「Patrician II」(パトリシアンII)という通好みのシミュレーションゲームで知られる、ドイツのAscaron Entertainmentの最新作「Port Royale」が、カプコンから「ポートロイヤル-カリブ大航海記- 日本語版」として発売される。全国数十万人(推定)のファンのみなさん! 「カリブ海」のキーワードで即、おわかりとは思いますが、みなさんがこよなく愛する“大航海時代”を扱った、歯ごたえある海洋交易SLGが久々に登場です!!
■ 「カリブの海賊」な時代のゲームだからといって、海賊だけが生きる道じゃない 前作にあたる「パトリシアンII」(日本語版はメディアクエストから発売)は、我々日本人には少々縁遠い、中世のバルト海(世界史の教科書に載っている「ハンザ同盟」の時代)を縦横に航海して交易や冒険をするゲームだったのに対して、この「ポートロイヤル」は、大航海時代後期のカリブ海を舞台にしている。この「後期」というところがミソ。 16世紀も末になると、それまで新大陸の富をほとんど独占していた大国スペインが徐々に衰退し始める。代わってイギリス、フランス、オランダが、カリブ海全域に入り乱れて覇権を目指した時代だ。各国は、国籍を隠してスペインや他国の船を襲い、財貨を奪う「海賊」行為を、国家をあげてバックアップしていた。国家公認で海賊行為を行なう船は、本物の海賊と区別して「私掠船」と呼ばれる。実は、有名な「キャプテン・ドレイク」はイギリスの私掠船長として名を残した人物だし、「キャプテン・キッド」も最初はイギリスの私掠船長として出発しているのだ(後にイギリスからも海賊とみなされ、処刑されることになるが)。 プレーヤーは上記4カ国のいずれかに所属する新米商人として、船1隻と多少の資金を持って、ゲームを始める。スタートする時代は、スペインの勢力が優勢だった1570年から、各国が私掠船の後援を止め、それまでの私掠船長たちが本物の「海賊」に転じ始める1660年に至る4つの年代から選択できる。 地道に交易で生きようというプレーヤーなら、好きな国や時代を選んでもそれほど難度は変わらないが、私掠船長(または海賊)の道を選びたいなら、各国の勢力範囲をよく眺めてから、プレイする国家や本拠地(自国の「総督府」のある港町の中から選べる)を決めたほうが後々ラクだろう。 プレーヤーの目標は、ゲーム中での経験値を蓄積し、ついには「総督」に任命されることに一応はなっているものの、何も条件を付けないフリープレイも可能だ。目標クリアまでの時間制限も付けたり付けなかったり、自分ならではの遊び方、たとえば直線コースで3年以内に総督クリアを目指す、あるいは気の向くままのんびり街々を渡り歩くを探して楽しむことができる。 実のところ、この、商人プレイも海賊の王道(?)を歩むも、はたまたそれ以外の生き方もプレーヤーの勝手次第、というこの「自由度」こそが、筆者も含めた“大航海時代”ファン特有の心をくすぐる魅力というかキモなわけだが、そこはさすがに「パトリシアンII」の開発元。よくわかっている。
■ 商品ごとの価格変動幅を知ることが、大商人への最初の一歩 ゲームの基本的な操作(港から港の移動、交易、街の開発など)は、「チュートリアル」をガイドに沿ってプレイすれば、ひととおり理解できる。コーエーの「大航海時代IV」など、同ジャンルのプレイ経験があるなら、そのまますぐに交易に乗り出すなり、海賊を始めるなりしてもいいが、中には勝手がわからず途方に暮れるプレーヤーもいるだろうし、最初の手持ち資金だけではやや心もとないのも確かだ。 そこで、序盤を堅実に乗り切るプレイを進めながら、ひととおりのゲームシステムを紹介していくことにしよう。なお、以下のプレイを後追いされる方は、ゲーム開始時、初期設定で「船重視」のオプションを選択し、「ブリッグ」級の船を入手していただきたい。
