シングルプレイ専用のアクションアドベンチャー、しかもFPSではないものというと最近のPCゲームではなかなかお目にかかれないが、今回紹介する「Legacy of Kain: Soul Reaver2」は、まさにそんなタイプの3人称視点アクションゲームだ。基本的なゲームシステムは前作を踏襲しているのだが、操作性やグラフィックはさらにパワーアップしている。爽快なアクションと戦闘、そしてパズルを解いて進んでいくステージの数々は、ポスト「トゥームレイダー」といっても過言ではないだろう。 |
■ 吸血鬼だった主人公が生まれ変わって復讐に立ち上がる
「Legacy of Kain: Soul Reaver2」はシングルプレイ専用のアクションゲームである。プレーヤーは主人公「ラジエル」を操作して、行く手を阻む敵と戦いながら、物質世界・精神世界を行き来してステージの謎を解き、先へ先へと進んでいく。
Legacy of Kainシリーズはそもそも'97年('96年にPS版)に発売されたRPG「Blood Omen: Legacy of Kain」が始まり。これは、吸血鬼となったケインが力を得て世界征服を目指すというダークな世界設定のゲームだったのだが、今回紹介するSoul Reaverシリーズはそのケイン・ストーリーとでもいうべき世界観から展開した新たなる物語である。
邪悪なヴァンパイアであるケインは世界征服のため、ノスゴスの地に自らを中心とした勢力を持っていた。彼には自分の手下であるヴァンパイアが6人おり、自分が身に着けた能力を手下たちに授けることで彼らとの主従関係を築いていた。だが、そのうちの一人であるラジエルは自らの力で新たな能力を手に入れてしまったため、ケインの反感を買い、新しい能力である翼を引き裂かれ、暗闇の底へと落とされてしまう。時は経ち、ケインに対抗するエルダー・ゴッドによって蘇ったラジエルはケインへの復讐を誓い、再びノスゴスの地に降り立った。
と、ここまでが前作でのストーリーで、今回、ラジエルはタイムポータルを作動させてノスゴスの過去へと逃げてしまったケインと対決するため、さらなる追跡をしなくてはならないのである。
ケインに死の湖に落とされたラジエルだが復活し、ケインに復讐し、彼の野望を阻止するために追いかける | 邪悪なヴァンパイアであるケイン。ラジエルが一度は追い詰めたが、タイムポータルを開いて過去に飛んでしまう | 豊富なムービーがゲームを盛り上げる。表情や関節の動きに頂点ブレンディングを上手に利用してるのでキャラクタがなめらかで自然 |
■ 爽快アクションと広がりのあるゲームフィールド
ラジエルでゲーム内を歩きまわる時に操作するキーは、移動とアクションとジャンプ、それに戦闘と視点移動関連だけと非常にシンプル。反対に、ゲームフィールドは非常にバラエティに富んでいるので、水の中をざばざばと泳いでいくかと思えば、高台から高台へジャンプ、破れかかった自らの翼でグライドしたりもする。
ステージとステージの間でローディングは一切ない。ドアを開けて先に進む時にごく短いアニメーションが挿入されるだけ。これが、素晴らしい効果をあげていて、非常に広い場所を絶え間なく進んでいるような気にさせてくれる。
空間の広さを肌で感じられるゲームフィールド。高低差、奥行き共に申し分なし | 精神世界の湖の底での場面。いかにも別世界といった雰囲気がよく演出されている | 建物内部などの装飾もかっちり作ってあって、走り回っているだけでも気持ちいい |
ゲーム中はリングメニューで、ソウル・リーバーの呼び出しやマップの閲覧、世界の切り替えなどを行う |
アタックキーは連打するとコンボ風な動きをするので、うまく決まれば「ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザシュッ!(首を切った音)」という感じ。そして、敵を倒すと魂が漂い出るので、これをにゅうーっと吸い込めば体力が回復する。攻撃には勢いと清々しさがあって、難解なパズルと良い対照になっている。
ラジエルの基本は素手なのだが、敵が落とした武器やステージ内に落ちている武器も手にとれ、剣や大鎌などでザクザクと敵を切りつけることができる。武器を取る時も、それを使用して攻撃する時もすべてアタックキー一発なので、複雑なことは何も考えずに、頭を空っぽにして敵を攻撃していけるのが嬉しい。
