【特別企画】

「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」、「VALORANT」部門はルネサンス大阪高等学校梅田eスポーツキャンパス「イナザワジャパン」が優勝!

高度な戦略で相手の動きを封殺する見事なプレイを見せる

【「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」決勝大会2日目】

2月12日 開催

会場:ラフォーレミュージアム原宿

会場オープン:9時30分

 北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)は2月11日~12日にかけて、高校生eスポーツ大会「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」決勝大会をラフォーレミュージアム原宿にて開催した。

 決勝大会2日目には、ライアットゲームズが運営するPC用タクティカルシューター「VALORANT」とプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PC用スポーツゲーム「ロケットリーグ」の決勝戦がそれぞれ行なわれた。本稿では「VALORANT」部門の決勝の模様をお届けする。

 なお、本大会はYouTube・Twitch・Xにて無料ライブ配信が実施された。MCをOooDa氏、実況・解説として岸大河さんとyueさん、アナリストとしてRetloffさん、応援リーダーとしてVTuberの胡桃のあさんがそれぞれ登壇した。

MCを務めるOooDa氏
実況・解説の岸大河さん(左)とyueさん(右)
アナリストのRetloffさん
応援リーダーの胡桃のあさん
【【VALORANT部門】NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権 決勝】

 厳しい戦いを勝ち抜き、決勝の舞台で対決するのは、ルネサンス高等学校横浜キャンパス「芳醇きのこの焦がしバター」とルネサンス大阪高等学校梅田eスポーツキャンパス「イナザワジャパン」の2チームだ。

 高校生「VALORANT」では、「VALORANT」のプロシーンと異なるエージェント(キャラクター)の選択や、それぞれのチームカラーが魅力となるが、「芳醇きのこの焦がしバター」は個人の判断能力やエイム力が非常に高いチームとなっている。対する「イナザワジャパン」は事前に決めた戦略を遂行する力が高く、連携力の高さがウリのチームだ。対照的なチームカラーの2チーム、「芳醇きのこの焦がしバター」が個人技で撃ち勝つか、「イナザワジャパン」が連携で封殺するかが注目ポイントだ。

 試合前には各チームのキャプテンが意気込みを話した。「芳醇きのこの焦がしバター」の赤マントRadiant選手は「3年生が1人いるんで、最後に花を持たせて卒業させてあげたいので、いい感じで終わって、皆でご飯行きたいです」と、「イナザワジャパン」のキャプテンイナザワ選手は「別の大会で負けてしまって悔しい思いをしたので優勝を狙って頑張ります」とそれぞれ優勝への思いを述べ、決勝第1試合へと臨んだ。

「芳醇きのこの焦がしバター」のメンバー
「イナザワジャパン」のメンバー

決勝1戦目。相手を翻弄する戦略で「イナザワジャパン」が有利を築く

 決勝戦はBO3(2本先取)で行なわれ、1戦目のマップは「バインド」となった。バインドには、瞬時にマップを大きく移動できるワープエリアが2つ存在し、それを上手く活用した陣取り合戦のような展開になるマップだ。「イナザワジャパン」のCat cute選手の使用する、プレイヤーの純粋な撃ち合いの強さが重要となる「レイナ」と、キャプテンイナザワ選手の使用する、波を操り味方をサポートする「ハーバー」という特徴的なエージェントがどうプレイされるかが期待された。

両チームのピック。強気のレイナピックを活かせるかが注目されていた

 試合は先に攻撃側となった「イナザワジャパン」が持ち前の連携力を活かして相手を翻弄し、立て続けに4ラウンドを連取。これに対し「芳醇きのこの焦がしバター」は固まって攻めることをチームで決め、情報がない場所に全員で一気に攻め込み、撃ち合いを制して1本返すことに成功した。

配信では時よりチーム内VCが流れた。4本連取された「芳醇きのこの焦がしバター」は一気に攻めることを選択しラウンドを獲得。一方の「イナザワジャパン」のVCは常に雰囲気がよく、チームの勢いを感じられた

 1本返すことに成功した「芳醇きのこの焦がしバター」だが、「イナザワジャパン」のまとまった動きを崩すことは容易ではなく、その後のラウンドから再び「イナザワジャパン」が連取。全ラウンドを通して各選手のポジショニングや、視界を遮るアビリティを使用しての射線管理を徹底し、セーフティにラウンドを勝ち取っていく。特に9ラウンド目にはAサイトにアビリティを使用し、相手の意識をAに向けさせた上でBサイトに進行。位置を確認しに来た敵をキルし有利を作るという高度な動きを見せていた。

 「芳醇きのこの焦がしバター」はこうした「イナザワジャパン」の動きに翻弄されながらも、高い個人技と速攻の判断で状況の打開を図るが、惜しくも届かず1試合目を13-4で「イナザワジャパン」が勝利した。

13ラウンドには圧倒的不利な状況から、Cat cute選手とキャプレンイナザワ選手がそれぞれ1人で多人数を相手にする動きを通しリテイクを成功。決勝という舞台で落ち着いて強気な動きを通した

決勝2試合目高度な連携をフィジカルで突破できるかが鍵に

 1試合目に勝利し優勝に王手をかけた「イナザワジャパン」は、メンバーを交代しibu選手に代わってone選手が出場。メンバーチェンジ後も集中力を切らさずに1試合目と同様の連携を見せられるかが注目だ。

