前作「Daggerfall」の発売以来、実に6年ぶりの新作となる「The Elder Scrolls」シリーズの最新作「Morrowind」がようやく発売された。同シリーズは日本では「ウルティマ」や「ウィザードリィ」ほどには知られていないが、それらの有名RPGシリーズに決して引けをとらないどころか凌駕する部分も多い、スケールの大きなシングルプレイRPGである。じっくり1年ぐらいかけて旅したくなる広い世界が最大のポイントで、複雑な人間性と特徴を備えた、とても現実的なキャラクタ作りができるのが魅力だ。MMORPGなどとはまた違ったリアルさを持ってプレーヤーにせまってくるゲームである。 |
■ 本当に旅をしているような感覚になれるRPG
幻想的な景色がどこまでも続くゲーム世界 |
視点は一人称視点で、インターフェイスもFPS風にキーボードとマウスの併用となっている。戦闘はリアルタイムに進行していくのだが、左ボタン押しっぱなしで力をためてから切りつけるというシステムをとっていて、ためる時に左右前後に移動することで、突きや切り払うなどの攻撃スタイルの差が生まれる。
キャラクタの能力は各種スキルによって形作られ、スキルに応じた行動を起こすことで自然に能力が伸びていくようになっている。たとえば、剣を振り続ければ長剣のスキルが上がっていくし、走り続ければ基礎体力のスキルが上がっていくという具合だ。
プレーヤーは物語の最初に帝国スパイの一員となり、各種ギルドで仕事を請け負ったり、街で困っている人々の頼みごとを解決したりしながら冒険を続けていく。だが、「Morrowind」にはメインストーリーとなる1本の長大なクエストが用意されているものの、基本的に何をするのか、どこに向かうのかはプレーヤーに任されている。どの街から訪れるのか、誰の配下につくのか、どんな勢力に所属するのか、正義の味方になるのか、人目を盗んで店の金庫を漁るコソ泥になるのか、クエストをどうやって解決するのか。それらがすべて自由なのだ。
たとえば、誰それが持っているアイテムを奪ってこいという任務があったとする。普通に頼んでもアイテムをくれない場合はどうしたらいいだろう? 「Morrowind」では賄賂を渡して友好度を上げたり、もしくはしゃべりを駆使して相手を挑発し、切りかかってきたところで返り討ちにしたり(相手が先なので犯罪にはならない)、有無も言わさず相手を殺してアイテムを奪ったり(自分は賞金首になる)など、様々な解決方法がある。
シングルプレイのRPGというと、すでにプレーヤー操るキャラクタの性格などが設定されていて「私ならこう考えないのに」と思うようなことがままあるし、ストーリーに乗せられて動かされているような気になるものだ。
だが、「Morrowind」はその対極にある。自分の考えで行動を起こし、自分の判断で自分の成長を決められ、そして人々が助けを求めるのはプレーヤーその人なのである。どこか別の次元に本当に存在しているかのような広大な世界で、現実世界と同じような考え方や行動をとれる超リアルなRPG、それが「Morrowind」である。
人々に話を聞くことでいろいろな情報や世界情勢などが見えてくる | 船も利用できるが、自分の足で旅することもできる | 街から街へと移動できる生きた乗り物“Silt Strider” |
敵となるモンスターやNPCは頭がよく、助けを求めたり逃げたりもする | 店の中などもよく作りこまれていて臨場感がある | 新しい街に到着するのがこれほど楽しみなRPGもない |
スキルは多岐に渡っており、魔法や錬金術なども充実している | 道端で見知らぬ人に出会うことも。相手が善人か悪人かはわからない | 水の表現なども含めて、シングルRPGにしてはかなりがんばっているグラフィック |
■ キャラクタの多様性が魅力の一端
すでに用意されているクラスを選ぶのが一番わかりやすい |
自分の星座を選ぶと、能力に特典やマイナス要素が付加される |
キャラクタ作成は3通りあり、古式ゆかしく10の質問に答えることでクラスが決まるもの、規定のクラスから選ぶもの、自分の好きなスキルをMajorスキルとする、オリジナルクラスを作成するものとがある。
スキルは熟練度制になっていて、使えば使うほど上達する仕組みだ。先述したように長剣のスキルをあげたいのならば、戦闘などでしょっちゅう振り回していればいいし、基礎体力のスキルを挙げたいのならば、常に走っている状態で移動していれば自然とスキル値が上がっていく。
また、「Morrowind」の世界でなければ生きてこないようなスキルも多く、たとえば、相手を挑発したり友好度を高めたりするのに便利なSpeechcraft(しゃべり)や、相手の気がつかないように行動したり荷物を除き見たりするSneak(スニーク)などは、その最たるものだろう。
