【特別企画】

【EVO 2025】「スト6部門」、翔の猛追も及ばずMenaRDが制覇でEVO2冠達成!

注目選手は香港のMicky、強豪たちを撃破し3位入賞で覚醒の兆し?

【Evolution Championship Series 2025】
会期:8月1日~3日(現地時間)
会場:ラスベガス・コンベンションセンター

 8月1日~3日(現地時間)、アメリカのラスベガス・コンベンションセンターにて行なわれた格闘ゲーム大会「Evolution Championship Series 2025」(以下、EVO 2025)。「ストリートファイター」シリーズ最新タイトル「ストリートファイター6」(以下、スト6)のほか、「鉄拳8」などメーカーの垣根を越えた人気格闘ゲームにて、最も強い選手を決めるバトルが展開されてきた。大会全体の参加選手数は1万4,000人以上だ。

 EVO 2025の「スト6部門」は「CAPCOM Pro Tour 2025 PREMIER」オフライン大会の1つとなっており、優勝者には来年日本で開催される「CAPCOM CUP XII」への参加権が与えられるほか、サウジアラビアのリヤドで行なわれるeスポーツ世界大会「Esports World Cup 2025(EWC)」の出場権も獲得できるため、「スト6」プレーヤーにとっては今後にも影響する重要な大会の1つとも言える。

 筆者は今回、「スト6部門」を予選から決勝まで配信にて観戦。さっくりとした感想としては、今年も去年以上の激闘が各所で展開していたという印象だ。「スト6」も3年目となり、追加キャラクターの数も8人に増加。選択の幅が増えた結果、配信台などに上がってこない場所での名勝負など、会場に足を運んで色々とチェックしたくなる大会になっていたと言えるだろう。

 大会全体を通して見所はたくさんあったが、本稿ではその中でも注目したいポイントをピックアップし、レポート形式でご紹介していきたい。

 なお、Capcom Fighters JPのYouTubeチャンネルでは日本語公式配信が行なわれ、去年までは MCなどを務めていたお笑い芸人・NOモーションの2人(星ノこてつ。氏、矢野ともゆき。氏)が配信で現地レポートを実施。配信のMCや実況解説にはSaishunkan SOL 熊本所属のeスポーツキャスターのもらお氏、大型大会の実況ではお馴染みのふり~だ氏に加えて、今年から「ストリートファイターリーグ: Pro-JP」の解説として出演が決まっている、元プロゲーマーのストーム久保氏や、先日広島TEAM iXAを脱退し、現在はフリーのゲーマー・じゃじぃ氏らも出演し、大いに配信を盛り上げていたのも印象深かった。YouTubeなどでアーカイブが見られるようになっているので、ぜひそちらも合わせてチェックしていただければと思う。

【【日本語実況】EVO 2025 - Day1「CAPCOM Pro Tour 2025 Premier」】
【【日本語実況】EVO 2025 - Day2「CAPCOM Pro Tour 2025 Premier」】
【【日本語実況】EVO 2025 - Day3「CAPCOM Pro Tour 2025 Premier」】

翔とふ~どの日本選手対決……! その先に待つのは堂々たる風格のメナ。激闘のTOP8を振り返る

 「スト6部門」の参加者数は4,000人以上とかなりの大規模となった。3日間の会期の中で、2日間をかけてTOP8まで人数を絞り、最終日の3日目はこの8人による決勝戦が行なわれる。

 例年EVOには多くの日本人選手が参加するが、今年も各所で日本人選手が活躍し、大会を盛り上げた。全体のレベルもかなり高くなっている中、TOP8に残ることができたのは、REJECT所属のふ~ど選手とZETA DIVISION所属の翔選手の2名のみ。さらにWinners、TOP8の初戦で2人がいきなり直接対決する事態になり、日本人選手の活躍を楽しみにしているファンにとっては複雑な心境になったと言える。

 もちろん試合の見応えは十分。翔選手が終始メインキャラのJPを使い続けたのに対して、ふ~ど選手は最初の2戦はエドでの対戦となったが、スコア1-1のタイミングでキャラクターをDeeJayに変更。反撃を試みるも力及ばず、3-1で翔選手が勝利し、Winners Finalへの進出を決めた。

TOP8の選手入場。Winnersに日本人選手の翔選手とふ~ど選手が残ったが……
初戦からいきなり日本人選手同士の対決!翔選手のJPとふ~ど選手のエドが激突!
結果は翔選手が3-1で勝利
負けたふ~ど選手が翔選手に拳でエールを送っていた

 Winnersのもう1戦は日本でも人気のMenaRD選手とPhenom選手の対戦。MenaRD選手がブランカ、Phenom選手はキャミィでの対戦となったが、前半こそかなり有利に試合を進めていたPhenom選手のキャミィだが、後半はそんな動きを読み切って、MenaRD選手が反撃。その勢いは止まることなく、そのまま3-1で勝利し、Winners Finalへとコマを進めた。Winners Finalは翔選手vsMenaRD選手の対決となった。

