アメリカでは「スター・ウォーズ」と並んで人気が高いSFテレビドラマシリーズ「スター・トレック」。これまで「スター・トレック」を題材にした数多くのゲームが登場したが、今回紹介する「Star Trek: Bridge Commander」は、プレーヤーが艦長となって、部下にリアルタイムで指示を与えながらさまざまな任務をこなしていくというもの。まるで、自分がドラマの主人公になったような気分が味わえるスペースシミュレーションだ。新スター・トレック(「The Next Generation」)の時代を題材にしており、ピカード艦長やデータ少佐も登場してプレーヤーを手助けしてくれる、スタートレックファンには必携の内容となっている。 |
■ 主役は艦長席にいるプレーヤー
最初に乗るGalaxy級のU.S.S. DAUNTLESS“NCC-71879”。自分の船だと思うとワクワクしてしまう |
スキンヘッドのシルエットがゲームのマニュアルやパッケージにもデザインされているピカード艦長やアンドロイドのデータ少佐、クリンゴン人のウォーフ中尉や副長のライカー中佐など魅力あふれる登場人物がたくさん登場し、ドラマとしてもSF作品としてもクオリティが高く、初代に劣らぬ人気を保っている。日本でも地上波で長い間放映されていたので知っている人が多いのではないだろうか。
さて、今回紹介する「Star Trek: Bridge Commander」はこの新スター・トレック(The Next Generation)の時代を舞台にしたスペースアドベンチャーシミュレーションだ。どうもまだるっこしいジャンル名になってしまったが、このゲームはドラマをそのまま立体化してしまったような内容で、プレーヤーは宇宙船の艦長となり、ブリッジ(艦橋)で臨機応変に部下に指示を与えながら調査や外交、戦闘などの任務を行なっていくというもの。
プレーヤー自身が頭を使って解決しなくてはならない場面も多く、それらがリアルタイムでどんどん進んでいくために臨場感たっぷりのゲームとなっている。ディープなファンでなくても楽しめるので、スタートレックを見たことがあるならば、ぜひチャレンジしてもらいたい。
スクリーンを向いた艦長席からクルー達に様々な指示をだして船を操作し、連邦の任務をこなしていく | 激しい戦闘。フェイザー砲が飛び交う中、状況をよく判断して命令を出していかねばならない | エンジンを壊された宇宙船が目の前でアステロイドベルトに突っ込みかかっている。君ならここでどうする……!? |
■ クルー達に命令することで宇宙船が動く
横を向いて副長のサッフィーをクリック。すると命令のためのメニューが表示される |
アドミラル(提督)から調査などの命令を受けて現場の惑星に向かい、何か問題があったらそれを解決することでゲームが進んでいく。一つの任務を終えると別の任務開始の糸口となり、ドラマの中のように次々と新しい事件が起こって息つく暇がない。
船を移動させたり敵を攻撃したりといった各種の行動は、ブリッジの艦長席に座り、周りの席にいるクルーたちを見回して担当者をクリックし、適宜メニューの項目を選択して指示を出すようになっている。
ブリッジ内のクルーにはそれぞれ役割があり、例えば、別の惑星エリアに行きたい場合は、操舵担当をクリックしてメニューを表示させ、Set Courseでコースを設定、Warpで次のエリアへワープするという具合だ。戦闘の場合は担当者にどの船を攻撃するか命令し、辺り一帯を調べたいときは調査担当の科学士官にエリアのスキャンを命じる。こういった指示を艦長席に座った視点から行なうため非常に臨場感がある。やっていることはメニューの選択・決定のはずなのに、横を見たり振り返ったりしながら、忙しくまわりの人間に命令しているような気分になれるのがポイントだ。
ゲーム中の基本視点は、プレーヤーが艦長席に座った状態のもので、そこで前述のようにブリッジを見回してクルーたちに指示を与える。画面視点はブリッジ内/外とを自由に切り替えられ、自ら手動で操船する事もできる。通常は操舵の担当者にポイントポイントでの移動を命じ、ワープやポイントナビゲーションなどを行なう事になる。また、クルー一人一人にはショートカットキーが割り振られているので、素早く行動したい場合は「F5キーで機関担当を呼び出して、シールドのパワーをアップ」といった具合に操作できるし、ブリッジ内ではない船外視点の際も、ショートカットキーを使えばダイレクトに各種操作を行なえる。
基本となるのは、スクリーンを正面に見たこの視点。前方左に操舵のキスカが、右には戦闘担当のフェリックスがいる | 各クルーを呼び出す事で船の現在の状況も把握できる。画面では戦闘で壊れた箇所の修理の優先度が表示されている | 操作はほぼクルー達が担当してくれるので、アクションゲームが苦手でも問題ない |
■ 任務を共にする、頼りになる部下達
