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押井守監督の実写デビュー作「紅い眼鏡」4Kデジタルリマスター化クラウドファンディングが1日で目標1,000万円を達成!

押井監督からのビデオメッセージも公開

【「紅い眼鏡」4Kデジタルリマスター化のためのクラウドファンディングプロジェクト】

6月27日まで実施予定

 MotionGalleryは、押井守氏初の実写長編作品「紅い眼鏡」(1987年公開)の4Kデジタルリマスター化のためのクラウドファンディングプロジェクトを4月29日より実施している。クラウドファンディングは、6月27日まで実施される。

 本プロジェクトは、フリーの演出家である野田真外氏が起案者となり、今はなき東京現像所から引き上げた「紅い眼鏡」の35mmネガフィルムを4K画質でレストアし、後世に残していくもの。開始からわずか1日で目標金額を達成し、ついには目標金額の3倍以上の3,000万円を超える支持を集め、本日5月30日に「早期達成大感謝祭」の開催が決定した。

 当初、公開予定はなかった「紅い眼鏡」は、キネカ大森で公開後、「ケルベロス 地獄の番犬」(1991)や「人狼 JIN-ROH」(2000)につながる「ケルベロス・サーガ」と呼ばれる押井守氏の作品群の起点となった。また、本作以降はアニメーションの仕事と平行して実写の作品も多く手がけるようになり、転換点となった作品でもある。本作のプロデューサーで音響監督の斯波重治氏が参加するほか、音楽で川井憲次氏が参加。以降の押井作品に欠かせない存在と出会ったことになる。

 本クラウドファンディングのリターンは、10,000円以上の支援で、4Kデジタルリマスター版のBlu-ray Discが届けられる他、復刻版アフレコ台本+オリジナル写真集(35,000円)等がある。

 「早期達成大感謝祭」により、ブルーレイディスクを申込んだ人に、「紅い眼鏡」4K UHDを追加(ブルーレイと4K UHDの2枚組みに変更)。川井憲次氏、押井監督サイン入りディスクコース(40,000円)を6月3日13時に追加することも決定した。また、支援金額が3,500万円に到達した場合、通常ケースからスチールブック(スチール製ケース)にグレードアップするストレッチゴールの第2弾も実施する。海外からも問合せをもあるため、海外からの応募用コース(押井監督のサイン入りコース)も6月3日13時に追加される。

【押井監督からビデオメッセージが届きました!(5/18)~押井守監督作品『紅い眼鏡』4Kレストア計画PV】

□クラウドファンディングページ

「紅い眼鏡」について

 声優・千葉繁さんのプロモーションフィルムを作るという自主映画企画だったが、次第に企画がスケールアップして、35mmフィルム撮影での本格的な映画として完成したのが本作「紅い眼鏡」。監督は、それまでアニメーションの監督として活動してきた押井守氏で、これが初の実写長編作品となった。

 スタッフも脚本の伊藤和典氏ら、押井氏がチーフディレクターを務めた「うる星やつら」の関係者が参加している。出演は、主演の千葉さん以外も鷲尾真知子さんや田中秀幸さん、玄田哲章さんら声優やアニメ業界関係者が多く参加している。すでに故人となった声優の永井一郎さんや、アニメーターの大塚康生氏らの動く姿が見られると言った意味でも貴重である。また、岡本喜八氏映画の常連として知られた天本英世さんが月見の銀二役で出演している。

【ストーリー】

20世紀末、警視庁は激増する凶悪犯罪に対し、強化服「プロテクトギア」と重火器で武装した「対凶悪犯罪特殊武装機動特捜班」、略称・特機隊を組織する。しかしその苛烈な捜査手法に非難が集中し、組織は解体を余儀なくされた。だが一部の隊員は反乱を起こして解体に抵抗、1人の男がプロテクトギアとともに海外逃亡を果たす。

その男の名は都々目紅一(とどめこういち)。3年後、紅一は大きなトランクを手に帰国する。はたして、彼の目的は何か……(1987年/パートカラー/120min)

クラウドファンディングについて

押井守氏の実写デビュー作「紅い眼鏡」4Kデジタルリマスター化に支援を!