また、題名にもある「ソウル・リーバー」という剣がラジエルの右手と一体となっていて、物質世界ではリングメニューから呼び出して装備することができる。これで敵を攻撃した場合、魂を自動的に吸ってくれるのだが、使い続けているとゲージがマックスになってオーバーヒートしてしまい、体力がごっそり削られてしまう。使いどころが難しい武器だが、ゲームが進むにつれて新たな効果が増え、ステージパズルを解く鍵にもなる重要な能力なのだ。
ただし、キーボード&マウスの操作だと、ラジエルを思ったように動かせるまで結構時間がかかる。特に2はもともとプレイステーション 2用に開発されたゲームなので、キーボードでの操作にはどこか無理があるようだ。なので、例えばSMART JOYPADのようなPS用のアナログコントローラーをPCに接続できるアダプタを使用すると快適にアクションを楽しめる。
もちろん、普通のゲームパッドでも十分な操作が行なえるのだが、アナログスティックでの移動はキャラクタとの一体感が高まるのでぜひ一度使用してもらいたい。PS用のコントローラーでプレイする場合、ジャンプとアクションを右手のボタンのどれかに、魂の吸収やオート照準、視点変更をLやRに割り振るのがお勧めだ。
武器によって止めの動きが異なる。大鎌の場合は柄でざっくりと串刺しに、剣の場合は首を切り飛ばす | そして殺した後は魂吸引。口元の布を広げて、ぎゅう~っと吸い寄せる | ソウル・リーバーは武器としてだけでなく、扉の開閉やオーブの点灯などにも使用できる |
■ 物質世界と精神世界とを切り替えながらステージを進む
格子に体をギュウッと押し付けると、そのまま体が向こう側へと押し出される。こういった動きをPCのこちら側にいる人間が感覚的に感じられるあたりが秀逸 |
2つの世界ではできることは異なっていて、物質世界ではドアを開けたり武器を持って戦ったり、スイッチを押したり、水の中を泳いだりできるのだが、精神世界ではそういった肉体的・物質的なアクションはまったくとれない。反対に、精神世界では水を感じることなく湖の底を歩き回ったり、鉄の格子戸を通り抜けたりすることができる。
全く同じ場所での物質世界バージョンと精神世界バージョン。精神世界だとすべてがゆがんだように表現されているのが良くわかる |
ラジエルは精神世界にはいつでもシフトできるが、物質世界へは特定のポイント上で、しかも体力ゲージが満タンの時しか戻れない。そのため、精神世界・物質世界の切り替え方がステージ攻略のポイントとなっている。
例えば、ステージ内を進んでいると、突然、鉄の落とし格子に行く手をさえぎられることがある。こんな時は、物質世界と精神世界を切り替えることで先に進む。精神世界ではラジエルの体はスピリチュアルなものなので、鉄の格子に体を押しつけると、むにょーんと向こう側へ通り抜けてしまう。格子を通り抜けて、その先にあるポイントで物質世界に戻れば、また先に進めるというわけなのだ。
精神世界から物質世界に戻る時の連続画面。何もかもゆがんでいた風景が急にまともになる様子は「ああ、物質世界に戻った!」という気持ちになって感動 |
■ 海外発のアクションだが内容、グラフィック共にばっちり
全体的に、非常に力を入れて作られているゲームなのだが、不満点もいくつかある。まず第一にムービーが飛ばせないこと。ゲーム世界を感じ、ストーリーを把握するためにもカットシーンが挿入されるのは喜ばしいのだが、頻繁に挿入されるムービーが長く、しかも飛ばせないとなると、だんだんうっとうしくなってしまう。2週目以降のゲームでは、それをさら強く感じるだろう。
もうひとつはセーブポイントが限られていること。ゲーム難易度的な問題というより、セーブポイントとポイントの間が長くて、思い立った時にゲームを終了できないのにじりじりした。また、キャプチャーツールの併用やマシンの具合もあるのだが、時々ゲームがさっくり落ち、長いムービーを含めて一からやり直すことが何度かあった。安定した動作の家庭用ゲーム機と違って、PCはいつ何の理由でマシンがフリーズするかわからないので、次作ではノーマルモードだとどこでもセーブできて、ハードモードだとセーブが限られているといったような工夫をしてもらいたい。
