経営系や箱庭系育成シミュレーション好きには喝采をもって迎えられたカリブの孤島経営シミュレーション「Tropico」。2月上旬、その拡張セットがついに発売された。「Tropico: Paradise Island」には数多くの新シナリオマップや新建物が収録されている。残念ながら日本語化の可能性は低そうだが、新しい建物やシナリオなどなど、アドオンが実現する新しい楽園の魅力に迫ってみよう。 |
■ カリブの孤島の支配者になるシミュレーション
プレジデンテ(大統領)となり、カリブの島に様々な建物を建てて産業を興し、住民の暮らしを向上させていく |
このゲームは南海の島のプレジデンテ(大統領)になり、観光や産業で儲けながら国民の生活を向上させ、自分もスイスの隠し銀行にちゃっかり預金をしたりできる、ミニ独裁国家育成シミュレーションなのである。プレーヤーは島の中に住居や職場、農場といった住民が暮らしていくための建物を建てていき、作物などの輸出や観光など収入を得、この小さなトロピコ島を盛り立てて、さらに充実した国家に成長させなくてはならない。
このゲームの一番の特徴は、住民キャラクタ一人一人が欲求を持って暮らしているということ。彼らには住居欲や食欲、睡眠欲などが設定されていて、それらのパラメータが低くなると住民全体の幸福度にも影響してくる。そのため、彼らの住居はもちろん、働く場所や病院、教会、レストラン、市場などを作らなくてはならないし、公共施設も必要だ。
彼らが働く場所や各種建物はそれぞれにちゃんと役割と関連をもっていて、たとえば農場を建てると、そこでできた作物を運搬人(これも住民)が市場に運び、そこにお腹が減った別の住民が食料を買いに来るといった具合だ。現実の社会と同じように、それぞれの建物には運営のための住民が必要だし、住民が生活するためにはいろんな種類の建物が必要なのだ。その上、作物や工場でできたものの輸出、観光などで収入を得ないと、お金は増えていかない。必要性を考えながら建物を建てていかないとならない。
また、住民にはそれぞれに支持する派閥(宗教界や知識人、資本主義者、共産主義者などなど)があり、学校をもっと建てろとか軍隊をもっと大きくしろといったそれぞれの派閥の要求にバランスよく答えていかなくてはならない。それぞれの派閥、つまりそれを支持する住民達の欲求を満たすような環境を整えていかないと、住民の幸福度や支配者への尊敬度がさがっていき、クーデターが起こったり、選挙に負けて島を追い出されたりする。
しかも、トロピコ島は米国とソ連という2大国の影響力にはさまれているため、どちらの心証も悪くしないような政治的な配慮が必要とされる(あまり大国への対応が悪いと無条件に征服されてしまう)。一人一人の生きた国民―お腹が減り、職を求め、時には病気になり、時には教会に救いを求め、そして家族を養う―を意識しながら国を“運営”していく、「Tropico」とはそんなゲームなのである。
住民一人一人が生きているのがこのゲームの魅力。職場と住居が離れてると不満をもたれたり、なかなか難しい | グラフィックエンジンもTropicoの特徴の一つだ。ここまでズームアップできる箱庭系ゲームも珍しい |
■ 新しい観光客キャラクタが登場する「Paradise Island」
今回、発売された拡張セット「Paradise Island」は、新しいシナリオマップや新条例が追加されたほか、ランダムマップ用のプレジデンテキャラクタに新しいバックグラウンドが増えたり、新たな観光客キャラクタや建物が増えたりと、従来のTropicoは遊びつくしてしまったファンも、もう一度新鮮な気持ちでプレイできる内容となっている。
これまで、いろいろな職業人や住人の種類があったが、拡張セットでは新しい観光客キャラクタが2つ登場した。それがSpring Break Tourist(学生観光客)とEco tourist(エコツーリスト)だ。この2キャラクタに関連した建物もあり、お金持ち観光客か貧乏観光客かの2種類しかいなかった今までとは異なって、リゾートを作る際もどのへんの客層をターゲットにするか、これまで以上に頭を悩ますことになる。
