バンダイ「SPACEWARP5000」
今回は、名作の誉れ高い「SPACEWARP5000」の復刻版を紹介したい。現在30代から40代までの人ならば、その正確な名前や詳細は知らなくても、一度は目にしたことがあるのではないだろうか。 何本も立ち並ぶ黒いパイプ。ジェットコースターのように、いやそれ以上に複雑に曲がりくねったレール。そして、レールの上をいつまでも転がり続けるボール。玩具のようでもあり、インテリアのようでもあり、そして何より“知性”を感じさせる全体のフォルム。 「SPACEWARP5000」のオリジナル版は、'84年にバンダイから発売された。単なる玩具の枠にとどまらず、幅広い層のユーザーに好評を博し、販売を継続していた4年間で約100万個を売ったという大ヒット商品だ。 筆者の個人的な思い出を語れば、「欲しいけど手が届かない商品」だった。遊んでみたいのはやまやまだが、価格的にも技量的にも、自分にはまだ早いと感じていた。「SPACEWARP5000」が放つ“大人の香り”に圧倒されていたのだ。
そうした印象は、今回の復刻版でも色褪せていなかった。復刻版にありがちな古臭さやノスタルジアは、微塵も感じさせない。最新発売のトイとして、東急ハンズなどに陳列されていたとしても、何ら違和感はないだろう。 ■ 単純作業とクリエイティブ、両方の楽しさを味わえる 覚悟はしていたが、パッケージを開けると目に飛び込んできたパーツの多さに圧倒された。出てくる、出てくる。ベース、シャフト、レール、アーム、レールサポート、ギアボックス、レールジョイント……種類だけでも21ある。これは腰を据えて取り組まないと完成しない、と思いを新たにする。 失敗や混乱を避けるために、まず取扱説明書を熟読する。作業の工程はこんな感じだ。
すべての土台となるベースを作り上げる。次にレールを支えるためのアームをたくさん組み立てる。アームをシャフトにさしたら、ボールを低地から高部へ運ぶエレベーターを構築する。最後にアームからアームへレールを張り巡らし、ループなどを作って完成させる。
パーツが多いので、作業の量も膨大なものになる。筆者も最初は「大変だな……」とひるんでいた。しかし、作業を進めるに連れ、「SPACEWARP5000」の組立は、単なる作業ではないことがわかり、俄然と楽しくなってきた。 アームを組み立て、シャフトへ差し込み、シャフトをベースへ取り付けていくまでの流れは、単純作業。地味で単調だが、量が多い分、「ここまで進んだんだ!」という達成感を味わえる。
対して、アームの中にレールを通し、ボールが通る道を作る作業は、頭脳を要求される。重力に従ってボールが勢いよく転がっていくように、軌道を考え、微調整を重ねなくてはならないのだ。基本的な完成型はあるのだが、カスタマイズも自由。作り手の創造性を刺激される工程になるわけだ。単純作業と創造性のバランスが絶妙で、当時の大人たちが熱中した理由をようやく理解することができた。
■ ボールが走ったら、今度はオリジナルへ…… 作業を続けること、4時間。筆者の「SPACEWARP5000」は、一応の完成をみた。完成後のサイズは、横幅にして約60センチ。高さは、約30センチだ。普段打ち合わせに使っている仕事場のテーブルに飾ると、ややもすればベースの一部がはみ出してしまいそうな大きさだ。大きいゆえに、どの角度から眺めても非常に映えて、惚れ惚れとする。 しかし、そんな筆者の喜びもすぐに醒めることとなる。ボールをレールに落とし、転がしてみる。……ボールは数センチと転がらない。すぐにレールとレールの間から落ちてしまうのだ。あわよくばカーブを回ったとしても、その遠心力で外へ振り落とされてしまう。 ここで筆者は、ようやく「SPACEWARP5000」の真価を悟った。
鉄道模型なら、レールは固定されている。自分でコースを組み上げるといっても、レールのパーツはすでに存在している。しかし、「SPACEWARP5000」は、そのレールそのものを自分で作るトイだったのだ。レールのパーツは、手で自在に曲げることが可能。つまり、ボールが淀みなく転がるのも、ジェットコースターさながらに疾走するのも、作り手に委ねられているのだ。
レールにボールを落とし、転がす。落ちる。その原因を調べて、レールの形や角度を調整する。ひとつの部分を触ると、レールの別の箇所にゆがみが出ることがあるので、さらにボールを転がして再チェックをかける。 そうこうしているうちに、ボールがスムースに転がる範囲が5センチから10センチ、20センチ、30センチ、50センチと次第に広がっていった。コース最大の坂を一気に降下し、360度のループを見事に回りきったときは、小躍りしたくなるくらい嬉しかった。 なるほど、これも「SPACEWARP5000」の面白さなのだな。こうしてボールを転がすスキルを身に付けたら、今度は自分だけのアレンジを加えたり、オリジナルのコースを作ったりして、より奥の深い遊びに挑戦できるようになるわけか。文頭に「知性を感じさせる」と書いたが、まさにその通りの遊び心地だった。
それにしても、クリアパーツのレールの上を駆け抜けるボールの美しいこと。完成後、相当長い時間眺め続けているのだが、まるで飽きない。
□バンダイのホームページ
毎週、電子系のおもちゃを中心にオススメのおもちゃをご紹介しています。「このおもちゃ、気になるけど面白いかなぁ」といったものを徹底的に遊び倒し、その面白さをお伝えしていきます。取り上げて欲しいおもちゃなどがありましたらドシドシと編集部までメールを送って下さい (編集部) (2005年3月10日) [Reported by 元宮秀介]
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