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貴重な話が続々と!古代祐三氏、1980~1990年代の未収録曲を語る!
岡島俊治氏との「古代祐三 Early Collection BOX」発売記念コラボトークショーレポート
2018年6月4日 13:26
6月2日、六本木クラップスにおいて、「古代祐三 Early Collection BOX」の発売記念コラボイベントとして「Okajimahal×古代祐三 Early Collection BOX ライブ」が開催された。
「古代祐三 Early Collection BOX」は、古代氏の“YK-2”時代から「アクトレイザー2」までの、1980~1990年代の未音源化楽曲を約300曲収録したアイテム。氏の初期活動時期に日の目を見ず埋もれていた作品群を、CD未収録作品曲だけでなく未使用曲、ボツ曲まで網羅した商品だ。古代氏が数々の作品でタッグを組んできた、岡島俊治氏と上倉紀行氏のコンビによるアレンジCDも収録されているのだが、今回は岡島氏のバースデーライブとあわせる形でのCD発売記念コラボイベントライブが行なわれた。
コラボイベントライブは、第1部「Okajimahal新曲リリースライブ」、第2部「古代祐三×岡島俊治×上倉紀行トークショー」、第3部「Okajimahal×古代祐三アーリーコレクションBOXライブ」という3部構成で行なわれた。なお「Okajimahal」とは、アレンジを担当した岡島氏が率いるバンドだ。
第1部は、ライブ当日に発売されるOkajimahalの新曲が披露された。出演したのはドラムの岡島俊治氏をはじめ、キーボードの上倉紀行氏、ヴァイオリンの水谷美月さん、ギターの宮崎大介氏、同じくギターの森空青氏、ベースの松本将太氏、ピアノの中野悟朗氏。全部で6曲を演奏しつつ、途中には「今日はこれから凄いトークショーもあるので、飛ばしていきます」などの軽妙なトークを混ぜながら、約40分にわたりパワフルな楽曲を聴かせてくれた。
なお、第1部のセットリストは以下の通り。
【第1部 セットリスト】
1:Light From Chaos
2:EVIDENTH OF TRUTH
3:Shine
4:プロミストランド
5:永久の密林を越えて
6:Rain
古代氏が即興で演奏するサプライズもあった、第2部トークショー
続いて行なわれた第2部「古代祐三×岡島俊治×上倉紀行トークショー」では、ゲストとして古代氏がステージに招かれ、非常に濃い話が展開された。トークショーへの出演はあまり多くない古代氏だけに、ファン以外の方々も内容が気になるだろう。そこで今回はトークショーの模様を、ほぼそのままの形で再現しよう。
岡島氏「早速ですが、今回のBOXはCD7枚組と、もの凄いボリュームですよね」
古代氏「そうですね。内容をざっくり説明しますと、従来のボツ曲はこれまでにも何かの機会に出しては来たのですが、それにも引っかからなかった“本当はこんなの出したくない”というもの、作るのを途中で止めてしまったもの。それらを敢えて補完せずに、そのままの形で聞いてもらおうという曲が入っています」
岡島氏「なるほど、古代祐三はここで止まったと」
古代氏「そうなんです、ここで心が折れたというのを皆さんに聞いて頂くと、色々面白い発見があるんじゃないかと。そんな中途半端なものばかりではありませんが、そういうのも中に入っています。他にも、完成しているけれど何かが気に入らなくて不採用にしたという“ボツ オブ ザ ボツ”も収録されています。そのため、かなりの数があります。スーファミ用の某“2”は、絶対に出したくないと思っていました!」
岡島氏「“1”は、神様視点のヤツですよね?」
古代氏「そうです。“2”は出したくないと思い、ずっと未公開で粘っていたんです。でも、今回折れました(笑)」
岡島氏「何か自分の中で引っかかっていたんですか?」
古代氏「ちょうどこの時期、スーファミで自分がやりたい音楽があり、『アクトレイザー』の時は自分のやりたいこととスーファミの性能が折り合っていたのですが……」
