★ PCゲームレビュー★


製品版では削られたマルチプレーヤーモードがMOD形式で新登場
Unreal II -The Awakening-
Expanded Multiplayer

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 発売元:Legend Entertainment
  • 発売元:ATARI
  • 価格:実売5,000円程度
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:12月19日(発売中)


 ほぼ1年前になる2003年2月、「Quake」や「Half-Life」と並ぶFPS「Unreal」シリーズの最新作「Unreal II -The Awakening-」が発売された。基本的に決まったストーリーを追うシングルプレイタイプのFPSであり。主人公は“Artifact”と呼ばれる超文明の遺産を巡って多くの勢力と争い、最後は宇宙存亡の危機を救うために戦う。

 リリース前の情報では、情報を収集したり武器の開発を行なう宇宙船のクルー達との会話システムが用意されていたり、主人公が協力する勢力によってストーリーやエンディングが変わったり、AIが操るNPCとの集団戦の要素なども盛り込まれていたようだ。しかし、年度末が近付き、何とか市場へ製品を出さなければいけない、ということで一応の体裁が付いた状態で発売されてしまった。それはそれとして、ひとつのまとまったゲームとして成り立ってはいたのだが、いまいちあの「Unreal」の続編として考えると中途半端になっていたのは否めない。

 その最大の理由とも言えるのが、クラス制を採用したマルチプレーヤーモードが無くなっていたことだ。結局シングルプレーヤータイプのFPSは1本道であり、一旦クリアしてしまうとやることが無くなってしまう。そのため、発売直後は一定の売り上げがあったのだが、数カ月経ってみると後が続かないという状況に陥ってしまった。

 それから約1年。「Unreal」シリーズのマルチプレイ分野をカバーする「Unreal Tournament」シリーズの最新作「Unreal Tournament 2004(UT2k4)」の発売がジリジリ延び、結局ホリデーシーズンを外すことになってしまった。しかし、ATARIはこの状況を少しでもカバーできる手を打っていた。それが今回紹介するアドオン「Unreal II -The Awakening- Expanded Multiplayer」、「Unreal II」発売時に外されたマルチプレーヤーモードの復活というわけだ。

 このマルチプレーヤーモード「Expanded Multiplayer」(以下、XMP)を遊ぶためには、「Unreal II」本体が必要だ。入手方法は2つあり、「Unreal II」を所持しているプレーヤーはインターネットからMOD形式でダウンロードできるので、「Unreal II」をインストール後Expanded Multiplayerをインストールすることでプレイが可能になる。そしてもうひとつは、「Unreal II」を持ってない人向けの方法で、「Unreal II -The Awakening」と「XMP」が一緒に入った“Special Edition”を購入する方法だ。発売当時は7,000円近くした「Unreal II」だが、これを買えば5,000円弱の安価でひとそろい入手することが可能だ。


■ マップ上の各オブジェクトを確保し、最終的にはArtifactを4つ揃えよう

 さて、このXMPがどういったゲームかというと、Capture The Flag(CTF)という攻めのモードと、Dominationという守りのモードが混ざったゲームだと言える。ちなみにCapture The FlagはFPSではおなじみ。あらゆる手段を駆使して相手陣地の旗を奪い、自分の陣地の旗に触れればポイントというゲームモード。そして、Dominationは「Unreal」シリーズではおなじみのゲームモードで、マップ中に複数存在する定められた領域(たいていは目印となるオブジェクトがある)すべてを、一定時間確保し続けることでポイントが入るというゲームモードだ。

 Expanded Multiplayerにおけるプレーヤーの目的は「“Artifact”をすべて、自陣のArtifact Nodeに設置する」ことだ。ゲームの開始時点でArtifact Nodeは敵味方双方に設置されており、4つあるArtifactはチームごとに2つずつArtifact Nodeにセットされている。プレーヤーは、なんとかして敵Artifact NodeからArtifactを奪い、自陣のArtifact Nodeまで必死に戻らなければならない。

