【連載第22回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


2010年のPCゲーミングデバイスはどうなる!?
有力ゲームデバイスメーカー7社に今年の事業戦略を聞いた


色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプ トに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、 様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



■ PCゲーム入力装置の未来は果たしてどっちだ!?

 ついに来てしまった21世紀2桁年。2010年と言えば、30歳代半ばの筆者世代の少年時代から考えれば遥か未来であり、都市にはキンピカの摩天楼がそびえたち、その中空には透明な移動用チューブが駆け巡って、タイツ状の銀色の服を着た人々が空飛ぶクルマでビュンビュン飛び交っているはずの年だ。

 しかし、実際の未来は、そうならなかった。ビュンビュン飛び交うようになったのは空飛ぶ車ではなく情報の方だった。残念ながらクルマは空を飛ばなかったが、人々の思いは瞬時にして全世界を駆け巡るようになった。

 情報の進化速度に比べると、物理的な変化というのは、そう極端に進まないものらしい。これはコンピューターゲームの世界でも同じことが言える。膨大な計算力と記憶域を使って画面内の世界が緻密になっていく一方で、我々は未だに、ダグラス・エンゲルバートという発明家が1968年に初披露したマウスというポインター装置を使っている。42年経っても使っているのだから、おそらく今後も長く使い続けることだろう。

 とはいえ最近では、カメラセンサー技術を応用したモーションコントロール装置や、手の込んだ液晶を使った3Dディスプレイのような、いかにも未来的なハードウェアがゲーム界に進出し始めた。業界的には、2010年は「3Dディスプレイ元年」になるとかならないとかで、色々なところで様々な仕込みが行なわれているらしい。

 本連載新年最初のお題は、その3Dではなく、いま手元にある入力装置であるマウスやキーボードである。我々PCゲーマーを楽しませてくれる各ゲームデバイスメーカーは、今年何をやろうとしているのか? それが今回のテーマだ。

 中には既存の空を打ち破ろうと必死にもがいているメーカーもあり、既存のレールの上でより良いやり方を模索しているメーカーもある。2010年、各ゲーミングデバイスメーカーがどのような考えで事を進めようとしているのか、調べてみたこと、聞いてみたことをまとめてご紹介していきたい。


【今回のラインナップ】
ロジクールマイクロソフト
Razer (MSY)DHARMAPOINT (シグマAPO)
Zowie (マスタードシード)ROCCAT (サードウェーブ)

SteelSeries


■ あの時代のチャレンジ精神をもう1度。水面下で準備を進めるロジクール


 本社Logitechを米国に構える巨大PCサプライメーカーの日本法人ロジクール。老舗として一般用途の製品群を無数に展開していることはもちろん、ゲーミング関連の入力デバイス分野においても長年、存在感を発揮し続けている企業だ。

 ロジクールから最近発売されているゲーミングデバイス製品は、ゲーミングマウス「G500」を筆頭に、USBヘッドセット「G35 Surround Sound Headset」、左手用キーボードデバイス「G13 Advanced Gameboard」など、いずれも頭文字に「G」を冠する製品名で各ジャンルを幅広くカバーしている。

 取材を申し込んだところ、ロジクールは快くインタビューセッションを設けてくれた。取材に応じてくれたのは、国内のマーケティングを担当する寺沢卓哉氏。以前、当連載のゲームパッド特集にて「Logitechの開発・生産体制とスケールメリット」について語ってくれた人物だ。さて今回はどんな話が聴けるのだろう?


・数々の挑戦、そして失敗と成功に溢れたロジクールのゲームデバイス史

突発的インタビューに答えてくれたロジクールの寺沢卓哉氏
テーブルにはかつてのロジテックの栄光を湛える記念碑的デバイスがズラリ

 結論から先に書くと、今回のインタビューでは読者の皆さんがドキッとするような新製品の情報は得られなかった。むしろ多くの実りがあったのは、今年のロジクールがある意味において「ゲーミングデバイス」というものを根本的な部分から見つめ直しつつあるということが感じられたことだ。

 まず取材現場にやってきて目を引いたのが、寺沢氏が話のタネにと用意した歴史的遺物の数々だ。20世紀末、「Logitech Wingmanシリーズ」と呼ばれていたころのゲーミングマウス、マウス風コントローラー、ゲームパッド。そして極めつけは世界最初の民生用6軸コントローラー「Cyberman」初代と後継機である。

