← 前回分  【バックナンバー】

【連載第35回】 気になる海外ゲームをピックアップ


西尾ゆきの海外ゲームレポート

南極基地でのエイリアンとの死闘を描く
「遊星からの物体X」のその後がゲームに
「The Thing」

 「The Thing」は、ジョン・カーペンター監督による'82年のSFホラー映画「遊星からの物体X」に続くストーリーを持ったアクションゲームだ。南極基地という逃げ場のない場所で、仲間たちが次々にエイリアンに侵されていくという恐怖を描いた物語であり、ゲーム版でもそれが生かされた内容になっている。プレーヤーは部下との信頼関係を保ちながら南極の基地や研究所を探索し、エイリアンたちを対峙しなくてはならない。

「遊星からの物体X」の続編!?

 「The Thing」は、南極でのエイリアンとの死闘と恐怖を描いた'82年のSFホラー映画「John Carpenter's The Thing(遊星からの物体X)」のその後を描いたアクションアドベンチャーゲームだ。題名にもなっている“The Thing”は自在に形を変えられる謎の宇宙生命体で、生き物や人に侵食し、その生き物の姿を保ったまま捕食活動をするというシチュエーションになっている。

 そのため、狭い基地内で「見た目は普通だが、こいつ侵されてるのでは」とか、「様子がおかしい、実はもうエイリアン?」といった疑心暗鬼が生まれ、人間だと思っていた仲間の正体がばれ、突如ぐちゃぐちゃのクリーチャーとしての姿を現しながら襲い掛かってきたりする、驚愕と恐怖の連続といった内容が特徴だ。

 今回のゲームのストーリーは、この'82年の映画の続編という位置付けで、プレーヤーは米レスキューチームのリーダーBlakeとなり、部下を率いて連絡不能になってしまった南極観測基地の調査を行なわなくてはならない。

 ヘリから基地に降り立ったチームが見るのは爆発で破壊された基地と、ところどころに残った建物、そしておぞましい死体や血にまみれた現場だ。壊滅してしまった基地で何が起こったのか? また、同じ時期に派遣されて連絡が途絶えたアルファチームは無事なのか? プレーヤーは生存者を探しながら襲い掛かるエイリアンと対決していかなくてはならない。

オープニングでの一場面。“物体X”に襲われた南極基地の様子が描かれているが、初手からこんな映像が満載のためプレイ前からへっぴり腰に

 ゲームはFPS風のアクションゲームで、キャラを背後から見た3人称視点である。シューティングの照準は自動のためシビアな射撃が求められるわけではなく、謎を解きながらエリアを進んでいくミッションクリア型の内容だ。このゲームの大きな特徴は主人公が部下NPCを引き連れることで、彼らには信頼度と恐怖度というパラメーターが備わっており、信頼を損なうと言うことを聞かなくなったり、恐怖に駆られるとパニックに陥ったりしてしまうのだ。

 「The Thing」は、襲い掛かってくるクリーチャーを撃ち殺し、さっきまで一緒に行動していた仲間の体を破って現れた生命体に襲われながら、生き残った仲間と共にミッションをこなしていくというアクションアドベンチャーなのである。

ゲームはミッションクリア型。その時々に目標が画面左上に表示される “物体X”はいつどこから現れるのかわからず、いつも油断ができない 一緒に戦ってくれる部下NPC。でも誰かは“物体X”に侵されているかもしれない……!?

仲間NPCを連れてのアドベンチャー

 「The Thing」はミッションクリア型のアクションアドベンチャー。敵を倒して状況を打破しながらクリア条件をこなしてしていくのがゲームの目的となっている。ひとつのミッションが終わると次のミッションが新たなエリアで始まるため、閉じられた1カ所でドキドキするというよりは、謎を解きながら次々に面を進めていくといった感じである。

 プレーヤー操るBlakeの動きは攻撃、移動、かがんでの歩きといったぐらいで、「Tomb Raider」のようなアクション性はない。射撃はFPS風だが、武器の照準は自動なので、アクションやシューティングが苦手な人でもトライしやすいだろう。ただし、アクロバティックなアクションがないかわりに、エイリアンとの激しい戦いはたっぷり用意されているので安心してほしい。一方でパズル色も強く、あちらの電源を直したからこの扉を開けられたとか、キーコードをパソコンから手に入れたからロック解除とか、謎解き部分もなかなか重要になっている。

 だが、このゲームの一番の特徴はなんといっても部下のNPCが一緒に行動することだ。プレーヤーキャラには、兵士、衛生兵、エンジニアといった部下が付き添い、彼らに武器を渡して攻撃や回復能力、そして修理能力を上手く利用しながらミッションをクリアしていくことになる。たとえば、壊れている電機系統のボックスをエンジニアに修理させたり、怪我をした主人公キャラを衛生兵に回復させたりするわけだ。たくさんのエイリアンが出現するような時は、攻撃面でも役に立ってくれる。

これら部下NPCはプレーヤーのキャラクタに対して信頼度を持っており、武器を持たせないとか持っていた武器を取り上げたとかいった、NPC部下の信頼を損なう行動をすると、相手の信頼度パラメーターが下がってしまう。信頼度があまりに低いと言うことを聞かなくなってしまうのだ。