これがArtifact Node。画面左側で光を放っているのがArtifactだ。真ん中の部分を通ることでArtifactを設置や奪取を行なう。人によってはこの周囲に、二重三重に防御線を張る人もいる

 当然これを実行するには仲間と協力するなり、乗り物で突っ込むなりして敵を排除しつつ進んでいくわけだが、そのためには武器や乗り物、各種アイテムなどが必要になる。普通のFPSならそういった武器やアイテムは最初から持っていることがほとんどだが、XMPでは少々事情が異なる。

 XMPでは“Energy Supply”と呼ばれるエネルギー供給施設が発生させるエネルギーによって、弾薬やアイテムの供給、Artifact Nodeや固定砲台の稼働が行なわれる。ゲーム実行中は弾薬やアイテムの供給、各施設の維持に伴いエネルギーは消費されていくので、Energy Supplyの確保も目的達成のためには重要になってくるのだ。

 また、“Deployment Point”と呼ばれるプレーヤーがRespawn(復活)するための施設もEnergy Supplyと同様に確保する必要がある。こちらもマップ各所に点在しているのだが、位置によっては敵のArtifact Nodeに近い部分に存在し、敵陣攻略の最前線基地となることもあるので、非常に重要な施設だと言えるだろう。

 今までの説明をまとめると実際のゲームの流れは、ゲームスタート→Energy SupplyやDeployment Pointの確保→エネルギーが溜まり、装備が整った時点で敵陣へ侵攻→施設を取ったり取られたりを繰り返しつつという状況になる→Artifactを奪取して勝利、という流れになる。

 XMPは、通常のCapture The Flagと比べると、施設の確保といったDomination的な部分が加わったことで、Capture The Flagにありがちな「開始早々力押しで終了」といったことが無くなり、周囲のプレーヤーと協力しつつじっくりと戦う必要が出てきた。そのため、知らない人同士で遊ぶ公開サーバーでのプレイでも、プレーヤー同士の協力という要素を味わえるようになっているのは、なかなかよく考えられたゲームモードと言える。

Energy Supply。マップの大きさにもよるが、だいたい1ステージに3~4個設置されている。これを全部相手に取られてエネルギーが無くなってしまうとArtifact Node事態が稼働しなくなってしまう。それだけはなんとしても避けたいので、敵を追ってぶち殺す時間があるのだったら、守りの薄いEnergy Supplyを守った方が得策だ

Deployment Pointでは、20秒に1回の頻度で敵プレーヤーがRespawnしてくる。そのためHackingのタイミングを誤ると、Hacking中に目の前に敵プレーヤーがごっそり出現する、という笑えない状況になったりする


■ 特性が異なる3種類のクラスを状況によって使い分けよう

 さて、プレーヤーは以下の3種類のクラスから、自分の好みにあったクラスを選んでゲームに参加することになる。もちろん、Respawn時に状況に合わせてクラスを変える事も可能。クラス紹介に入る前にまずは各クラス共通の基本動作を説明しておこう。

 FPSで基本となるWASDキーによる前後左右への二次元移動をベースとして、XMPでは以下の特殊動作がある。

・Sprint
いわゆるダッシュ、敵陣から逃げたり敵の攻撃にさらされたりといった、いざというときに使うと効果的。常に走れるわけではなく、発動するとエネルギーを消耗するので注意。ここぞと言うときに使えるようにタイミングを計ろう。

・Dodge
「Unreal」シリーズおなじみの移動方、前後左右同じ方向の移動キーを二連打することで、その方向に高さの低い“移動するための”ジャンプを行なう。Dodgeの終了間際に後述のJet Packを掛けると一気に距離を稼げるので覚えておこう。

・Jet Pack
JumpやDodgeの最中に、もう一度Jumpボタンを押すことで背中に背負ったバックパックからジェットを噴射し、空中で加速することができる。空中で1回しか使用できず、さらにエネルギーの概念があるのであまり連続で多用することはできない。また、Jet Packによって伸びる移動方向はJet Packを使った時点でのベクトルに依存するので、長い距離を移動したい場合はDodge中に、さらに高いところへ昇りたいならJump中に使うといいだろう。

