インタビュー

3周年の情報は「まだ」。「勝利の女神:NIKKE」インタビュー【TGS2025】

「バイオハザード」「京都」コラボについても聞いた

【東京ゲームショウ2025】
会期:9月25日~9月28日
ビジネスデイ 9月25日10時~17時/9月26日10時~17時
一般公開日 9月27日9時30分~17時/9月28日9時30分~16時30分
会場:幕張メッセ(千葉市美浜区)

 サービス開始から3周年を間近に控える「勝利の女神:NIKKE」。ゲーム自体の人気もさることながら、京都スタンプラリーなど話題のコラボレーションを次々と成功させる裏側には、どのような開発哲学があるのだろうか。

 SHIFT UPディレクターのユ・ヒュンソク氏、シナリオディレクターのチョン・ジェソン氏に、ストーリー制作で重視するテーマや世界観拡張への挑戦、そしてLevel Infiniteとの協力関係、そして今後の展開まで語ってもらった。

Shift Up ディレクターのユ・ヒュンソク氏
シナリオディレクターのチョン・ジェソン氏

「まず私たち自身が楽しめるストーリーを作るべき」。ストーリー制作の哲学

――本日はよろしくお願いします。「NIKKE」のストーリー制作で特に重要視しているテーマと、世界観拡張への挑戦について教えてください。

チョン・ジェソン氏:キャラクターを作る際に最も重要視しているのは、そのキャラクターの「人間らしさ」です。当然短所があり、その短所を克服するためにそのキャラクターがどう考え、どう行動するかを、キャラクター設計の最初に考えることを心がけています。

 世界観の拡張については、物理的には非常に狭い世界――具体的には「アーク」とその近辺の地上に限られているのですが、この狭い物理的空間を豊かに見せるため、ストーリーの密度を高める努力をしています。様々な要素を盛り込み、それらが絡み合うことで、狭いけれど大きな世界に見せるよう工夫しています。

――国や地域によってストーリーの好みが違うと思いますが、それを意識した制作をされていますか?

チョン・ジェソン氏:特定の国に対して「この国にはこの物語が受ける」という考え方はしていません。「この物語が我々にとって描ける最も良い物語だから届けたい」といつも心がけています。

 ただし、季節に関しては話が変わります。冬や夏によく合うストーリーテーマはあるので、家族の話など、シーズンの雰囲気に合わせることはありますが、国や地域を意識することはありませんね。

ユ・ヒュンソク氏:指揮官の皆さんにあわせて、喜んでもらえるストーリーを作るのがベストかもしれませんが、まずは私たち自身が楽しめるストーリーを作るべきだと考えています。「NIKKE」の開発時も同様で、なにより自分たちが楽しく遊べるゲームを目指してきました。多少、身勝手に聞こえるかもしれませんが、そういう姿勢で今も制作を続けています。

――ShiftUpとLevel Infiniteの協力関係について、開発とパブリッシング両方の観点からの強みと特徴をお聞かせください。

ユ・ヒュンソク氏:Level Infiniteの最大の強みは、グローバルインフラ、特にパートナーシップを結んでいる企業の多さです。そうした関係性から多くを学び、マーケットの理解や展開において大いに助けられています。今回の京都コラボも、Level Infiniteのインフラのおかげで実現したものの1つです。

 一方、ShiftUpの強みはクリエイティビティにあります。両社は相互補完的な関係にあり、協力関係を始めて約5年が経ちますが、この関係は今後も成長していくと確信しています。

チョン・ジェソン氏:特にシナリオ面では、Level Infiniteのローカライズレベルが非常に高く、日本のユーザーからは「韓国のゲームなのに日本語が自然すぎる」というフィードバックを多数いただいています。音響ディレクションやテキスト翻訳において、現地ユーザーが全く違和感を感じないレベルに達しており、私たちは安心して任せることができます。

 また、声優の皆さんの熱演も欠かせません。日本を含む世界中の声優の皆さんのおかげで本作が成功していると考えており、この場をお借りして感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

東京ゲームショウでも「NIKKE」はLevel Infiniteブースで出展している

――「JR推し旅イベント」や「京都スタンプラリー」といった取り組みが印象的ですが、こうした取り組みを通じて、日本市場のプレイヤーにどのような新しい体験を届けたいと考えていますか?