岡島氏「作品名言っちゃってるじゃないですか(笑)」
古代氏「あ、まあ(笑)。……某作品では、それが折り合わなかったんです。それで自分の中ではかなり折れて、でもリリースはしないといけないので、我慢して作りました」
岡島氏「ということは、かなり苦しんで作られた?」
古代氏「苦しんでましたね。そこから5~6年ぐらいは自分の中での暗黒期です。音楽があんまり好きじゃなかった時期になっちゃっているんです。私はPC-88から音楽をスタートさせてきたんですが、音楽を作るためのツールは自分で作る。そこを出発点にしていますので、初めてMIDIに触れた時に“なんてMIDIは使いにくいんだ”と。多分、高価な機材を買って楽器などをたくさん購入すれば夢のような世界が広がっているだろうと思っていたんですが、実際にやってみたところ夢が広がるどころか真っ暗に……そういう感じなんです。何でこんなに窮屈なんだろうと」
岡島氏「特に古代さんは音色を作る、マニピュレートするところが楽曲を作る時と結びついているという話を聞いたことがあるのですが、MIDIは決められた世界の中でやるしかなくなってくるから、特に……」
古代氏「MIDIは楽器の演奏から多分来ていると思うんですが、自分はプログラムから来ているので、やりたいことはプログラムで実践してきたんです。でもMIDIの規格のほうが先行しているので、やっぱり遅れているんですよ。当時シンセサイザーなどが凄く発展し色んな機能を持つようになったけれど、MIDIがそれに追いついていなかった。それが解消されるようになったのが1990年代後半。2000年近くになってからだったので、それまでが自分が辛かった時期です」
岡島氏「今回のBOXは、1986年から1993年ぐらいまでの作品が収録されているという話なんですが、1番最初期のは高校生の頃ですか?」
古代氏「最初期は立川方面の会社ですが(笑)、そこから始まってます。当時の制作スタイルをネタばらしすると、立川には通っていたんですが、そこで作っていたわけではないんです。自宅で作り、入れ込む時だけ曲を持っていく、という感じでした。なので、その前に自分選考で漏れちゃうものが結構……最初ありましたよね。ゲームクリアするとボツ曲が聞けるという。それよりも前に、自分のフィルタに引っかかって漏れたのは持ち込んでいないんです。そういうものも、今回は入っています」
岡島氏「このCDの後半6曲は、僕と上倉君が手がけたアレンジのデモバージョンが入っています。そのアレンジ元となったオリジナル楽曲が最初の10曲という形で入っています。その辺の話を曲を聴きながら伺えればと思います。まさに、赤毛の剣士の話なども出てくるかと思います(笑)。まず1曲目はPC-88ですね。トップビュー型アクションRPGの未使用曲です」
古代氏「まず、聞いてて恥ずかしいですね(笑)。何か弾けるものあります? ピアノ鳴らしてしまっていいです?」
古代氏「思い出しました。これを作っていた時にコナミの楽曲が大好きだったんですが、出だしがあまりにもコナミの楽曲っぽ過ぎるんですよね。ボツになった理由は、曲の途中からコナミっぽさが薄れて立川っぽくなるため(笑)。その辺の迷いがあるんです。この曲はたまたま完成しているんですが、私は迷いが生じた時は投げるんです。若かった頃は、迷いが生じた時に修正できる術を知らなかったんです。直球しか投げられなかったので、打たれ始めたら変化球を投げなきゃ! ということができなかったんです。なので作り直した結果、これイケるぞ、というふうになるんです。ちなみに、このネタを話したのは今回が初です」
岡島氏「おお、これは貴重ですね! そして、さらに次の曲に行きましょう。こちらもPC-88で、トップビュー型アクションRPGの未使用曲です。……これは、穴が空くボスの直前で流れる曲ですね(笑)。これは、赤毛の剣士が活躍するゲーム向けに作ったものの、最終的には『ザ・スキーム』に使われているそうで」
