・シティ」ではゴッサムシティがまるごと刑務所になり、5倍の広さになったマップを自由に飛び回ることができるようになった。

 バットマン世界の再現性は精密で、狂人ひしめく暗黒の街の雰囲気が見事に表現されている。街全体を覆う闇に紛れながら、バットマンは孤独に戦う「暗黒の騎士」として活躍する。ジョーカーやトゥーフェイスといった強烈なキャラクターを持つヴィランたちとの戦いも見所だが、「バットマン アーカム」シリーズの最大の醍醐味はやはり、バットマンに深くなりきれるところだ。

 このシリーズではバットマンらしいバットラングでの攻撃やグラップルガンを使った移動などのアクションと同時に、ガジェットを使った情報戦にも焦点が当たっている。残り香などの証拠を手がかりにした追跡や、壁の向こう側を透析した上での敵との戦闘など、あらゆる闇から現われて敵を1人1人倒すバットマン的ステルスアクションに心踊らされる。

 このガジェットと融合したアクションをさらに楽しめるのが、Wii U版の「バットマン:アーカム・シティ アーマード・エディション」になる。Wii U GamePadに対応したことで、地図や敵の情報確認、必要なガジェットの選択などがシームレスになり、よりバットマンの行動の再現度が高くなって没入しやすくなっている。あくまでPS3/Xbox 360版がベースになっているが、バットマンへのなりきり具合がどれほど向上しているかが、本作の最も重要なポイントだ。

【バットマン:アーカム・シティ アーマード・エディション】


「Injustice: Gods Among Us」

 そんなバットマンだけでなく、スーパーマン、ワンダーウーマンなどDCコミックのメンバーが勢ぞろいする格闘ゲームが「Injustice: Gods Among Us」だ。上で紹介した「バットマン アーカム」シリーズはシリアスな雰囲気が強かったが、こちらは少々おバカな成分が多くなってしまった印象で、とにかくDCコミックのキャラクターたちが大暴れしているゲームと考えるのが手っ取り早い。

 このタイトルの注目点は、リアルな3Dタッチで表現されたキャラクターの動きにある。見所は超必殺技で、スーパーマンなら敵を成層圏の彼方まで打ち上げ、自らそこまで追いかけて打ち落とすという豪快すぎる技や、フラッシュなら相手の横をなぜか通り過ぎ、そのまま地球を一周猛烈に走り抜けて改めてパンチ! など、思わず吹き出してしまうような演出がたっぷり仕込まれている。

 最初は必殺技に目が行きがちだが、それぞれの通常攻撃もスーパーマンなら一撃一撃がしっかりしたパワフルな動き、バットマンならグラップルガンやバットラングを格闘の間に挟むようなコンボなど、ただおバカさに徹しただけではないことがわかる。

 ゲームシステム自体は横移動のみの格闘ゲームだが、演出はそれだけでなく、ステージのギミックを利用して砲撃を食らわせたり、停っている車をぶん投げて相手にぶつけたり、周囲を壊したり巻き込みながらゲームが進行する派手さがある。「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」に比べればスピード感は遅めだが、その分リアルな演出になっているので、キャラクター操作の快楽という点で劣ってはいない。

 操作も難しいコマンドなどはなく、十字ボタンと攻撃ボタンの組み合わせが基本となっていたが、実機に触れた10分間では技のコンボやタイミングなどの繋がりは把握できなかった。ここは研究が必要だが、公開されているデモプレイなどを見る限り、操作によっては爽快なコンボが次々と決められるようだ。

 開発の米NetherRealm Studiosは「Mortal Combat」シリーズで知られており、今作でのゴア表現が心配されていたが、そんなことは全くなく、子供から大人まで楽しめるよう広い年齢層に対応できる作品になっているのが好印象だ。ゲーム画面を確認した限り合計で40名ほどが登場するようで、現在も参戦キャラクターも続々と発表されている。DCコミックファンは続報を楽しみにしていただきたい。

