【特集】

【年末企画】今さら聞けない「ちいかわ」の魅力とは! 「島編」も話題を呼んだ2023年のちいかわたちを振り返る

アリアナ・グランデのMV出演や「ヒロアカ」ポップアップストアなど豊富なコラボを展開

【ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ】

単行本:既刊6巻

【アニメ「ちいかわ」】

放送局:フジテレビ系列「めざましテレビ」内

放送時間:毎週火曜・金曜7時40分~

 イラストレーター・ナガノ氏によるマンガ「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」(以下、ちいかわ)。SNSのXでの連載に加え、フジテレビ系列「めざましテレビ」内でTVアニメが放送されているが、2023年は本作がさまざまな方面で新展開を見せた年だった。

 「ちいかわ」とは一体何なのか、そしてどのような要素がファンたちの心を掴んでいるのか。今からでもブームに追いつきたいという人のために、あらためてその魅力について紹介していこう。

そもそも「ちいかわ」って何?

 「ちいかわ」は、主に1ページ単位でストーリーが展開していくウェブマンガ。二頭身のかわいらしい生き物があふれる独特の世界観で、主人公のちいかわとその友達であるハチワレ、うさぎの3人をメインキャラクターとした物語が描かれている。

 当初はナガノ氏名義のXにてキャラクターのイラストなどが公開されていたが、2020年に「ちいかわ」公式X(@ngnchiikawa)が開設され、本格的に連載が始まった。不定期更新で、複数の回にまたがった長編エピソードが展開されることも多い。

 また、2022年4月から放送が始まったTVアニメ版も大きな注目を集めており、YouTubeの「めざましテレビチャンネル」で実施されている1週間限定の見逃し配信は、毎度のように100万回再生を突破している。第1話のアーカイブに至っては、すでに1,000万再生に到達しているほどの勢いだ。

【【公式】『ちいかわ』第1話「かためのプリン/ホットケーキ」】

 さらにマンガやアニメ以外の方面でも、幅広い企画が展開中。ぬいぐるみなどのグッズ化はもちろんのこと、ファッションアイテムや食品といった形で、さまざまな企業とのコラボが実施されている。

本当はダークで怖い?「ちいかわ」の魅力

考察が盛り上がる不思議な世界観

 「ちいかわ」の魅力として、まず挙げられるのがその奇妙な世界観だろう。絵柄もキャラクターの見た目もほのぼのとした雰囲気だが、実際には“かわいいだけじゃない”奥の深さがある。

 物語の舞台となる世界は、自然とフエラムネが湧き出るスポットがあったり、炊飯器が地面に埋まっていたりと、ファンタジーと現実をごちゃまぜにしたような設定になっている。そしてちいかわたちの生態にも、妙にリアルなところがあり、普段から「草むしり」や「討伐」、「採取」などの労働によって報酬を得て生活しているようだ。とくに「討伐」は過酷な仕事らしく、時に命を左右するようなピンチに陥ることも珍しくない。

 労働を取り仕切っているのは「鎧さん」という人間に近い存在で、彼らはちいかわたちの保護者のように振舞うこともある。ただし両者の関係性には謎が多く、とある「鎧さん」が、ちいかわたちと「仲良くしすぎた」ことを叱られてしまうエピソードも描かれていた。

 そのほか、ちいかわたちの生存を脅かすような存在も同じ世界に生息している。「討伐」のターゲットは、いずれも狂暴な生態をしており、一見友好的だが隙を見て襲い掛かってくる「擬態型」と呼ばれる生物も登場する。

 作中で説明されていない設定も多く、マンガが更新されるたびにファンのあいだで考察が繰り広げられるのがお馴染みの光景。よく知られた説としては、「ちいかわたちの種族は何かのきっかけで別の生き物に変異する」というものがある。

スリルあふれる長編の数々

 考察要素と並んで「ちいかわ」の大きな魅力となっているのが、残酷かつスリリングな展開の数々だ。ちいかわたちはさまざまな危険と隣り合わせの世界に生きていて、長編エピソードでは毎度のように恐ろしい出来事が襲い掛かってくる。

 ちいかわが同じ1日のループから抜け出せなくなる「黒い流れ星編」、謎のゴブリンたちに投獄されてそのまま食べられそうになる「プリズン編」、不思議な旅館でうさぎやハチワレが石に変えられていく「呪いの旅館編」など……。ファンシーな絵柄からは想像できないほど、ちいかわたちの周囲は波乱に満ちており、その結末がハッピーエンドとは限らない。