攻撃のメインスキルを何にするか、サブに何をつけるかということで悩み、キャラクタを自分が納得いくまで繰り返し作り直したくなってしまう。肉弾戦キャラだけど魔法が使えたり、魔法キャラだけど盗みにも長けていたり、細かなキャラクタつくりが可能だ。個性をもったキャラクタを作れることで、ゲームの中のキャラクタとプレーヤーとの一体感が強く、キャラがレベルアップした時は、「キャラのパラメーターが上がったー」ではなくて、「私って強くなったー!」となるのである。
また、キャラクタの身体能力と、どういった行動をとるかはすっかり別のベクトルで動いているため、卑怯な騎士や親切な義賊といった、まさにロールプレイングなキャラクタ作りができる。
Majorスキルは他のスキルより成長が早く、キャラクタレベルの元にもなる | いろいろな質問に答えていくことで、特定のクラスに決定してもらうこともできる | ステータスやインベントリー画面、マップなどは右クリック一発で表示・非表示ができる |
■ クエストも盛りだくさん
物語性が豊かで連続性のあるクエスト群も夢中になれる要素のひとつだ。ゲームが始まると、プレーヤーは“BLADES”と呼ばれる皇帝のスパイ組織の一員となる。だが、まずは腕を上げるためには各種ギルドへの登録をし、自分の地位と名誉を獲得していかねばならない。
登録したギルドからのクエスト、自分の人生にかかわる、メインストーリーに関するクエスト、街の人々からいろいろなシチュエーションで受けるクエスト。これらが混ざりあって、プレーヤーの目的意識を盛り上げてくれる。
クエストは一筋縄ではいかないものもあり、A氏の協力を得るため、B氏のところへのお使いを引き受けたが、B氏はB氏で別の頼み事をしてくるため、それを解決しないと最終的にはAさんの協力が得られない、といった場合もある。
内容も、単なるお使いクエストとはわけが違うものが多い。前述のように、アイテムの手に入れ方一つをとっても、いろいろ考えさせられるものもあるし、誰かの利益が他の誰かの不利益につながったり、大義名分のもとに一般市民を虐げるようなクエストもある。それらをどうやってこなしていくか、どう受け止めるかはプレーヤーしだいなのである。
一番最初のクエストとも言える皇帝直属のスパイへの道。様々な情報を抜かりなく聞く必要がある | クエストはすべて自動的にジャーナルに記入されて、後から読み返すことができる | クエストによっては殺人や盗賊退治など、対ヒューマノイドの戦いもあり悩ませれれる |
■ とことんリアルで広大な世界
ゲームを始めて、暗い船から出た始めての景色がこれ。あまりの美しさに度肝を抜かれる |
一人称視点のプレーヤーが旅をするVvardenfellという大きな島(でも大陸ぐらいの感覚)は半端でない広さで、しかも、その隅々まで手抜かりなく作りこんである。ひたすら歩きぬいて、実際に目で確認しながらの大陸横断も可能だ。
世界には様々な種族のNPCたちが暮らしている。彼らは、近づくと向こうから声をかけてきたりもするし、話し掛ければ様々な情報を教えてくれる。NPCの会話やジャーナルは、ポイントとなる単語がハイパーリンクになっていて、WEBを閲覧するときのような感覚で、いろんな情報をゲットできるのも素晴らしい。
と、ここまでは当たり前としても、このゲームがすごいのはプレーヤーキャラクタの状態によってあらゆる人々の応対がまるきり変わることだ。例えば、女性キャラクタで街を素っ裸で歩いていたら「Cover yourself! Aer you mad? Have you no decency?(なんか着ろよ! 気でも狂ったのか? 恥ずかしいと思わないの?)」としかられてしまったし、麻薬に相当するアイテムを持っていて、商店でアイテム売買を断られることもあった。商店の店員は手持ちの現金に限りがあったり、こちらが売った装備品をその場で着込んだりするのも驚きである。
「Morrowind」の世界は広いだけでなく、実在の生きた世界のように感じられるよう、様々な工夫が凝らされている。人を殺すと犯罪になるが、相手から切りかかったのであればお咎めなしといったところや、知られなければ盗みもOKといったあたりも自由度が高く感じる要素だ。一週間ゲームしっぱなしであちこち歩きまくっても、まだ全体の1%も見届けていない気がするゲーム世界である。
困っている人を助けるといいことがあるのは、他のゲームと一緒だが、それの依頼が誰にとっての利益になるかも考えなくてはならない | 世界には様々な種族や勢力が存在しており、各自の勢力圏などを形成している | 風のそよぎや水の冷たさまで感じられそうな世界の雰囲気がたまらない |