ユ・ヒュンソク氏:オフラインイベントは日本だけでなく、グローバルで継続的に開催していますが、毎回想像以上に多くの方々に喜んでいただいています。指揮官の皆さんが期待以上に楽しく参加されている様子を見て、高いクオリティのイベントを提供することの重要性を改めて感じています。

 特に日本では、代理店の方々やデザイナーの作家の方々といった、素晴らしいパートナーシップを築けているおかげで、より積極的な展開が可能になっています。今回の京都イベントも、そうした協力関係の成果の一つです。

――日本は本作にとって重要な市場だと思います。今後、日本のプレイヤーを対象に特に力を入れたいコンテンツやコラボレーションの方向性について教えてください。

ユ・ヒュンソク氏:力を入れる方向性は、日本とグローバルで大きく変わることはありません。基本的に今までの取り組みと変わらず、ストーリーをベースにした音楽やキャラクターの背景、そしてラプチャーなど、「NIKKE」の世界観を構築している要素一つ一つが良いIPとして機能するよう、高いクオリティを維持することが最重要課題です。

 それに加えて、今回のJRコラボのような地域の特色を活かしたイベントや、様々な地域でのオフラインイベント開催に努めています。指揮官の皆さんにより多くの機会でお会いできるよう、オフラインイベントやポップアップストアの展開も積極的に進めていきます。

京都市やJR東海とコラボレーションをしている

――「バイオハザード」コラボにおいて、原作を魅⼒的に表現するため⼯夫した部分はありますか︖

ユ・ヒュンソク氏:「バイオハザード」はある意味、ガンシューティングの元祖とも⾔える作品で、ガンシューティングの後輩として、「NIKKE」開発陣は本当に尊敬の気持ちを込めて制作に取り組みました。

 原作の忠実な再現に⼒を⼊れ、キャラクター、背景、その他素材、ミニゲーム、カットシーンなど、あらゆる要素で原作を感じられるよう配慮しました。ストーリーでは完成度も重要ですが、原作がゲームだからこそ、そこに含まれた要素やミームをコラボストーリーに落とし込みました。

チョン・ジェソン氏:ストーリーの⾯では、物語のクオリティや完成度が重要なのはもちろん、原作に含まれた要素やミームを落とし込みました。「かゆい」というセリフやサンドイッチに関するネタなども反映し、カプコンさんからも積極的に提案をいただいたおかげで、⾮常に満⾜できるコラボになりました。



「バイオハザード」とのコラボレーションも開催中だ

――一部ユーザーから開発縮小や予算削減への懸念の声が聞かれますが、スタジオとしての今後の進化と発展についてお聞かせください。

ユ・ヒュンソク氏:まず明確にお伝えしたいのは、ローンチ時と比較して現在のスタッフ数は約2倍になっており、さらに人員を増やしている途中だということです。

 ソロレイドでの問題などから、人員縮小を心配されている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうした声が出ないよう、安心していただけるような運営を心がけることが重要だと感じています。

 ただし、開発に関しては人数だけでなく、本当に「NIKKE」を心から愛している人に参加してほしいと考えているため、採用は慎重に進めています。今後も良いクオリティのコンテンツを、ゲーム内外問わずお届けできるよう努力してまいります。

――ほかにも、今後追加予定のコンテンツについて教えていただけますか?

ユ・ヒュンソク氏:決定事項についてはデベロッパーノートで隠すことなくお伝えしているため、新たにお話しできることは限られているのが正直なところです。現在は3周年とほぼ同じタイミングでリリースする「地上コンテンツ」に集中している状況です。

 今後予定されているのは主にストーリーやキャラクターに関する内容のため、詳しくお話しするとネタバレになってしまいます。ただし、来年のコンテンツ進化やコンテンツ追加、運営方針については、近いうちに「2026年計画」として改めてお伝えする機会があると思います。





――3周年の節目で、「NIKKE」を応援してくださるファンや新規プレイヤーの方々にメッセージをお願いします。

ユ・ヒュンソク氏:3周年は我々にとって非常に意義深い節目です。なぜなら、「NIKKE」がローンチされる前にゲームを制作していた期間よりも、指揮官の皆さんと共に歩んできた時間の方が長くなったからです。それだけ大きな意味を持つ節目だと考えています。

 そして3周年のストーリーについてですが、年初のデベロッパーノートで「ぜひ期待してください」とお伝えしましたが、私たち自身が本当に期待している内容で、早く皆さんにお見せしたい要素が盛り込まれています。そうした気持ちで準備を進めておりますので、ぜひ楽しんでいただければと思います。

チョン・ジェソン氏:3年という長い間、「NIKKE」を愛していただき、本当にありがとうございます。新規の指揮官の方々にお伝えしたいのは、ストーリーをより楽しんでいただけるよう、難易度を抑えた優しいモードを追加予定だということです。これにより、ストーリーをより気軽に楽しんでいただけるようになります。

 3周年に向けて準備してきた要素には、楽しいコンテンツがたくさん詰まっていますので、ぜひ「NIKKE」をプレイして楽しんでいただければと思います。

――本日はありがとうございました!