【特別企画】
「Steamの手数料は高すぎる」Epic Games CEOティム・スウィーニー氏、基調講演でUEの今後を語る【Unreal Fest Tokyo 2025】
2025年11月14日 21:47
- 【Unreal Fest Tokyo 2025】
- 11月14日・15日 開催
- 会場:TAKANAWA GATEWAY Convention Center B2階
- 入場:無料
エピックゲームズジャパンは11月14日から11月15日の2日間、高輪ゲートウェイ駅直結の高輪ゲートウェイコンベンションセンターにて、Epic Gamesが展開するゲームエンジン「Unreal Engine」の最新情報や活用事例を紹介するイベント「Unreal Fest Tokyo 2025」を開催した。
「Unreal Fest Tokyo」は、同社が毎年開催しているUnreal Engineの定番イベント。ゲーム会社など、Unreal Engineを様々な分野で活用している開発者たちに向けて、その最新情報や活用事例を紹介する場となっている。これまではゲームに関する活用事例が中心だったが、今年からはノンゲームデイを新たに設け、ゲーム以外の分野でのUnreal Engineの活用事例などが紹介されている。
なお、本イベント開催に先駆けて11月12日には「Unreal Engine」の最新バージョンとなる5.7がリリース。サポート用AIアシスタントの追加や、スマートフォンのカメラからリアルタイムでフェイシャルアニメーションを取り込む機能のほか、より高密度で高精細な木々などを効率的にレンダリングできる「Nanite Foliage」といった新機能などが多数追加された。
本稿では初日のノンゲームデイに行なわれた基調講演及びメディア向け取材会での内容についてレポートしたい。
Steamの手数料30%は高すぎる!12%というEpic Games Storeの手数料の安さを強調
基調講演では、Epic GamesのCEO、ティム・スウィーニー氏と、エピックゲームズジャパンの河崎高之氏が登壇。同社が描くソーシャルエンターテインメントの未来や「フォートナイト」を活用したエコシステム、Epic Games Storeの最新情報、日本の開発者によるUnreal Engine活用事例などが紹介された。
ティム・スウィーニー氏の講演では、同社がゲームエンジンの「Unreal Engine」だけでなく、開発ツールとして「MetaHuman」や「RealityScan」、「Twinmotion」などを提供するほか、ゲームストアの「Epic Games Store」に加えて、昨年から新たに立ち上げたゲーム開発用の素材などを販売するマーケットプレイスの「FAB」も展開していることを紹介。特に「FAB」について、ここで購入したリソースはUnreal Engineだけでなく、Unityなど他の開発ツールでも活用できる点を強調した。ほかにも「Epic Online Services」と呼ばれる、フレンド機能やチャットなどのソーシャル機能を組み込めるサービスについても紹介し、無料で提供している点をアピールした。
また、来年リリース予定の「Epic Social Overlay」は、PCだけでなくスマートフォンやゲーム機などでも動作し、全てのストアとアカウントシステムをサポート。異なるサービスのフレンド間でのチャットなどが実現できるとしており、こちらも無料での提供予定となっている。
ティム・スウィーニー氏は、PCゲームの配信プラットフォームの競合である「Steam」の名前を挙げ、プラットフォーム手数料が30%と高すぎる点を指摘。Epic Games Storeは、手数料を12%に設定しており、ゲームを開発した人たちこそが、より多くの収益を得られるべきだと強調した。さらに同社の「EPIC First Run」プログラムを使い、リリース直後の半年間をEpic Games Storeで独占販売した場合には、その期間のプラットフォーム手数料は一切かからず、100%の収益が得られるという。ほかにも最近立ち上げたという「Epic Games Store Webショップ」については、現在、年間で最初の100万ドルに対しては従来の手数料を取らずに100%の収益が還元される点もアピールした。
そのほかにも、通常「Unreal Engine」の使用に対して課している5%のロイヤリティについても言及。Epic Games Storeが利用可能な全てのプラットフォームで同時にゲームをリリースした場合においては、ロイヤリティを3.5%まで下げるなどの特典も用意されているようだ。