各地に大量にある本はきちんと内容が書き込まれている。中にはスキルがあがるものも | 店の中の薄暗い雰囲気などもよく表現されている | 地域によってまるきり異なる建物や風景も素敵 |
世界が広いため、乗り物などを利用して移動することもできる | 街は、巨大な建物がそびえる巨大都市から、ひなびた田舎町まで様々 | 道々には看板が出ていて、近づいてカーソルを合わせると近くの街の名が表示される |
■ グラフィックも素晴らしい
ゲームが始まった最初は、ゴタゴタした船倉の薄暗い場所から始まるのだが、一歩外に踏み出すと、途端にパアッと広々とした外の風景が目に飛び込んでくる。「Morrowind」のグラフィックは素晴らしいの一言である。細かく見てしまうと、樹木の表現などは「Asheron's Call2」のように枝が一本一本なびくようなもの(参照記事)と比べると見劣りするが、それでも全体的には非常に素晴らしい効果を上げている。どんな場所でスクリーンショットを撮っても絵になるのは、「Ultima IX」以来だ。
特に水の表現が秀逸で、「Wizardry」にしろ「Might & Magic」にしろ、最近の一人称視点シングルRPGのグラフィックは、未消化の印象が強かっただけに、「Morrowind」のグラフィックは非常にがんばってる姿勢が伝わってきて好印象だ。
「Morrowind」の世界では、ゆっくりと時が流れて朝焼け、昼、夕焼け、夜という風に空が変化していく。横殴りの風が吹いたり、雷の鳴るどしゃぶりがあったり、からっとした晴れやどんよりした曇りもある。天候や時間による変化がバラエティに富んでいるのも、臨場感のある冒険に貢献している。
ゲームの解像度は最高で1,600×1,200ドットまで上げられ、リアルタイムシャドウや背景表示の深度なども設定できる。筆者のマシンスペック(Athlon 1GHz、Radeon8500、メモリ640MB)で1,600×1,200ドット表示でプレイしたところ、当初は「かなり重いなあ」と思ったのだが、単にキャラクタの身体能力が低くて歩くのが遅いだけであった。多少マウスの反応は悪いが、リアルタイムシャドウや背景深度を最高にしてもほどほどにプレイできた。このゲームはグラフィックがかなり肝なので、ぜひ高スペックなマシンで遊んでほしい。
どこを撮っても絵になるので、新しい街に着くと観光にでも来たかのように画面を撮りまくってしまった。水の中に入ると視界がにごって青くなるなど、細かい部分でのフォローも大きい |
■ 稀代のシングルRPGをプレイすべし
誰でも手軽に作れるわけではないが、公式サイトにはツールの使い方が目的別に細かく記載されている |
公式サイトでは公式プラグインがひとつ発表されていて、これを導入すれば、酒場のNPCが新たなアクションなどを行なえるようになっている。また、海外ではすでにMODを集めたサイトなども登場しており、キャラクタの顔を変更したり、さまざまな要素を詰め込んだMODが数多く存在する。
MMORPGの場合はパッチで自動的にゲーム内容がアップグレードされる場合が多いが、シングルプレイRPGでこういう風に、ゲームの拡張性が約束されているのは珍しい。プレーヤー自作用のツールというと、最近のRPGでは「Dungeon Siege」やE3にも出展されていた「Never Winter Nights」などが思い出される。プレーヤーがゲームに手を加えるというと真っ先にFPS系のMOD類などが浮かぶが、これからは、RPGでも作って参加するという選択肢が珍しくなくなるのかもしれない。
ところで、いろいろとお勧め要素ばかりを紹介してきたので、不満点を探そうとしたのだが、これといった欠点は見あたらない。ささいなことでは、植物のグラフィック表現がややパンチ不足なのと、キャラクタの着せ替えが前作ほどバリエーションがないこと、インベントリー画面でのキャラクタが小さいことなどが気になった。
また、クエストジャーナルと未消化クエストの一覧性が低かったり、スキルやレベルなどのキャラクタ育成に関しても、もうすこしゲーム初心者にもとっつきやすくなるようなシステムか、もしくは、チュートリアルなどがほしかったかもしれない。会話などのウィンドウを右クリックで消せないのもやや不満だった。
だが、ゲームをプレイしていると、そういった欠点はどこかに押し流されてしまうほど「Morrowind」にはCRPGの楽しさが詰まっている。この広い世界を旅できるのに何の文句があろうか。何百というクエストと街とダンジョンとNPCが広い大陸に散らばっている、手抜きのない世界の広さには脱帽するだけだ。