 また、部下NPCには恐怖度というパラメーターも設定されていて、悲惨な状況の場所や死体のそばに長時間いることで恐怖が増大していき、立ちすくんで動けなくなったり吐いたりする。そのため、既にエイリアンに侵されているかもという疑いを抑えつつ、強い武器を渡して信頼を回復したり、アドレナリン注射をして活をいれたり、部下の信頼と精神を上手く保ちながらゲームを進めていくのが大事な要素となっている。

壊れたボックスがあったのでエンジニアに修理させたところ、切れたケーブルが邪魔で通れなかった場所が通れるようになった

体力が危なくなった部下の頭の上には、回復を求めるアイコンが表示される 強い武器を持たせてやったら、部下の信頼度が急上昇した 戦闘でも役に立つ部下だが、互いの誤射で傷ついてしまうこともあり

各部下の信頼度と恐怖度は1キーですぐに確認できる プレーヤー自身は武器のほか各種アイテムも使用できる 悲惨な死体などがある場所に長くいると恐怖度が増していく

突如現れるクリーチャーたち

 人の中に潜むことができるというのが、このゲームのエイリアンの特徴だ。それまで一緒に戦っていた部下達が、何かの拍子に正体がばれると、突然、気味の悪い音をたてながら頭や手がもげて、半人半モンスターの姿のまますごい勢いでこちらに突進してきたりする。人のクリーチャー化とショッキングなシーンと共に、人間不信になる点でも泣きたくなってしまう。

調査中に出会った隊員はこちらが人間かどうかを確認するため血液検査を求めてきた。自分が検査した後に部下の血を調べたら、血液が爆発。頭や手がもげて襲い掛かってきた。行動を共にしていた人間がクリーチャーになってしまうのがショッキングだ

 恐怖の源は、エイリアンに侵されてしまった仲間だけではない。醜いクリーチャーの形をとった生命体が突然襲い掛かってきたりもするのだ。探索をする室内は物音ひとつない静かさなのだが、そんな所に急に「シャカシャカシャカ!」といった音がして、ミニクリーチャーが続々と現れて心臓が止まりそうになったりもする。

 突如出てくるモンスター的エイリアンと薄暗い画面、音が効果をあげていて、プレイしている間中、前後左右を抜かりなく確認してしまうような落ち着かなさとドキドキ感を覚えた。また、ゲーム中では要所要所でムービーやカットシーンが挿入されるため、出るぞ出るぞと思っているとやっぱりでた、といったような恐怖もある。

 元仲間エイリアンやクモ型のミニエイリアンに驚かされる一方で、一撃二撃でこちらが死んでしまうような大型クリーチャーも登場するのだが、これらクリーチャーがまた目を背けたくなるような姿なのである。そんな気持ち悪くて大きなエイリアンに対峙しながら、火炎放射器で足止めし、素早く武器を切り替えて狙撃、炎が弱まったらまた火炎放射器で、などといったことを冷静に行なわなくてはならない。

 このようにゲームプレイ中は、全編、息詰まる緊張の連続だった。南極の観測基地という場所が舞台なので、外にいる時は一定時間を過ぎると寒さのために体力が急激に減ってしまうし、聞こえるのはひゅーひゅーいう強い風の音だけで、プレイしている方としては非常に心細い。外にも中にも逃げ場がない、助けがないという世界が上手く演出されている。

 「The Thing」はストーリーがあまり込み入っておらず、いい意味で綺麗な一本道の展開になっていて、軽快にプレイし続けられたのは好印象だった。セーブポイントが限定されていたり、謎解きが少々難しい場合があったり、詰まってしまう要素もほどほどにあるのだが、障害になっている謎を解いて進めた時の喜びは大きい。

 また、クリーチャーの形で襲ってくる“Thing”と、人間の中に潜んでいる“Thing”の両方の恐怖にまみれて、孤立した基地や研究所をじりじりと進んでいくのは、いつにない緊張感をもたらしてくれる。ミッションごとに仲間が変わったりするため、映画版の「こいつがエイリアンだったのか!」といった衝撃にはやや及ばないかもしれないが、ホラーもののゲームとしては十分に怖がらせてくれる。誰もいない真夜中に、ヘッドフォンをしてプレイするのをお勧めしたいタイトルだ。

他の画面は掲載上明るくしているが、実際のゲーム画面はこんな風に暗いことが多い 外では一定時間後に体力が減ってしまうため、素早く移動する必要がある 一部に人間の形をとどめているクリーチャーがいるなど、おぞましさ絶大

火炎放射器は上手く使わないと自分もダメージを受けてしまう 炎で足止めしている間に仲間と共にクリーチャーを狙撃する プレイ中はこんなシーンが一瞬挿入されたりしてドキドキする

"The Thing"interactive game (C) 2002 Universal Interactive, Inc. The Thing and related characters are TM and (C) of Universal Studios. Licensed by Universal Studios Licensing LLLP. All rights reserved. Black Label Games and the Black Label Games Logo are trademarks of Vivendi Universal Games, Inc. in the U.S. and/or other countries. "After Me"performed by SALIVA. Courtesy of Records under license from Universal Music Enterprises.

