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【連載第172回】 あの、おもちゃを徹底レポート




アタリの名作ゲームを10本まとめて遊べるアイテム!
「ATARI 10in1 テレビゲームズ」

「ATARI 10in1 テレビゲームズ」
発売 JAKKS Pacific
価格 5,000円
電源 単三アルカリ電池×4(別売)
発売日 発売中



 過去のゲームソフトを1つのハードに収めたトイ。北米では、これがさかんにリリースされている。ナムコ、コナミといった名だたるゲームメーカーのタイトルを収録した商品も多く、マニア心を刺激されてしまう。国内では「メガドライブTV」がセガトイズから発売されたことが、記憶に新しい。

 これらのトイの特徴は、前述した通り、ハードにあらかじめソフトが組み込まれていることにある。AVケーブルをTVに接続さえすれば、すぐに遊び始められるお手軽さがトイに近く、家庭用ゲーム機とはまた異なる親しみやすさが感じられる。現在では入手が難しいソフトを、低価格で手に入れられるのも魅力のひとつ。さらにはCDでいうところの“ベスト盤”の側面も持ち合わせており、どのゲームとどのゲームが組み合わされて収録されているのかをチェックする楽しみもある。

 今回は、ATARIのゲームを10タイトル収めた「ATARI 10in1 テレビゲームズ」を取り上げてみたい。トイザらスの店頭で見かけることもあり、筆者もそこで購入した。


当時のままのジョイスティックを搭載

パッケージは、ジョイスティックが突き出る形のブリスターパックだ
 ATARIといえば、テレビゲームの黎明期に「PONG(ポン)」や「BreakOut(ブロック崩し)」を発表し、成功を収めたことで知られるメーカーだ。家庭用ゲーム機を発表したのもいち早く、'77年に発売した「ATARI2600」は世界的なヒットとなった。しかし、ヒットのあまりソフトを粗製濫造し、一夜にしてブームは収束。このビジネスの不手際さは、任天堂がファミリーコンピュータを発売する際に反面教師として活用されたことでも有名だ。

   “世紀の大失敗”として語られることが多いATARIだが、名作ゲームも輩出している。「PONG」や「BREAKOUT」はもちろんのこと、「MISSILE COMMAND(ミサイルコマンド)」や「MARBLE MADNESS(マーブルマッドネス)」など、今だ語り継がれるゲームも多い。そんなATARIのソフトを多数収録したトイなのだから、期待はいやがおうに盛り上がってくる。

 本体は、昔懐かしいジョイステックのスタイル。中央にニョキッと伸びたスティックがあり、ゲームに使用するボタンが1つだけ。スティックを握ると、感触は固い。上下左右に入れてみても、本当に入力されているのか不安になる固さだ。しかし、こうした感触が郷愁を誘う。そうそう、昔は“ユーザーフレンドリー”など、ちっとも考えられていなかった。テレビゲームはあくまで一過性のブームとして捉えられており、この使いにくさこそがそれを証明している。ジョイステックが固いおかげで、当時の様々な思い出が蘇ってきた。

 収録タイトルは、以下の通りだ。

・ADVENTURE(アドベンチャー)
・ASTEROIDS(アステロイド)
・BREAKOUT(ブロック崩し)
・CENTIPEDE(センティピード)
・CIRCUS ATARI(サーカスアタリ)
・GRAVITER(グラビター)
・MISSILE COMMAND(ミサイルコマンド)
・PONG(ポン)
・REAL SPORTS VOLLEYBALL(リアルスポーツバレーボール)
・YAR'S REVENGE(ヤーズリベンジ)
※ 順番はゲームのセレクト画面に順ずる

 すべて'70年代後半から'80年代初期に登場したタイトルだ。個人的には思い入れが深いタイトルもあれば、まったく知らなかったタイトルもある。

 AVケーブルをテレビに接続すると、あることに気づいた。音声ケーブルが1本しかないのだ。そうか、この時代のゲームはすべてモノラルか、と改めてATARI全盛期が遠い過去であったことを再確認する。

ゲームに使用するのは、ジョイスティックとボタン1つだけ ATARIやシリーズタイトルの「TV GAMES」のロゴがプリントされている
側面には電源やリセット、セレクト用のボタンが並んでいる 右手でジョイスティックを握り、左手で本体を支えながらボタンを押して遊ぶ



テレビゲーム黎明期の傑作がズラリ

 1本目のゲーム「ADVENTURE(アドベンチャー)」を選んで、プレイを開始すると、音が聞こえてこない。あわててAVケーブルの接続を確認してみるが、しっかりと差し込まれている。疑問に感じながらプレイを再開すると、謎は解けた。音が出ていないのではなくて、当時のゲームは音がほとんど鳴らなかったのだ。音が鳴るのは、モンスターと接触したときだけ。しかも「ビー」というビープ音のみ。懐かしさがこみ上げてくる。

