インタビュー

成長を続ける「Vainglory」、開発元CEOインタビュー

e-Sports施策は前倒しスタートだった! 変化を続けた1年半と今後を語る

9月15日~18日 開催

会場:幕張メッセ

入場料:
一般前売券 1,000円(税込)
一般当日券 1,200円(税込)
小学生以下無料

Super Evil Megacorp CEO兼共同創立者のBo Daly氏

 Super Evil Megacorp(SEM)がAndroid/iOS用に配信しているMOBA「Vainglory(ベイングローリー)」。昨年4月の配信開始から約1年以上が経過した現在では、当初11人だったヒーローは9月15日に配信された「アップデート1.22」時点で27人まで増え、ゲーム内ではチュートリアルやスキンショップ、デイリーボーナスに至るまでUI周りもかなり充実している。

 本作はe-Sportsにおけるトップタイトルとなることを最終的な目標としており、各国のチャンピオンシップ大会が積極的に開催されているほか、日本においてもe-Sports大会「RAGE」の競技に採用されているなど、モバイル発の本格的なe-Sportsタイトルとして徐々に知名度を上げているタイトルとなっている。

 東京ゲームショウ2016では、CEO兼共同創立者のBo Daly氏が来日し、Twitchブースにてアップデート1.22の紹介と「オータム・シーズン」の開幕、そして世界大会「Vainglory World Championships」の開催を発表した。

 今回Bo氏の来日に伴って、ローンチ後の状況や日本展開の手応え、また世界大会の開催意図に至るまでインタビューできたので、こちらをお伝えする。

【ブース来場特典】
TGS2016のTwitchブースでは、一角に「Vainglory」の出展コーナーがあり、条件を満たすとこちらの特製グッズがプレゼントされる

運営は順調! 世界大会は「次の自然なステップ」

Twitchブースのステージで発表するBo氏。世界大会「Vainglory World Championships」はTwitchで中継される予定

――初めから日本マーケットも含めての展開となりましたが、配信から今まで、手応えとしてはいかがですか?

Bo氏: 配信からもうすぐ1年半になりますが、すごく面白い1年半でした。本作はコアゲームファンに対し、コンソール機向けタイトル級の体験がモバイルでもできると示したかったタイトルで、当初は不安もありましたが、日本では特に暖かく歓迎してもらえました。

 日本のプレーヤーは世界で見ても熱心で、1日で最も長くプレイしているマーケットの1つです。昨年の東京ゲームショウではシーズン制を発表して、日本のe-Sports文化が成長していく過程をこの1年で見ることができました。

 e-Sportsは、日本ではまだ小さいマーケットですが、世界的には市場が大きいですし、その中でもモバイルe-Sportsの拡大というのが興味深いトレンドになってきています。

 日本ではモバイル市場が大きいというのはよく知られていますし、本作でMOBAというジャンルに初めて触れる人が多くいます。モバイルゲームとして、PCのe-Sportsタイトルがリーチできなかったプレーヤーにリーチできるのではと考えています。

 この1年半で、こういったコアなアクションゲームがモバイルプラットフォームでもプレイできると証明できたと思いますし、世界No.1のモバイルe-Sportsという称号ももらっていますが、現状に満足せずに世界最大のゲームになれるよう、日本を含む世界で引き続き頑張りたいと思います。

最新アップデート1.22のホーム画面。ローンチ時に比べると情報量が圧倒的に違う

――ローンチ時に比べると、ヒーローの数もUIもかなり変わっています。こうしたアップデートは計画通りだったのでしょうか?

Bo氏: これはYesでありNoです。ローンチ時は最小限の要素で、ヒーローは11人、チュートリアルもほぼないくらいでした。ただコアのゲーム部分はしっかり作っていたのでMOBAファンには届くとは思っていましたが、それ以外の人に対してゲームモードを加えたり、ヒーローを増やさなくてはいけないというのは開発当初からわかっていて、課題は理解していました。

 また開発を進めると同時に、プレーヤーの声を聞いてもいました。最初の予想だとちょうど今くらい、ローンチから1年半ほど経ってからe-Sportsに向けた動きは実現しないだろうと思っていたので、観戦モードは入れていませんでした。

 しかしコミュニティ側は思いの外大会を希望していて、観戦モードを要望する声も多くありました。本来は3対3のゲームですが、中には各チームで1人を観戦用のプレーヤーとして置き、2対2で戦う大会が企画されたこともありました。そうしたこともあり、計画よりもだいぶ早く観戦モードを入れることにしたのです。

 もう1つ、モバイル業界では特に珍しいことかと思いますが、ゲームのローンチ当初にはマネタイズの仕組みがほとんどなかったということです。多くのモバイルゲームは「何週間でいくら課金してもらって……」と利益を取る仕組みが前提ですが、それは我々の方針ではありません。

 大事なのはプレーヤーとの関係性を何年間も続くようにしたいということです。PCゲームで長く続いている大きなシリーズは、そういった息の長いプレーヤーが多くいるからです。それをモバイルゲームでもやりたいと考えています。

――マネタイズは、現状ではいかがでしょうか?