 さらに不穏なのは、ちいかわたちの日常生活のなかにもいろいろな異変が忍び込んでいること。たとえばあざとい身振りでお馴染みのモモンガは、元々「なんかでかくて強いやつ」(でかつよ)だったものが、“身体を奪って”小さい生き物になったものではないかと考察されている。その場合、今の「でかつよ」は身体を奪われた被害者ということになるだろう。

 また、別の回ではちいかわの友達だった「あのこ」が、「討伐」対象の大きな生き物になったことが仄めかされていた。

 そして2023年3月から11月まで、およそ8カ月にわたって掲載された通称「島編」は、本作の真骨頂とも言える長編だった。

 大まかな流れとしては、まずうさぎが島での「カンタンな討伐」で「100倍の報酬」がもらえるというチラシを拾ってくるところから始まる。島に訪れたちいかわたちは、島民に大歓迎を受け、リゾート気分を満喫。しかしその夜、巨大なセイレーンと人魚たちに襲われてしまう。セイレーンは以前仲間の人魚を「島のだれか」に食べられたことを恨み、復讐のために島民を食べているという。その背景には人魚の肉を食べると「永遠のいのち」が手に入るという人魚伝説があった……。

 猛者のラッコですら敵わないほどセイレーンは強敵で、ちいかわたちは全滅寸前の大ピンチに陥る。さらに島民たちには、衝撃のヒミツが隠されており、「永遠のいのち」をめぐる業が描き出されていく。

 一連のエピソードでは、ダークな作風が存分に発揮されており、独特の後味を残して完結。シリーズ最長にして“最恐”のエピソードは大きな話題を呼び、エンディングにあたる回は、公式X上で34万の「いいね」を集めていた。

2023年に起きた出来事

 「島編」以外にも、2023年には多岐にわたる話題で「ちいかわ」ファンたちが盛り上がっていた。本編のストーリーに関していえば、これまで“モブキャラクター”扱いでチラホラ登場していた「古本屋」が、ついにメインキャラクターへと昇格し、シルエット姿ではなく顔出しした姿をお披露目することになった。

 また、コンテンツとしての展開も話題が尽きない1年だった。たとえばTVアニメ版の放送スケジュールが4月から変更となり、週1回から火曜・金曜の週2回へと増えている。

放送拡大時にはコラボを記念した描き下ろしイラストも公開

 11月16日には、池袋PARCO 本館7F THE GUEST cafe&dinerで常設コラボカフェ「ちいかわレストラン」がグランドオープン。東武タワースカイツリーでは、アニメ「ちいかわ」とコラボレーションしたイベント「ちいかわ☆星ふるスカイツリー」を10月17日より2024年1月16日にかけて開催されている。

オリジナルメニューが楽しめるほか、グッズショップではちいかわたちがお出迎え
「ちいかわ☆星ふるスカイツリー」はおよそ3カ月にわたってコラボを実施。スタンプラリーなどが楽しめる

 異色の企画としては、12月5日にアメリカの歌手アリアナ・グランデとコラボした動画が公開。クリスマスソング「サンタ・テル・ミー」のミュージックビデオが、サンタに扮したちいかわやハチワレ、うさぎたちの姿で再現されており、公開から1週間で200万再生を突破した。

 また2022年に続いて、マンガ「僕のヒーローアカデミア」とのコラボレーションが再度実現し、8月から9月にかけて全国8か所のPARCOでポップアップストアが開催された。なお「僕のヒーローアカデミア」の原作者・堀越耕平氏とナガノ氏は、それぞれお互いの作品のファンという関係性だという。

ちいかわたちが緑谷出久など「ヒロアカ」のキャラ風におめかししたイラストが展開された

2024年もちいかわたちの動向に注目!

 これら以外にも様々なコラボが実施されたほか、「ちいかわ」単独のグッズ展開も豊富に行なわれている。最新刊となる6巻が12月21日に発売されたが、こちらの特装版には「なんか光ってて旅したくなるご朱印帳」が付属する。東京都の護国寺ではこれにちなんだご朱印イベントが2024年1月9日より開催される。ご朱印帳を持参し、ご朱印代を収めると通常のご朱印に加え「ちいかわ印」を押してもらえる。年明け後に楽しめる取り組みとなっている。

 キャラクターコンテンツとしても、ダークな作風のマンガとしても盛り上がりを見せた「ちいかわ」の1年。2024年にはどんな展開が待ち受けているのか、期待しつつ見守りたい。

「ちいかわ」6巻特装版に付属する御朱印帳
プライムビデオで視聴する