【The Thing】
  • ジャンル:ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 開発元:Computer Artworks
  • 発売元:Universal Interactive
  • 価格::6,730円~7,400円(実売価格)
  • 対応OS:Windows 98/Me/XP
  • CPU:PentiunII 400MHz以上(Pentium III 600MHz以上を推奨)
  • メモリ:64MB以上(128MB以上を推奨)
  • ビデオメモリ:16MB以上(32MB以上を推奨)


□「The Thing」公式ホームページ
http://thething.sierra.fr/en/index.html
□関連記事
【9月6日】サイバーフロント、「遊星からの物体X」を10月25日に発売
ホラーSF映画の名作の続編ストーリー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020905/thing.htm


気になる直輸入ソフト

 急に新作が盛りだくさんとなった今週。8月下旬に発売された気になるタイトルが続々と入荷されていた。下記のタイトルのほかには、低価格ソフトのドライビングゲーム「 Hard Truck: 18 Wheels of Steel」(3,600円~3,980円)、子供向けの可愛らしいストラテジー「MoonBase Commander」(3,200円)、スケートボードのパークを作成する箱庭系ゲーム「Skateboard Park Tycoon2」(3,980円)、チェスの定番シリーズ最新作「Chess Master9000」(6,750円)、アドベンチャーモードとストラテジーモードが融合したRTS「Celtic Kings」(7,380円)、EA Sportsのアメリカンフットボールもの「Madden NFL 2003」(6,400円)などがあった。また、OverTopには9月20日に日本語マニュアル付き版が発売される「Medieval: Toral War」(5,972円)の直輸入版も入荷していた。

Icewind Dale II
実売価格:6,980円~7,350円 ジャンル:RPG

 TRPGの「Forgotten Realms」を題材にしたRPG。緻密で美しいグラフィックとTRPGのルールに則ったゲーム性で人気の高いシリーズの最新作だ。重厚なストーリーとプレイしがいのあるクエストの数々と共に、じっくりとキャラクタを育てる楽しみもある、ある意味クラシカルなRPGである。

ICEWIND DALE II (c) 2002 Interplay Entertainment Corp. All Rights Reserved. The BioWare Infinity Engine c 1998-2002 BioWare Corp. All Rights Reserved. Icewind Dale, Icewind Dale II, Baldur's Gate, FORGOTTEN REALMS, the FORGOTTEN REALMS logo, D&D, the Dungeons & Dragons logo, Wizards of the Coast and the Wizards of the Coast logo are trademarks of Wizards of the Coast, Inc., a subsidiary of Hasbro, Inc., and are used by Interplay under license from Infogrames Interactive, Inc. Black Isle Studios and the Black Isle Studios logo are trademarks of Interplay Entertainment Corp. The BioWare Infinity Engine and the BioWare logo are trademarks of BioWare Corp. Exclusively licensed and distributed by Interplay Entertainment Corp.

Aliens versus Predator 2: Primal Hunt
実売価格:3,600円~3,680円 ジャンル:FPS

 エイリアンやプレデターとの死闘を題材にした人気FPS「Aliens versus Predator 2」の拡張セット。新たな武器やストーリー、シングルミッション、対戦マップなどが加えられている。

(c)2002 Sierra On-Line, Inc., 3060 139th Avenue, SE, #500 Bellevue, WA 98005 U.S.A. All rights reserved. Names, trademarks and copyrights are the property of Sierra On-Line, Inc. Links do not necessarily suggest endorsement. (c)2001 - 2002 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. Aliens versus Predator?, Fox Interactive and their respective logos are trademarks of Twentieth Century Fox Film Corporation. This product contains the LithTech? Development System c 1997 - 2002 LithTech, Inc. Used under license. All rights reserved. LITHTECH and the LithTech logo are trademarks of LithTech, Inc. Uses Miles Sound System c 1991-2002 by RAD Game Tools, Inc.

TSUNAMI 2265
実売価格:4,750円 ジャンル:アクションシューティング Demo版

 ロボットアニメちっくなグラフィックが特徴のアクションシューティングゲーム。洪水によって壊滅的打撃を受けた未来の地球を舞台に、主人公であるNaoko HikariとNeon Shimaのどちらかとなり、メックを操作して敵と戦い、謎に包まれたエネルギー源を探っていくことになる。

(C) 1998-2001 Protonic Interactive

Prince of Qin
実売価格:7,500円 ジャンル:アクションRPG Demo版

 中国、秦の始皇帝の息子を主人公にすえた異色RPG。Diablo風の斜め見下ろしの画面で、ゲーム性も似ている。ただし、舞台が中国ということでグラフィックデザインがファンタジーとオリエンタルが融合したような独特のものになっていて楽しめる。国内ではカプコンが取り扱う予定だ(参照記事)

(C) Object Software Limited 2002, All Rights Reserved.

(2002年9月11日)

[Reported by 西尾ゆき]


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.