また、シナリオマップでも「Eco Touristを1年で何人訪れるようにしろ」といったクリア条件のものがあり、新たなセオリーが必要となる、攻略しがいのあるマップが増えている。
Spring Break Tourist 学生観光客 春に来るアメリカの学生達。酒を飲むと暴れるため、ばっちり警察を用意しておかないとならない(3月~4月頃、アメリカでは大学が短いお休み“Spring Break”に入る) |
Eco tourist エコツーリスト 自然を愛する旅行者達。普通の旅行者よりお金を持っているものの一筋縄ではいかない。Nature Preserve(自然保護区)のような自然に関連した観光施設が求められる |
■ 新しい建物は12種類も追加
いくつかの建物が向きを変えて建てられるようになったほか、新たな建物が12種類追加された。また、これまでの遺跡と同じようにマップに最初からある建物で「Colonial Fort(植民地時代の砦)」というのがあるのだが、これは開発によって3通りの建物になり、それぞれ効果が異なるものになる。
それでは、追加になった新しい建物を見てみよう。
Marina マリーナ 海沿いに設置するタイプの建物。観光客のボートツアーや魚釣り用のレジャーボートが係留されている |
Nature Preserve 自然保護区 エコツーリストのためにあるような建物。付近の生態系を壊さないように守りつつ、来場者が自然を楽しめる公園になっている |
Duty Free Shop 免税品店 免税品を販売する土産物屋。店員が3名必要だが観光客9人まで利用できる |
■ 新シナリオマップとランダムイベント
新しいシナリオマップには新キャラクタや建物に絡めたものもあり、従来の「Tropico」を遊び尽くしたプレーヤーでも新鮮な気持ちでチャレンジできる。新シナリオマップは、旧シナリオといっしょくたにメニュー表示されて、一見するとどれが新しいのかわからないのがちょっと不満だったが、内容自体は政治ものあり、生産ものあり、観光ものありとバラエティに富んでいる。
ハリケーンで見る影もない街の様子。苦労して建てた建物も一瞬のうちになくなってしまう |
このランダム“災害&価格上下”イベントの利点は、既存のシナリオをもう一回楽しめるという事だ。難易度がEASYのシナリオマップでも、ランダムイベント度を最大に設定すると、凶悪なまでにクリアしづらいシナリオに早変わりしてしまう。何せ、それまで作った建物が一瞬にして倒壊したり、収入源にしていた輸出作物の価格が暴落したり、一瞬たりとも気が抜けないのだ。もちろん、ランダムマップにも設定できるので、これまで以上に頭をかきむしりながらプレイできる。
ただし、ハリケーンには特殊なグラフィック効果があるのではなく、ある時突然にハリケーンに襲わたというメッセージが出たかと思うと、ズームアウトした島が表示され、植物グラフィックがすうっと減り、そして視点を戻してみると建物の瓦礫の山があるといった具合なのだ。格別「ハリケーンが来た!! 今、来た!」というような驚きや衝撃がないまま、いつのまにか建物が壊れているという感じでちょっと物寂しかった。
今回の拡張セットは、ハッとするような新規さはないものの、新シナリオが大量にあったのは嬉しい。シナリオマップは従来のものより目的と攻略にいたるまでの道筋がやや散漫な印象も受けたが、難易度は十分であり、前作より断然長く遊べる。シナリオマップのメニュー周りを再考してほしいなど細かな不満はあったが、「Tropico」にすでにはまっているプレーヤーは必携の拡張セットには違いない。拡張セットの日本語化も熱烈希望したい。
ちなみに、先日、「Tropico 2: Pirate Cove」のアナウンスがされた。海賊がモチーフということで、どんな内容になるのか期待と不安がいりまじってしまう。次作が出るまでは拡張セットでシナリオマップやランダムマップを繰り返しプレイする日々がまた続きそうだ。
ランダムイベントの難易度はシナリオマップでもランダムマップでも設定可能 | ランダムイベントは悪い事ばかりではない。ハリウッドで我が島の山羊チーズが大評判になったこともある |
(c)2002 Gathering of Developers.