 また遊ぶにつれ、収録されているゲームは、アーケード版ではないことが判明した。おそらくは家庭用ゲーム機の「ATARI2600」向けのソフトを収録しているのだろう。オリジナルのアーケード版の再録が望ましかったが、これはこれで貴重な資料といえる。

電源を投入すると関連する企業のロゴが表示される セレクト画面は、文字だけで構成されたシンプルなデザイン ゲームを選択するとバックグラウンドストーリーと操作方法が表示される



 以下、各ゲームの紹介と簡単なインプレッションを簡単に述べたい。

【BREAKOUT(ブロック崩し)】
パドルを操作してボールを弾き、上空にあるブロックを壊していく。タイトーの「スペースインベーダー」と共にテレビゲームが日本全国に普及するのにひと役買った名作。ダイヤルではなくジョイスティックの操作なので違和感はあるが、やはり面白い
【ASTEROIDS(アステロイド)】
宇宙船を操作して、周囲の小惑星を破壊する。宇宙船を動かすと慣性が大きく働く独特の操作感覚を味わえる。この慣性にどう対応するかがプレイのカギとなる。当時、アーケード版が日本にも多数輸入されており、嬉しい収録。2人交代プレイも可能だ
【MISSILE COMMAND(ミサイルコマンド)】
無数に降り注ぐ大陸弾道弾を迎撃するゲーム。東西冷戦時代の産物。トラックボールを使ったゲームの傑作としても知られる。今回はもちろんジョイスティックによる操作だし、簡略化されている部分も多い。だけど、独自の面白さは色あせておらず、時間を忘れて遊んでしまった
【PONG(ポン)】
棒状のラケットを操作して、ボールを弾くゲーム。テレビゲーム黎明期の作品なのでごくごく単純な内容だが、当時遊んだときの衝撃はもの凄かった。シンプルなゆえに、当時の記憶をもっとも揺り動かされた
【CIRCUS ATARI(サーカスアタリ)】
シーソーを移動させてピエロを飛ばし、上空の風船を破裂させる。当時日本でも大ヒットをしたので、ご記憶される方も多いはず。個人的にはよく遊んだゲームだっただけに、アーケード版そのままの形で遊びたかったという思い強し
【CENTIPEDE(センティピード)】
画面上から迫ってくるムカデを迎撃する。弾が当たるたびにムカデは分裂し、倒すべき敵が増えていくスリルを味わえる。難易度は高めで、モタモタしていると、あっという間にムカデに体当たりを食らってしまう。昔はこれだけスピーディなゲームもなんなくこなしたものだが……
【GRAVITER(グラビター)】
宇宙の破壊をもくろんでいるグラビターを倒すシューティングゲーム。中央にはブラックホールがあり、近寄ると吸い込まれてしまう。当時遊んだような遊ばなかったようなあいまいな記憶しかないが、今回の収録タイトルの中でもっとも難しく感じた
【ADVENTURE(アドベンチャー)】
プレーヤーを操作して、聖杯を盗み出すゲーム。どこからともなく出現するモンスターに接触するとアウト。プレイの内容は、モンスターの追撃をかわして迷路を抜ける“鬼ごっこ”。今遊ぶと、面白さはない
【REAL SPORTS VOLLEYBALL(リアルスポーツバレーボール)】
オリジナル版は、未体験。タイトルに「リアル」と銘打っているが、選手はふたりで、コートにはラインも引かれておらず。しかし、人間の体型を再現した当時としては、画期的な表現だったのだろう。ボールの落下地点に移動すると、レシーブやアタックをくり出す
【YAR'S REVENGE(ヤーズリベンジ)】
こちらも未体験のゲーム。キャラクタを操作して、右端にある赤いモンスター(?)に体当たりをして、破壊していく。モンスターはふだんは攻撃を仕掛けてこないが、突如として弾を吐くなどして攻めてくる。緩急の使い分けがなかなかユニーク


 同じ時代の、同じメーカーのゲームをまとめて遊ぶと、さまざまな記憶が蘇り、またゲームデザインの発展も考察することができ、とても面白い。また収録タイトルを含め、希少価値の高いアイテムなので、コレクション欲を刺激される。ほかのメーカーの同一商品も必ず買うぞ!


□JAKKS Pacificのホームページ(英文)
http://www.jakkstvgames.com/


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(2005年2月10日)

[Reported by 元宮秀介]


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