・Medic
体力が0になって倒れているキャラクタはまだ完全に死んではいない。味方が近寄って“USE”キーを押すことで復活させることができる

Supply
味方に向かって“USE”キーを押すことで、体力や弾薬、アーマー値を回復させることができる(クラスによって回復できるものは違う)。また、Supply Packという回復アイテムの形で地上に落とすことも可能だ

Hack
マップ上の各施設(Energy SupplyやDeployment Point、ドア横のコントロールパネル)に向けて一定時間“USE”キーを押すことでHackを仕掛けることができる。Hack中は無防備なので周囲の安全を確認してから行なおう

 それでは、実際の3クラスの紹介に移ろう。

・Ranger
 高速で移動できる一方、アーマーの耐久値は低く、敵の攻撃を避けきるだけの移動スキルが要求されるクラス。また、主要武器がスナイパーライフルやハンドガンといった即着弾であり、Aiming(狙いの正確さ)能力も要求されるクラスだ。グレネードランチャーのセカンダリは、モウモウとした煙幕を焚くこともできる。影のように動き、ここぞと言うときに煙幕を焚いてArtifact奪取を狙うとカッコイイ。Supplyで回復できるのは体力で、Medicによって味方を復活させた時は体力も一緒に回復させることができる。

Rangerでのプレイ風景。スナイパーライフルで遠くから敵を排除し、煙幕を張って敵のArtifact Nodeに突っ込む。移動に関するスキルに加え射撃に関するスキル、そして行くか行かないかを機を見極める能力など、ゲームを遊ぶ能力すべてを高いレベルで要求されるのがRangerだ。間違っても自陣近くでコソコソ隠れてスナイパーライフルを撃っているような真似はしてはいけない

・Tech
 そこそこの移動速度、そこそこのアーマーをもった中間的なクラスだが、Techというだけあって設置砲台である“Auto Turrets”や“Rocket Turrets”、防御線を張るField Generatorsなどを設置することができる。また、各施設へのHackにかかる時間も短い。基本的にはArtifact Nodeなどの周囲にField Generatorsで防御線を張ったり、マップの要所に各種Turretsを置いたりして敵の侵攻を防ぐといった防御系の役割を担う。ただ、メイン武器にアサルトライフルや、ショットガン、ガスグレネードといった物が揃っており、どんな敵でもそこそこ対応できる汎用性の高さを持っている。Supplyではアーマーの耐久値を回復させることができる。
Techでのプレイ風景。Techの主な任務は、Field Generatorsを使って味方の施設を防御することだ。また、要所要所にTurretを置いて、容易に敵を侵攻させないよう足止めにするのも重要な役割だ。また手持ち武器は対人接近専用のショットガン、対車両用のEMPグレネードという具合に、どんな状況でも対処できる物が揃っている

・Gunner
 移動速度は遅いが、アーマーによる耐久値はピカイチ。ロケットランチャーや火炎放射器などによる高威力な火力で敵の防御陣地を切り裂き先陣を斬る役割を担う花形とも言えるクラス。また地雷やレーザー起爆式の爆弾などを設置することもできるので、敵陣周辺で破壊活動を行なうにはぴったりだろう。対人戦では敵の足下をロケットランチャーなどで狙い、確実にダメージを与えるようにしていけば、Gunner以外のクラスならば、ほぼ確実にクリアすることが可能だ。Supplyは武器の弾薬を回復させることができる。

Gunnerでのプレイ風景。とにかくハイパワーな武器を使って目の前に存在するすべての敵、並びに敵の施設を駆逐していく。また地雷やレーザー起爆式の爆弾などを設置することもできる。出口のすぐ外に設置して、出口から出てきた敵を瞬殺するというのもおもしろい。その装甲とパワーは初心者向けだと言えるだろう


■ あらゆる障害を乗り越えて、Artifactの奪取を狙え!

