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【連載第4回】 気になる海外ゲームをピックアップ


西尾ゆきの海外ゲームレポート

CRPGの元祖はどんな風に進化を遂げたのか?
ようやく発売されたWizardryシリーズ最新作「Wizardry8」

 「Wizardry」シリーズはPCゲーマーに愛され注目され続けてきたCRPGの定番タイトルだ。'81年に登場して以来、あらゆるマシン、あらゆる家庭用ゲーム機に移植され、さらに日本では国内特有のWizファンを生み出したファミコン版やゲームボーイ版の登場なども手伝って、一時代を築いたシリーズである。だが、多方面で古参の面目躍如的な新作ソフトを発表している「Ultima」や「Might&Magic」とは違い、「Wizardry」は第7作以降、出来の悪いアドベンチャー「Wizardry Nemesis」以外に何の音沙汰もなかった。しかし、2001年11月15日、長い開発期間と北米パブリッシャーの倒産などの障害を越えて、ついに最新作「Wizardry8」が発売された。しかも、株式会社ローカスから12月20日に完全日本語版も発売される予定であるという。今回は先週ラスベガスで入手した英語版で、その内容を詳しくお伝えしよう。

パーティを作って冒険をするシングル3DRPG

パーティーが最初に立ち寄るARNIKA
 Wizardry8は自分が職業や基礎能力を設定したキャラクタ6人でパーティを組み、戦闘などで経験値を上げて成長させ、ストーリーを進めていくシングルプレイ3DRPGだ。3Dフィールド上を歩きまわり、モンスターと戦いながら、突発的なイベントや探求を経てストーリーを進めていく、オーソドックスなタイプのRPGである。

 冒険の舞台となるのは広々とした大地であり、1カ所のダンジョンに繰り返し潜るものではない。ゲーム世界の中を先へ先へと進んでいき、その途中にあるダンジョンや街に出入りするといった感じだ。戦闘は、フィールド上を歩いていると、3Dグラフィックで描かれたモンスターが徐々に近寄ってき、一定距離まで近づくと、自動的にターン制の戦闘が始まるようになっている。

 視点は完全に1人称であり、戦闘時やイベント時には適宜、画面の両側にあるキャラクタバーからキャラクタの顔グラフィックスが出たり引っ込んだりするという、ユニークなシステムを採用している。ゲームを開始した当初は6人のキャラクタによるパーティなのだが、ゲームを進めていくと、仲間になるキャラクタがおり、最大8人パーティとなる。

 「Wizardry」の楽しさはなんといっても、キャラクタを徐々に成長させていくことにある。自分が細部まで設定し、レベルアップのたびにアレコレ考えながら能力値へのポイントを割り振っていくキャラクタには非常に愛着がわくのだ。通常、RPGとしての魅力というと自由度の高さやストーリー性があげられるが、Wizardryの魅力はひとえに戦闘とキャラクタの成長であり、それゆえ、話がひどくて続ける気が起きないといったプレイモチベーションの低下がなく、キャラクタの成長を楽しみながら長くプレイし続けられる。

3Dグラフィックス自体は何世代か前の印象だが、それでも迫力のある戦闘が楽しめるのは、カメラ視点が全自動で変更されることによる

前作から続く、宇宙もからんだストーリー展開

 今回のストーリーは「Wizardry7」の後日談にあたる。Dark Savantが“Astral Dominae”という古代の秘宝を手に入れてしまい、それをT'RangとUmpaniの2種族、そしてプレーヤー自身が追いかけているという設定だ。Astral Dominaeが作られた惑星Dominusを舞台に、Dark Savantが更なる力を手に入れるのを阻止するべく、冒険を進めなくてはならない。