 対して後がなくなった「芳醇きのこの焦がしバター」にとっては、どう「イナザワジャパン」の連携を打ち崩すかがカギとなる。早い段階でのプッシュや、時間差での攻撃を仕掛け、撃ち合いの強さを活かすことができれば勝機があった。

 2試合目のマップは「アセント」。最初期から実装されているこのマップは、ほとんど変更もされていない。攻める側のチームは、マップの中央部分のコントロールを奪えるかが勝利するうえで重要となる。

この試合から参加するone選手は、素早い動きで相手を翻弄するジェットが得意とのことで、強気なプレイが見られるかが注目

 試合は1ラウンド目から「イナザワジャパン」のone選手の使用するジェットがダブルキルを獲得する活躍みせ、2ラウンド目もチームで撃ち合いに勝利し有利を作った。対する「芳醇きのこの焦がしバター」は、金で愛は買えないが俺を買収できる選手とpoo3選手の強気な動きで3ラウンド目を取り返す。

 スピード感のある動きを見せる「芳醇きのこの焦がしバター」だが、「イナザワジャパン」の連携力は2試合目でも発揮されていた。5ラウンド目には相手がAに固まっているのをアビリティで確認すると、情報を活かした動きで囲い込み、次々にキルを取っていきパーフェクトでラウンドを獲得。7ラウンド目にはキャプテンイナザワ選手が素早い判断から4キルを獲得するなど、個人技でも素晴らしいプレイを魅せていた。結果、前半を10-2で「イナザワジャパン」が圧倒した。

前半ラストの12ラウンド目は「イナザワジャパン」が勝利。キャプテンイナザワ選手の後続のカバーを信じた動きと、裏に回っていたmishiranu選手の動きによる完璧な囲いこみが決まった

 後半に入り、もう1ラウンドも落としたくない「芳醇きのこの焦がしバター」は13ラウンド目を勝利、続く14ラウンド目も「イナザワジャパン」の素早い攻めにしっかりと対応して連取した。15ラウンド目には「イナザワジャパン」Loud kawanzin選手を活かした削りと、mishiranu選手の無理せず撃ち合わない的確な判断もあり「イナザワジャパン」がラウンドを取るも、16ランド目はギリギリの撃ち合いを制し「芳醇きのこの焦がしバター」がまたも勝利し、食らいつく姿勢を見せた。

 このまま突き放したい「イナザワジャパン」。17ラウンド目に前めの位置取りからスピーディーな展開を作り勝利し、マッチポイントとなる。もう後がない「芳醇きのこの焦がしバター」はそれでも諦めず、18ラウンドには素早い展開から、19ラウンドには武器有利を活かしてそれぞれ連取。最後の最後まで諦めずに勝利を目指した。

 試合が決まったのは20ラウンド目。「イナザワジャパン」がキャプテンイナザワがキルを獲得し作った有利から、全員が的確なポジションを取り相手の動きを封殺。最後まで高い連携力を発揮した「イナザワジャパン」が13-7で勝利し、王座を獲得した。

最後まで的確なポジショニングとアビリティ使用による高度な連携を見せ、相手のやりたい動きを封じた「イナザワジャパン」が勝利した

 試合を終え、惜しくも準優勝に終わった「芳醇きのこの焦がしバター」キャプテンの赤マントRadiant選手は、「相手の戦術が複雑で、雰囲気もあって自分たちの強みであるフィジカルの強さを出し切ることができなかった」、「eスポーツをやるにあたって、他のスポーツと比べてお金や時間、場所もかかる中、色んなサポートがあってここまでこれた。学校や家族に感謝したい」、「来年、3年生は卒業してしまうが、僕と1年生で新たなチームを作ってまたこの舞台に立てるよう頑張りたいです」と語った。

 また、優勝した「イナザワジャパン」のキャプテンであるキャプテンイナザワ選手は「大会があると聞いてから、1〜2カ月ほど期間があり、メンバーを学校の皆で決めて、そこから毎日学校に来て皆で練習をし、家に帰ってスクリムをしていました。この大会のお陰で皆も成長できたと思いますし、自分にとっても大きな一歩だったと思っているので、出場してよかったです」、「前回の大会を見てくれた方、会場に来てくれている友達、家で見てくれているお父さんお母さん、優勝できました。これからもっと頑張って、もっと上まで行くので応援してください。よろしくお願いします」と語った。

トロフィーを掲げる「イナザワジャパン」の選手たち
フェアプレイ賞を受賞したのはキャプテンイナザワ選手

 今回見事に優勝を果たした「イナザワジャパン」。戦略的な動きの精度は勿論だが、なによりボイスチャットからチームの雰囲気の良さが伝わってきたのが印象深かった。プロシーンを追いかけていると忘れがちだが、「ゲームは皆で楽しむもの」という原点を改めて感じられた。

 さて、プロ顔負けのフィジカルの強さや、高度な戦術が見ることができた本大会。今回出場した選手は1年生も多く、来年も見事なプレイで高校生「VALORANT」シーンを沸かせてくれるはずだ。卒業する選手達も、プロを目指したり、アマチュアチームに参加したりとそれぞれの道で「VALORANT」を盛り上げてくれることを期待したい。

【【VALORANT部門】NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権 決勝】