「電遊道」〜Way of the Gamer〜 ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ

ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第33幕】

 電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 「電遊道」では、話題沸騰中の最新ニュースをコメントする時もあれば、日本のゲームという伝統を確立させた過去の名作を振り返り、当時の気持ちを懐かしく語りたい時もある。これまでの「一刀両断」や「イタヲタのレトロなゲームライフ」などの人気コーナーを提供しつつ、新しいコーナーも立ち上げていく。

 例えば、「BORN TO BE GAMER」(和訳:ゲーマーになるために生まれた)では、日本のゲームを愛するイタリア人ゲーマーを紹介していきたいと思う。ゲームとのファーストコンタクトは? 日本のゲームを愛する理由とは? その人物の回答を通じて、日本の名作の永久的、普遍的な価値を再発見したいと思う。

 これからも「電遊道」はレベルアップしていく。サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!

ジョン・カミナリ (芸名)
国籍:
イタリア
年齢:
38才
職業:
俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:
テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:
銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)
ブログ:
ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
Twitter:
https://twitter.com/John_Kaminari
Facebook:
http://www.facebook.com/johnkaminari

 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること。


一刀両断〜話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!〜

話題のゲームニュースや注目のゲームイベントをピックアップして、僕の正直な感想を述べたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイディアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来のために!

ネオジオの伝説が、コロッセオの前でよみがえる!
おぐらえいすけ氏の書き下ろしイラストが話題沸騰中!

イベントの開催と共にSNK PLAYMOREとネオジオに捧げた新コーナーが開設された

 6月29日、30日に、ローマのゲーム博物館「VIGAMUS」で、ネオジオとSNKの歴史を振り返るSNK LEGENDSというイベントが行なわれた。今回のイベントの目玉は、「THE KING OF FIGHTERS」シリーズのキャラクターデザインを手がけるおぐらえいすけ氏が書き下ろしたイラスト、「THE KING OF FIGHTERS XIII」プロデューサーである山本圭氏と、「サムライスピリッツ」1作目以来のベテランプランナーである冨田聖司氏のビデオインタビューだった。今回のイベント開催に伴い、ゲーム博物館にSNK PLAYMOREの専用コーナーが新設された。専用コーナーには、SNK PLAYMOREが博物館に寄贈したネオジオ筐体(MVS)、ネオジオ本体や代表的なゲームソフト、そしておぐらえいすけ氏のデジタルイラストと色紙が展示されている。

 ローマのゲーム博物館VIGAMUSは2012年10月にオープンし、これまでには過去から現在に至るまで、欧米や日本の看板的なゲームシリーズにイベントを捧げてきた。「バイオハザード」、「TOMB RAIDER」、「ASSASSIN'S CREED」など、現在の人気ゲームシリーズをモチーフにしたイベントはもちろん、博物館という定義に最も適切といえる「スペースインベーダー」など、過去の名作をテーマにしたイベントを企画、開催しゲーム文化の普及、発信に力を入れてきている。

 今回のイベントの趣旨は、日本のゲーム文化の確固たる代表のうちの1つであるネオジオ、さらにSNK PLAYMOREのゲームシリーズの歴史や魅力を紹介することだった。おぐらえいすけ氏のイラストやビデオインタビューは話題を呼んだが、イタリアで“ネオジオの博士”というあだ名に相応しいグァルティエーロ・カンナルシ氏(以下、カンナルシ氏)のカンファレンスも、イタリアのSNKファン達にとって見逃せないイベントとなった。

「真サムライスピリッツ」、「餓狼伝説SPECIAL」、「龍虎の拳」、「THE KING OF FIGHTERS '98」の4つのタイトルが体感できるネオジオ筐体がSNK PLAYMOREから寄贈された
SNKの旧名、新日本企画が制作したアーケードゲームに焦点を当てた、カンナルシ氏によるカンファレンスも観客達の注目を集めた
「KOF」のキャラクターデザイナー、おぐらえいすけ氏がローマのゲーム博物館のために書き下ろしたデジタルイラストは今回のイベントの見所だった
イタリアのネオジオコミュニティーの面々が、500キロ以上離れた北イタリアから、わざわざイベントのために訪れたという
色紙のイラストから独特な温もりとゲームへの愛情が感じ取れる。テリー・ボガードはイタリアでは特に愛されているキャラクターだ

 6月29日の朝から、ローマだけでなく、北イタリアと南イタリアからも多くのネオジオファン達が来場した。サマーシーズンに入ったにも関わらず、今回のイベントを楽しむために海水浴を中断した来館者も多くいたようだ。イタリアでは、過去のアーケードゲームを体感できるゲームセンターの数が激減しており、久しぶりにネオジオの筐体で遊べるということに注目が集まっていた。同じ愛情を共有する人々がゲーム博物館に集い、そのおかげで1990年代のゲームセンターのあの格別な雰囲気が漂っていた。