戦闘やクエストでキャラクタを成長させていって、と書くとありきたりなRPGのように思えるかもしれないが、このゲームの一番のポイントは「世界を旅しているという臨場感」。シングルプレイRPGではなかなか得がたいリアルな冒険感が、このゲームでは驚くほど自然に演出されている。
このゲームを始めた瞬間、プレーヤーは自分が何かとてつもなく壮大な物語の中へ、それも主人公として放り込まれたことを知るだろう。
(c) 2002 Bethesda Softworks Inc
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■ 今週の気になる直輸入ソフト番外編
今週は米ロサンゼルスで開催されたE3への出張中に現地で見かけたソフトを紹介。タイミング的にはちょうど今頃、日本の輸入ショップに入荷された感じだ。今回出かけたのは、ユニバーサルスタジオから程近い、BEST BUYという量販店のAtwater Village店だ。量販店の場合、棚の担当者の熱意と知識によって大幅に品揃えが変わってしまうわけだが、ここAtwater Village店は今ひとつやる気のない棚であった。
同じロサンゼルスであれば、Culver City店のほうが品揃えがいいかもしれない。ただし、Atwater Village店も新作などはきちんと並んでおり、発売されたばかりの「Morrowind」などもコレクターズエディションとノーマル版とが並んでいた。また、E3滞在期間中には「Grand Theft Auto III」と「Soldier of Fortune 2」というビッグタイトル2本が発売された。
道行く人から車を強奪しながらミッションをクリアしていく、バイオレンスアクションゲーム。PS2版は400万本以上の売上を記録し、大変話題になったタイトルだ。銃やバットを片手に暴力を振るいながら、都会の街中で続々と犯罪を犯して、悪者としてのし上がっていくという作品ではあるが、犯罪行為を通報されて警察が駆けつけたりと決してやりたい放題ではないリアルさがある。日本では日本語マニュアルつき英語版(6,980円)が6月にズーから発売される予定だ。
(c) 2002 Rockstar Games, Inc. Rockstar Games and the Rockstar Games logo are registered trademarks of Take-Two Interactive Software, Inc. All other trademarks and trade names are properties of their respective owners. All Rights Reserved.
昨年の米同時多発テロ事件以来、クローズアップされることが多い職業となった消防士の活躍を題材にしたアクションゲームだ。Activision Valueからの発売。火事の現場に赴き、消火活動を行なって家屋に取り残された人々を助けることになる。
(c)1999-2002 Activision, Inc.
とことん凄惨な戦闘模様が注目され、一躍ビッグタイトルに名をつらねたFPSの最新作。体の各所に細かく設定されたダメージマッピングとそれらを攻撃したときのエグいまでの演出は健在だ。実在の武器とコロンビアやスイス、香港といった実在の場所を元にした戦闘フィールドが、プレーヤーにリアルな興奮と恐怖を呼び起こす。
Soldier of Fortune(R) II: Double Helix (C) 2001 Activision, Inc. Developed by Raven Software Corporation. Published and distributed by Activision, Inc. Activision(R) is a registered trademark of Activision, Inc. Soldier of Fortune(R) is a registered trademark of Omega Group, Ltd. This product contains software technology licensed from Id Software, Inc.("Id Technology"). Id Technology (c) 1999-2001 Id Software, Inc. All rights reserved. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.
(2002年5月30日)
[Reported by 西尾ゆき]
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