 「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の押井守監督の初実写映画「紅い眼鏡」。今はなき東京現像所から引き上げた35mmネガフィルムを4K画質でレストアし、後世に残していくとしている。

期間:6月27日23時59分まで

目標:1,000万円→5月30日13時時点、30,926,004円
・ストレッチゴール第2弾:3,500万円~通常ケースからスチールブックにグレードアップ

用途:フィルム修復費用(50%=500万)、特典費用(35%=350万)、キャンペーン運用費用(15%=150万)

リターン:3,000円~75,000円(フィルムしおり、ブルーレイディスク、ブルーレイディスクに名前をクレジット、特製小冊子+専用ケース、復刻アフレコ台本+オリジナル写真集、サイン入りディスク)
※「キネカ大森での完成披露試写会&打ち上げにご招待」はSOLDOUTしました。

スケジュール
・8月:4Kマスター完成
・9月:オーサリング・プレス作業
・12月:発送開始、キネカ大森で完成披露上映会
※今回の追加リターンを製作するため、製作期間が少し延びることが判明し、12月中のお届けを予定しております。完成披露試写会については現在調整中です。

「早期達成大感謝祭」

(1)当初のリターンに以下の内容を追加。
・ブルーレイディスクを申込みした人に、「紅い眼鏡」4K UHDを追加(ブルーレイと4K UHDの2枚組みに変更)
・メイキングビデオを制作(ブルーレイディスクに収録予定)
・英語字幕を追加収録

(2)「サイン入りディスク」コースを追加。【6月3日13時より数量限定】
・川井憲次サイン入りディスクコース(4万円)を追加(50個限定)
・押井監督サイン入りディスクコース(4万円)を再追加(40個追加)

(3)ストレッチゴールの第2弾も追加。
・支援金額が3500万円に到達した場合、通常ケースからスチールブック(スチール製ケース)にグレードアップ

(4)海外からも問い合わせがあるため、海外からの応募用コースを追加(押井監督のサイン入りコース)。【6月3日13時より数量限定】

【コメント 押井監督】

 「紅い眼鏡」は僕の初めての実写作品であり、その後の実写作品を「売れない」、「当たらない」、「難解」、「退屈」、「道楽」さらには「呪物」といった方向へ導いた所謂「犬の呪い」の始まりであり、その一方でいまだに続いている「ケルベロス・サーガ」の原点でもあります。

 すでにご覧になった方々には説明不要かとも思いますが、その評価は賛否両論とか毀誉褒貶とかいうより、ハッキリ言って9割までがボロクソだった不幸な作品ではありますが、なぜかごく一部の呪われた映画好きの人々と、あの「黒い動甲冑」の発する奇怪なフェロモンに惹かれたフェチな方々にとっては「酢豆腐のように後を引く」映画になったようで、現在に至るも原版は廃棄処分されずに生き残っております。ありがたいことです。監督としてこれに勝る喜びはありません。

 そこでさらに一歩踏み込んで今回のリマスター版のお話です。当時としても低予算でー粗大ゴミ置き場から回収した材料でセットを組むしかなかったような、しかもモノクロ作品である「紅い眼鏡」を、なぜいまリマスターするのか? 作品の評価は置くとして、その意義を技術的側面から説明したいと思います。

 「紅い眼鏡」をモノクロ作品として仕上げたいと考えた理由は、決して低予算だったからではありませんし、監督の趣味でそうなったという訳でもありません(それもありますが)。当時でもモノクロフィルムの入手はすでに困難であり、まして長編劇映画の撮影に必須でもあるフィルムのロットナンバーを揃えるという作業は困難を極めました。入手可能だったネガフィルムの絶対量には限界があり、撮影にあたってはカメラ内に残った十数秒分の端尺といえども無駄なく使用するために大切に保管され、撮影部の大きな負担にもなっていました。そこまでして、なぜモノクロフィルムに拘ったかといえば、それは一にも二にも「紅い眼鏡」という作品にとって何より重要な「紅」という色を演出的に際立たせるー色彩設計を極限まで重要な演出要素として確保したかったからに他なりません。全編モノクロームの無彩色の世界の中で、夢とも幻ともいえるような鮮やかさで浮かび上がる「紅」の色彩は、この作品がどうしても獲得しなければならない色であり、すべての演出方針はこの獲得目標に向けて決定されなければならなかったからなのです。紅一という主人公の名前も、幻影の紅い少女(赤頭巾)も、あの黒い動甲冑の暗闇に輝く電子眼の紅い色も、全てはその「紅」に向けて収斂すべき伏線だったのです。まあ撮影中の思いつきだったりもしますが。