【「Injustice: Gods Among Us」ムービー】


 今後のDCコミックゲームだが、「Injustice: Gods Among Us」以降も親会社の米ワーナーがゲームをリードしていくことになるだろう。「Injustice: Gods Among Us」ではオールスターキャストとなったので、今度はワンダーウーマンやその他個別のキャラクターに焦点が当たってくると面白い。

 ワーナーは今後積極的にゲームに力を入れていくことを宣言しているので、アメコミゲームも定期的に企画されると期待していい。「ダークナイト」シリーズも完結してしまったし、イケイケのマーベルに負けないよう映画も頑張ってもらいたいが、ゲームではバットマン以外の新しい作品をぜひ見てみたいものだ。

 アメコミヒーローが世界中で人気があるのは、文字通り彼らが憧れの“ヒーロー”だからだ。スパイダーマンやバットマンになって悪を討つ! ……誰もが1度は憧れるシチュエーションを、よりリアルに体験できるようなタイトルが技術的にも増えてきたことを最近では感じている。憧れがあるゆえに他のタイトルよりも厳しい目にさらされることとなるが、それを乗り越えたタイトルは長く語り継がれ、愛されることとなる。

 映画も盛り上がっているが、これからアメコミゲームは、長い目で見ても映画に負けないくらい旬の時期に入っていくだろう。アメコミヒーローたちに敬意を表しつつ、もっともっと、ヒーローになりきれるようなゲームタイトルが出てくることを待ち望みたい。


【DC Universe Online】

年末や来年まで待てないよ! という方のためには「DC Universe Online」がオススメ。運営は米Sony Online Entertainment。アメリカでのサービスとなり、日本ではWindows版が楽しめる。自分が望む通りのヒーローになれるという設定が最高だが、日本語環境ではクラッシュするという難点もあるので注意が必要


【LEGO Batman 2: DC Super Heroes】

バットマンでは「LEGO Batman 2: DC Super Heroes」も発売されている。レゴ化されたDCコミックのキャラクターたちが活躍するという異色作で、確かにレゴ世界なのだが、しっかりアニメーションしてストーリーもあるかわいくも楽しい作品だ。しかし、日本では未発売。なぜなんだ!

「アベンジャーズ」:
TM & (c) 2012 Marvel & Subs.

「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」:
(C)TM & (C) 2011 Marvel & Subs.
(C)モト企画 (C)CAPCOM CO., LTD. 2011, (C)CAPCOM U.S.A., INC. 2011 ALL RIGHTS RESERVED.

「アメイジング・スパイダーマン」:
Spider-Man, the Character TM & (c) 2012 Marvel Characters, Inc. The Amazing Spider-Man, the Movie (c) 2012 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.(c) 2012 Gameloft. All Rights Reserved. Gameloft and the Gameloft logo are trademarks of Gameloft in the US and/or other countries.

「マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ」:
TM & (C) 2012 Marvel & Subs.
(C)DeNA Co., Ltd.
developed by Cygames

「バットマン:アーカム・シティ アーマード・エディション」:
BATMAN: ARKHAM CITY ARMORED EDITION software (C) 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.
BATMAN and all characters, their distinctive likenesses, and related elements are trademarks of DC Comics (C) 2012. ROCKSTEADY LOGO, WB GAMES MONTREAL LOGO, WB GAMES LOGO, WB SHIELD: TM & (C) Warner Bros. Entertainment Inc.

「Injustice: Gods Among Us」:
Injustice: Gods Among Us is an all-new game by award-winning NetherRealm Studios, creators of the definitive fighting game franchise Mortal Kombat. The game is scheduled for release in 2013 for the Xbox 360 video game and entertainment system from Microsoft, PlayStationR3 computer entertainment system and Wii U.

(2012年 10月 24日)

[Reported by 安田俊亮]