ポートロイヤルのマップは、港町の内部と海図(全体マップ)の2つを切り替えて使う。港町は多段階ズームができるので、たとえ解像度を最高の1,280×1,024ドットでプレイしていても、町中を歩く人びと(といってもゲームのヒントを語ってくれる以上の意味はない)といった細部まで見ることができる。海図はズームできないが、右上にカリブ海全体を示すミニマップがあるので、見たい地域はすぐに呼び出せる。
まず、自分の本拠地の特産物を調べてみよう。港町内部にいるときは、町の「井戸」「城門」「大砲」のどれかをクリックすると、町の状況(人口や経済状況)、特産物、この町における各交易品の需要の情報などを見ることができる。港町のマップが見られるのは、原則として自分の船団が停泊している港町だけだが(本拠地は常時切り替え可能)、海図上から港町を左クリックすれば、船団のいない港町の状況も確認できる。
本拠地の特産品が確認できたら、自分の船団をクリックして選択した後、「交易所」をクリックしてウィンドウを開く。このゲームで一番数多く見ることになるのが、この交易用ウィンドウだろう。特産品の在庫量と価格を見て、在庫が豊富で価格が手ごろな商品を2~3種類ぐらい、それぞれ10ずつ購入する。 商品は1売買するごとに価格が変動するので、10、100単位のボタンを押すと価格が高くなったように見えるが、実際には平均価格が表示されており、1単位ずつ10回買っても、10単位で1回買っても、総購入価格は変わらない。
いざ出航する前に、町の中の施設をひととおり見ておこう。城壁の内側には交易所以外に総督府(総督府のない町には副総督がいる)、教会、宿屋、造船所などがある。城壁の外側には、倉庫、特産品その他の産物の生産施設、住宅が広がっている。本拠地には、プレーヤーの倉庫が最初に1つあるので、位置を確認しておこう。 ちなみに交易所では、船団と倉庫と町の間で相互に商品をやりとり(町とは売買)できるほか、倉庫では、自分が不在の間に価格が下がった商品を自動的に購入、ストックしたり、逆に一定価格以上になったストック商品を自動的に売ったりする指示ができる。
本拠地と、総督府で「建設許可証」を購入した港町では、倉庫、生産施設、住宅などを建設して、自分で経営できる。商人たる者、いつかは、たばこなど付加価値の高い商品を自家生産して倉庫に大量ストックし、定期的に立ち寄る船団で遠くの町へ運んでボロ儲け、という至高の経営を堪能したいところだが、まぁそれは先の夢。当面は元手をふくらますことに専念しよう。
■ 知らない土地は何度も往来して、体で「土地勘」をつかめ! さて、買った商品をどの町で売るか? 原則は「需要の値の高いところ」に運ぶ、だ。しかし、ゲーム当初は自国の港のみ、それも本拠地の近くのいくつかの町しか海図に表示されていないため、売り買いするにしても比較対象が少な過ぎる。 そこで、最初はあまり需要については深く考えず、「カリブ海周遊ツアー」(笑)をしてみよう。沿岸、島に沿って、大きくマップを一周するのだ。たとえばスペインでマルガリータを本拠地にした人であれば、すぐ北に続く島伝いにキューバまでぐるっと回り、そのままフロリダ半島西岸を北上してメキシコ湾を左回りし、中米~南米北岸をたどってマルガリータに戻る、というコースを取ってみる。そして、その間に発見した港町にはすべて寄港していくのだ。 このコースで一周すれば、フロリダ東岸といくつかの離島を除いた港町を網羅できる。カリブ海の地理に疎い人でも、自分の船団で周回していれば、どの辺にどんな港町があるのか、何を必要としているのか、体でおぼえることができるだろう。え? おぼえられなかった?? もう一周!!