 6月29日のイベントは、ゲーム博物館の館長であるマルコ・アッコルディ・リカーズ氏と、スタッフの挨拶で始まった。館長はイベントの実現に協力してくれたSNK PLAYMOREに対して感謝の気持ちを述べた。そしてその直後に、ゲーム博物館の永遠の宝物となるおぐらえいすけ氏のデジタルイラストと色紙が初公開された。

 色紙には、ネオジオで遊ぶテリー・ボガードが描かれている。ネオジオの成功に貢献した有名なゲームキャラクターが、自分自身を生み出したネオジオで遊んでいるというアイデアが絶賛された。そして、テリー・ボガードの帽子にはローマのゲーム博物館、VIGAMUSのロゴがあしらわれている。色紙を観た瞬間、館長は感動を覚えたという。

 おぐらえいすけ氏によるデジタルイラストも、傑作という言葉に尽きる。まず、1番上にネオジオのマスコットキャラクターであるゲーマントが描かれている。ネオジオの歴史を熟知しているカンナルシ氏もイラストを観て、あまりの喜びに自分の目を疑ったという。

 彼によると、ゲーマントの新しいイラストは非常に少ないため、このイラストの価値は計り知れないという。ゲーマントのすぐ下に「餓狼伝説」シリーズの看板キャラクターであるテリー・ボガードが描かれている。その下には、草薙京、クーラ・ダイアモンドの姿が確認できる。

 実はこのイラスト、ネオジオゲームの歴史と進化を語っている。ネオジオの誕生を示すゲーマント、初めての人気格闘ゲームを象徴するテリー・ボガード、アメコミ的なキャラクターから日本の学生制服で戦うキャラクターへの変換を代表する草薙京、そして最後に、21世紀のテクノ的な流行を反映させるキャラクター、クーラ・ダイアモンドが描かれている。

おぐらえいすけ氏の書き下ろした高解像度のデジタルイラストは、新設されたSNK PLAYMOREコーナーで展示されている。隣のパネルにはSNK PLAYMOREの歴史を紹介する解説文が掲載されている
ローマの象徴であるコロッセオが、日本のゲームの有名なキャラクター達と合体。素晴らしい作品を作ったおぐらえいすけ氏に脱帽!
「KOFXIII」プロデューサー山本圭氏
「サムライスピリッツ」シリーズのベテランプランナー冨田聖司氏

 イラストの公開後、「KOFXIII」のプロデューサーである山本圭氏と、「サムライスピリッツ」のベテランプランナーである冨田聖司氏のビデオインタビューが流れた。それぞれ、1つの回答が非常に興味深いと思った。シングルキャラクターからチーム同士へと格闘ゲームの常識を進化させた「KOF」。「その要素が、格闘ゲームというジャンルにどのような変化をもたらしたか」という質問に、山本圭氏はこう回答した。

山本氏「格闘ゲームにコミュニケーションをもたらしたと思っています。以前は、1人のキャラを1人で練習していたユーザーが、複数のキャラを使用しないといけなくなったため、情報を交換するために他のユーザーと連携を取る必要が生まれ、コミュニケーションが生まれたと考えています」。

 覇王丸やナコルルなどの人気キャラクターの設定を担当した「サムライスピリッツ」シリーズのベテランプランナーである冨田聖司氏は、「本シリーズの3つのキーワード、そして印象的な背景を作るための材料というのは何だと思いますか」という質問にこう回答した。

冨田氏「キーワードは『武器』、『強斬り』、『世界観』の3つです。印象的な背景を作るための材料は、やはり日本の四季でしょうか。同じステージでも、春夏秋冬で景観が変わる様子は、幻想的かつ、日本独自の空気感が成せる技だと思います」。

 また、イタリアで最もネオジオの歴史を熟知しており、熱烈なコレクターとしても知られるカンナルシ氏によるセミナーが行なわれた。イベントの1日目には、SNKがまだ新日本企画として知られていた時代のアーケードゲームが紹介された。

初日のカンファレンスでは、特に「KOF」シリーズで受け継がれたアテナというキャラクターの起源や年々の変化について詳しく紹介された

 2時間にも及んだ2日目のセミナーでは、カンナルシ氏がネオジオの起源や歴史に焦点を当て、発売された1990年から幕が下ろされた2005年までに刻まれた、ネオジオという伝説的なゲーム機のストーリーを、ファンとしての懐かしいエピソードも交えながら語っていった。今回のイベント開催は、カンナルシ氏にとってずっと以前からの夢で、とうとう実現したことを最大の誇りに思っているそうだ。

 僕も、セミナーを1人の観客として楽しむことができた。欧州で発売された当時、ゲームセンターに導入された当時、ネオジオで遊ぶことができたが、今回知らなかった多くの意外な知識を学ぶことができて、ゲーマーとしてもとても充実した内容になった。

