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「オーバーウォッチ ワールドカップ 2019」、アメリカが悲願の初優勝

「USA! USA!」の大歓声が響く会場で、宿敵の韓国、中国を制する

11月1日、2日開催(現地時間)

会場:Anaheim Convention Center

 「オーバーウォッチ ワールドカップ 2019」のプレイオフが、Blizzard Entertainmentの巨大ファンイベントBlizzCon 2019の会場内にあるアリーナで開催された。過去3年、韓国がその強さを見せつけてきたが、今年は番狂わせが発生した。なんと韓国が準決勝で敗退、頂上決戦はおりしも全世界が注目している二大大国、アメリカと中国で競われることとなったのだ。

 会場いっぱいに響き渡る「U・S・A!」コールに応えるためにも絶対に負けられないアメリカチームと、敵陣のど真ん中で気持ちを鼓舞して勝利を目指す中国チーム。アウェーである中国に不利な雰囲気ではあるが、アメリカチームも想像を絶するプレッシャーの中での戦いだったはずだ。このレポートでは、そこにいるだけで気持ちが高揚した、熱気充満の会場や試合の様子をダイジェストでお届けしたい。

プレイオフ初出場の日本はイタリアに敗退、グループステージ出場ならず

 まずは大会ルールを説明しておこう。「オーバーウォッチ ワールドカップ 2019」は各国の競技委員会が選出した選手が、国の旗を背負って戦う国際大会だ。競技委員会のメンバーはゼネラルマネージャー、コーチ、コミュニティ・リードの3人。ゼネラルマネージャーはファンやコミュニティの投票によって選ばれる。

 今大会はルールが一部改訂され、現地に行きさえすれば予選に出場することができるようになった。今年は28の国と地域が参加してイベント前日の10月31日に予選が開催され、上位10チームがグループステージに駒を進めた。

 日本チームはクラウドファンディングで遠征費用を集めて7人の選手を送り込んだ。日本はコロンビア、フィリピン、イタリア、インド、スウェーデンらとともにブラケットCを戦った。予選ルールは勝ち抜けのシングルエリミネーション。日本は初戦でイタリアと当たり、2-3で敗退した。イタリアはインドにも勝利して強さを見せたが、スウェーデンに敗れ、このブラケットからはスウェーデンがグループステージへの出場権を手にした。

 10チームによるグループステージは、イベント初日の11月1日に、アリーナで開催された。グループステージは5チームごとにAとBの2グループに分かれて、総当たりで戦う。グループAは、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデン、イギリス。アメリカはすべての試合を3-0で勝利するなど絶好調。対する韓国はイギリスとスウェーデンには3-0で勝利したものの、フランス戦は1-2でフランスに敗れた。かろうじて上位6チーム中には残ったものの、今ひとつ乗り切れていない様子だ。Aグループからは、アメリカ、韓国、フランスがプレイオフへの進出を決めた。

 グループBは中国、カナダ、デンマーク、ロシア、オランダという陣容。こちらも中国が全ての試合を3-0で勝利する圧倒的強さを見せつけた。昨年ベスト8に残ったカナダは、今年はオランダに3-0で勝利するもその後は振るわず、替わりにカナダとロシアに2-1で勝利したオランダと、同じく2勝のデンマークがプレイオフ進出を決めた。

 プレイオフに進出したのはアメリカ、韓国、フランス、中国、デンマーク、オランダの6か国。プレイオフはこの6チームのトーナメント戦で争われる。まず成績下位の2チームが試合をして、その勝者が上位チームとセミファイナルを戦う。韓国とデンマークとの試合では韓国が強さを見せて3-0でデンマークを下した。オランダとフランスの試合ではフランスが3-1でオランダを下した。その結果、セミファイナルはアメリカと韓国、フランスと中国で争われることとなった。

アメリカが王者韓国を制して決勝に進出

 韓国とアメリカのセミファイナルは、昨年の優勝国と地元チームという盛り上がらないはずがない好カードとあって、会場外まで人があふれかえった。「オーバーウォッチ 2」の試遊コーナーに設置された試合を中継するモニターの前にも黒山の人だかりができて、スタッフが大声で交通整理を行なう混乱の中で試合がスタートした。

 初戦のルールはコントロール、マップはBusan。アメリカが最初にエリアを制圧し、アメリカチームのSinatraa選手がトレーサーでキルを重ねて先制した。だがその後は次第に押されていき、結局韓国が1本目、2本目と危なげなく連勝して1回戦を制した。この時点ではやはり今年も韓国なのかと思わせたが、2回戦(ルール:ハイブリッド、マップ:Hollywood)はSinatraa選手のドゥームフィストが強さを見せ、さらに同じアメリカチームのCorey選手のシグマがアルティメット「グラビティ・フラックス」を決めて、アメリカが2-1で獲得した。続く3回戦(ルール:エスコート、マップ:Watchpoint:Gibraltar)も3-0でアメリカが取り、逆に韓国が追い詰められる展開となった。

【韓国×アメリカ戦】

 次を落とすと敗北が確定するという4回戦(ルール:アサルト、マップ:Horizon Lunar Colony)、韓国チームのCarpe選手が「龍撃波」でトリプルキル、Choihyobin選手もトリプルキルを獲るなど韓国が粘り強さを見せた。アメリカチームもCorey選手のリーパーが「デス・ブロッサム」でやはりトリプルキルを決めるなど肉薄した戦いが続いた。アメリカ3、韓国2で迎えた最終局面、防衛側のアメリカが崩れて、韓国が3-3に追いつきドローで最終戦に命運をつないだ。