古代氏「この曲、完成しているのに、ボツ曲集に入らなかったのが不思議ですね。でも、その後にひょっとしたら『ザ・スキーム』のときに、未完成だったものを完成させたんじゃないかなと、その可能性があります。通し番号としてはそのままで、このタイミングで完成させたものだと思います。この曲のタイトルは“時の流れるままに”となっていますが、私は題名を考えるのが苦手で、どこからかアイデアを拝借しようと思いまして、それが“時の過ぎゆくまま”でした。この曲をよくカラオケで歌っていたので、そこから持ってきました。曲は全然似ていないんですが、タイトルだけ拝借しました」
岡島氏「これは『ザ・スキーム』のミュージックショーというモードの中でも聞けたんですね。でも、この曲はこれまでのサントラの中で1度も収録されていなかったそうで」
古代氏「不思議ですね……忘れてたんじゃないんですか?(笑)」
岡島氏「古代さんが作られている曲は本当に膨大だから、そういうこともありそうですね。では、次の曲も聴いてみましょう。1988年にX1向けに作られたRPGで、電波新聞社の「THE CURSE OF MARS」の未使用曲です。本当は入れたかったもののメモリの都合で泣く泣くカットになったと、ミッキー・アルバート氏のコメントです」
古代氏「彼はやたらと昔のことを覚えていているんですよね。ミッキー・アルバート氏はX68000版「スター・ウォーズ」や「THE CURSE OF MARS」を作った会社の元社長で、同じ高校だったんです。年が4つ違うので、私が高校を卒業した翌年に彼が入学してきたんですが、同じ高校というだけで自分のことを“大後輩”と呼ぶんですよ(笑)。私が“大先輩”だそうで。私がベーマガ(マイコンBASICマガジン)でライターをやるようになり電波新聞社に通っていたんですけれど、そのとき彼は私とはまったく関係なしに電波新聞社の開発室、マイコンソフトの方に出入りしていたんです。そこでたまたまばったり会ったと。なぜか、私がベーマガの時にスタッフルームで何をしていたとか、すごく良く覚えているんですよ(笑)」
岡島氏「実は今回、このBOXに付属するんですが、ミッキー氏とのロングインタビューが入っていますよね。その時代のことも本当に細かく書いているので、読むと面白いです。では、次の曲にいきます。これは1988年から1989年頃の作品で、PC-88用の「Variant7」の曲です」
古代氏「この曲、すぐ折れましたね(笑)」
岡島氏「続けて5曲目も聞いてください」
古代氏「こちらは完成していますね」
岡島氏「これは、古代さんが参加している同人サークル・ハーベストさんのお仲間と作っていたシューティングゲーム向けの曲です。結局、ゲームは完成せずお蔵入りになってしまったと」
古代氏「これね、ゲームそのものを私が作っていたんですよ。結構良い感じの所まで作り込んでいて、6面ぐらいまで進んだんですが、そこで折れたんですよ(笑)。多分、風呂敷広げ過ぎちゃった系だと思うんですよね。同人だから適当なところで折り合い着けておけば良いのに、壮大なことをやろうとして自分の理想に追いつかずに折れたというパターンだと思います。YouTubeにアップしているので、機会があったら……」
岡島氏「見つけました(笑)。アカウントがご本人なんですよね?」
古代氏「そうなんですが、ろくな動画が上がっていないです(笑)。でも今後活用していこうかと考えていまして、近々動画を1発上げようかと思っています。気になる人は見て下さい」
岡島氏「4曲目はバリエーションというかイントロの追加バージョンのように聞こえたんですが、これはどういう……?」
古代氏「これも同じような理由だと思うんですが、5曲目のイントロのところが採用されているんですが、そこに行き着くまでがコナミっぽい。だから、これはダメだなと思って。結局、5曲目もコナミっぽいんですけどね。自分の中で“何々っぽい”っていうのは許せるものと許せないものがあって、明らかに傾倒していると言うか自分の中のパクリ基準を超えているのはアカンと」
岡島氏「自分のフィルタを通して違う物になって出てくる時と、そのままのものが出てくる時ってありますよね」