 いうまでもなく、SNKはネオジオの導入で、ゲームセンター側にとって、とてもリーズナブル、かつ使いやすいシステムを実現させた。MVSには4つのスロットが内蔵され、セレクトボタンを押すだけで4つのゲームを任意に選択できるようになっている。その新しいプレイスタイルで、ネオジオは日本だけでなく、世界のゲームセンターでも圧倒的な活躍を見せた。

 カンナルシ氏が説明した通り、ネオジオは同時に家庭用ゲーム機としても、業務用ゲーム機としても発売された。最初の家庭用ゲーム機版はレンタル向けだけだったが、翌年の1991年には、家庭用版を購入したいというユーザーからの要望が圧倒的に増えていたため、正真正銘の家庭用ゲーム機として発売されることになった。それでも、ネオジオのゲームソフトの平均的な価格はスーパーファミコン用のゲームソフトより2〜3倍以上高かったため、富裕層用のゲームマシンというイメージは拭えなかったという。

 セミナーの後半にカンナルシ氏は、自費作成したアマチュアブック「NEO-・GEO COLLECTOR'S BIBLE」を公開した。現在、イタリア語版だけが公開されており、無料でダウンロードできるようになっている。当時の正式資料や宣伝材料を元に情報を集め、ネオジオに関するあらゆる情報を正確に網羅しているという。今後、日本語版の公開も視野に入れているという。

 特に面白いと思ったのは、アメリカ版と日本版の「餓狼伝説」(英題:FATAL FURY)パッケージイラストの比較写真だった。アメリカ版は、ハリウッド映画から出てきたかのようなアクションスターを彷彿とさせるキャラクターを描くという、日本版のお洒落な画風とは180度違うスタイルとなっている。一方、日本版のイラストは作家性に満ち溢れており、その違いはアメリカ人との国民性の差異を物語っていたと言えるだろう。

「凄いゲームを、連れて帰ろう。」。ネオジオのキャッチコピーとその謎めいたマスコット「ゲーマント」が伝説となった
ネオジオは「超ド級ゲームマシン」だった。その性能の高さにとてもマッチした表現だったといえるだろう
「ネオジオは“てっぺん”マシンだ」。カンナルシ氏は当時の正式資料を公開しつつ、当時のネオジオブームを説明した
イタリアで歌手として活動しているマサコ・マカロンさんの懐かしいライブ

 カンナルシ氏のセミナーが終わった後、イタリアで活動している日本人歌手、かつコスプレーヤーであるマサコ・マカロンさんのミニライブが行なわれた。SNK PLAYMOREのサウンドチームが、今回のライブ用に麻宮アテナというキャラクターに関連した2つの名曲「サイコ・ソルジャー」と「傷だらけのブルームーン」を新しく編曲したそうだ。あっという間に、ゲーム博物館のカンファレンスホールが、アテナステージのような雰囲気になり、観客達はその演出をとても楽しんでいるようだった。

 イベントを締めくくったのは、SNK PLAYMOREが提供した「KOF」や「餓狼伝説」などの多種多様なゲームグッズを賞品にしたクイズゲーム。「THE KING OF FIGHTERS '98」と「真サムライスピリッツ」に関する問題が出題された。クイズゲームの質問はカンナルシ氏自身が担当。あまりにも難易度が高かったので、普通のゲーマー用の簡単な質問もその場で作られた。全てのグッズが来館者達の手に渡り、みんな満面の笑顔で博物館を後にした。

 個人的に「SNK LEGENDS」のようなイベントは、やはりもっと開催されるべきだと思う。今回のイベントの観客達は100人前後で、その半分以上が当時高校生で、ゲームセンターでネオジオのことを知った人たちだろう。現在30歳後半で、息子を連れた親もいた。息子と力を合わせて「メタルスラッグ」で遊んでいるという場面も目の当りにし、とても温かい気持ちに包まれた。

 ゲームは現実世界を再現する、実写のようなリアルな3Dグラフィックスによるものだけではない。ゲームは、ドットでできていた時代もあったということを子供達にもっと伝えていくべきだと改めて感じた。そういった意味で、ローマのゲーム博物館は重要な使命を担っている。館長によると、これからも日本のゲーム文化を紹介するイベントを企画し、若者が知らない、あるいは忘れかけている過去の伝説が再度活躍するように貢献していきたいという。ドットなゲームで育ってきた僕も、紛れもなく同感である。

「THE KING OF FIGHTERS '98」トーナメントの参加者達は筐体の周りに集まり始めた
クイズゲームとコンテストの優勝者達には、SNK PLAYMOREから提供されたグッズが贈られた
今回のイベントのゲストと館長との記念写真。おぐらえいすけ氏の傑作イラストが、ずっとローマのゲーム博物館の中で輝き続けていくだろう