 最終戦(ルール:コントロール、マップ:Nepal)は力と力のぶつかり合うガチンコ勝負となった。韓国チームのArchitect選手がエリア内で5人を一掃するプレイを見せるが、アメリカが97%、韓国が82%という一番の山場に、アメリカのCorey選手が「デス・ブロッサム」で6人を同時に倒すスーパープレイを見せ、アメリカの決勝進出を確かなものにした。アメリカが勝利した歓声の後は決勝進出に喜ぶ選手たちを「Corey」コールが取り囲んだ。

フランスを制した中国、アメリカとの決勝は

 そしていよいよ中国と雌雄を決する決勝戦。会場は試合前から「U・S・A!」のコールが何度も沸き起こっていた。中国の応援団も国旗を掲げて中国チームの後方に陣取り、負けじと「China!」コールを送る。試合が始まっても両陣営のコール合戦で、実況の声が聞こえないほどだ。

 決勝進出を決めたアメリカチームは、ダメージがCorey選手とSinatraa選手、タンクがSuper選手とSpace選手、サポートがRawkus選手とMoth選手の6人。中国チームはダメージがEileen選手とJinMu選手、タンクがGuxue選手とElsa選手、サポートがKyo選手とYveltl選手の6人。

【アメリカチーム】
【中国チーム】

 ファイナル1回戦はコントロールのマップILIOS。アメリカ、中国ともスタート時は同じヒーローをピックする、いわゆるミラーという状態で始まった。速攻のエリア制圧を得意とするアメリカが序盤で優位に立ち、そのまま守り続けて99%でオーバータイムに突入する。だが、守り切れずに崩れてしまい、中国が逆に99%のオーバータイム状態となる。中国はそのままエリアを守り切って1本目を制した。

 2戦目、アメリカはまたしても先にエリアを制圧して、柱の上でSuper選手のオリーサとCorey選手のバスティオンが待ち受ける。上空からバスティオンのガトリングで攻撃をしかけるが、中国側のJinmu選手がメイで裏に回り込み、バスティオンを落とす。その後、また99%同士の競り合いになり、オーバータイムに突入する。倒されていたSinatraa選手が戻ってきて人数がそろったアメリカチーム側が勝利した。3本目は、中央に井戸があるマップ。今回も先に制圧したのはアメリカチームだったが、中国に奪われ先制される。その後は一進一退の攻防があり、最後はアルティメット勝負に勝ったアメリカがコントロールに勝利した。

コントロール2本目、柱の上で戦うオリーサとバスティオン

 2回戦ハイブリッドのマップはKing's Row。1本目は攻撃が中国、防衛がアメリカ。1本目は中国がチェックポイントを奪い取り、ペイロードを発進させることに成功した。その後は両陣営ともリーパー、モイラ、オリーサ、ルシオ、シグマ、ドゥームフィストという定番の構成でキル交換を繰り返す。時間稼ぎをしてくるアメリカに対して、中国は「スーパーチャージャー」が入った「デス・ブロッサム」でEileen選手がクワトロキルを決めてアメリカを瓦解させた。だがペイロードが目的地の目前まで迫ったところでアメリカがオーバータイムに突入し、そのまま競り勝った。中国が攻撃に側になった2本目には、こちらも定番のピックで競り合った。お互いに決め手に欠ける中、ペイロードを囲んだ激しい攻防が繰り返される。中国側はアルティメットを効果的に使うことができず、アメリカはSinatraa選手がペイロードの終点近くで「デス・ブロッサム」でダブルキルをとり、ペイロードをゴールに押し込んだ。

 これでアメリカが2本先取して、優勝に王手をかけた。インターバルの間会場ではずっとウェーブが繰り返されており、中国ファンたちはかなり肩身が狭そう。「ワンモアタイム!」の声が響く中、3回戦はエスコート。マップはDoradoだ。乱戦のなか攻撃側のアメリカチームがじわじわとペイロードを進めていく。

【中国チームのサポーター】
数は少なかったが応援の気迫では負けていなかった

 あと16cmでゴールというところで残り時間が1分を切る。このまま押し切りたいという、まさにそのタイミングで、Sinatraa選手が落とされてしまう。中国チーム側は「スーパーチャージャー」を発動し、何としても防ぎきろうとする。アメリカ側はもう1人のダメージCorey選手も落とされてしまい、絶体絶命。オーバータイムに入ったところで、Space選手がシグマの「グラビティ・フラックス」で中国のダメージ2人を落とし、Super選手のオリーサがバリアを張って攻撃を防ぎつつ、ペイロードをゴールに押し込んだ。

きわどいところで決まった「グラビティ・フラックス」が試合を決めた

 攻守が交代した2本目、中国チームはダメージをリーパーとゲンジに変えて攻め込んでくる。防衛側のアメリカは時間を稼ぐために積極的に攻め込んでいく。戦場は中国側のリスポーン地点付近にまで移動して中国チームの行く手を阻む。その後も中国チームをペイロードに近づけることなく、アメリカが3-0でオーバーウォッチ ワールドカップで初優勝を決めた。MVPは積極的な攻撃で試合に貢献したSinatraa選手が獲得した。

 結果的には3-0とワンサイドゲームになったが、その内容はワンサイドなどでは決してなく、トッププレーヤーが自分の能力を限界まで出し切ってギリギリのしのぎを削り合うような激しい、心を揺さぶられる試合だった。

MVPはSinatraa選手に贈られた