 これら1990年代に発売された奇抜な製品群は今見ても驚きがある。奇抜すぎて当時のPCユーザーに受け入れられることはなく、純粋にビジネス的には成功とは言えなかったものの、現在のようなゲーミングデバイス市場が成立するまでに必要だった「手探りの挑戦」として評価できよう。

 中でも「Cyberman」は傑作で、初代機はいわばジョイスティックの頭に3ボタンマウスをくっつけたような形状となっており、これを傾けたり、ねじったりすることで6軸のアナログ入力を実現している。現在ではプレイステーション 3の「SIXAXIS」などで一般化しつつある6軸入力装置の元祖みたいなものだ。もっとも、「Cyberman」はこの形状が災いして、傾きを入力しようとしたらマウスのボタンも一緒に押してしまうという重大な人間工学的問題を抱えていた上に、DOS時代の当時ではフルに利用できるソフトが皆無だったので、「コンピューターオタクのおもちゃ」以上のものにはならなかった。

 寺沢氏はそのあたりの製品史に触れつつ、「この時代のチャレンジ精神は忘れていません。近年では左手コントローラーの『G13』を成功させていますし、マウスやキーボード意外でも今後どのようなデバイスが必要になるか、常に考えています」と語気を強くした。


「Wingman」マウス風コントローラー。どういう仕組みなのか説明するのが難しい構造をしたデバイス「Cyberman」初代。6軸入力が可能なスティックとマウスが一体になっている。どうがんばってもマウスボタンを誤射してしまうのが唯一の弱点「Cyberman 2」。6軸入力部分をボタン類とは分離して合理的な形状となった。ここで培われた技術は現在、関連会社3DConnexionにて「Space Navigater」という製品に応用されている

・2010年のロジクールを語るキーワードは「ゲームメーカーとの協力体制」

最近の製品で最も野心的だったひとつがこの「G13 Advanced Game Board」。意外と非ゲーマー層に受けているのだとか
個人的に昨年の大ヒット製品だったのがこの「G35」ヘッドセット。基本的な性能が優れているだけでなく、音質変換マイク機能を備えているため、地声を聞かれたくないシャイなプレーヤーでもボイスチャットしまくれる

 その上で寺沢氏は、まだ製品名など具体的な情報は全く話すことはできないとしながらも、今後の展望についてヒントになる情報を提供してくれた。キーワードのひとつは寺沢氏自身も注目しているというモーションコントローラーの技術的進歩と普及への期待だ。

 任天堂のWiiリモコン、ソニーのモーションコントローラー(仮)、あるいはマイクロソフトの「Project NATAL」といった、直感的な操作を可能にする技術の発展は目覚しいものがある。寺沢氏はこれについて直接的な言及は避けつつも「やっているかやっていないかで言うなら、『何か』はやっています(笑)」と、現在進行中のプロジェクトの存在を匂わせている。

 寺沢氏はまた、2010年にロジクールが目指す方向性として「国内ゲームメーカーとの協力体制を強化していく」という目標を語ってくれた。近年のロジクールは主にゲームパッド製品において、カプコン「モンスターハンター フロンティアオンライン」のようなオンラインタイトルと各種のタイアップを行なっているが、こういった流れをより強化していくというのが製品PR担当である寺沢氏自身のミッションであるようだ。

 また昨年は、元々ゲーミングマウスだったモデルを一般向けに低価格帯で販売した「MX518 パフォーマンスマウス」の好評など、ゲーミングと一般製品がクロスする分野での成功があったという寺沢氏。2010年のロジクールから具体的にどんなものが飛び出してくるか未だ定かではないが、ゲーミングデバイス市場への期待と挑戦はまだまだ続いていきそうだ。


左から「G500」、「Gー9X」、「G-3LS」。高価なものから安価なものまで、ついでにちょっと冒険した製品まで、昨年のロジクールがリリースしたマウスラインナップ。今年はどんな製品を見せてくれるだろうか


■ ゲーミングデバイス関連では静かな動き? マイクロソフト SideWinder

 2009年、Windows 7の発売という大仕事を終えたばかりのマイクロソフト。ゲーム部門ではXbox 360を中心に展開しているところだが、PC関連デバイスにおいての存在感もやはり大きい。

