インタビュー

iOS「NAMCO Sound Player」インタビュー

「遊んだ人がニヤニヤする」のが「NAMCO Sound Player」の狙い

「遊んだ人がニヤニヤする」のが「NAMCO Sound Player」の狙い

「NAMCO Sound Player」の追加タイトルは「Shop」で購入できる。1タイトル85円
「リブルラブル」はiTunes StoreでBGMの配信は行なわれていない貴重なタイトル

――「ゼビウス」が同梱、そして「パックマン」から「ボスコニアン」まで8タイトルが追加サウンドとしてラインナップされていますが、このラインナップの選定の理由は?

岩間氏:最初は、「ビデオ・ゲーム・ミュージック」(細野晴臣氏がプロデュースしたアルバム)に準拠したラインナップを想定していたんですよ。そこから「フォゾン」と「ポールポジション」を抜いて、次にリリースされた「ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック」の中から「ドルアーガの塔」を入れたんです。なので、並びも基本は「ビデオ・ゲーム・ミュージック」に準じて並んでいるんです。そこがゲームミュージックのスタートだったし、皆さん没頭して遊んでいた時期でもあるので、ここからかなと。

大久保氏:全部揃えると価格が「765円」(ナムコ円)になるのは、後付です(笑)。

――「もっとたくさんタイトルを詰め込んじゃえ!」みたいな意見はなかったんですか?

岩間氏:少数の方に「なんであれないの?」と言われたことはありますが、「詰め込め」といった意見はありませんでしたね。

大久保氏:逆に、リリースした後に「これが欲しい」、「あれが欲しい」といった意見を頂くようになりました。僕も完成前に、会社中いろんなところに行って「これいいでしょ?」って見せに回ったんですが、そのときは「このタイトルがある!」みたいな感じで喜んでもらえましたね。

――SEのボタンの数とかを考慮して、このラインナップになったのかと思いました。

岩間氏:それはあまり意識しませんでしたね。

大久保氏:最初の頃のメジャーな「ナムコサウンド」と言えばここから、というタイトルですよね。「ビデオ・ゲーム・ミュージック」の並び順というところがまさにそうだと思うんですけれども。実はiTunesでは「リブルラブル」を配信していないので、このアプリが初出しなんです。

――「リブルラブル」はスーパーファミコンやWiiのバーチャルコンソール向けに移植されましたが、他のタイトルに比べるとそれほどリリースされていないと思うので、貴重だなと。

大久保氏:「リブルラブル」の曲は僕も昔から好きなので、やっと「リブルラブル」が聞けたうえに、再現できるなと。

岩間氏:あの「間」を……BGMとBGMのつなぎの間を、自分でボタンを押してしっかり再現できたときに、ヘンな気持ちよさがあるじゃないですか。あれを体験できていただければ、満足です(笑)。

大久保氏:頭の中には全部タイミングが記憶としてあるので、再現できると楽しいんですよ。

――普通、ゲームとしてなら、その「間」をプログラムで再現しなきゃならない話じゃないですか(笑)。

岩間氏:本来はそうですよね。ゲームとしてなら(笑)。

――ゲームとしてなら、「ここは後もうちょい開けて」、「いやいや」ってやりながら調整するところだと思うんですが、このプレーヤーなら、それをユーザーさんにゆだねられるから「自分で演れや!」って言えちゃうんですよね(笑)。

大久保氏:「ドルアーガの塔」のフロアのクリアから、次のフロアのスタートの間隔ってすごく微妙な間じゃないですか。あそこをこれでうまく再現できると、ニヤニヤします(笑)。

――前の音が消えるタイミングと、次の音を出すまでのタイミングが綺麗にハマるとゾクっとしますね。気をつけて聞いていないと、意外とわからないことなのかもしれませんが。

岩間氏:当時は、何度も同じものを聞いていたじゃないですか? 意外と当時のゲームセンターは爆音だったので、結構記憶に刷り込まれていて。(このプレーヤーでプレイしても)何気なくボタンを押しているんですけれども、意外と自分もそのタイミングでボタンを押しているんですよね。それが結構楽しめるんですよ。

大久保氏:僕は当時、ゲームセンターでBGMを録音して、家で編集して、自分なりのゲーム音楽カセットを作っていたので、このあたりのタイトルはかなり記憶が鮮明で。

――テーブル筐体のスピーカーの前にラジカセ置いて録音してた世代ですか?