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
LaOXゲーム館で早くも「Command&Conquer Renegade」が発売されていた。3月21日に完全日本語版が出てしまうので微妙だが、いち早く製品版でのマルチプレイをしたい人は思わず買ってしまいそう。この他にも「Tiger Woods PGA Tour 2002」や「Star Trek:Brldge Commander」などの新作がてんこ盛りだった。他店でも順次入荷されるのではないだろうか。OverTopでは韓国のRPG「Magna Carta」が再入荷していたが、今回は修正パッチCDつきバージョンだった。また、欧米で発売された「Nascar Racing 2002」を各店で探したところ、すべて品切れのようだった。
話は変わるが、最近いろいろソフトを買っていて思ったのだが、USA版のソフトパッケージが小さくなってきている。最新のものは一様に19cm×13.3cmの大きさで、中箱もダンボールのトレー状のシンプルなもの、CDやマニュアルを取り出すのも中を抜いて外箱を畳むのもかなり便利になった。何かゲーム業界でパッケージの大きさの規格でも決まったのだろうか。DVDパッケージと同じ大きさのUK版のほうがまだまだスマートな印象だが、これまでの本棚からはみ出すほどデカい箱や、四角でさえない箱を思うとかなり進化している。
リアルストラテジーの有名シリーズ「Command&Conquer」の世界をFPSにしてしまったゲーム。近未来の世界で、GDIのニック・パーカー大尉となり、敵対するNodを壊滅させるため様々な銃器を撃ちまくりながら進んでいく。ゲーム的にFPSとしての緻密さをやや欠いている気もするのだが、大勢で一気に突撃する時の爽快感は高く、乗り物をうまく利用できた時の喜びはなかなか。シングルでもマルチでも、戦場に身を置いている感じが良く出ていて、一人きりで戦っている気がしないのもグッドだ。何より、これまでクォータービューだった世界が、いきなり3Dで目の前に現れた驚きもある。GDIのイエロー、Nodのレッドに彩られた戦車や兵士を立体で見れるだけでも興奮してしまうし、資源を集めてそれをキャッシュに変えて利用するマルチプレイはユニーク。
(c) 2002 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, Command & Conquer, Westwood Studios, EA GAMES and the EA GAMES logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All rights reserved. EA GAMES and Westwood Studios are Electronic Arts brands.
「Star Trek」のネクストジェネレーションを舞台とした、スペースストラテジー。これまでにありがちだったクォータービューなストラテジーなどとは異なって、実際に艦長席から指示を出して戦闘などを行なうというのがミソになっている。攻撃や船の針路、警告レベルなどなどを、同じブリッジ内にいる TACTICAL、HELM、FIRST OFFICER、ENGINEERINGといった船員キャラクタに直接与えるため、臨場感がこれまでの宇宙ものとは格段にあがっているのがポイントだ。戦闘だけでなく、外交や救出任務、惑星探査といったバラエティに富んだミッションが30以上用意されている。
(c) 2002 Paramount Pictures, Inc. STAR TREK and related elements are trademarks of Paramount Pictures, Inc. All rights Reserved. Totally Games is a registered trademark of Totally Games, Inc. Activision is a registered trademark of Activision, Inc.
Tiger WoodsとなってPGAツアーを戦うゴルフゲーム。ゴルフに詳しくなくてもすぐにプレイできる手軽なゲームシステムで、こだわる人はこだわれるし、詳しくない人はそのまま自動的に選んでもらったグラブと方向でゲームを進めていける。グラフィックが効果的に使われていて、美しくて広々としたゴルフコースが臨場感たっぷりに再現されている。ゴルファー達のモデリングや動作も好ましい。またギャラリーのキャラクタ達もしっかり立体で、一昔前のスポーツゲームにあったようなペラペラなものではないため、臨場感に一役買っている。
(c)2002 EA.com Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.(c)1995-2002, PGA TOUR, Inc. PGA TOUR, SENIOR PGA TOUR and the swinging golfer logo are registered trademarks.
人気シリーズ初の拡張セット。17世紀から18世紀のヨーロッパを舞台にしたリアルタイムストラテジーで、種類も様々なユニットを大量に操作しながら敵と戦い、迫力ある戦闘が楽しめる。拡張セットでは新国家2つや6つの海上ユニット、新キャンペーンなどが投入されているほか、対戦開始時に一定時間は攻め込めない「Peace Time」モードが取り入れられるなど、さらに遊びやすくなっている。この拡張セットは完全日本語版の発売がズーから予定されている。
(c)2000-2001 CDV Software Entertainment AG, and GSC Game World. All Rights Reserved.
ショッピングモール経営をテーマにしたタイクーンもの。プレーヤーはモール内の好きな場所にブティックや飲食店を開きながら、大勢の人でにぎわうショッピングモール作成を目指す。グラフィックがやや古いのと、お店の中のミニミニした感じが今ひとつなのとで、箱庭的にぐっとこないのがちょっと残念。店の位置やその他のアイテムと、来客の増減の関係が今ひとつ希薄で、儲けまっせ~という快感が少ないせいか、プレイしていてもやや低調な感じだ。
(c)2002 Holistic Design Inc.
テーブルゲームのDemon Worldに題材をとったストラテジーシミュレーション。Empire、Dwarve、Orkといった種族を選び、大量のユニットを操って敵対勢力と戦う。12のシングルミッションが用意されており、最大4人でのネット対戦に対応している。
(c)2001 Xicat Interactive, Inc.
(2001年3月6日)
[Reported by 西尾ゆき]
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