【連載第21回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


【年末特別企画】ちょっと違った遊びを求めるPCゲームファンのためのPCゲームカタログ
年末年始のバケーションはこれらのタイトルを遊び尽くせ!


色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプ トに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、 様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



 ■ 「いつもと違う、だけど抜群に面白い!」というゲームを遊ぶ

年末年始は、いつもと違うゲームで?

 「も~うい~くつ寝~る~と~」、というわけで、もうすぐ壁のカレンダーを張り替える時期。2009年も終わりかと思うと少々寂しいものがあるが、楽しみなこともある。年末年始の休暇がやってくる。

 大晦日には除夜の鐘を聴いて、年越しソバを食べたら初詣。暖かいこたつを囲んでおせち料理に舌鼓を打ちつつ、親類縁者と新年のご挨拶。あっ、そういえば俺、いつからかお年玉は“あげる方”になったんだっけ……。

 と、ステロタイプな正月ライフスタイルを想像しつつも、まあ実際の過ごし方は人によりけり。筆者などはラッシュを避ける“タイムシフト制”とばかりに正月シーズンには帰省しない種類の人間なので、基本的に年末年始はヒマだ。行きつけのお店もやってないのでは、家に篭ってゲームしまくるしかないだろう。

 というわけで、多くの人がまとまった休みを取れる貴重な時期、多少なりとも得られる自由時間で「どのゲームをやりこもうかな」と算段中の方も多いのではないかと思う。あらゆる事物がゲームプレイに帰着する本連載だからこそ、そんな方々のために今回はオススメのPCゲームを紹介していきたい。

 2009年もPCゲーマーにとって“鉄板”と呼べるゲームが多数登場した。Valve Softwareの「Left 4 Dead 2」しかり、Infinity Wardの「Call of Duty: Modern Warfare 2」しかり、あるいはBioWareの「Dragon Age: Origins」(悲しいことに日本語版未発売)だ。とはいえ本連載の読者の方々には、筆者がいまさらこういったメジャータイトルの紹介をしても釈迦に説法だろう。「それ以外のお勧めはないの?」とこう来るに違いない。

 そこで本稿では、年末特別企画であるにも関わらず、敢えてメインストリーム系のゲームタイトルをスルーしつつ、いつもと違うゲーム体験を与えてくれるユニークなタイトルをピックアップしてみた。全8つのタイトルを、「ひとりでじっくり遊ぶ」、「皆でワイワイ遊ぶ」、「ストイックに突き詰める」として分類してみた。せっかくのこの機会、あなたが得意なジャンル以外のゲームに敢えて挑戦してみることをオススメしたい。


【今回のラインナップ】
「Tropico 3」
箱庭経営シミュレーション
「Mount&Blade」
中世合戦アクションRPG
「Boderlands」
シューティングRPG
「Killing Floor」
サバイバルFPS
「鉄鬼」
メカニカルアクションシューティング
「Serious Sam HD」
協力型FPS
「Quake LIVE」
対戦型FPS
「Colin McRae DiRT 2」
オフロードレーシング


■ ひとりでじっくり、至福の時間を過ごせるゲームタイトル

・ようこそプレジデンテ! 幸せ回路を刺激する、トロピカルでちょっと刺激的な箱庭

【Tropico 3】
開発元:Haemimont Games
発売元:Kalypso Media
発売日:2009年10月20日(北米版)
価格:39.99ドル
ジャンル:箱庭経営シミュレーション

南国のトロピカルな島が舞台の箱庭ゲーム。経営感覚が重要だ
住民の生活が細かく描写される。家と各種施設の距離には注意しよう
定期船で商品が輸出されていく。黒字経営に乗せつつ島の開発にいそしもう

 「SimCity」に代表される箱庭経営シミュレーションゲームの中でも、本作「Tropico 3」は最高傑作に挙げられる作品だ。舞台は南洋に浮かぶ小さな島、あなたは独裁政権の“プレジデンテ”。とうもろこし畑のほかに産業らしい産業のないトロピカルアイランドを、あの手この手で豊かな経済都市へと成長させるゲームだ。

 多くの箱庭系ゲームが「終わりのないゲーム性」を採用していることに対して、本作には明確なゴール、終着地点が存在する。プレイする島はいくつもあって、その島ごとにゲームの条件、達成するべき目的が設定されているのだ。その中で共通することは、上述のように島の経済を豊かに成長させることだ。

 経済成長のカギは、農産品や加工物の輸出で儲けること、あるいは観光収入を得ることである。とはいってもローマは1日にしてならず。本作では限られた国家予算を上手に使って、段階を踏んで都市を成長させるという経営センスを問われる。

 代表的な輸出品は種々の農産品。パイナップル、パパイヤ、バナナといった南国らしい果物は良いお金になるし、タバコ、コーヒーといった嗜好品は国庫を効率よく富ませてくれる。毎年のように外国から移民してくる人々のおかげで人口は勝手に増えていくので、有望な場所にどんどん農地を広げていく。ただし、地形や標高によって育てられる作物は違ってくるので、しっかりとした土地管理の意識が必要だ。また、利益ばかりを追究して利益率の高い商品作物ばかり作っていると住民に餓死者が生まれたりするなど、ゲームの設定は非常にシビアだ。