 ここでLosersに舞台は変わり、Xiaohai選手とLeShar選手の対戦が展開。Xiaohai選手は舞を選択したのに対し、持ちキャラとして舞も使えるLeShar選手はここでエドを選択。前半はXiaohai選手が有利に展開していたが、LeShar選手が反撃で取り返していくギリギリのバトルが繰り広げられる。お互いフルカウントとなった2-2から流れは再びXiaohai選手に戻り、冷静な立ち回りを見せて3-2で勝利を飾った。

 次のLosersの1戦はAngryBird選手とMicky選手の一戦。AngryBird選手は豪鬼、Micky選手はキャミィでの対戦となったが、ベテランでもあるAngryBird選手の行動に対し、強気の読みを押し通してMicky選手がまさかの3連勝。3-0のストレート勝利で若手のMicky選手が大金星を上げる。

 次はWinnersで敗れて落ちてきたPhenom選手と、先ほどLeSharを下したXiaohai選手の1戦。使用キャラはPhenom選手がキャミィで、Xiaohai選手が舞を使用。序盤はPhenom選手有利で試合を展開するが、ギリギリで耐えたXiaohai選手が後半盛り返して2-2まで取り返す。だが、反撃はそこまでで勢いで押しきれず、最後はPhenom選手が3-2で勝利して意地を見せ、Losers Semi-Finalに進出を決めた。

 続く試合は先ほど翔選手に敗れたふ~ど選手と、ベテランのAngryBird選手をストレートで下した若手のMicky選手の1戦。ふ~ど選手はエド、Micky選手がキャミィを使用。初戦エドで有利に試合を進めたふ~ど選手に対して、Micky選手は舞にキャラクターを変更してここを取り返す展開。するとふ~ど選手もキャラをDeeJayに変更して最後までDeeJayで試合を展開する運びとなる。

 お互い互角の試合展開を見せ、フルカウントまで追い込まれる流れになるが、最後は思い切りの良さで攻めたMicky選手の舞が3-2で勝利! Micky選手がLosers Semi-Finalにコマを進めた。

 次はWinners Finalの翔選手とMenaRD選手の1戦。使用キャラは翔選手がJP、MenaRD選手がブランカ。試合開始前には顔を突き合わせてにらみ合いする、FACE OFFのパフォーマンスで会場を盛り上げて見せたが、試合結果はMenaRD選手が3-0ストレートという圧巻のスコアで試合を決めてGrand Final進出となった。

Micky選手とAngryBird選手の対決は、ここまで多くの日本人選手を倒してきたAngryBird選手に対して、Micky選手がまさかの3-0ストレート勝利を見せて解説陣を驚愕させた。ここでもらお氏が「でも相手はAngry Birdですよ」の声に対してストーム久保氏の「でもMickyですよ」の返しが最高だった
Micky選手とふ~ど選手の対決では、お互い2キャラずつ持ちキャラがいたため、ポイントを取られるたびにキャラが変化しながらの激闘となったが、最後は思い切りのよさを見せたMicky選手が3-2で勝利!
Winners Final開始前にはMenaRD選手と翔選手が顔を突き合わせて睨み合うパフォーマンスを見せて会場を盛り上げる。結果はMenaRD選手が3-0のストレート勝利……強すぎる

 Losers Semi-FinalはPhenom選手とMicky選手の1戦。どちらもキャミィを使うミラーマッチの対決となったが、要所での読み合いで上回ったMicky選手が、ギリギリの攻防を3-2で勝利して、いよいよLosers Finalにまでコマを進める運びとなった。

 こうしていよいよ迎えたLosers Finalは先ほどWinners Finalで敗れた翔選手と、大躍進を続ける若手Micky選手の1戦。使用キャラは翔選手がJP、Micky選手はキャミィで挑む。ここは翔選手のJPがMicky選手の勢いを完全に抑えこんで3-1で勝利。Grand Finalで再度MenaRD選手に挑む事となった。

 Losersから這い上がって逆転を見せてきた試合は数多い。今回も日本人的にはそんな展開が期待された、Grand Finalの一戦はMenaRD選手と翔選手の再戦で、キャラは同様にJPとブランカとなったが、この試合が正に圧巻。MenaRD選手のブランカを前にあの翔選手のJPが噛み合わず、3-0のストレート勝利でMenaRD選手が勝利。今年5月に開催された「EVO JAPAN 2025」に続き、「EVO 2025」でも優勝を決める、EVO2冠を達成した。

Losers Semi-FinalでのPhenom選手とMicky選手とのキャミィミラーマッチもMicky選手が制する!
いよいよ迎えたLosers Final、翔選手とMicky選手との対決は翔選手が3-1で勝利!圧倒的強さを見せつけた
Micky選手に両手で握手しながら声をかける翔選手の様子が配信で確認できた
決勝戦はMenaRD選手が再び3-0ストレート勝利!翔選手を圧倒した
勝利のアピールをするMenaRD選手の様子
負けてしばらく椅子で何かを考え込む翔選手
優勝トロフィーを掲げるMenaRD選手!EVO JAPAN 2025に続く2冠達成おめでとう!

