ガンホー、「トイ・ウォーズ」、「Dimension3.0」運営チームインタビュー

ストーリーシステムやトゥルースキルなど今後の実装プランが公開


【Dimension3.0】

4月23日実装予定



 ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社は、Windows用オンラインTPS「トイ・ウォーズ」において、アップデート「Dimension3.0」を4月23日に実装する。今回、実装直前にアップデートの内容、さらに今後の施策を聞くことができた。

 「トイ・ウォーズ」は昨年の3月からサービスをスタートし、1周年を迎えた。アニメ作品とのコラボレーションを積極的に展開し、間口の広さを目指す一方で、ゲーム性の部分でコアプレーヤーとの乖離が起きているという一面もあった。インタビューでは幅広いユーザーに向けた施策や、運営スタッフを前面に押し出したユニークな提案といった、積極的な姿勢が語られた。

 話を聞いたのは、チームリーダーを務めるガンホーオンライン・エンターテイメント第2パブリッシング部第2プランニング課課長代理の齋藤和寛氏、プロモーション担当のプランニング課主任の渡辺竜太郎氏、制作担当のプランニング課の亀田誠氏の3名。今後の様々なアイデアが提示された。





■ 念願のストーリーシステム実装。今後はバランスにも調整が

チームリーダーを務める第2パブリッシング部第2プランニング課課長代理の齋藤和寛氏
プロモーション担当のプランニング課主任の渡辺竜太郎氏
制作担当のプランニング課の亀田誠氏
ライバルとなる「ホビークラ部」が登場するストーリーシステム

 「トイ・ウォーズ」は2011年3月からサービスを開始し、1周年を迎えた。齋藤氏はこの一年を振り返り、「予想していたことと、そうでないものがわかり、これからどんなことをやっていくか、“課題”が見えてきた」と語った。本作がゲームを楽しむシューター層と、アニメファンを取り込むことができ、ユーザー層も10代後半~20代前半、そして30代前半がボリュームゾーンとなった。

 そして、オフラインイベントの活性化も自信を強めた部分だという。2011年12月には「トイ・ウォーズ」の日本一決定戦を決める初の公式トーナメント「TWGP(トイ・ウォーズグランプリ)」のオフラインでの決勝戦が行なわれ、非常に好評だった。

 また、本作ならではの“遊び方”も確立されていったという。それが「近接戦」だ。対戦型TPSでありながら、あえて武器を近接戦のみに限定して戦うスタイルがユーザー間で流行っているという。プレーヤー達は武器の攻撃範囲を見切り、自分の戦い方に合わせた装備をチョイスするなど、熱い戦いが繰り広げられている。

 プレーヤー間での人気の高まりから、運営側からもこの近接戦にフォーカスした施策を行なっていくとのことだ。ちなみに「トイ・ウォーズ」は現在、日本と、ヨーロッパでサービスが行なわれているが、ヨーロッパでは近接に特化するような遊ばれ方はしていないとのことだ。

 一方で課題として見えてきたのは「アニメ好きユーザーの定着率」だ。「トイ・ウォーズ」は「ストライクウィッチーズ」や「魔法少女まどか☆マギカ」、「涼宮ハルヒの消失」など、アニメ作品とのコラボレーションによるアバターアイテムが販売されたのだが、そこで興味を持ったユーザーがゲームを始めても、ゲーム内ではコアユーザーと初心者の腕が離れすぎていたうえ、かつゲーム性もコア寄りなため、ライトユーザーが定着しないという。

 こう言った状況を踏まえた上で、亀田氏が紹介したのが、4月23日に行なわれるアップデート「Dimension3.0」だ。注目ポイントは、サービス開始時にアナウンスされていた「ストーリーシステム」の実装だ。これはチュートリアルから続く要素でプレーヤーは「フィギュア部」として、仲間と共に学園ドラマを展開していく。

 今回実装される要素では、ライバルとなる「ホビークラ部」が登場する。ストーリーはプレーヤーのレベルによって進行し、アバターなどの報酬アイテムも手に入るという。喜多村英梨さんや今井麻美さん、近藤唯さん、山中真尋さんなどが声優としてキャラクターを演じ、アニメ好きなファンにアピールする。ちなみにすでにレベルが上がっているユーザーの場合も、ストーリーを一気に体験でき、もう一度見ることもできるという。今後ストーリーはさらに展開し、「クエストシステム」なども追って実装していきたいとのことだ。