 その中でゲーマーの関心を惹くのは何と言っても近年復活を遂げた「SideWinder」シリーズのゲーミングデバイス。マウスにしてもキーボードにしても、他者には真似できない新技術や製品デザインを積極的に試みている。その象徴と言えるのが新機軸のBlueTrackセンサーを搭載したゲーミングマウス「SideWinder X8」であり、テンキー部分を着脱可能なゲーミングキーボード「SideWinder X6 Keyboard」だろう。

 今回取材に応じてくれたのはリテールビジネス事業部コンシューマー製品部プロダクトマネージャーの島田真有美氏。マイクロソフトの自己分析と、2010年に向けての抱負を聞いてみた。


・ゲーミングデバイスとしての基本に忠実であること

BlueTrackセンサーで規格外のトラッキング性能を示した「SideWinder X8」。こういう独自技術が出てくるのがマイクロソフトの面白いところ
テンキー着脱可能という機軸で勝負した「SideWinder X6」キーボード。ゲーマーが「無理そうだなあ」と思っていた製品デザインを実現

 「人間工学研究に基づく製品設計」をデバイス市場におけるマイクロソフトの強みとして挙げる島田氏は、自社の製品群がユーザーに与えるメリットを考えるのが楽しくて仕方がないという。

 その上で、近年ひとつの市場として立ち上がってきたゲーミング市場については「アジアを含む世界のゲーマー調査を行ない、デバイスに何が求められているかを本格的に分析しています」と、他のゲーミングデバイス専門メーカーに負けない開発体制を自負しているという。

 その中でマイクロソフトが持つ技術的関心は、製品デザインに現われているほど奇抜なものではない。それは「常に基本的な性能を最重視する」ということだ。島田氏が必須条件として挙げたのは「操作に遅延が無いこと」、「狙い通りに反応すること」、「手に馴染みやすいこと」、「壊れにくいこと」の4点。ユーザーとしてはBlueTrackセンサーのような新技術ばかりに目が行きがちだが、メーカー側がこういった基本を重視するからこそハードな使用に耐える製品が生まれてくるという側面も忘れないでおきたいところだ。

 そんなマイクロソフトから今年投入される新製品について気になるところだが、現時点では「未発表の製品が存在する」という情報を提供していただくにとどまった。2010年のマイクロソフトとしてはゲーム初心者からシリアスゲーマーまで、幅広く受け入れてもらえるようなラインナップにしていきたいとのことなので、ここはひとまず具体的な情報が出てくるのを楽しみに待とう。

 ちなみに新技術と言えばWindows 7に搭載されたマルチタッチ機能「Windows Touch」のゲーム展開も気になるところだが、ゲーミングデバイス関連のトピックとしては答えられないとのことだった。その分ゲーミングデバイスのメインストリームで活発な動きを期待したい。




■ 国産ゆえの期待に再び答える時がやってきた。DHARMAPOINT(シグマA・P・O)

 2008年初頭、日本人好みのゲーミングマウス「ダーマ・タクティカルマウス(DRTCM01)」を投入して鮮烈なデビューを果たした国産ゲーミングブランド「DHARMAPOINT(ダーマポイント)」。PCサプライ製品を幅広く手がけるシグマA・P・Oシステム販売の1部門として小規模ながら、質実剛健をモットーにして、国内のゲーマーにとってはすっかり要チェックの存在になっている。

 そんなDHARMAPOINTから今回の取材に答えてくれたのは、シグマA・P・Oシステム販売ゲームプロダクト開発室の梅村匡明氏。DHARMAPOINTブランドの立ち上げ発起人にして、すべての製品デザインを手がける技術者だ。新製品の情報も詳しく伝えていただいた。


・DHARMAPOINTの歩みとこれからの展開

DHARMAPOINTのマウスは小さい手でもしっかり操作できるフォルムだ
「ダーマタクティカルスロートマイクロフォン」。実用性はイマイチという評判もあるが、プレイ環境によってはとても有り難いアイテム

 デビューから2年余りを経過し、これまでにゲーミングマウスやキーボードをはじめとする18製品を展開してきたDHARMAPOINT。リスクの大きいゲーミングデバイス市場にコンスタントに製品を投入するだけでなく、マウスパッド潤滑剤「ダーマ・スピードマスター」やネックバンド型マイク「ダーマタクティカルスロートマイクロフォン」のような変わりダネも投入し、業界に独自の存在感を放っている。