「Star Trek: Bridge Commander」はファンを楽しませようとする工夫がいろいろあって、マニュアルには各クルーの履歴や士官学校でのクラス、これまで勤務した船の上官からの推薦メッセージが掲載されているほか、制服グラフィックが所属系統によってきちんと色分けされている。ミッションによっては各クルーのモノローグが挿入される事もあり、それぞれの個性を際立たせるよう配慮されているのがよくわかる。キャラクタがたつことで、ドラマの中のワンシーンにいるような気分が際立つというわけだ。
■ 的確な判断と素早い行動が求められる任務
「Star Trek: Bridge Commander」は任務を遂行していくことでストーリーが進んでいく。目的や内容は様々で、コロニーの周りに漂っている瓦礫を破壊して安全を確保したり、物資を届けたりするといった簡単なものから、2種族間の戦闘に割ってはいるものもあったりとバラエティに富んでいる。しかも、これまでのスペースシューティングとは異なって、ただ闇雲に敵を攻撃するのではなく、きちんとした状況把握をした上での行動が重要だ。敵対する勢力であっても助けなくてはならないことがあるし、相手に見つからないよう全てのパワーを切って小惑星の影に身を潜める事もある。自分が今、何を求められているのかを瞬時に判断する必要があるのだ。しかも、任務遂行に失敗するとゲームオーバーとなり、ミッションの初めからやり直しとなってしまう。
たとえばエピソード2にはこんなミッションがある。パトロール中に怪しげな宇宙船が3隻集まっているのだが、間にあるガス惑星が邪魔をして彼らがどんな通信をやり取りしているのかがわからない。だが、ただ近づいていっただけでは彼らが気づいてしまい、なぜか3隻のうちの1隻を攻撃して壊し、逃げ去ってしまう。こうなっては任務失敗でゲームオーバーだ。ここでの正解は、相手に気づかれずに話を盗み聞きするため、距離を保ったまま惑星の影から出て、センサーのパワーをMAXにすることで音声だけを捉えること。クルーたちのサジェスチョンはあるものの、自力でこれだけのことを思いついてやり遂げると、自分で自分に感動したりもする。
また同じエピソードでは、密談が終わった後に残った船に近づくとワープして逃げようとしてしまう。撃ち落してしまっては何が起こったのかを詳しく知る事はできないのだが、そこでどうするか、ということがまたもや艦長の判断にゆだねられる。ここでは、相手の船のワープ装置だけを壊すよう指示をだして逃げるのを防ぎ、話しを聞きだすのが正解。このように、任務の内容は一度として同じものはないし、またそれまでの経験を生かした的確な判断や指示が求められるのである。中には、なかなか頭を悩ませられるものもあるが、ひとつひとつ自分で結果を導き出していくのは、本当にゲームの中の世界で行動しているような臨場感を与えてくれ、夢中になってしまう。
初めのうちはピカード艦長が新米艦長のプレーヤーに船の操作や任務の遂行の仕方を教えてくれる | ロミュラン、フェレンギ人、カーデシア人などなど、さまざまな異星人との出会いが待っている | アステロイド・フィールドの中をゆっくりとナビゲーションシステムを利用して進んでいく |
カーデシア人と謎の異星人が手を組んで、クリンゴンやロミュランと争い始めたため、背後にある謎を追求しなくてはならない | 任務を遂行して実績ができたので、Sovereign級に乗り換えることに。ブリッジ内も広くて立派だ | 任務によってはピカード艦長率いるエンタープライズ号との共同作戦もある |
■ シューティングが苦手でも安心な戦闘
指示出しはリアルタイムながら、戦闘自体は半オートで操作でき、攻撃する相手を部下に指定するだけで自動的に攻撃してくれる。その間の操舵もすべて部下に任せることができるのでシューティングが苦手な人でも安心だ。もちろん、マニュアル操作での攻撃もできるが、艦の動き方がゆっくりなため、普通のシューティングとは操作感覚が少し違う。
中でも重要なのが宇宙船のシールドで、相手の弾を素早く避けるのではなく、艦の向きを変えてまだ破られていないシールドで相手の攻撃を受けつつ、ターゲットを撃つといった具合だ。こういった艦の向きの変更や敵の機体の一部分だけの攻撃、相手との距離関係の指定などなどは、指示さえすればすべて士官に任せられるので、無理にマニュアル操作にして戦うよりは、艦長気分で命令をだすほうがしっくりくるようになっている。
カーデシアのガロア級との激しい戦い。ダメージを受けた箇所は表示され適宜修理されていく | 巨大なシップヤードとの戦闘。相手のセンサーを壊して攻撃を封じ込め、パワープラントを破壊して一挙に爆破させる | 激しい攻撃にあってダメージを受け続けると、艦内でも火花が飛び、クルー達も体が振り回される |
■ ファンが嬉しくなれる要素もいっぱい
データ少佐登場! いつもの口調でプレーヤーに語りかけてくれる |
グラフィックまわりはやや粗いのだが(キャラクタの口の動きはテクスチャが切り替わるだけ)、全体的にテレビシリーズの映像の雰囲気を非常に良く捉えているのでアップにならない限り、それ程気にならないだろう。