大久保氏:最初はそうだったんですが、途中から店員さんと仲良くなって、サウンドテストモードにしてもらって、LINE(入力で)で録ってました(笑)。

岩間氏:ずるいですね(笑)。

――僕はヘッドフォンジャックが付くまで待ってました(笑)。「ナムコ筐体にジャックが付いた!」って喜んでた派です(笑)。そういう世代の人にこのアプリはストライクなんだろうなと。

大久保氏:スタートはやっぱり「僕が欲しかった」んで。

――ゲームでもなくて、成績を競うわけでもなくて、落としどころが難しいような気がするんですが、今の形になるまですんなり決まったんですか?

岩間氏:これを作ってるときに思っていたのは、これを鳴らしている人が「ニヤッ」ってしたら、その時点で完成だなと。さらに、より追求して、音を出している間に画面が浮かんでくるまで遊んでいただければ、もう「ありがとうございます!」という状態なので。その部分は早い段階でできあがっていましたから、あとは「いつリリースしましょうか?」というところでした。

大久保氏:さきほどのデザインの話じゃないですが、いろんな機能の提案などを「いらないです」と判断するための理由付けを考えていたので。できるだけシンプルな方向に持っていくことが「NAMCO SOUNDS」っぽい、みたいな。

岩間氏:「シーケンスを入れたい」とか「MIDIを読めるようにして欲しい」という声は一杯あったんですけどね。そうすると、打ち込んでそれが鳴るだけのソフトになって、こちらが求めている「鳴らして『ニヤッとする』」方向性とは違うものになってしまう。「そこじゃない、僕らがやりたいのはそれじゃない」と。

大久保氏:僕らもアプリを作る専門ではなかったので、社内のアプリを作る部署のスタッフに見せたとき「これでいいの?」という話をされたんですが、「いいんです」と。

――どことない「物足りない」感というか、そういった意見はあったんじゃないかという気がしていたんですよね。逆に「ナムコサウンド」を使いたい放題、というサウンドシーケンサー的な方向性もなくはないと思うんですが。ただ、それとは違うんだよ? ということなんですね。

岩間氏:偉い方たちにも見てもらったりしたんですが、やっぱり「ニヤッ」てするんですよ。「それです」と。

大久保氏:実際にゲームを作っていた方々たちなんで、「ニヤニヤ」どころか「爆笑」ですよ。

岩間氏:「なんだよコレ」って言いながらニヤニヤしてましたね。複雑化すると、そういった方々にも触りにくいものになってしまう。敷居の高くなったソフトウェア、例えばiTunes Storeでも「ミュージック」のカテゴリで販売されているようなシーケンサー的なものは、一般の方には敷居が高いんじゃないかなと思うんですよ。ただただ当時を思い出してニヤニヤしていただきたかった。ターゲット層としてはこのぐらい(とインタビュー参加メンバーを指す)。

大久保氏:決して万人受けはしない。僕らが最初に想定したターゲットも、僕みたいな(笑)当時のゲーム、ナムコのサウンドが好きだった人たちが思い出しながら楽しめるものが作りたかったので。

――単にゲームのサウンドを楽しむだけなら、本当にジョイスティックなりコントローラーなりで、ゲームをプレイすればいいと思うんですよ。プレーヤーの方のリアクションで音が鳴る、という部分で言えば。でも、このタイトルは今までにあったようでいてない部分をピンポイントでついているなと思うんですね。

大久保氏:思ったとおりにやりたいし、ちょっとボタンを押している姿もかっこいいし。(実際に音を出しながら)この間を再現したいし。

岩間氏:「そうそう」って言いながらね(一同笑)。

大久保氏:「ドルアーガの塔」でも、スタートしたらまず剣をしまうするじゃないですか(一同笑)。

――わからない世代からしたらこれは「はあ?」って話ですよね。

大久保氏:話として盛り上がりたいじゃないですか。

岩間氏:タイミングが違うときは「違えよ」って言いながら、自分がやるという(笑)。

「NAMCO Sound Player」はゲーム音源の理想の配信の仕方!?

――iOSでも移植タイトルとして「NAMCO Sound Player」のラインナップにあるゲームがリリースされていますが、「NAMCO Sound Player」はゲームをそのまま遊ぶのとは違う何かがあるんですよね。ゲームプレイの再現をゲームの上でやっているわけではない。そのときのプレーヤーさんの記憶、意識を外にアウトプットするというツールなのかなと。

大久保氏:そうですね。

――この時代のタイトルだからこそ、音に対しての記憶も強烈で、覚えている人たちが集まると、笑いが出てくる。1度、これを持ってゲームセンターに行ってプレイしてみたことがあるんですが、いろんな音の洪水の中でプレイすると、なおさらよかったです(笑)。