 中世ファンタジー的世界を崩さない「Ultima」や、ゲーム終盤にさりげなく宇宙人や宇宙船がでてくる「Might&Magic」などと違い、「Wizardry」シリーズ中期以降の舞台設定には全編に渡ってSF的要素が色濃い。前作、「Wizardry 7: Crusaders of the Dark Savant」からのストーリーをひきずる今作「Wizardry8」でもそれは健在で、中世ファンタジー的なものとSF的、さらにいわゆるウィザードリー的なものとがまざった、なんとも言えないゲーム世界になっている。武器も、クロスボウやプレートメイルといったファンタジーRPGでおなじみのものがあるかと思えば、刀や手裏剣もあり、ブラスターといったような近未来兵器も登場する。

方眼紙とマッピングと和洋折衷の不思議ワールドというのが古来Wizファンの求めるところだが、シングルRPGでSF的な世界観が入るのもそれなりに斬新

キャラクタのProfession(クラス)は15種類

 このゲームはキャラクタとパーティメイキングがゲームを進めていく上での大きなポイントである。というのも、どれだけ使いつづける気の起こるキャラクタ、そしてパーティを作ったかということが、ゲームを楽しく続けられるかどうかの土台になるからだ。

 キャラクタは、クラスとそれに相性のある種族、そして性別を組み合わせて作成することになる。例えば戦士を作ろうとする場合、人間戦士とドワーフ戦士では能力値に割り振れるボーナスポイントが異なってくるため、どんな種族でどんなProfessionを選ぶかが重要になってくる。

 作成の手順としては、

 (1) Professionを決める
 (2) 種族を決める
 (3) 性別を決める
 (4) 種族とProfessionの組み合わせで得たボーナスポイントをスキルや能力値に割り振る
 (5) 顔グラフィックスと声、名前と性格を決める

 こうして作成したキャラクタの中から6人を選んでパーティを作ることになる。Wizardryには前衛後衛の概念と武器のレンジ設定があるので、肉弾戦に強いキャラ3人を前に、魔法系キャラや盗賊系キャラは後ろにというのが一般的だ。このうち、どのProfessionのキャラを3つ選ぶかが問題になってくるわけで、魔法が全く使えない戦士3人を選ぶのと、魔法も扱えるけど武器に制限のあるロードやヴァルキリーをまぜるのとでは戦闘の時の戦い具合が変わってくるのだ。

 これは後衛にも強く言えることで、専門職であるメイジをいれるか、それとも、成長は遅くとも魔法が4系統おぼえられるビショップをもってくるかということでも冒険の進み具合が変わるのである。

 キャラクタのスキルは、戦闘などによって自動的に成長するが、レベルアップ時にはまとまったボーナスポイントが手に入り、自分でそれを割り振れる。また、キャラクタが成長したら、好きな時にキャラクタのProfessionを変更することもできる。ただし、それには変更先のProfessionに必要な能力値を持っていることが条件だ。

ボーナスポイントは種族とProfession間の相性で決まるため、何回もキャラクタを作り直すといった手間は必要ない反面、不確定要素がないのは少し寂しい気もする

快適で飽きのこない戦闘

 3Dフィールド上を歩いている時に、モンスターとの距離が一定以下の近さになると、自動的にターン制の戦闘に切り替る。歩いていて出会ったモンスターとそのまま戦闘になる自然さと、従来の「Wizardry」同様にじっくりと戦えるターン制の戦闘がよく融合している。「Might&Magic」も似たようなシステムを取っているが、「Wizardry」は強制的にターン制になるところが、迷いが無くてプレイしやすい。

 戦闘はプレーヤーが各キャラクタに何と戦えとか、魔法を使えといったことをパネルをクリックして指示を出し、ターンを進めることで行なわれる。だが、戦闘開始時は全員武器攻撃のパネルがすでに選択されていて、ターンごとに変えたいところだけパネルから選びなおすという感じ。省ける動作は省いてあり、すべての行動にいちいちクリック&指示をする必要がなく快適だ。