 さらに4月23日には、ルーム選択でマップアイコンが表示されるようになったり、バランスが調整された。アバターアイテムに関しては、これまでアニメキャラクターのコラボレーションアイテムの方が、ゲームオリジナルの「トイくじ」に比べると強かったため、人気が高かった。そのため、バランス調整として、トイくじのアイテムが上方修正される。また、武器強化をしやすくする「エネルギー回復」アイテムも販売される。

 さらにバランス調整に関しては、これ以降も引き続き行なわれていくという。これまで効果があまり感じられなかった「HP増加」はより効果をアップさせ、速度増加のカスタマイズと差別化することを検討していく。また、ゲーム内通貨で買えるアイテムも強化可能になる。バズーカの威力や、武器の持ち替え速度など、さまざまな点に手が加えられる予定で、現在、バランスを検討しているところだという。

 また、5月には今後の「トイ・ウォーズ」の方向を決めるために「大規模アンケート」が行なわれる。このアンケートは上記のバランス調整における重要な情報として活用したいと、開発側の強い要望で実現したもので、2012年後半のアップデート、遊び方、コンテンツに関して、方向性を決めるものとなっている。「このアンケートは非常に重要なものとなります。1人でも多くのユーザーさまからアンケートをいただきたいです」と齋藤氏は語った。


ストーリーはレベルが上がると進行する。喜多村英梨さんや今井麻美さん、近藤唯さん、山中真尋さんなどが声優としてキャラクターを演じる
ストーリーシステムのほか、UIもアップグレードされ、対戦時のマップ選択がアイコンで表示される




■ より現実に即したマッチングを。コアプレーヤー向けの目標を提示しつつ、カジュアル向け施策も積極的に

現在でも運営参加の様々なイベントが行なわれている
「ギルティクラウン」コラボレーションのアバター。コラボレーションくじ「フィギュア☆スター」は月に1度販売されている

 インタビューではさらに、「トイ・ウォーズ」の2012年の施策が明らかになった。今後の大きな目玉となるのが5月から7月にかけて行なわれる「TW甲子園(トイ・ウォーズ甲子園)」だ。これはクランで行なうオンラインでのトーナメント大会で、成績の優秀なクラン達が腕を競う「1部リーグ」と、実力が足りなくても戦いたいクラン「2部リーグ」で行なわれる。

 1部は希望者なら誰でも参加できるが、2部リーグは条件を満たすクランだけ参加できる。このクランの選考条件は現在非公開だ。さらに「近接リーグ」という近接戦に特化した対戦が行なわれるという。この「TW甲子園」はこれまでのオンライン大会と違い、1回戦、2回戦、といったリーグでの戦いで、使用マップが異なる。

 このため、幅広いマップ知識が求められる。また、実況に関してもユニークな施策を用意するとのこと。なお、この「TW甲子園」の勝者は年末に予定されている「TWGP(トイ・ウォーズグランプリ)」でのシード選手として出場できる。

 そして初心者と上級者のよりよいマッチングを目指して取り入れられるのが、開発コードネーム「トゥルースキル」という要素だ。現在はプレーヤーを倒した「キル数」と、倒された「デス数」でのレートでユーザーの腕を分けているが、腕の悪い人を倒しても、熟練者を倒しても同じキル数としてカウントされる。初心者を狩りまくるキル数が実力を表わすのか、といった点を考慮し、熟練者が初心者を倒してもあまりポイントが入らないような、新しい評価システムを導入し、より実情に即したユーザーマッチングを行なっていく予定だ。

 また、コアプレーヤー向けには1 on 1の「ラダーシステム」の開発も予定されている。クランが代表として1人を出し、皆で観戦している中で戦うということも可能で、“傭兵”として、フリーランスのプレーヤーを雇うこともできる。そしてこのラダーシステムはさらに、「クラントーナメント」といった集団戦への布石となる。初~中級者向けには、観戦や動画による「見て楽しむ」方向で、上級者の戦いを分析し、学ぶ機会を提供していきたいという。