残りもうひとつは、ゲームバランスがややパズルよりなこと。もちろん、謎解き重視派には面白さのポイントになる点で、難しければ難しいほどいいという人にとってこれ程お勧めなゲームもないし、アクション部分も上手にパズルに組み込まれているのだが、高低差のある広いゲームフィールドとテンポのいいアクションが爽快なだけに、それを生かしたアクロバティックな部分をもっともっと味わいたかったなあと思ったわけである。
いくつか不満点は述べたが「Legacy of Kain: Soul Reaver2」は、駄作が多い海外アクションの中にあって、全力で遊べるゲームだ。ステージ内に存在する謎に頭を悩ませ、体を使ってそれを解き、そして敵を叩きのめして魂を吸い込む。それぞれに魅力あるアクションパートのバランスが非常に良いのと、ゲームフィールドが広く美しく、そして長いローディングがないのとで、ストレスなく遊び続けられる。謎を解き、その先には何があるんだろうと思わせてくれる演出がたっぷりあるのもいい。
本作は残念ながら完全日本語版のPC版は発売されないようだが、マルチプレイに食傷気味な人、トゥームレイダーシリーズが好きだった人がのんびりプレイするのに最適なゲームである。のんびりと言いつつ、なかなか熱中してしまうはずなので、ぜひDemo版からチャレンジしてほしい。
(c)2001 Crystal Dynamics, Inc. Soul Reaver, Crystal Dynamics and the Crystal Dynamics logo are trademarks of Crystal Dynamics, Inc. Eidos, Eidos Interactive and the Eidos Interactive logo are trademarks of the Eidos groupe of companies. All rights reserved.
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
日本語版発売間近ではあるが各店で「Wizardry8」の英語版が入荷されていた(実売価格:7,200円~8,400円)。今秋はそれほどビッグなタイトルはなかったものの、「Gorasal」や「S.W.I.N.E」といったヨーロッパ系ディベロッパのものが「Comanche4」などと共にOvertop店頭にたくさん並んでいた。その中の一つ、「Gorasul: Legacy of the Dragon」は、デンマークのメーカーSilver Styleが開発、JoWoodが発売しているオーソドックスなタイプのファンタジーRPG。4人パーティで各地を冒険し、クエストを解決したり戦闘を行ないながらキャラクタを成長させストーリーを進めていく。「Baldur's Gate」シリーズに似た、わりとありきたりなゲームシステムなのでRPGに慣れている人には今ひとつパンチに欠けるかも。個人的にJoWoodの販売しているゲームは垢抜けないものが多いので、デモなどで試してから購入することをお勧めしておきたい。
武装した豚か、それに対抗するウサギとなってユニットを操り戦う、戦闘メインのストラテジー。ユーモラスさとリアルさがうまくブレンドされたグラフィックが特徴だ。最近はヨーロッパ系のゲームはひょいひょいとこういったレベルの高いグラフィックのものがでてくるので油断がならない。
(C) 2001 Stormregion Ltd.
店頭にあったのをすっかり見逃していたので今頃ご紹介。こちらもFishtankが発売しているストラテジーゲーム。美しい3Dグラフィック及び、ターンベースストラテジーとカードゲームが融合したユニークなゲームシステムがうりだ。マジック・ザ・ギャザリングが立体になったような戦闘が特徴的で、プレーヤー操るヒーローが召喚スペルその他を繰り出して相手ヒーローを攻撃する。
(C) 2001 Nival Interactive. All rights reserved.
(2001年12月18日)
[Reported by 西尾ゆき]
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