「ポケジャンEX(イーエックス)」 | |
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発売 | バンダイ |
価格 | オープン |
電源 | ボタン型電池×2(付属) |
何しろ、ファミコンと同年の発売だ。ゲームボーイが存在しないどころか、ファミコン自体も空前のヒットに向けて、ゆるやかなランディングをはじめようとしているころ。「いつでもどこでも、本格的な4人打ちマージャンが楽しめる」という売り文句は、マージャンがまだ“娯楽の王道”として輝いていた時代に、強烈にアピールしたのだった。
今回紹介するのは、そのポケジャンの最新機種「ポケジャンイーエックス」。「名作携帯ゲーム機の最新版」という触れ込みに興味を抱いたのはもちろんのこと、それ以上に「なぜ今ポケジャンなの?」という素朴な疑問が沸いてきたのだ。通勤途中の電車の中やリラックスタイムに、「マージャンをしたいな」と思ったら、ゲームボーイで遊べばいいではないか。わざわざ専用機を買う意味はどこに? しかし、バンダイは、最新機種を市場に投入するという。あえて勝負をかけるには、この最新機種にはゲームボーイにはない何かがあるはずなのだ。
パッケージ。モスグリーンを基調に、銀のハイライト | 本体はPDAを彷彿とさせるシックなデザイン |
東急ハンズの店頭で商品を手にとったとき、疑問の一部がまず解けた。価格が安いのだ。カタログ上ではオープン価格になっているが、ここでは3,980円で販売されていた。つまり、ゲームボーイアドバンスのソフト1本を買うより安いのだ。しかも、ゲームボーイアドバンス本体を持っていない人が「マージャンゲームをしてみたい」と思いたち、本体とソフトを購入したら、13,600円が必要となる。これは希望小売価格の合計なので、実際はもっと安く済むだろうが、それでも3,980円の魅力にはかなうまい。
パッケージを開けると、疑問はさらに解けた。本体が小さく、軽いのだ。サイズは縦62ミリ、横は84ミリ。まさに手のひらサイズだ。重量もとても軽い。計測してみると、78グラムだった。ゲームボーイアドバンスの約半分だ。そして、何よりデザイン。「マージャン専用の携帯ゲーム機」というコンセプトからかけ離れた、シンプルなデザインなのだ。遠目にみれば、PDAのようにも映る。「電車でゲームボーイに夢中になっている姿を、人に見られるのはちょっと……」というような人たちにも、「これならアリ」と感じられるだろう。
デザイン面における試みは成功といえるだろう。とはいえ、重要なのはマージャンゲームとして楽しめるかどうか、だ。
手のひらに収まるサイズ。右下には滑り止めの工夫もある。本体のサイズが実感できるだろうか。重量はとにかく軽い |
ゲームは「ランキング対戦」、「勝ち抜き戦」、「2人対戦」の3モードが用意されている。まずは、コンピュータ3人を相手に東南半荘戦を行ない、戦績によってランクが診断される「ランキング対戦」から遊んでみた。本体の「ON/OFF」スイッチを押すと、液晶画面に文字がひとつずつ表示されはじめた。「バンダイマージャンクラブ ポケジャン」。文字だけのシンプルなタイトル画面。久しく目にしていなかった雰囲気だけに、懐かしさに頬が緩む。
続いて、「トクテンは27000モチ 30000カエシ」、「クイタンアトヅケアリ」、「フリテンリーチアリ」と「ポケジャンルール」が表示される。ふむふむ。そして「ランキングタイセン」「カチヌキセン」「フタリタイセン」から、「SELECT」ボタンで「ランキングタイセン」を選び、「ツモ」ボタンを押す。画面には「ドレカボタンヲオシテクダサイ」。言われるままにもう一度「ツモボタン」を押すと、液晶画面の中でサイコロが回転をはじめた。
よし、勝つぞ! と意欲が盛り上がってくる。ところが……はじめてしばらくすると、様子がおかしいことに気づいた。不要な牌を捨てようとすると、選んだ牌とは別の牌が勝手に捨てられるのだ。「あっ、待ってくれ」と心で叫んでも後の祭り。この現象を解決すべく、取扱説明書を読むことにした。なるほど、ゲームを選択した後は、「ツモ」ボタンではなく、スタートボタンを押すのか。これは筆者の早計だった。しかし、だ。ポケジャン本体を何度見返しても、スタートボタンは見当たらない。
再度、説明書を読み返すと、スタートボタンは「カン」、「ツモ」、「ポン」ボタンの上に、それぞれ「S3」、「S2」、「S1」と略称で表記されているとのこと。しかも「S1」は初級者レベル、「S2」は中級者レベル、「S3」は上級者レベルに分かれているという。うへっ、わかりにくい!