 当時はデジタルなどという結構な手段は存在しませんから、ラストシーンでモノクロの世界から鮮やかに浮かび上がる「紅い少女」の色彩をワンカット内で実現するために、カメラマンの間宮さんと知恵を絞りました。その結論が「モノクロネガフィルムで撮影し、それをカラーポジに焼き付けることで、カラーフィルムの世界に擬似的にモノクロの世界を出現させる」という方法でした。この方法は副産物として、モノクロの柔和なトーンに微妙な粒状を加えて、伝統的な邦画の世界の情緒的な映像と一線を画す、という効果を上げることも可能としたのです。

 ご存知でしたか? 実はそうだったんです。この疑似モノクロ映画はネガフィルムを確保するために奔走し、ラボでのオプティカルテストを繰り返し、映像のキレを担保するためにズームレンズの多用による現場の効率化を退けて敢えてレンズ交換を繰り返し……オカネはなかったけど手間暇だけはふんだんにかけて制作した映画だったのです。いやあ、本当に大変だったなあ、といっても苦労したのはスタッフだけで、監督である僕自身は初めての実写映画の現場を堪能しただけなんですけど。

 この疑似モノクロ映画の微妙な色彩の体験は、本来はオリジナルプリントの上映によってしか実感できないのですが、もし現在の技術でリマスターできるのであれば、DVDやLDでしか鑑賞できなかった方々や、遠い記憶の彼方にあるスクリーン体験を蘇らせたいという物好きな方々に、新たな映像体験を提供できるのではないかー。それは呪われた映画を撮って、本人も呪われた監督になってしまったオシイ個人のささやかな願望でもあります。

 というわけで、すでにDVDをお持ちの方にもお願いです。「紅い眼鏡」の「紅」をーモノクロの世界から鮮やかに浮かび上がる「紅い少女」をこの眼で観たい、確認したいという殊勝な方々へ今回の企画への賛同をお願い致します。目標額に達しなくても恨んだりしませんから。

【コメント 主演・千葉繁さん】

 時が経つのは早いもので、気がつけばあの狂乱の日々から38年!

 そもそも事の始まりは数々のアニメ作品で音響監督をなさっていた斯波重治さんから私のファンクラブ向けに詩の朗読やショートドラマなどを収録したLPレコードを作りたいんだがどうだろう? という有り難いお話からだった。ところがその企画に押井守監督や脚本家の伊藤和典さんが参加したところから話はどんどん大きくなっていった。「どうせなら映像の方がファンも喜ぶのでは?」、「いやいや、だったらいっその事35mmの映画にしようよ!」などと話は盛り上がり、最初は穏やかに微笑んでいた斯波さんの顔が徐々に青みを増していき、気が付いたら夕方6時くらいに撮影現場に入り朝日が昇ってきたら終了解散という前に進むことしか考えない魔物が走り始めていた!

 小平の廃工場、横浜の安ホテル、東京湾埋立地、その他数えきれないほどの怪しげなロケ現場で牛丼を貪り、赤い眼鏡の裏に仕込まれた豆電球で瞼を焦がされ、どぶ川の水をしこたま飲み腹をくだし、拷問台に縛り付けられ殺意ある水責めに死にかかり、深夜3時に長い階段を何度も駆け上がり足が攣り、狭いトイレで殴り合いの末強烈な下痢に襲われのたうち回り、前貼りもつけず白塗りの輩を撃退し、非合法の立ち食い蕎麦屋で不味い蕎麦を啜りなどなど夢の断片を彷徨い歩く日々が続いた。

 そのため睡眠不足と過労がピークに達し直立姿勢でカチンコを握ったまま爆睡していた助監督やら、隣のセットでひたすら穴を掘り続け結局その労働が報われることなくスコップを枕に横たわったスタッフやらやらの魂が明け方の撮影現場に浮遊していた。

 だがそんな環境にあっても我々は押井監督の「夢の世界」に酔いしれ踊っていたのだ! そして「あの夢」は今も続いている……。

【コメント 起案者・有限会社グラナーテ 代表 野田真外氏】

 時が経つ「紅い眼鏡」は後に世界的に有名な監督となる、若き日の押井守が手がけた挑戦作であり、アニメーション監督でありながら実写作品も平行してコンスタントに作り続けるという独自のポジションに、本作品によって第一歩を踏み出しました。

 よくわからない、難解だ、と評されることも多い作品ですが、若き日の押井守や千葉繁の情熱が焼き付けられた、熱き青春のフィルムでもあります。

 この機会に「紅い眼鏡」に再びスポットが当たり、後世まで残ることを心より願い、小さな制作会社と関係者が一丸となってがんばっています。皆様のご協力を心よりお待ち申し上げております。