来年からは日本のスマートフォンに関する法律の改正などにより、日本でのiOS向けにも同社のストアアプリを導入していく予定である。現時点でヨーロッパのiOS向けと全世界のAndroid版についてはすでに提供済みとなっており、Android版については日本でもすぐにインストールして利用することができる。
他にも同社のオンラインゲーム「フォートナイト」を活用したエコシステムについても紹介。現在の「フォートナイト」は、サードパーティのゲームをホストするエコシステムへと進化しており、開発者は「Unreal Editor」を使って「フォートナイト」内のコンテンツを構築することが可能だ。コンテンツ内でアイテム販売などを行なった場合には、最初の1年間は74%の収益が得られるとしている。
今後の展望としては、これまでのように個々のストアやサービスでゲームをプレイするだけでなく、異なるサービス間であっても、フレンドたちが同じソーシャルなグループとして集まって、シームレスにさまざまなプラットフォーム間を移動し、ゲームをプレイしたり、ボイスチャットなどでコミュニケーションを取り、カスタマイズしたアバターがどこでも見られる未来を思い描いていると説明した。
こうした仕組みを実現するべく、現在は次世代エンジン技術の基盤を形成しているところで、コアシステムの一部を再設計することで、大規模なマルチプレーヤーゲームなどに対応できる規模とスケーラビリティを実現し、様々な開発者のコンテンツが混在できるように拡張しているとした。ほかにも、同社が現在も提供する「Verse」の強化が挙げられた。これはC#よりも簡単に開発できることを目指したスクリプト言語だが、今後はさらに大規模なゲーム開発などが行なえるように再設計しているとした。
これらの改良が約2年半後にリリースを予定している最新バージョン「Unreal Engine 6」に結実すると言及。ほかにもオープンで相互運用可能な未来として、Pixarの「Universal Scene Description(USD)」など業界標準を採用することで、ゲーム開発のオープンで相互運用可能な未来を目指しているとして講演を締めくくった。
コジマプロダクション新作「OD」もUnreal Engineを採用!
続いて行なわれた河崎氏の登壇では、「Unreal Engine」を活用したゲーム以外の分野での活用について紹介された。自動車分野での活用としては、 世界のトップ20のOEM各社で、Unreal EngineがHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)開発のほか、車両デザイン、ビジュアライゼーション、自動運転の学習用途など、幅広い分野で活用されている点を紹介。
ここで実例として、ソニー・ホンダモビリティが開発中の「AFEELA1」について紹介された。HMI開発にUnreal Engineが利用されているほか、車体に40個のセンサーを搭載し、それらデータを活用して、運転席側のディスプレイに表示するADAS(先進運転支援システム)の周囲の車や車線の3Dリアルタイム表示や、右側ディスプレイの3Dマップの表示などでもUnreal Engineが利用されているという。
映像やエンターテインメント分野での活用事例としては、カバーが2025年3月に行なったホロライブの「ReGLOSS 3Dライブ サクラミラージュ」で、Unreal Engineを使った初の音楽ライブ配信が行なわれたことが挙げられた。カメラの露出や時間帯による演出の変化など、細かな要素にリアルタイムで対応し、没入感と実在感のあるライブ空間を実現しているという。
そのほか、昨年12月に展開した「フォートナイト Chapter 6」のアニメトレーラーは、全てがUnreal Engineで制作され、トゥーンシェーディングで日本的な世界観をダイナミックに描いたようだ。
そしてゲームでの活用事例も多く、コナミの「サイレントヒルf」、セガの「ソニックレーシング クロスワールド」、アニプレックスの「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2」、さらには現在コジマプロダクションが開発中の新タイトル「OD」などがいずれもUnreal Engineの特徴を活かして開発されたタイトルとして紹介された。
河崎氏は、開発者やクリエイターの想像力が世界中のUnreal Engineコミュニティにインスピレーションを与えていること、そして今後も彼らの挑戦を、Unreal Engineが支えていくことを強調して、講演を締めくった。
