【特集】

【年末特集】アニメが面白いからこそマンガも読んでおきたい名作「葬送のフリーレン」

アニメもいいけどマンガもいい。人を魅了する本作をご紹介

【マンガ「葬送のフリーレン」】

小学館 週刊少年サンデーにて連載中

【アニメ「葬送のフリーレン」】

毎週金曜日23時~ 放送

放送局:日本テレビ系 全国30局ネット

 アニメ「葬送のフリーレン」は2023年の秋アニメとして放送開始されたファンタジー作品だ。放送開始以来、その独特な世界観と魅力溢れるキャラクターたちによる物語は多くの視聴者を魅了した。また、第1話はテレビアニメとしては異例の2時間枠で「金曜ロードショー」にて放送されたこともあり、大きな話題となった。

【TVアニメ『葬送のフリーレン』PV第2弾/毎週金曜よる11時放送】

 「葬送のフリーレン」はマンガ雑誌「週刊少年サンデー」にて連載中の、山田鐘人氏原作、アベツカサ氏作画によるマンガが原作の作品。12月18日にコミックスの最新刊となる第12巻が発売されており、12月現在の時点で累計発行部数が1,700万部を突破。「週刊少年サンデー」の中でも人気の作品となっている。

 マンガの方はアニメとはまたちがった雰囲気やテンポに加え、シュールなギャグや小話などをマンガならではの描写で楽しむことができる。アニメで登場するストーリーやシーンがどのように解釈され描かれているかなど、マンガ版を読むことで得られる発見もある。本校ではそんな原作マンガと共に、「葬送のフリーレン」の魅力について紹介する。なお、記事の後半にはアニメより先行しているマンガのストーリーに少しだけ触れている部分があるので、ネタバレには注意してほしい。

終わりから始まる思い出の物語

物語のあらすじ

 勇者ヒンメルたちと共に、10年に及ぶ冒険の末に魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらした魔法使いフリーレン。千年以上生きるエルフである彼女は、ヒンメルたちと再会の約束をし、独り旅に出る。それから50年後、フリーレンはヒンメルのもとを訪ねるが、50年前と変わらぬ彼女に対し、ヒンメルは老い、人生は残りわずかだった。その後、死を迎えたヒンメルを目の当たりにし、これまで“人を知る”ことをしてこなかった自分を痛感し、それを悔いるフリーレンは、“人を知るため”の旅に出る。その旅路には、さまざまな人との出会い、さまざまな出来事が待っていた――。

 あらすじにもあるように、本作は勇者たちが魔王を倒したあとの世界が舞台となっている。主人公はタイトルにもなっているエルフの少女フリーレン。長い時を生きてきた彼女が、ヒンメルという勇者に出会い、そして過ごした短くもかけがえのない時間。その旅路をふりかえりながら目的地を目指す姿を描いた物語となっている。

 フリーレンはエルフと呼ばれる長命種族で千年以上の時を生きている。そのせいか、彼女の感覚は他種族と大きく異なっている。その佇まいはどこか達観しており、魔法以外のことには特に興味がなかった。また、時間の感覚も曖昧で、彼女にとっては10年や50年、はたまた100年ですら些細なものだった。しかし、魔王討伐から50年後、フリーレンとの再開を最後に勇者ヒンメルは死期を迎えてしまう。これをきっかけにフリーレンの気持ちに大きな変化がもたらされる。

 ヒンメルが多くの民に見送られるなか、悲しそうな顔を見せないフリーレンに対して民衆は“薄情だね”と陰口を叩く。それを聞いた彼女は“……だって私、この人の事何も知らないし……たった10年一緒に旅しただけだし……”と今まで自身がヒンメルのことを何も知ろうとしていなかった事実に気がついてしまう。“人間の寿命は短いってわかっていたのに……なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう……”、もう取り戻すことができない事実に後悔し、フリーレンは涙を流す。これをきっかけにフリーレンは“私はもっと人を知ろうと思う。”と新たに人を知るための旅に出ることを決意する。

 マンガでは派手なバトルシーンこそ少ないものの、登場人物たちの会話や気持ち、そして作者の考える世界観が繊細に描かれている。また、クスっと笑えるシュールなギャグシーンもちょこちょこあり、絵のタッチと合わさってどこか切なくも面白いという絶妙なバランスで読者を物語へと引き込んでくれる。

食べ物をほおばるフェルン
寝相が悪いフリーレン
処刑されかける勇者

 逆にアニメではド派手なバトルシーンや、マンガでは描写されないキャラクターたちの細かなアクションなどが楽しめるようになっている。アニメのストーリーも現段階では原作から細かな表現が少し変更された以外は特にカットされたという様子もなく、アニメの強みを活かしたクオリティの高い作品として仕上がっている。

【『葬送のフリーレン』本PV/OP:「勇者」YOASOBI ED:「Anytime Anywhere」milet/毎週金曜よる11時放送】

 中でも戦闘シーンでのフリーレンやフェルンの圧倒的強者感な表現がすごく、どの戦闘シーンも鳥肌がたつほどにカッコイイアクションで描かれている。こちらはアニメ第9話でフェルンがリュグナーと戦うシーン。躍動感を感じさせるアニメーションとなっている。

「葬送のフリーレン」の魅力とは何か

 「葬送のフリーレン」は丁寧に作り込まれた世界観や設定、そして魅力的なキャラクターたちから、一見するほのぼのとした旅路を楽しむ作品に見えるが、その実はファンタジーという世界観のなか、生と死、そして成長をテーマにした濃厚な人間ドラマのある作品だ。主人公のフリーレンを通して登場人物たちが大切な人たちの「死」とどう向き合うのか、そしてキャラクターたちの発する言葉の重さから、読者自身も考えさせられる深い内容となっている。マンガでは特にそれらの描写が際立っており、より深く作品へと惹き込まれていく。