中にはたった1隻、それも非武装のまま遠出をするのは不安だ、と思うかもしれない。だが、ゲーム開始当初は海賊の活動もそれほど活発ではないし、その規模(船のクラスや武装度)も大きくないので、万が一海賊に襲われても「逃亡」すればほぼ逃げ切ることができる。ただし、逃亡に失敗し、追いつかれて負けることも皆無ではないので、遠出をする場合はできるだけこまめにセーブしておこう。 立ち寄る町々の交易所で、今船団が運んでいる商品が、購入平均価格(一番右に表示されるグレーの価格)より、10単位の平均で100も高ければ、思い切って売ってしまおう(10単位で1,000を超える利益が出れば十分だろう)。商品作物のほうが単価が高い分、うまくすれば10単位で数千の利益が出る。 空いた船倉には、その町の特産物で値ごろな商品を買って積み込む。そして隣の町へ移動をひたすら繰り返す。このとき、自分の船がブリッグ級なら、船倉が80と(開始時に選べる他の2つの級の船より)大きいので、なかなか売りどころのない商品があったときも、積んだままで他の商品を扱うことができる。 マップ一周を終えて本拠地に戻ってくるころには、大体5~6万ぐらいの資金が貯まっているはず。この資金で1ランク上の船、「バーク」級を買おう。本拠地の造船所では、まだバーク級が買えないこともあるので、周遊ツアー中にバーク級が買える町をチェックしておくといい。 最初の船の船長を新しいバーク級の船に移して、これまでのブリッグ級の船には新たに(宿屋で)船長を雇う。バーク級のメリットは、高速であることと(最大速度12は、この級だけ)、大砲を最大20門まで積めること。これにより、非武装のときは海賊からの逃げ切り確率が上昇するし、武装時には砲撃戦をしている限り、かなり強力な相手とも五分に渡り合える。
ここまできたら、あとは武装して小規模の海賊を退治して稼ぐもよし、周遊をもう少し続けて資金を貯め、船団を揃えるもよし、あちこちの港町をあてもなく巡り、宿屋や総督府を訪ねてはミッションをこなす生き方もよし。ただし、総督府の物資調達ミッションは、ある程度の船団規模がないと、期限内には量をこなせないことがあるので注意が必要だ。 もちろん「海賊業」への転職も可能。さらには、海戦に慣れると敵船を拿捕する余裕も出きるので、拿捕した船で船団を組む、といった荒業も、意外と現実的なアプローチだったりする。
■ 確実な勝利をキメたければ、「手動」海戦をマスターせよ!! 海図上で敵と遭遇し、いざ海戦、となったとき、「手動」と「自動」戦闘のどちらかを選ぶことができる。海軍戦術を駆使することそのものに醍醐味を感じる、という人を除くと、戦闘それ自体はともかく、誰しも自分の損害は避けたいもの。特に自分の船団が優位であればなおさら、手動海戦で無用な敗北を招くよりは、無難に自動戦闘で勝っておこう、というのはひとつの選択だ(筆者のようにリアルタイム戦闘が苦手な人はなおのこと)。 とはいえ、総督府で私掠許可証をもらい、特定の国の船を襲おうという場合、あるいは海賊稼業に手を染めた場合には、物資を奪取するために手動の海戦が避けて通れない。敵船を拿捕したい場合も、手動海戦のほうが確実だ。要するに、このゲームをプレイする以上、手動海戦が苦手なユーザーもある程度は鍛錬が必須になる、ということだ。 海戦のために必要な準備は、先に書いた大砲と弾薬の購入に加え、船員(戦闘要員)を確保し、彼らに武器(剣や銃)を調達しなければならない。海賊船や各国の護衛船は、おおむね船員を目一杯乗船させているので、頭数を揃えておかないと白兵戦になったとき、対抗できないのだ。 船員や武器、弾薬は船倉スペースを食わないが、大砲だけは船倉を圧迫する。費用対効果も考えると、同じ船団で武装/非武装を切り替える、というのも現実的だろう。武装を解除しているとき、大砲は倉庫にしまっておけばいい。
手動戦闘を選ぶと、画面は(海上)戦闘マップに切り替わる。肝心の海戦ルールだが、操作そのものは複雑ではない。砲撃戦では、マウスで操船しながら、3種類の砲弾を選び(砲弾の消費は激しいので、海戦前後の補充確認を忘れないように)、Shiftキーで「撃て!」。 当時の帆船の構造上、海戦戦術の基本は敵の船首(もしくは船尾)にこちらの舷側を向けること。できるだけ相手の射程範囲内に入らないよう気を付けながら、勝利を目指そう。また、「自動戦闘では味気ないが、もう少しお気楽にやりたい」人は、目標とする船だけを指定し、自動的に攻撃/拿捕の行動を取らせることもできる。 どちらかの船がすべて沈むか、拿捕されるか、逃走(マップの外縁から離脱)に成功すると、海戦は終了となる。拿捕した船に対しては、積み荷だけを奪うか、船ごと接収するかを選択できる。拿捕した船はたいていボロボロになっているし、こちらも大きな損害を受けた場合には、早めに寄港して修理しよう。