 そんなDHARMAPOINTの製品デザインを手がける梅村氏が2010年の目標として掲げるのは「エントリーユーザー向け製品の充実」と、「積極的なユーザー支援活動の継続」。前者は後述する新製品の低価格マウスとして早速実現に向かっている。

 後者はDHARMAPOINTブランド立ち上げから様々な方法で試みていることの延長だ。例えばゲームヤロウが毎年12月に開催している「サドンアタック公式全国大会」では、優勝チームにスペシャルデザインマウスを提供するなどの活動をしており、その他草の根のゲーム大会にも出没してはゲームの世界を盛り上げる活動に熱心である。

 そういった地道な活動をしながらも梅村氏は、最近話題になることの多い拡張現実(Augmented Reality:AR)技術や、プロシージャル技術といった、ゲームそのものの進化を促す技術への関心も覗かせる。このあたり、コンピューターゲームを好きでデバイスを作っているんだ、という思いが伝わってきて、1ユーザーとしては頼もしい限りだ。




・2010年はまず新デザインのゲーミングマウス2種を投入

これが1月29日に発売予定の「DRM26」。
シンプルながら期待の持てるデザイン

 そんな梅村氏が明かしてくれた新製品の情報にも触れておこう。2010年、DHARMAPOINTは2種類の新型ゲーミングマウスを投入する。そのいずれも、デビュー作の「DRTCM01」とは異なる基本デザインを持つ完全新作だ。

 そのうちの1つは、1月29日に発売予定の「ダーマオプティカルゲーミングマウス(DRM26)」。店頭予想価格が2,980円と、ゲーミンググレードの製品としては低価格帯に位置する製品となる。

 この「DRM26」は130インチ/秒のトラッキング性能を持つオプティカルセンサーを採用し、左側面には2つのサイドボタン。解像度は800/1,600CPIをオンザフライで切り替える簡素な機能を備え、低価格でありながらゲーマーの現実的な要求にしっかりと答える製品内容になっているのが特徴だ。また、その見るからに扱いやすそうな形状も楽しみなところ。これについては近いうちに弊紙で詳しくお伝えできるだろう。

 もうひとつの新製品は、まだ正式な発表はなされていないゲーミングマウスだ。開発コードネーム「Cutlass」と呼ばれるこのマウスについて梅村氏は「まだ開発中ということで、あまり具体的なことは申し上げられない」としつつも、キーポイントとなるいくつかの仕様を教えてくれた。

 まず「Cutlass」は「完全かぶせ持ち対応の形状」を備える。その上で海賊の曲刀のように切り返しの動作を重視するため「大胆なセンサーの配置」を行なっている。また上記「DRM26」ではエントリーユーザー向けに機能を限定しているところ、「Cutlass」では「ヘビーユーザー向けの機能」を備え、扱いとしては2010年のフラッグシップモデルになるとのこと。現在DHARMAPOINTのマウスを使っているユーザーにとっては間違いなく決定的な製品になる。

「かぶせ持ち」、「つまみ持ち」両方のスタイルでフィットしそうな「DRM26」。3,000円以下という低価格で手に入るゲーミングマウスとして、良さそうな選択肢が増えるのは喜ばしいことだ。一方のフラグシップモデル「Cutlass」はまだ開発中とのことで、今後さらなる情報を待ちたい



■ 既存の殻をぶち破る! 2010年飛躍の年になりそうな米Razer(MSY)


 Razerは世界的なゲーミングマウスメーカーとして最も知られた存在だ。日本では現在MSYが代理店となっており、これまで数年にわたって数々の「鉄板」と呼べる製品が市場に送り込まれてきている。特に最新製品のひとつであるワイヤレスゲーミングマウス「Razer Mamba」は秀逸な製品デザインが評価され、1万円を優に超える価格ながら売り切れ続出で品薄状態が続いた。

 今回はRazerの日本市場の展開を聞いてみようということで、代理店を勤めるMSYのマーケティング担当近藤俊介氏にお話を伺った。またMSYではRazerだけでなく、ゲームコントローラーメーカーのSaitekやMADCATZ、モーションコントローラーメーカーのNaturalPointといったメーカーの製品も取り扱っており、幅広い製品で市場にコミットしているという点でゲーミングデバイス分野に最も熱心な企業のひとつと言えよう。


・ついにXbox 360市場に参入するRazer。話題のモーションコントローラーも制すか?