広がるUnreal Engineの非ゲーム活用。ストア係争では勝ったがAppleには依然警戒
基調講演後、メディア向けの質疑応答セッションが行われた。Unreal Engineのゲームと自動車産業以外の活用事例について聞かれると、ティム・スウィーニー氏は、映画やテレビ番組の分野では、LEDパネルの前で俳優が演技をし、Unreal Engineで背景をリアルタイム表示することで、効率的な映像制作が可能になったほか、建築の分野でも、設計段階でUnreal Engineを使って3D化することで、ウォークスルーのような体験が可能になったと言及。他にも医師向けの医療研修、宇宙飛行士、消防士など危険な仕事や難しい職種のトレーニングに使用する事例などがあると紹介したが、具体的な企業名については言及はなかった。
また、こうした非ゲーム分野での活用が広がると、これまでのゲーム分野とは収益の仕組みが変わってくるため、今後の収益の形はどうなるのか、またEpic Gamesとして収益のメインをどちらに持っていくのかという質問に対しては、映画、テレビ、建築関係など非ゲーム分野も急激に成長しているので、競争力のある価格で提案しているという。なお収益については、それよりも映画の内容をゲームに展開するといった消費者エコシステム内でのクロスオーバーを通じて、より多くのコンシューマーへのリーチを目指しているとし、数十年後には数兆ドル規模のデジタルエコノミーができていると見ており、Epic Gamesがあらゆる開発者のためのメジャーなサプライヤーになることを目指していると展望を語った。
Epic Gamesが現在出資を受けている企業についての基準について聞かれると、Epic Gamesでは長期的な目標を重視しており、同じように開発を長期的な目標として見ているパートナーを募集しているとしており、具体的なビジネスパートナーとしてソニー、レゴ、ディズニー、テンセントなどの企業名を挙げた。
ストアアプリに関する各国での係争や和解について聞かれると、Appleとの係争については、アメリカの裁判では勝利し、裁判所から「あらゆる開発者はダイレクトに決済できるようにすること」「手数料などを取らないこと」という提案があったほか、ヨーロッパではAppleに「iOSを競合ストアでも使えるように」との指示があり、そのおかげで「フォートナイト」がヨーロッパに戻れたと語る。また、日本でも法律が改正されたことで、おそらく来年の1月頃には日本でも再度展開できる見込みとしたが、一方でAppleは新しい法案ができても「賢く立ち回る傾向」があり、法案を破ることもためらわないと見ていると指摘。実際にEUではユーザーがインストールするまでに15のステップを踏まされるような仕組みにしたことで、当初は100人中35人しかインストールできなかったという。現在はEUの介入で100人中75人に改善されたが、Appleに対しては依然として警戒の姿勢を示しているようだ。
一方でGoogle(Android)については和解しており、Androidをオープンなプラットフォームにし、競合ストアでも対応するようになったが、和解にはオープンにされた裁判所との和解案と、EpicとGoogleの非公開の案の2つがある点を付け加えた。ただ、Googleは「変わってもいい」という意向が見えており、Androidがオープンになればストアの選択肢が増えると期待しているという。今後は中立的なテクノロジーサプライヤーになってくれることを期待していると評価した。
最後にメタバースの現状と展望について、何がネックであまり普及していないのか聞かれると、メタバースは登場以来「非常に遅い動きで進んでおり」「分断されている」と現状について言及。こうした分断された状態が1つにまとまる流れができれば、メタバース本来の力が出てくると考えていると語る。また、デバイスについては、その進化を待つ必要があると慎重な姿勢を見せ、今後10年程度の間に起きてくるのではないかと予測しているとし、具体的な言及は避けた。
(C)2004-2025, Epic Games, Inc. All rights reserved. Unreal およびそのロゴは、米国ならびにその他の国々における Epic Games, Inc の商標または登録商標です。
























































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