■ 手間暇はかかるけど、じっくり自分なりの目的を追求しよう コーエーの「大航海時代IV」などをプレイしていた人なら、「このゲームの主人公にはストーリーはないの?」という質問が出てきそうだ。答えを言えば、ある、というかどうやらあるらしい。正直なところ、それらしいイベントにはいくつか遭遇しているのだが、筆者のプレイが追いついていなかったりする。そう、近ごろのゲームの例に漏れず、このゲームもプレイ時間が長くなりがちなのだ。 また、時間制限がシビアなミッションを請け負ったときや、交易で悩んだときなど、ついポーズをかけてしまう場面は確かにあるが、それ以外は慣れの問題で、プレーヤーの思考や行動の速度はゲームの間延びにそれほど影響しない。むしろ、ゲームの進行速度自体のほうが気になる。 今回はβ版でプレイしているので、製品版ではチューニングされている可能性もあるが、Pentium 4 2.4GHzのPCでゲーム上の設定を「最速」にしたとき、ゲーム中の1日が経過するのに約20秒かかる。つまり、ゲーム中ノンストップで1年プレイするのに、実時間で約2時間必要になるわけだ。これが客観的に速いのか遅いのかは判断が難しいが、はっきり言えるのは、海図上の船団の動きなど「少し遅いなぁ」と感じられる。 このため、ゲームには「早送り」ボタンが付いている。どの船団も移動中だったり、船団が修理中のときなど、ゲームの1日=実時間の約1秒ペースで進められる。少々使いにくいのは、早送り中のみ、マップが海図でも港町でもない「全体マップ」画面に強制切り替えされてしまうこと。描画に何か問題があるのかもしれないが、いずれにせよ早送りを止めると元の(早送りにする直前の)画面に戻るのだから、できれば画面を切り替えずに早送り処理を可能にしてほしかった。 使い勝手について、もうひとつ不満なのが「自動交易路」システムだ。多数の船団を全部自分でコントロールしていたら、それこそポーズをかけないと対処できない場面が増えてしまうから、決まった交易コースを取る船団を自動的に運用できる自動交易路システムがあるのは便利だし、個別の商品ごとに売り買いの量や基準価格を細かく設定できる仕組みも評価したいところだ。
しかし、その細かな設定を、寄港する町ごとにすべて手作業で決定していかなければならないのは、かなり使いづらい。3~5都市までの交易がせいぜいで、それ以上は設定が面倒過ぎるし、メモなしでは覚えきれないのだ。もし、最初の1回だけ手作業で巡回すると「交易中の売買を自動記録する」機能があれば、あとはそのコースを自動的に巡回しながら交易が行なわれ、この問題は解消されるだろう。こういった「プレイをラクにする」支援機能を、今後はぜひ検討してもらいたいと思う。 大航海時代シリーズで「交易」と「戦闘」が好きだった人なら、このポートロイヤルの緻密な交易システムを十分楽しめるだろう。交易で儲けた資金を、船団の強化だけでなく生産施設などの事業に投資したり、自分の商会を大きくする過程も堪能できる。逆に、「探検」や「発見」に関する扱いは、淡々とメッセージベースで処理されてしまうため、濃厚なストーリーを期待している人にとっては欲求不満が残るかもしれない。 個人的な希望としては、本作のシステムをベースにして探検的要素を追加し(さらにユーザビリティも改良して)、全世界を舞台に遊べるゲームをぜひプレイしてみたい。「ポートロイヤル」は、そんな夢の実現を期待させる、完成度の高い名作だ。
(C) 2003 Ascaron Entertainment GmbH, and/or Ascaron Entertainment (UK) Ltd.
□「ポートロイヤル 日本語版」の公式ページ http://www.capcom.co.jp/pc/portr/index.html □関連情報 【12月6日】カプコン、「ポートロイヤル 日本語版」を6月20日発売 大航海時代の海洋冒険ロマンを堪能できるSLG http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030416/port.htm 【5月1日】「ポートロイヤル 日本語版」体験版 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030501/demo0501.htm (2003年6月27日)
[Reported by culi]
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