マウスに金を惜しまない層に大人気の「Razer Mamba」。究極のワイヤレスマウス
Xbox 360用の「Onza」。海外の発売から多少遅れて日本でも発売されるようだ

 eスポーツ黎明期よりコアゲーマー向けの高性能マウスを提供し続けてきたRazer。フライトスティックの市場では一大シェアを誇るSaitek。PC用ヘッドトラッキングセンサーのスタンダードと化したNaturalPoint。いずれも面白いメーカーだが、やはり多くのゲーマーが関心を抱くのはRazerだろう。

 これまでマウスとマウスパッド、あるいはキーボードといったPC向けのプリフェラルだけをラインナップしてきたRazerだが、2010年はこれまでと大きく異なる展開を見られそうだ。

 まずひとつめのトピックは、これは厳密にはPCゲーミングの話題ではなくなってしまうが、RazerがXbox 360用コントローラーをリリースすることだ。Razerによるコンシューマー機向け第1弾となるこの製品「Razer Onza Professional Gaming Controller」は、無線技術にRazerマウスにも使われているHyperesponse Technologyを採用し、ボタンの連射やカスタマイズ機能などを搭載する、まさにRazerマウスのコンセプトをそのまま活かしたXbox 360コントローラーだ。

 このRazerが今後プレイステーション 3向けなど他機種への展開を見せるかどうかは、このXbox 360用コントローラーが成功するかどうかに掛かっているだろう。MSYの近藤氏は、Razerの製品は順次国内でも発売していくと話しているため、まずは国内コンシューマー市場でRazer製品がどのように評価されるかも2010年の興味の対象としておきたい。

 もうひとつのトピックは、つい先日までラスベガスで開催されていたInternational CES 2010にて、Razer、Valve、Sixense Entertainmentの3社による「PC用モーションコントローラー」の開発がアナウンスされたのだ。その技術的詳細はまだ不明だが、発表内容に“Gesture Recognition(動作識別)”という言葉もあるため、マイクロソフトの「NATAL」に近いものになるのかもしれない。

 このうちRazerはデバイスメーカー、Valveはゲームメーカー、Sixense Entertainmentはテクノロジープロバイダーということで、これまで想像もできなかったような協業体制が成立したことになる。おそらく最終的なデバイス製品はRazerから発売され、最初の対応ソフトはValveから発売されるのだろう。押しも押されぬ一流メーカー同士のタッグ。今後しばらくRazerの動静から目が離せない。

 MSYの近藤氏も2010年の注目テクノロジーとしてモーションセンサーコントローラーを挙げており、プラットフォームによらず展開しつつある「体を使ったゲーム体験」の推進に並々ならぬ関心を寄せているようだ。それと平行して近藤氏は「ビジネスユーザーの方のRazerデバイス使用が増えている」という嬉しい報告もしてくれ、2010年はさらに市場の幅を広げていきたいと抱負を語っている。


直近の話題としては、1月29日に発売予定のマウス2製品をチェックしておこう。こちらは「Razer Imparator」。「Mamba」と同じ3.5Gレーザーセンサーを搭載する高性能モデルで、サイドボタンの位置調整が可能なギミックを搭載。くびれのある形状が特徴的だ。価格は9,980円
同じく1月29日に発売予定のマウス「Razer Abyssus」。こちらはエントリーモデルで、「Salmosa」と同じ3.5Gオプティカルセンサーを搭載。サイドボタンがなく小ぶりで、つるりとした形状となっている。価格は5,200円



■ 2009年に日本展開を開始したばかり。新進気鋭のZowie Gear(マスタードシード)

 2009年より日本進出を果たした新進気鋭のPCゲーミングデバイスブランド「Zowie Gear」。この名をまだ聞いたことのない読者の方も多いかもしれないが、現時点までには「Zowie」印のマウスパッドとヘッドセットが販売されているのみで、マウス製品を含む真打の登場はこれからといった情勢だ。

 今回、まだ知られていないことの多いZowie Gearブランドについて、国内代理店を勤めるマスタードシードの高橋裕次氏にお話を伺った。マスタードシードがスタートしたばかりのゲーミングブランドをどう国内市場に定着させていくのかを聞いた。