まだ17歳の超若手! ベテラン勢を次々と倒し大躍進した香港のMicky選手に注目

 「EVO 2025」の「スト6部門」において、最も注目を集めた選手といえば、やはり香港のMicky選手の名が挙がるのは間違いないだろう。2008年生まれの17歳という超若手選手で使用キャラクターは現在はキャミィと舞。「EVO 2025」での戦績を見ると17勝2敗となっており、Round2の早い段階で負けてしまったが、そこから負けなしで勝ち続け、今回は3位入賞を果たしたことで「CAPCOM CUP XII」への参加権及びEWCの出場権までも獲得している。そんなMicky選手について、調べて分かる範囲で色々とチェックしてみようと思う。

香港のMicky選手は香港のeスポーツ業界団体「ESAHK」に所属する17歳の若手ゲーマー
ふ~ど選手などベテラン強豪プレーヤーたちを次々と倒して3位入賞を果たした

 2022年頃から競技シーンに姿を見せ始めるMicky選手だが、当時の出場大会はオンラインで開催される「CAPCOM Pro Tour World Warrior Asia East」がメインで、オフラインの大会ではあまり姿を見せていない。2024年には「Street Fighter League Pro-US 2024 Scouting Combines: Asia」と呼ばれる大会に姿を見せているが、2024年まではオンラインでの活躍が目立つ。

 実際にこの頃のXでの投稿を見ていると、「スト6」のランクマッチのポイントについて呟いており、称号もLegends上位に位置するなど、オンラインでの成績はかなり良好なようだ。

 ところが2025年に入ってからは、5月に日本で開催された「EVO JAPAN 2025」に出場、33位の成績を残しているなど、少しずつ頭角を現してきていたタイミングで、今回の「EVO 2025」での3位入賞という流れとなっており、本大会で覚醒した可能性もありそうだ。

 そのプレイスタイルは筆者がざっと見た感触では、読み合いに長けた勢いのあるアクションが魅力と感じた。そんな好調なMicky選手の勢いを止めたのが、前回の「CAPCOM CUP XI」の決勝戦において、チリの若手プレーヤー、BLAZ選手の快進撃を止めて優勝した翔選手というのもまた面白い。翔選手自身もまだまだ若いが「若手キラー」の異名がつく日も近いのかもしれない。

 トーナメントでの表記から、Micky選手が香港のeスポーツ業界団体「ESAHK」に所属しているという情報は確認できたが、Xアカウントでの様子などを見ていると、香港の格闘ゲームコミュニティには所属しているようだが、配信などの活動は行なっていないようで、チームやスポンサーなどについては不明だが、今後の活躍に注目していきたい若手選手の1人と言える。

Start.ggのトーナメント情報によると本大会でのMicky選手の戦績は19戦17勝2敗。負けなしで優勝したMenaRD選手の場合は13戦(13勝)なので、6戦も多く試合してきたことになる
今後の活躍に期待したい選手の1人だ

ふ~ど選手やももち選手、鶏めし選手などベテランプレーヤーたちの今後の活躍にも期待大

 以上、EVO 2025の「スト6部門」について簡単にレポートした。3日間「スト6部門」予選の様子や、VARREL所属のマゴ選手など、プロゲーマーたちの配信などを通して、会場や周辺の様子などをチェックしていたが、非常に多くの日本人選手たちが参戦しており、その中には有名なストリーマーの方々なども加わっているなど、参加人数としては去年と比べてやや減少してはいるが、参加するプレーヤーたち全体の質は大きく向上している印象で、盛り上がりとしてはこれまで以上の勢いを感じさせる大会となっていた印象だ。

 最終的な結果としては、日本の「EVO JAPAN 2025」に引き続き、MenaRD選手が優勝という驚きの結末となったが、その試合内容は正に王者の貫禄を見せつけるような内容の試合展開となっており、この勢いがどこまで続くのか注目したいところだ。

 実際のところ、2日目で負けてしまいはしたが、9位タイのFUKUSHIMA IBUSHIGIN所属の鶏めし選手が繰り上げでEWC出場を決めたほか、9位タイの4人中3人がDetonatioN FocusMe所属の板橋ザンギエフ選手、ZETA DIVISION所属のももち選手など、紙一重の差で惜しい位置に多くの日本人選手がいるので、惜しくも5位タイで敗れてしまったふ~ど選手も含めて、今後の大会での活躍に期待したい選手たちは多い。

 次回のEVOとしては新たに10月10~12日に開催が決まった「EVO FRANCE 2025」が行なわれる予定となっているが、8月はこの後もEWCやSFLなど多くの大会が控えており「ストリートファイター6」の盛り上がりはまだまだとどまることを知らない。今年も熱い夏になりそうだ。