 また、誰が何と戦うといった指示を終えた後にチェックボタンを押すとターンが進むようになっているのだが、戦闘中、さらにそのボタンを押すと自動進行モードになり、いちいちターンの終了・開始確認をせずとも、勝手に戦闘を進めてくれるようになっている。「何もしなくてもサクサクとスピーディに戦闘してくれる」というのがかなり気楽。自動進行と手動進行をいつでも切り替えられるのも良い。

 戦闘中のモンスターはなかなか頭が良くて距離をつめたり、反対に遠ざかって遠距離攻撃に徹することもある。こんな時は、プレーヤー側も移動。画面右下には、歩くボタンが用意されており、これを押すと、ターンを消費して歩いたり駆け寄って距離を調整することができる。

 一方、呪文の使用方法も変わっていて、自分が習得した呪文を戦闘で使うときは、どのくらいの強さ(消費MP)で唱えるのかを、自分で選ぶことができる。やや弱めに攻撃呪文を繰り返し唱えたり、反対に、一気に最大出力で呪文を唱えたりもできるのだ。面倒といえば面倒なのだが、きっかり詠唱可能数が決まっていた時よりは融通が利く。

 また、戦闘で何が一番強烈だったかというと、カメラがアクションに入ったキャラや敵に、自動的にパンすること。これが非常に躍動感がある。後々、カメラの視点移動がうっとおしくなった場合、オプションで変更することもできるのも親切だ。

 戦闘時間や戦闘アニメーションが長いRPGというのはそれだけで嫌気がさしてしまうものだが、操作がしやすいのと、戦闘への指示が細かく出せたり適度に放置できたりと戦いやすく、ストレス無くプレイし続けることができる。「Wizardry8」の戦闘はスピーディで躍動感があって、久しぶりに気楽で遊びやすいRPGの戦闘だった。

大量の敵が出現することが多いので複数への攻撃魔法が役に立つ。敵の頭の上の▼で、攻撃を予定しているキャラを色分け表示 状態異常も頭の上やパラメーター横にアイコンの形で表示されるので見やすい NPCと敵モンスターが争うことも。ちなみに頭の上の数字がダメージ値

ダンジョンや街などにある宝箱は盗賊系のスキルや魔法で鑑定し、罠を解除しなければならない

不満点もちらほらとあるが、「Wizardry」としての楽しみは健在

 不満点を上げるとすれば、アイテム画面での操作性・一覧性の悪さ。今回も未確認アイテムがあるのだが、操作性の悪さからアイテム装備や売買などで面倒くささの方が先に起ち、鑑定した時の喜びが半減していた。アイテム以外でも、戦闘時でのサクサクした操作感と比べると煩雑でもたつく部分が多いので、もっとシステム的につめてすっきりとした操作体系にしてほしかった。

 また、今作では人の暮らす街が登場するのだが、例えばUltima Ascensionなどに比べると、人の気配や人の生活臭がしない街という印象を受ける。NPCが巡回していたりもするのだが、機械か人造人間が歩いているみたいで、どうも人間臭さが無い。これはゲーム全体を通して受ける無機質でいかにも作り物めいた印象にもつながるものなので、「Wizardry9」以降では、もっとNPCや世界観にリアリティを持たせてほしい。

 「Wizardry8」にはいろいろ不満点がある。古くさいグラフィックスや、最先端とはいいきれないゲームシステムと操作体系は、万人に向けて「絶対にこれは買っておけ」とは言い切れないものがある。

 ただし、プレイしている最中は常に「意外に遊べる」ということを強く感じた。快適に動けるゲーム内世界と、飽きのこない戦闘、そしてキャラクタを育てていく楽しさがあるため、いつまでも遊び続けようという気にさせてくれるのだ。ちまちまとキャラクタが成長していくのは「ああ、もうこんなに強くなったのね」という気持ちと「まだまだ、もっと強くなりたい」という気持ちの両方が湧き上がってくるので、プレイを中々止められなかった。