・Eスポーツ競技者向けの製品を展開する

ちょっと見たことのない表面の質感を備える「TF」シリーズマウスパッド。布とプラスチックの良いとこ取りが行なわれている
こちらは競技者向けと言う「Hammer」ヘッドセット

 「Zowie Gear」は、これまで他の舞台でゲーミングデバイスの開発に携わっていた人々が集まって立ち上げたメーカーだ。日本上陸の第1弾製品は2009年5月に発売されたマウスパッド「RF」シリーズ。第2弾として2009年10月にヘッドセット「Hammer」とマウスパッド「TF」シリーズをリリースしている。

 この中でも特に購入しやすい「TF」シリーズのマウスパッドは、国内でも評価が高い。ハードプラスチック系マウスパッドのクイックネスと布系マウスパッドのなめらかさを両立した独自の表面構造は、他のメーカーで見たことの無い独特の質感を有するものだ。これだけでも、「Zowie」がかなり本気のゲーミングデバイスメーカーであることがわかる。

 「Hammer」ヘッドセットは、マスタードシード高橋氏の言を借りると「サウンドへの没入感などを度外視し、ボイスチャットのしやすさなどを追求したEスポーツ競技者のためのヘッドセット」とのことで、現状、クラン戦や大会でのプレイ機会が新鮮味を持つ市場では、今後しばらくこのような製品が支持を受けるはず、と高橋氏は自信たっぷりだ。


・日本のPCゲームコミュニティにおける重要な役割を担いたい「Zowie」

こちらは近日発売予定の「SWIFT」マウスパッド。一見プラスチックの板だが、その表面加工はトップゲーマー“SpawN”こだわりの一品だとか

 そんな「Zowie」ブランドからは次なる新製品がいくつか予定されている。まず「SWIFT」と呼ばれるマウスパッド。布系の表面構造をベースとした「TF」シリーズとはうって変わり、「SWIFT」はハードプラスチックのつるりとした表面構造がベースとなる。素材、製造方法にこだわって「競技ゲーマー向け」の製品となるようだ。国内発売日は「近日中」とのこと。

 更にマウスとキーボード、ヘッドセットの新製品も準備している。現時点で聞くことのできた情報では、マウスは有線・光学式、キーボードはメンブレン方式。いずれもEスポーツ系の大会でタフな使用を前提に、シンプルなものになるようだ。またヘッドセットについては、「Hammer」とは趣向を変えてゲームへの没入感、迫力を重視するゲーマー向け製品になるという。

 「Zowie」ブランドは、まず競技ゲーミングの世界からラインナップを埋めていく、という戦略を取る模様だ。その上で、日本市場の展開を任されている高橋氏は2010年の目標をこう述べている。「以前とは違い、ここ最近はゲーマー同士で盛り上がれるタイトルが支持されています。そのコミュニティを応援すると同時に、PCゲーム市場の活性化を図って行き、PCゲームコミュニティにおける重要な役割を担えるようになりたいですね」。

 プロ志向でゲームに取り組んでいる各オンラインゲームの選手諸君は、今年「Zowie Gear」に注目してみよう。きっと面白い発見にめぐり合えるはずだ。




■ 電撃的上陸でPCゲーマーを驚かす、ドイツのゲーミングブランドROCCAT(サードウェーブ)


 PCショップ「ドスパラ」を営業する株式会社サードウェーブが、ゲーミングブランド「ROCCAT(ロケット)」の取り扱いを2009年末より開始している。「ROCCAT」はドイツに本拠を置く新しいPCゲーミングデバイスメーカーで、ヨーロッパを中心に着々とその評価を伸ばしているところだ。

 筆者も「ROCCAT」の名を知ったのは昨年も暮れに入ってからのことで、正直なところ、これがどんなゲーミングブランドなのか、読者の方にきちんとご紹介できるような知識は持ち合わせていない。何しろ現在、日本国内で販売が開始されている製品はヘッドセットとマウスパッドのみで、まだまだ真価を図れる状態ではないためだ。

 とはいえ、本場欧州ではROCCATの公式サイトを見てわかる通り、既にマウス、キーボードを含む全11種の製品を展開し、幅広い層のPCゲーマーから高い評価を受けつつあるようでもある。これは無視して通ることはできないだろうということで、この「ROCCAT」の代理店として国内取り扱いを開始したサードウェーブの商品担当、手島智幸氏の助けを借りつつ、本稿で簡単にご紹介しておきたい。


・ドイツのPCゲーミングデバイスメーカーが「ドスパラ」にやってきた! 