マージャンというポピュラーなゲームを、幅広い層に遊んでもらうためのハードとしては、配慮に欠けている。少なくともゲーム開始までは、説明書を読まずとも、感覚的に進められるように十分に工夫すべきだ。
アガリやリーチ専用のボタンがあり、操作は良好といいたいところだが…… | タイトル画面。ドットが浮き立った文字がなんとも懐かしい |
「ランキング対戦」。上段は現在プレイ中のライバルの画面。下段は自分の手牌 |
一局終えて気づいたのだが、液晶の設計は優秀だ。サイズは縦31ミリ、横118ミリと、非常に横長なのだが、この長さが生きている。一局に捨てる牌の最大数である19牌が、すべて横並びに表示されるのだ。おかげで局の流れがつかみやすく、「そろそろ中盤なので、誰かがテンパっているはずだから、捨て牌選びに注意しよう」とか「あと3回ツモると流局だから、鳴いてでもテンパイに持ち込んでおこう」など場面に応じた牌運びが行なえるのだ。
コンピュータの思考速度は、最近のマージャンソフトのような息つく間もないほどの速度ではないが、「次のツモはまだかな……」とホンの少しだけ待ち遠しくなるテンポ。ときにはコンピュータが長考をするといった演出もあり。
筆者は中級者レベルを選んで遊んだのだけど、2回上がったのみの成績でランクは最低を示す「1」。う~ん、マージャンは2年ぶりだから勘が戻らなくて……と言いわけをさせてほしい。
自虐的な気持ちで、上級者ランクにも挑戦したみた。中級者とハッキリとした差は見受けられないが、コンピュータが仕掛けてくる順目は早く、上がった場合もしっかりと役を狙ってきているのがわかる。この勝負、筆者はリーチピンフドラ1を何とか上がれたのみ。ランクは変わらず「1」だった。
■ ヒマつぶしに最適な「2人対戦」もある
「勝ち抜き戦」は、同様のコンピュータ相手の東南半荘戦を行ない、戦いの場を変えながら、やがては世界チャンピオンを目指していくモードらしい。「らしい」と書いたのは、最初の勝負「チョウナイカイ」をまたしても勝ち抜けなかったから。トホホ。コンティニューも可能なので、通勤電車の中で毎日コツコツと挑戦していくことにしよう。
「2人対戦」は、文字通りふたりで遊ぶマージャンだ。コンピュータとサシで勝負するのかと思いきや、牌を捨てると、瞬時に牌が裏返しになり、続いて裏になっていた相手の牌の絵柄が表示された。なるほど。これはリアルな2人対戦ができるわけか。
まずはひとりが「ポケジャン」を手に取り、操作を行なう。そうして自分の番が終わったら、「ポケジャン」を渡し相手が操作を行なう。「ポケジャン」が対戦相手の手に渡ろうとも、自分の牌は裏に伏せられているので、マージャンは成立するのだ。ユニークなアイデアだと思うけど、時間がかかりそうではある。行列に並んでいるときとか、退屈な時間をしのぐのに向いているのかな。
ゲームボーイを持っていればまったく不要かというと、そうでもない。筆者は、このアイテムが放つ「軽さ」と「カジュアルさ」が気にいった。ふとマージャンを遊びたくなることがある人なら、カバンの中に常備しておき、いつでも取り出せるようにしておくとよいだろう。価格も安いので、プレゼントにもよさそうだ。
(C)2002 BANDAI
□バンダイのホームページ
http://www.bandai.co.jp/
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(2002年7月11日)
[Reported by 元宮秀介 (ワンナップ)]
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