インタビュー

PlayStation VR「RIGS」で、ついに人類は“VRFPS”の領域に踏み込む

「RIGS」の“VR酔い”は克服できる酔い!? VRの限界へのチャレンジ

9月17日~20日開催(17、18日ビジネスデー)



会場:幕張メッセ



入場料:1,200円(税込)

 “Project Morpheus”時代から公開されてきた数々のPlayStation VRタイトルの中で、評価が真っ二つに割れているのが「RIGS」だ。VR空間でFPSを楽しむという、これまでSFの文法で語られてきた仮想世界をゲーム上で再現するというチャレンジに快哉を叫ぶ人もいれば、ジャンプや落下など自ら制御できない視点移動が多用されるVRゲームの悪い見本と厳しい見方をする人もいる。SCE社内でも、「これで良い」という意見と、「これでは気持ち悪くなる人が続出するから調整するべき」と意見がこれまた真っ二つに割れているという。

【RIGS - E3 2015 | PS4】

「RIGS」はアメフトとモータースポーツを掛け合わせたようなゲーム
試遊の様子
マッチングの前は、こうして目の前にロボットがあり、ぐるぐる回転させることができる
マッチングを間は、ロボットに搭乗した状態でメンバーが揃うのを待つ

 これらの事実が伝えているたったひとつのことは、SCEWWS傘下の開発スタジオGuerrilla Cambridgeが手がける「RIGS」は、それぐらいカッティングエッジなVRゲームだということだ。今回東京ゲームショウでは、賛否両論あったE3バージョンからさらにチューニングしたという最新バージョンをプレイする事ができたほか、開発者インタビューにも参加することができたので、まとめて紹介したい。

 「RIGS」は、機動力の高いコンバットロボットに搭乗し、競技場の中央にあるリングに、バスケットボールのように自ら飛び落ちることで得点を重ね、累計得点を競うチーム型のスポーツゲームだ。3対3のオンラインゲームであり、PSVRを装着してロボットに搭乗した状態で、6人揃うのを待つ。プレーヤーはロボットの真ん中に搭乗した状態で固定され、左右上下に目を移すと、自らがコクピットに搭乗していることがわかる。この感覚がすでに楽しい。

 今回プレイしたのは、「パワースラム」と呼ばれる2チームに分かれてゴール数を競うルール。敵マシンを3機撃破するか、パワースフィアを集めることでオーバードライブが発動し、この性能が向上した状態で、リングを通過すると得点となるというルール。簡単に言うと、敵を倒しまくって、リングを通過して得点を稼ぐゲームだ。製品版ではこれ以外にも複数の対戦モードが用意されるほか、1人で遊べるシングルプレイモードも用意されるという。

 ロボットの基本機能は、移動、ダッシュ、ジャンプ、攻撃の4種類。これに移動速度を上げるターボモード、攻撃力を上げるアタックモード、徐々にHPを回復させるリペアモードという3種類のモードを切り分けることで、バトルに緩急を付けることができる。また、機体によってそれぞれ性能が異なり、空中でホバリングできる機体も存在するようだ。

【登場ロボット】
ロボットはチーム「ダイナモ」と「コブラ」で、デザインと性能が少しずつ異なる。大きく異なるのがスペシャルアビリティでダイナモが「ノックアウト」と呼ばれる強力な近接攻撃が使用でき、一方「コブラ」は敵を倒すと自らのパワーを吸収するバンパイア的なアビリティを使用できる

 ゲームの操作は、PSVRのヘッドトラッキングと、DUALSHOCK4を併用する。今回プレイしたのは、左スティックで移動、右スティックで向きの変更、ヘッドトラッキングでエイミングというもの。これはE3後に開発されたタイプBと呼ばれる操作方法で、E3での左スティックで移動、右スティックでターゲット、ヘッドトラッキングで向きの変更というタイプAから変更を加えたものとなる。製品版では操作方法をタイプAかBから任意で選べるようになるという。

 今回はこのタイプBでプレイしてみると、ヘッドトラッキングでエイミングを行なう操作はまさにロボットアニメの主人公になった感じで、直感的に素早く狙いを付けられて快適だった。しかし、左スティックでの移動操作が、通常のFPS並に速いのと、右スティックでの向きの変更に違和感を感じ、前半の戦いだけでかなり酔ってしまった。

 後半は酔いを悪化させないように画面の動きを最小限に留め、敵を狙い撃つという消極スタイルに変更したものの、得点を稼ぐにはリングまで駆け上がって、ジャンプし、落下する必要があり、この一連の操作でやはり酔ってしまった。これほど酔うのは、初期型の「Oculus RIFT」や「Project Morpheus」以来だ。

 ただ、このVR酔いは、酔いやすいVRコンテンツのお手本とされるジェットコースターやチープなレースゲームのVR酔いとは違っていて、ロボットの動きや移動時の加速度、ジャンプのゆったりした動き方に慣れれば、軽減される酔いだと感じた。

 これはちょうど、20年近く前に、「DOOM」、「Quake」をプレイすると激しく3D酔いし、対戦する度に吐き気を覚えていた感覚に近いものを感じた。当時は「3Dゲームはとても無理だ。『信長の野望』でいい」と弱気になったものだが、当時感じていた3D酔いは、3Dゲームのプレイ経験を重ねるうちにほぼなくなり、「Aliens vs Predator」のような文字通り人外の動きをするもの以外は基本的に酔わなくなった。私の見立てが間違っていなければ「RIGS」のVR酔いは“克服できる酔い”だ。

【リオデジャネイロのマップ】
競技場はリオデジャネイロに建てられたという想定で、イエローカラーと眼下に広がる街並みが特徴となっている

 ゲームそのものは非常にエキサイティングだ。遠目から銃撃するだけでなく、近接攻撃で敵をはじき飛ばしてゴールを邪魔したり、ジャンプで敵の銃撃を回避して、上空から攻撃をたたき込むなど、かなりクールな戦いが展開される。しかも、なんといっても360度の視界が広がるVR空間で戦えるため、興奮度、没入感もひとしおだ。VR酔いを克服できれば、このゲームはPSVRのメジャータイトルのひとつになるだろう。

 「RIGS」は、PlayStation VRタイトルの中でももっともコア向けのゲームであり、e-Sportsタイトルとしてもっとも奥行きのあるタイトルと言える。それだけにこの「RIGS」がユーザーに受けいられるかどうかは、PSVRの未来を占ううえで重大な試金石となる。酔いの発生はできるだけ避けるべきだが、だからといって、今回もいくつかのVRタイトルで見られたように、原理的にVR酔いの発生を防ぐために移動速度を極端に下げたら、それはもうゲームとして手足を縛っているようなものだと思う。このゲームがPSVRのローンチタイトルとしてどのような形で軟着陸するのか見守りたいと思う。

【スクリーンショット】
大迫力のVRバトルが繰り広げられる

(中村聖司)