「Kone」ゲーミングマウス。ROCCATのフラグシップモデルだ
「Kova」。エントリーモデルのオプティカルマウス。現在のところ日本発売は未定
「apuri」。USBハブ付きの格好いいケーブルアンカー

 「ROCCAT」とは何か? それを知るに当たり、まずは主力製品のマウスのデザインとスペックを見てみよう。メインプロダクトとなっている「ROCCAT Kone」ゲーミングマウスは、3,200dpiレーザーセンサー搭載の流線型ボディ。1,000Hzのポーリングレートに1.65m/秒のトラッキングスピード、全ボタンへのマクロ機能などゲーミングマウスとして必要な機能は一通り備えている。

 もうひとつのマウス製品「ROCCAT Kova」は3,200dpiのオプティカルセンサーを搭載するエントリーモデル。こちらはより「ドイツらしい」と思える直線的なボディで、トラッキングスピードは最大1.01m/秒ほど、ドライバレス動作でマクロ機能等はないものの、2サイドボタンを備えて必要最低限の機能がある。

 「Kone」、「Kova」ともにセンサー性能ではRazer等の最新製品には及ばないものの、必要最低限の性能を確保した上で独自デザインというのは、これはあくまで筆者個人の感想だが、いわば「ドイツのDHARMAPOINT」のような印象を受ける。アクセサリ製品としてUSBハブを兼ねるケーブルアンカー「ROCCAT Apuri」のような一風変わった製品も用意しているあたり、ひとまずタダモノではないことは確かなようだ。

 そんな「ROCCAT」ブランドの国内販売にチャレンジするサードウェーブの手島氏は、当面の目標として「なるべく多くのPCユーザーにROCCAT製品に触れていただくこと」を挙げている。今回の日本上陸劇の面白いところは、これまでの代理店とは違い、「ドスパラ」という固有の販売チャネルを持つ企業が乗り出したところに尽きるだろう。

 つまり、ユーザー側としては「ROCCAT」製品を買いにいくときはドスパラに行くことになる。ゲーミングデバイスでありがちな「どこに行けば売ってるんだ……」という初心者泣かせの敷居の高さとは無縁なのである。また、販売代理店と小売店舗の営業が一体化していることで、より競争力のある価格でゲーミングデバイスをユーザーに提供できる可能性もありそうだ。これは、海外のゲーミングブランドの展開方法としては極めて特別なことであると言えよう。さて、筆者としてはこれがどう影響していくか見ものである。

左から、現在発売中のヘッドセット「kave」、インナーイヤータイプヘッドセット「vire」、マウスパッド「sense」。マウスパッドにはカラーバリエーション2種を用意

 現在のところ、サードウェーブが全国のドスパラおよび通販で販売を開始している「ROCCAT」製品は、ヘッドセット「ROCCAT KAVE」(9,980円)、インイヤータイプヘッドセット「ROCCAT VIRE」(3,980円)、そして「ROCCAT Sense」(2,480円)と「ROCCAT Sota」(2,780円)の2マウスパッドシリーズの全4種。

 マウス「Kone」、ケーブルアンカー「Apuri」、キーボード「Arvo」については「2010年春までに発売したい」とのことなので、日本のゲーマーがROCCATブランドの味を知るまでにはもうしばらく時間がかかりそうだ。

 これらの各ROCCATブランド製品に関しては、近いうちにレビュー等の形でより詳細な情報を届けたいと願っている。クルマ産業に代表されるように、ドイツと言う国は職人気質という点において日本に似て、神経質なまでに質実剛健の品質を追求するお国柄だ。果たして米国スタイルの製品がベストフィットできないPCゲーマーの救いになるか、2010年はROCCATにも注目していきたい。


近日登場予定の製品を含め、ドイツROCCATの製品群は期待が持てそう。発売が近づいてきた際には改めて情報をお届けしたい



■ 日本市場における存在感を高めたい、スウェーデンSteelSeries


 近年、ゲーマーの間ではデンマークに本拠を置くゲーミングデバイスメーカー、SteelSeriesの存在が大きくなりつつある。このメーカーはパフォーマンスにこだわったゲーミングマウスやキーボードを手がけることで知られており、その製品は、中身の濃さと外観のシンプルさという対比においては業界随一と言えるかもしれない。

 それを証明するひとつの逸材が、昨年末に発売されたゲーミングマウス「Xai」と「Kinzu」だ。低価格帯に位置する「Kinzu」がシンプルなのはもちろんなのだが、1万円を越すハイグレードな「Xai」も、その外観は全く持ってシンプル。だが、その中身には1CPI単位の解像度調整、センサーの直線補正具合、リフトオフディスタンスなどの各種調整機能が備わり、まさに玄人好みの製品だ。


・2010年のSteelSeriesは「ワイヤード」へのこだわりを脱するか?