Bo氏: かなり自然な所まで来たかなと思います。以前は「このゲームが好きだから、ぜひお金を支払わせてくれ」といった声もありました。現在はプレーヤーが望むのであれば購入したいものが購入できるようになっています。

――ということは、運営は順調そうですね。

Bo氏: はい、順調です。

――ヒーローたちのバランスという点ではいかがでしょうか?

Bo氏: 面白いことに、「このヒーローが強い」というのは各地によって変わります。チームの相性だったり、プレイスタイルによっても変化するようです。

 先日も北米の大会、そのあとに欧州の大会もありましたが、使われるヒーローが異なっていました。世界各地で違うヒーローが使われるということは、バランスは取れているのだと思います。

 もちろんみんながどのヒーローをどのくらい使用しているか、勝率がどれくらいかも管理していますし、アップデートのたびにより良いものにしようとはしています。

――要望という点では、世界各国で違いはあるのでしょうか?

Bo氏: これも面白いのですが、そうでもないんです。地域ごとの声を聞いて、サポートを手厚くしていくのは大切なことですが、みなさんは「Vainglory」に対して深い情熱を同じくらい持っていて、そのためか要望にそんなに違いは見つかりません。

――マップについても聞きたいのですが、マップはローンチ時からずっと1種類です。個人的にはわかりやすくて気に入っていますが、1つにし続けている意図は何でしょうか?

Bo氏: 新しいマップを入れてほしいというのは、最も多い要望です。ただ、サッカーのフィールドの形が変わらないのと一緒で、このマップが常に変わらずにあることで、プレーヤーが何年も積み重ねてきた練習の成果が発揮できる場所であってほしいのです。

 1つのマップでも、15分で終わる試合もありますし、35分かかる場合もあって、1つ1つの試合が異なります。マップは変わらないままでも、チームワーク、戦略、敵を理解することなどは変わっていく要素になります。

――しばらくはこのマップのみで行くようですね。

Bo氏: 何があるかはわかりませんが、とりあえず今回のパッチでは入りません。

――それではアップデート1.22の「オータム・シーズン」についてお聞かせください。「お月見」というテーマにしたのはなぜでしょうか?

Bo氏: ファンは世界中にいますが、日本を含む東アジア、東南アジアにmたくさんプレーヤーがいる大事な地域です。お月見、十五夜というローカルなイベントではありますが、SEMがその地域のゲーム会社のように感じてもらえるように採用しました。

アップデート1.22の限定スキン「ムーン・プリンセス」。相当日本通のスタッフがいるようだ。この提案が通るあたり、会社の風通しの良さを伺わせる
現地時間12月2日~4日開催予定の「Vainglory World Championships」

――日本人としては、今回のパッチ限定のスキン「ムーン・プリンセス」が衝撃的でした。これを入れた理由は?

Bo氏: 私も「ムーン・プリンセス」は最も楽しいスキンだと思います。アートチームは色々なところからインスパイアを受けるのですが、「お月見」というテーマが決まったときに、このスキンをデザインしてくれました。

――アートチームにはアニメ好きがいるということですね(笑)。

Bo氏: はい。

――では今日発表になった世界大会「Vainglory World Championships」についてお聞きします。この開催意図は?

Bo氏: 「Vainglory」の拡大のための、次の自然なステップだと考えています。招待制だったり、コミュニティ主催の大会だったり、色々な形式の大会を行なってきていて、常に視聴者にとって良い体験となるような形式を考えてきました。

 今回の世界大会は、各国で優勝を経験しているプレーヤーを集めて、有名なハリウッドのチャイニーズシアターで一緒にプレイし、技術を披露しあう楽しい時間になるはずです。日本からはILLMATICの出場が決定しましたが、彼らには日本らしいプレイスタイルを披露してほしいですね。

 日本は最も長くプレイしている地域だと先程話しましたが、先日の日韓戦では日本が勝っています。日本のe-Sports、特にモバイルのe-Sportsは日本に大きなチャンスがあるのではないでしょうか。

――日本以外だとどのような国から参戦しているのでしょうか?

Bo氏: 北米、欧州、東南アジア、韓国、中国、南米などです。中には、「アマテラスゲーミング」という日本のアニメが好きなチームもいますよ(笑)。

――では最後に、「Vainglory」の今後を教えてください。

Bo氏: まずはより多くのプレーヤーに良いe-Sports体験を届けたいと思っています。そして、モバイル最大のe-Sportsタイトルとしてもっと大きくなって、世界で1番愛されるゲームになりたいですね。

 1.22は過去最高のアップデートで、今から始める人も楽しめますし、友人を誘いやすくなったので、誘うのにも良い機会です。これからもより良いゲーム作りを目指していきたいと思います。