また、何といっても嬉しいのはピカード艦長とデータ少佐が登場する点。声をあてているのもピカード役の俳優パトリック・スチュワートとデータ役のブレント・スパイナーなので、プレーヤーは本物(?)のピカード艦長と対等の立場にたって任務を遂行できるというわけだ。その上、データ少佐が自分の部下になるのだからファンにとってはたまらない。メニュー周りのデザインもすべてLCARS(スタートレックに出てくるコンピュータシステム)風なのもいい。
ただし、このゲーム、英語の壁はやや厚い。字幕を出せるのは嬉しいのだが、とにかくキャラクタ同士の会話が容赦なく進んでいくし、「攻撃を受けています!」といったクルーたちの報告もびしびしと入ってくる。ゲーム中は字幕を見ながらしゃべりを必死に聞くという感じだ。また、ミッション攻略の方法やヒントがさりげなく会話に織り込まれている上、スタートレック用語やSF的な用語が登場する事も多く、英語が苦手な人はもちろんのこと、ある程度英語が出来る人でもそれほどSFに詳しくない人は戸惑うだろう。だが、会話の内容自体はミッションログとしていつでも閲覧できるので、行動する前に落ち着いてじっくり読み返せば困ることはないはずだ。
「スタートレック」を題材にしたゲームは数あれど、ドラマの雰囲気を臨場感強く再現しているこのゲームはピカ一の出来。TNG第1シーズンのDVDや秋にアメリカで公開される映画版の最新作「Star Trek: Nemesis」を待つまでの間、このゲームでひと時、艦長気分を味わってみてはどうだろうか。
報酬に釣られて何やら怪しい荷物を運ぼうとしていたフェレンギ人を問い詰める | 会話の内容はミッションログとしてじっくり確認できる | エピソードの始めなどにクルーの語りなどが入って、さらにストーリーを盛り上げる |
(c)2002 Paramount Pictures, Inc. STAR TREK and related elements are trademarks of Paramount Pictures, Inc. All rights Reserved. Totally Games is a registered trademark of Totally Games, Inc. Activision is a registered trademark of Activision, Inc.
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
3月に入って人気シリーズ最新作のリリースが続いているためか、店頭ではシリーズ作品と一緒に並べられたスペースが目に付いた。たとえば「C&C Renegade」の周りにはこれまでのC&Cシリーズが並べられていたり、「Star Trek」の過去作が平台の目立つところに集められていたりするので、思わずひとつふたつと、昔のゲームも手にとってしまいそう。そのほか変わったところでは、LaOXゲーム館にゲームアーツのファンタジーRPG「Grandia II(7,000円)」のPC版パッケージ(もちろん英語版)、MSFS用アドオンである「CoPilot(5,980円)」のFS2002対応版が入荷されていた。
ファンタジーRTSの秀作「Warlord Battlecry」に最新作が登場した。ヒーローユニットを戦闘で成長させながらゲームを進めていくリアルタイムストラテジーなのだが、他のゲームとちょっと違うのはこのヒーローの扱い。実はシングルキャンペーンでじっくり育てたヒーローはシングルでのスカーミッシュはおろかマルチプレイにも持ち越し可能というユニークなシステムを採用しているのだ。
(c)2002 Ubi Soft, Inc. c2000 Strategic Studies Group. All rights reserved. Ubi Soft and the Ubi Soft Entertainment logo are registered trademarks of Ubi Soft, Inc. Warlords Battlecry is a trademark of Strategic Studies Group. All other trademarks are the property of their respective owners.
一介の企業家から身を起こして、一大財閥をつくりあげるのが目的の経営シミュレーション。金儲けにまい進すべく、60種類以上の製品を生産・販売できるほか、開発基金を投入して新しいテクノロジーを開発して独占したりもできる。
(C) 2001 Ubi Soft Entertainment.Ubi Soft and the Ubi Soft Entertainment logo are registered trademarks of Ubi Soft Entertainment. All rights reserved.
(2001年3月20日)
[Reported by 西尾ゆき]
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