古代氏「“何々っぽいものをお願いします”という依頼の受け方を時々するんですが、最初に作った時はそのままになってしまい、それで1度修正を入れるということも。今、盛んに宣伝している新作『世界樹の迷宮X』なんですが、ラスボスの曲がまさに“何々っぽいのを”という依頼の仕方で、作ったところディレクターから“そのままなんですけど”と言われ(笑)、さすがに修正したという。何っぽいかというのは『世界樹の迷宮X』を買っていただいて確認して下さい(笑)。こちら、上倉さんもアレンジで参加しているんですよね」
上倉氏「今、WebでPVも流れているので、よろしければお願いします」
岡島氏「次は、1993年にメガドライブでリメイク移植されたシューティングゲームの未使用曲で、タイトルが“発進(Has-shin)”です」
古代氏「聴いてみたら良い曲じゃ無いですか(笑)。何でボツにしたんだろ」
岡島氏「何でですか(笑)」
古代氏「多分これは『ザ・スキーム』っぽ過ぎたんです。シューティングじゃ無いな、そんな感じだったんです」
岡島氏「なるほど。では次行きましょう、PC-88版『Misty Blue』の未使用曲です」
古代氏「(曲を聴きながら)ここで落ちましたね、ここで折れたんです。これはイケてないなーと」
岡島氏「続いて8曲目です。こちらも同じ『Misty Blue』で、オープニング曲のアナザーバージョンです」
古代氏「こちらが先に作っていたオープニング曲ですね。これも多分、スキームスキームっぽ過ぎるからボツに」
岡島氏「確かに、『Misty Blue』に実装されているバージョンと比べると、テンポが速くてアクションゲームやシューティングゲームに合いそうなテンポ感ですね。でも結局、この曲がCDに収録されると言うことになったので、僕は長年の夢だった『Misty Blue』の曲を歌ものにしてやるというのが叶ったと。ぜひ聞いていただきたいです。次は9曲目です。これも『Misty Blue』の未使用曲で『Unfinished song』です……すぐに折れてますね!?」
古代氏「折れましたね。これは多分、何かに似ているんですよ。自分がボツにするもう1つの理由が、何かに似すぎているからです。これは思い出せないんですけれど、聴いたことありすぎてこれはダメだなーと。それで投げてます。今でも、何の曲か思い出せないです」
岡島氏「最後10曲目ですが、これはゲームギア用の『The GG忍』未使用曲で、タイトルが森林地帯です」
古代氏「これは正式なバージョンが別にあるということですよね? 2バージョンあるうちの、発表されていないバージョンですね。これも昔のゲーマーの方ならよくわかると思うのですが、私はコナミのMSX作品が凄い好きで、その音色のテクニックを参考にして作っているのがありありとわかるかと」
岡島氏「確かに、この曲を聴いた時に『キングコング2 怒りのメガトンパンチ』が出てきたんですよ」
古代氏「あー、あれ大好きなんですよ(笑)」
岡島氏「良いですよね曲!」
古代氏「そう言われると似てるな(笑)」
岡島氏「ということで、トークショーの続きをどこかでやりたいですね!」
古代氏「そうですね。こういう話をやりだすと、覚えていないことが急に引き出しから出てくるんですよ。さっきのピアノを弾いた時みたいに」
岡島氏「ということで、トークショーのコーナーはこれで終了です」
第3部終了後、ゲストボーカルとして小寺可南子さんがアンコールに登場
第3部は、第2部で紹介されたライブイベント限定CDに収録された楽曲の、アレンジバージョンが演奏された。そのセットリストを以下に掲載する。アンコールではシンガーソングライターの小寺可南子さんが登場し、「Missing you」を熱唱。約2時間半にわたるライブは、大盛況のうちに幕となった。
【第3部セットリスト】
1:THE GREAT ROBBERY ~時の流れるままに
2:EVIL GOD MARS ~邪神マーズ~
3:Variant7
4:発進(Has-shin)
5:森林地帯
6:Missing you/小寺可南子
©Ancient corp.,2018
©Yuzo Koshiro