印象的なセリフを紹介

 “あたなの中にも大切な思い出があるとすれば、死ぬのはもったいないと思います”
 “救ったことを後悔してほしくない。救ってよかったと、もう大丈夫だと、そう思ってほしいのです。”

 “お前が死ぬまでにやるべきことは、あの子にしっかりと別れを告げて、なるべくたくさんの思い出を作ってやることだ。”

 また、本作は1話目からフリーレンと旅をした勇者ヒンメルとの今生の別れというヘビーな内容から始まるのだが、のちに人間を知るためにヒンメルたちと旅した路を辿って冒険をするフリーレンの姿は、回想されるヒンメルたちとの楽しそうな旅のシーンと合わさり、読んでいて優しい気持ちになる。

 だが、それと同時にヒンメルがいかにフリーレンのことを大切に想っていたか、その気持がフリーレンには伝わっていなかったことなど、読んでいて切なく感じるシーンも多く登場する。

アニメよりもマンガのヒンメルの方が切なげな表情をしており、胸が痛む。画像は小学館の「葬送のフリーレン 日めくりヒンメルカレンダー」より

 登場時はちょっとお調子者のイケメンナルシストな感じだったが、話しが進む毎にどんどん魅力的なキャラクターになっていく。ヒンメルがあちこちの村に立てた銅像も、フリーレンが未来でひとりぼっちにならないようにするため、と終始フリーレンのことを気にかけており、もう結ばれることがないという事実が辛い。

 そういったほのぼのかつ切ないシーンが多い本作だが、そのなかでも筆者はフリーレンが人を褒めるところが特に好きだ。子どもと違い、実際に大人になると褒められるなんてことはめったに起きなくなる。本作の世界でもそれは同じだった。第3巻24話では、ハイターは死んだあとに自身が天国で女神様に褒めてもらうという話をフリーレンにする。そこでハイターはフリーレンにも褒めてくれる人がいるのかを聞くのだが、フリーレンは褒められるようなことは何もしていないと答える。そんなフリーレンをハイターは身の上話を聞きつつ、褒めてあげることにした。そんな過去からか、フリーレンは良く人を褒める。作中でもフリーレンは老いたハイターやライゼルを褒めており、そういったさりげないところに筆者は胸を打たれてしまった。

しかし、あまりのダメ大人ぶりに気がつけばフェルンの方がフリーレンを褒める側に……

 そういった巧みな心理描写や、深く心に訴えかけてくるストーリーもまた本作の大きな魅力のひとつだろう。

アニメはマンガ何巻までのストーリーなのか

 アニメ「葬送のフリーレン」は本稿を執筆している2023年12月21日時点で15話まで放映されており、マンガ第4巻に収録されている第32話の「オルデン家」までの内容がカバーされている。ペースとしてはだいたいマンガの1~3話分がアニメの1話になっている感じだ。アニメは全28話の放映が予定されているので、おそらくマンガ第7巻の一級魔法使い試験が終わる辺りで一区切りつけるのではないかと予想される。

マンガ第32話「オルデン家」
なお、12月22日には第1クールラスト回となる第16話「長寿友達」が放送となる
アニメの第2クールは2024年1月5日より放送される

 ちなみに一級魔法使い試験のストーリーは4巻から始まる長編エピソードだ。フリーレンたちは大陸最北端のエンデを目指し旅をしているのだが、そこには途中にある北部高原を通過しなくてはならない。しかし、北部高原は情勢の悪化により、一級魔法使いの同行がなければ入れない。そこでフリーレンとフェルンは一級魔法使いの資格を取るために、試験会場のある魔法都市オイサーストへと向かい、多くの魔法使いたちが参加する試験へと挑戦する。といった内容だ。

 今まで数話で一区切りついていたエピソードと違い、一級魔法使い試験は4巻から7巻まで続く長編となっている。ただ、ここでは他の魔法使いが多く登場するので、今までのフリーレンやフェルンとはまた違った魔法戦を見ることができる。もしアニメでここまでやるのであれば、どのようなアニメーションで描写がされるのか実に楽しみだ。

 マンガでは一級魔法使い試験編の後にフェルンとシュタルクのデートや、魔王軍の最高幹部である七崩賢の最後の一人にして、最強と言われる黄金郷のマハトとの戦いなど、いろんな意味で熱い展開が続いている。特にフェルンとシュタルクは全巻通して尊さが爆発しそうになっており。読んでいるとザインのように“もう付き合っちゃえよ!!!”と叫びたくなる。

黄金郷のマハトは人気投票でも4位と魔族ながらの人気キャラクター。彼が登場する話は一級魔法使い試験編に登場するデンケンに深く関わってる話で、展開や戦闘も含めて最高に良いエピソードだ

今ならマンガを全話無料で読むこともできる

 マンガ「葬送のフリーレン」はサンデーうぇぶりのアプリで現在全話無料公開中。条件はあるものの、最新話まで毎日1話ずつ読み進めることができる。本稿執筆時点で配信されている118話ではウェディングドレスを着たフリーレンがヒンメルと共に式場にいるというまるで夢のような酷く残酷で切ない話となっている。

サンデーうぇぶりの「葬送のフリーレン」のページ

※12月21日現在1~2巻が無料公開、3巻以降は23時間毎に回復するチケットを使用することで無料で読むことができる

 マンガもアニメもまだまだ盛り上がりを見せる「葬送のフリーレン」。フリーレンたちの旅はどうなるのか。年末年始のこの機会に、アニメだけでなく、ぜひマンガの方も読んでみてはいかがだろうか。

2024年もきっとフリーレンは多くの人を魅了するだろう。なんて罪な女だ……
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