 そして、「コミュニティの拡張」も重要に考えている部分だ。オフラインイベントでは「友達に誘われて来た」という人が多いのだが、彼らを定着するプレーヤーにするための施策を考えている。また、アニメが好きで本作を始めたユーザーに対しては、齋藤氏が自ら「アニメ好き向けのクラン」をつくり、クランチャットでずっとアニメの雑談をするも有りかと考えているという。

 このように齋藤氏を始めとした運営チームが自身のキャラクターを前面に押し出してアピールしていく予定だという。彼らのチーム名は「MK5(マジで空気の読めない5人)」
として、今後クランの創設や、イベントの主催を行ない、プレーヤーに「トイ・ウォーズ」のより幅広い楽しさをプレーヤーに提示していく。今後ゲームの基本的な遊び方をレクチャーするような講習会なども含めて、MK5は積極的にユーザーに働きかけていくという。

 ゲームの遊び方、という部分では、現在ユーザー主催のイベントが行なわれているが、これまでは運営の方針として支援ができなかった。今後はユーザーが主催するイベントの賞品を提供するなどの支援施策要素を検討中とのことだ。齋藤氏は他にもユニークな提案をしていて、「一番登録者数の少ない県に運営チームのメンバーが出向いて、それぞれ新規登録者を増やしてくるサバイバル企画はどうか?」など様々な企画を練っている。このノリはMK5全員に浸透しており、様々な提案がチーム内で行なわれている。今後のイベントでも、MK5の細かなアイデアが活かされていくとのことだ。

 コラボレーションに関しては、「トイ・ウォーズ」は1カ月に1度、様々なアニメ作品のコラボレーションを行なっており、今後も継続していく。アニメ業界とのコラボレーションはアバター以外にも、広げていきたいと考えている。開発チームも日本のアニメーションに対しての理解が深く、今後も積極的にアニメーションとの繋がりはアピールしていく。

 さらに、“ファッション業界”などにもコラボレーションを提案していくという。その方向性は、現実にある服をアバター化するのではなく、ゲームの方向性を伝えた上で、実際の服を作っているファッションデザイナーに、「アニメのコスチューム」のようなデザイン、さらに「武器」までデザインしてもらうという。現在国内外のアーティストの服を手掛けるデザイナーにアプローチを始めているとのことだ。現役ファッションデザイナーの、ゲーム向けデザインというのは、どんなものになるか、楽しみな要素である。

 ユーザーへのメッセージとして渡辺氏は、「私はプロモーション担当で、プロモーションの方からユーザーさんに楽しんでもらいたいと思います。色々なことをやっていきますので、ゲームコンテンツ共々、楽しみにしてください」。亀田氏は、「MK5でユーザーさんと運営の距離を縮め、よりよいイベント、よりいいアップデートを行なっていきます。ご期待下さい」。齋藤氏は、「私は、ユーザーの皆様の代表であると思っており、皆様の意見を親身に受け止め、開発チームに届けることはもちろん、率先して面白いことをしていきたいです。ネタ企画にも積極的にチャレンジしていきます。年末に向けどんどん加速していきますので、どうぞお楽しみに!」と、語った。

 「トイ・ウォーズ」は現状だとコアプレーヤーと、アニメで興味を持ったプレーヤーが離れているイメージがある。勝つためには狙撃ポイントの把握や、バズーカーで打たせてのショットガンの攻撃、格闘戦の見切りなど、ゲーム性において、熱心なファンは獲得する一方で、カジュアルなユーザーにはわかりにくく、到達する前にくじけてしまいそうなハードルを感じさせる部分がある。

 今回、齋藤氏率いるMK5が、このゲームの間口を広げるために行なう様々な施策が明らかになった。ユニークなアイデアであり、応援したくなった。また、コアプレーヤー達による戦いへの施策と、「観戦の楽しさ」を盛り上げていく方向も興味がひかれる。「トイ・ウォーズ」はこの1年でどんなコンテンツへと進化していくのか、注目していきたい。


ユーザー間では近接武器に限定した接近戦が人気だ
「ホビークラ部」のキャラクター。倉光 麗、海藤 茜、橘 風流
こちらはフィギュア。ジャンヌ、ガルド少佐、一閃

(C)NQ Games Co.,Ltd/ Gravity Co., Ltd./GungHo Online Entertainment,Inc.

(2012年 4月 23日)

[Reported by 勝田哲也]