さて、XMPのどの部分がおもしろいのか。それはやはり花形であるArtifactへのアタックだろう。ゲームモードの説明を読んでもらってもわかるように、Artifactへたどり着くのはかなり大変だ。

 普通に考えると、チームメンバーと協力して敵のEnergy SupplyやDeployment Pointを一個一個潰し、迎撃してくる敵を随時撃退しつつ、ジリジリと敵のArtifact Nodeまで勢力を前進させてからやっとArtifact Nodeが攻められそうなイメージがあるが、実はそうではない。

 足の速いRangerなどで姿を隠しつつ敵陣に接近、煙幕グレネードで周囲の視界を潰し、一気にArtifactを奪取。近くに止めてあった敵の乗り物を奪って意気揚々と引き上げると言うこともできるのだ。しかし、この作戦がいつも成功するわけではない。飛び込んではみたものの、巧妙に隠された地雷やレーザー起爆式の爆弾によって吹っ飛ばされたりする方がむしろ多いだろう。

 だが、これが成功したときの達成感と、“してやったり”という感覚は何事にも代え難いものがある。常にこういった奇襲作戦を狙うのはどうかと思うが、戦線が膠着したり、敵の防御態勢が薄かったりするならば挑戦してみる価値はある。

 基本的にはチームベース、それもかなり高度なチームプレイを要求されるXMPだが、特にチームプレイを意識しなくても何回かゲームに参加して遊んでいれば、自分が何をすべきなのかというのはすぐに理解できるわかりやすい作りになっている。初めてゲームを始めたときは、まず周りの動きをじっくり観察しておけば、数時間後には違和感なく周りにとけ込めるだろう。

 「UT2k4」までのつなぎとして出された感が強い本製品だが、ゲーム自体は、何も考えずに遊ぶプレーヤーも、戦略を練って遊ぶプレーヤーも同時に受け入れられる奥深いゲームだ。体験版はマップがひとつという制限はあるもののゲームシステム自体は100%楽しむことができるので、まずは体験版からXMPを味わってみて欲しい。

XMPでは、3つのクラスの他に戦車やバギーなどの乗り物や、マップの各所に固定砲台が用意されている。その武器の威力はプレーヤーキャラ達が持つ武器をはるかに超えている。ただ、プレーヤーキャラに適切な武器(RangerのEnergy RifleやTechのEMPグレネード、Gunnerのロケットランチャー)で攻撃されるとあっという間に破壊されるというもろい一面も持つ。特に乗り物系は複数人で乗り込むのが前提となっており、一人で乗り物に乗って敵陣へ突っ込んだとしてもただの脚代わりにしかならない。運転手と砲手という役割をきっちり把握すれば比類無き威力を発揮する乗り物を、的確に使って敵陣を引っかき回してやろう

Unreal(R) II - The Awakening (C) 2003 Epic Games Inc. Raleigh, N.C. USA Unreal and the Unreal logo are registered trademarks of Epic Games, Inc. ALL RIGHTS RESERVED. Unreal II - The Awakening was created by Legend Entertainment, an Infogrames studio and was manufactured and marketed by Infogrames, Inc. New York, NY, under license from Epic Games, Inc. The Atari trademark and logo are the property of Infogrames. All other trademarks are the property of their respective owners.


【Unreal II -The Awakening- Expanded Multiplayer】
  • CPU:Pentium III 733MHz以上(Pentium 4 1.2GHz以上を推奨)
  • メモリ:256MB以上(384MB以上を推奨)
  • HDD:3GB以上
  • ビデオカード:VRAM 32MB以上(64MB以上を推奨)


□「Unreal II - The Awakening」公式ホームページ
http://www.unreal2.com/
□関連情報
【2003年12月6日】PCゲームレビュー「Unreal II - The Awakening」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030214/unreal2.htm
【2002年12月6日】PCゲームレビュー「Unreal Tournament 2003」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021023/ut2k3.htm

(2004年1月20日)

[Reported by tyokuta]


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