昨年末に登場したSteelSeriesの決定版マウス「Xai」。シンプルな形状にこれでもかと機能を詰め込んである
こちらはエントリーモデルの「Kinzu」。最新世代のセンサー部分は一線級

 今回、日本市場への目標設定を聞くにあたって取材協力をお願いしたのが、SteelSeries Apsの日本マーケティング&セールスマネージャーの川田洋志氏。川田氏はSteelSeriesが日本上陸を果たした当初より同ブランドを一手に引き受けている人物で、「SteelSeriesをいかに日本で知ってもらうか」という課題に取り組み続けている。

 そんな川田氏の言う、SteelSeriesの特徴とは「勝利こそすべて」というモットーのもと、製品の品質とパフォーマンスに妥協を許さないという点。当初よりSteelSeriesでは、各ゲームの世界トッププレーヤーとの開発協力体制を重視しており、ほぼすべての製品でゲーマーによる詳細なフィードバックが行なわれている。

 しかし海外に比べると日本では競技系のゲームシーンがあまり盛んではないため、正直なところSteelSeriesは苦戦を強いられているというのが冷静な見方だろう。単に「これは良いものだ!」と声高に宣言したところで、多くのユーザーに認知してもらえるとは限らない。そこでどのような目標設定をしているのか、川田氏のコメントをご紹介しておこう。

 「今年の目標は、市場拡大とサービス、品質の向上に尽きます。もっとより多くの方に競技的にゲームをプレイする楽しさを知ってもらい、私たちの製品をより多くの方に触れていただきたいと思っています。弊社の全ての製品はゲームで勝利する事を目的に開発されているので、向上心の強いプレーヤーに製品を使っていただく事で、私たちの製品もその本懐を遂げられるものと思っています」。

 これに平行してSteelSeriesではある動きが起きているという。パフォーマンス志向のあまりに呪縛となっていた、「ワイヤード(有線)へのこだわり」を脱却することだ。確かに有線は確実で速い。しかしケーブルの取り回しは、一般のゲーマーにとって苦痛になりつつあるのも事実だ。市場を広げるためには避けて通れないテーマだが、SteelSeriesはそこをどう歩み寄るのだろうか。

 川田氏によれば、近年のゲーミングデバイスのワイヤレス化の傾向はSteelSeriesの技術スタッフも注目している。まずは遅延の影響の少ないオーディオ周辺のワイヤレス技術で納得のいくものを作り、取り回しの良いデバイスを提供していきたいという考えだ。マウスなどさらにパフォーマンスを求められるデバイスに関しては、ヘッドセットで十分な技術蓄積が行なわれてから順次ということになるだろう。

 話しぶりからワイヤレス化は当分先になりそうな気配ではあるが、近日登場予定のデバイスとしていくつかの製品が予定されている。まず以下の画像に紹介するように、1月29日にヘッドセット「SteelSeries Siberia v2」を始め、「Mobile Device Adapter」などいくつかのアクセサリ製品が国内販売される。その他ヘッドセット、キーボード数点、また「ゲームやその他サービスとのコラボレーションモデル製品」を数点、遠くない時期に投入する予定だ。今年のSteelSeriesは、より面白い存在になれるか。期待しつつ見守りたい。


「Siberia v2 Full-Size Headset」。アナログ2ch、50mmの大型スピーカーユニットを搭載するヘッドセット。価格は10,980円「Siberia v2 Full-Size Headset USB」。デジタル7.1chのUSBサウンドユニットを備えるヘッドセット。より高級感のあるデザインを採用して価格は13,980円「Mobile Device Adapter」。iPhone、iPodTouch等のモバイルデバイスにPC用ヘッドセットを接続するためのアクセサリ。価格は1,980円

(2010年 1月 20日)

[Reported by 佐藤カフジ ]