 Wizardryの心意気を、目の覚めるようなストーリー展開やグラフィックス、新規なゲームシステムに求めてはいけないのかもしれない。キャラメイキングにパーティメイキング、戦闘とそれに伴ってちまちま成長するキャラクタ、それこそがこのシリーズをプレイする時の喜びの源であり、最新作である「Wizardry8」も、その喜びをばっちりと与えてくれる。これまでの戦闘システムから大きく逸脱せず、しかもそれを3D化しているのも何よりだった。

ストーリーを進めていく上で大事なポイントは一覧リストにメモされる NPCを助けてそのままパーティメンバーに誘えることもある ダメージをたくさん受けたキャラクタはグラフィックスも血みどろに

最初の冒険の舞台となるMonastery。スタート地点のすぐそばにあるので、何気なく入ってしまうのだが、意外に大きいダンジョンのため、抜け出るまで一苦労だった

(c)2001 Sir-tech Canada Ltd. All rights reserved.


【Wizardry8】
  • ジャンル:シングルプレイ3DRPG
  • 開発/発売元:Sir-tech Canada
  • 実売価格::49.99ドル
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000
  • CPU:Pentium II 233MHz以上
  • メモリ:64MB以上
  • HDD:1.2GB以上
  • ビデオメモリ:8MB以上



今週の気になる直輸入ソフト

 11月第3週のビッグタイトル発売ラッシュを現地で見てしまった後なので、今週はやや「こんなものが!」みたいな感動は低かったかも。だが、さりげなく「Aquanox」が発売されていたりするので油断ならない。また、米国で11月15日に発売されたWizardry8だが、11月24日の秋葉原では見つけられなかった。Electronics Boutiqueの通販で買ってしまうか、12月20日発売予定の日本語版を待ったほうが確実かもしれない。

Asheron's Call: Dark Majesty
実売価格:3,800円~4,100円 ジャンル:MMORPG

 日本では今ひとつ流行しなかったが、プレーヤー同士が忠誠を誓うことで上下関係ができるなど、意欲的な試みも多かったMMORPG。'99年の発売以来、初のオフィシャル拡張キット。新しい冒険の土地や新モンスターなどと共に、家の種類も増えてマンションのような巨大なものまで登場している。

(c)2001 Microsoft Corporation. All rights reserved. Terms of Use.

Aquanox
実売価格:5,380円 ジャンル:潜水艦アクション Demo版

 27世紀の海底社会を舞台にした潜水艦アクションシューティング。GeForce3最適化したグラフィックエンジン「krass」を採用しており、単にアクションゲームとしてだけでなく、自作系なゲーマーの人にもプレイしてもらいたい一本だ。関連記事はこちら

(c)2001 FishTank Interactive, (c)2001 Massive Development GmbH.

Tom Clancy's Ghost Recon
実売価格:7,080円 ジャンル:コンバットシム Demo版

 おなじみ軍事小説家トム・クランシーの名を冠したRedStorm Entertainmentのコンバットシム。2008年の近未来を舞台に、米特殊部隊Ghostを率いて、ロシアの過激派の近隣諸国への不法侵略を阻止する。15個のミッションマップからなるキャンペーンモードのほか、マルチプレイでは最大36人までの対戦が可能だ。

(c)2001 Red Storm Entertainment, Inc. Red Storm and Red Storm Entertainment are trademarks of Red Storm Entertainment, Inc. Red Storm Entertainment, Inc., is a Ubi Soft Entertainment company. All Rights Reserved. Tom Clancy's Ghost Recon is a trademark of Rubicon, Inc. under license to Ubi Soft Entertainment.

□Sir-tech Canadaのホームページ
http://www.sir-tech.com/
□「Wizardry8」の公式ページ(英文)
http://www.wizardry8.com/
□「Wizardry8 日本語版」の公式ページ
http://www.locus.co.jp/wizardry8/
□関連情報
【10月31日】本日到着! DEMO & PATCH 「Wizardry8」Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011031/demo1031.htm

(2001年11月27日)

[Reported by 西尾ゆき]


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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