大久保氏:このプレーヤーを入れたiPhoneやiPadを持ち寄って皆でいろんなタイトルをプレイすれば、当時のゲームセンターが再現できますね(笑)。

岩間氏:「キャロット※」が再現できますね(笑)。

※「キャロット」……「プレイシティキャロット」。ナムコが運営しているゲームセンターのブランドの1つ。最近ではほとんどが「namco」ブランドに変更されている。

大久保氏:僕らと同じ気持ちで楽しんでいただけるといいなと。動画とか、見てみたいですね。

――「NAMCO Sound Player」は今回の配信でひと段落というか、続編などの予定はないんですか? ほかにも、音を使った遊びというか、ぜひ、他社さんのも出して欲しいです(笑)。

岩間氏:今はこれでひと段落、といったところですが、他タイトルの要望も沢山頂いているので……。

大久保氏:「NAMCO SOUNDS」というところは、「音」を軸にして遊べるものや、使えるものや、ゲームの音が軸なのかもしれませんが、ゲーム以外でも面白い音がするものはやっていきたいなと。Tシャツとかのグッズも作りたいとか思ってますけど(笑)。「NAMCO Sound Player」も、まだ個人的に欲しいタイトルがあるので……僕みたいな「満足できてない」人間が「岩間さ~ん」って言って、いろいろやっている最中です。

――このスタイルそのままではなくても、共通体験の多いであろうナムコタイトルのサウンドを使って新しいものを作る、というのはいろいろできそうな気がしますよね。それ以外にも、他社さんのタイトルでもこういうアプローチをして欲しいな、とも思ったり。

大久保氏:僕もそうなんですよ。当時遊んでいた他社さんのゲームでこういったものをやりたいなと思うんですが、どうすればいいんでしょうね(笑)? お伺いを立ててみればいいのかな? 回ってみますか(笑)。

岩間氏:Twitterとかでも「他社さんでもぜひ」という声もありましたからね。

――チャレンジしてもらいたいですね(笑)。

大久保氏:話は最初に戻るんですが、iTunesで楽曲を配信という仕組みだと、最初のトラックでザッパーの音が鳴って、次のトラックに行ってブラスターの音が鳴って……となっても当時の良い思い出というかゲームシーンとリンクしないんですよね。楽しめるか、というと楽しめなくて。これを楽しめる方法がないかと思ってこのアプリを企画したんです。

 SEをただ、配信していることが当時のプレーヤーさんたちに楽しんで頂けているのかなと。単品が聞きたいわけじゃなくて、ブラスターを撃ったら爆発音が返ってくる、みたいな間隔を自分のタイミングでやってもらいたくて、こんな形がいいだろうという話になったんですよね。当時のファンの方にはこういった形がひとつの正解なんじゃないかと思っています。

――アルバムの最後に入っているSE集とか、ゲームプレイをそのまま録音したものって、楽しいかと言われるとどうなんでしょう? SE集もそのトラックをみんな買ってるのかな? って疑問だったんですよ。個人的にはSE自体は好きで、BGMと重ねて鳴っているのは理想に近いけれど、自分の好きなタイミングで聞きたいなと。そうすると操作することで自分が介在することになるんですが、楽曲配信とは違いますよね。

大久保氏:iTunesのタイトルでも、ゲームプレイのトラックを配信しているんですが、それだけが売れてたりするんですよ。あれをプレイしているのは僕です。豆情報ですけれど(笑)。

――そうなんですか(笑)。そうすると、この「NAMCO Sound Player」の形での配信は、聞くもよし、遊ぶもよしでいい形態なのかもしれませんね。最初文字情報だけ見てもいまいちわからなかったんですが、動画を見たり自分でプレイしてみて、「なるほど!」と思ってニヤニヤしましたからね(笑)。

大久保氏:欲求的にこうしたかったという。ゲーム音源の理想の配信の仕方はこういう形かなと。

――いろいろ鳴らしてみて、終わりたかったら4番を押して「終わり!」ってできるのが個人的にはスッキリしてよかったです(笑)。ただのトラックシーケンサーだったら違う体験だったと思うんですよね。

岩間氏:「終わり」って決めて(笑)。

――こうしてみると、大久保さんはじめ、「NAMCO SOUNDS」ではいろいろ挑戦されてるイメージがありますね。

大久保氏:いろいろやりたいことがありすぎて、「音」を軸にしつつ「バカだなあ」って思われることから、「かっこいいなあ」って思われることまで、これからもいろいろやっていこうとしています。

――今後も楽しみにしています。ありがとうございました。

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(佐伯憲司)