 そこでプレーヤーは、住民の生活にも目を向けなければならない。住民は家に住み、職場に通う。家がオンボロなら不満が出てパルチザン化するし、職場が遠すぎると労働時間が減って生産性が下がってしまう。信仰心の篤い住民のために教会を建てたり、病死を減らすために診療所を作るのも大事なことだ。いかに効率よく住民が生活できるか、都市計画に多大の頭脳を使うことになるだろう。

 経済がある程度成長してきたら、農産品を加工できる各種工場を建てることでさらに経済をブーストできる。ただし高度な産業には高い教育を受けた人材が必須で、町に高校や大学を建てて年頃の住民が卒業するのを待つか、高い金を払って技能労働者を外国から呼ぶ必要がある。先立つものは金、金、そして金だ。

 豊かな自然を活用して観光ホテルを建て、バカンスを楽しむ外国人から金を巻き上げるのもいいだろう。軌道に乗ってきたらプールやスパといった娯楽施設を作り、その導線にカジノを作って集金するのも面白い。観光産業で定収を見込めるようになれば、住民サービスを拡充して、来るべき自由選挙で大量得票できるようになるだろう。ちなみに落選したらそこでゲームオーバーだ。

 といった感じで本作は、箱庭経営の面白さをギュッと凝縮したようなゲームになっている。何度やっても違った戦略が組める自由度が特に素晴らしく、病死や餓死といった孤島の貧しい国ならではの現実が見え隠れするのもスパイシー。そのすべてを南国風味のあっけらかんとした音楽が包み込み、プレーヤーの幸せ回路を刺激してくれる作品なのだ。


基本は見下ろし視点でプレイ。カメラを下げれば町の風景を楽しむこともできる
産業国家を目指すか、観光立国を目指すか? プレーヤーの選択次第で、どんどん経営戦略が広がっていく作りがよい所だ



・鉄塊を食らえ! ユーザーMODで100回遊べるようになった合戦アクションRPG

【Mount & Blade】
開発元:TaleWorlds
発売元:Paradox Interactive
発売日:2008年11月4日(北米版)
価格:29.99ドル
ジャンル:中世合戦アクションRPG

大迫力の戦闘。鉄の刃の重みを感じる、独特のアクションシステムが採用されている
RPG的なキャンペーンマップで、立身出世を目指す
キャラクターの成長も重要な要素。戦闘スタイルに合わせてスキルを選ぼう

 昨年発売されたゲームを敢えてご紹介する理由は3つある。ひとつは、本作が極めて優良なゲームであるにもかかわらず、いまだ「知る人ぞ知る」レベルの認知度であること。2つめは、発売後およそ1年で多数のMOD(ユーザーによる改造モジュール)が充実し、いくらでも変化を加えて遊べるボリュームが実現していること。3つめは、来年3月に大型拡張パック「Warband」のリリースを控え、今こそプレイしておくべきゲームであること、である。

 トルコはアンカラを本拠とするゲームスタジオTaleWorldsが開発したこの作品のテーマは、ズバリ「中世の合戦、封建領主の地位を疑似体験すること」。基本システムとしてはRPG+箱庭シミュレーション的なキャンペーンマップモードに、リアルタイムの3D戦闘アクションを組み合わせたものになっている。タイトルの「Mount & Blade」という名の通り、騎乗しての戦いが体感度の高い方法でアクションゲーム化されているのだ。

 戦闘シーンでは敵、味方合わせて総勢数百人の兵士が登場し、歩兵や騎兵が入り乱れて戦場の風景を作り出す。その中でプレーヤーは1人の騎士として、馬に乗って駆け巡り、敵兵を剣で撫で斬りにしたり、ランスチャージを仕掛けて敵を馬ごと打ち倒すことができる。もちろん下馬戦闘も可能で、剣+盾で硬く戦うもよし、両手用の大剣を振り回し、ばったばったと敵兵を薙ぎ倒してもいい。

 特筆すべきは、その基本アクションの「物理的衝撃感覚」をしっかりとゲーム化していることだ。プレーヤーはマウスを動かす方向によって剣を振る方向を決めることができ、また、それに自分と相手の相対運動が加わることにより、攻撃のダメージが大きく変化する。例えば、全速力で突っ込んでくる騎兵に対し、カウンター気味に両手剣のスウィングをブチ当てれば、敵兵は馬ごともんどりうって倒れる。ひとつひとつのアクションが、爽快至極なのである。

 RPG的な部分も非常に楽しく作りこまれており、プレーヤーのやりこみを加速させてくれる。はじめ一匹狼の騎士として始まるプレーヤーは、世界各地で旅の仲間(コンパニオン)と出会い、各地の村々で兵士を募集することによって次第に、一大勢力として成長していく。世界に5つ存在する各国は常に覇権を争っており、そのうちの1つに仕官して1国1城を目指すもよし、独立愚連隊のまま勢力拡大を目指すもより、あるいは各国の王位簒奪者に味方して、「解放軍のリーダー」として反乱軍を率いてもいい。

 都市や城、村といった封土を手に入れたらその防衛や経営にも手をかけよう。封土からは定期的な税収が見込め、投資を行なって各種施設を建設することで、さらにその税収を伸ばすことができる。各地の特産品を買占めて、遠方に売りに出るという交易で儲けてもいい。お金を沢山儲けることができたら、各都市の武器屋・防具屋を巡って、最高級の剣、弓、鎧を手に入れ、一騎当千の力を養える。

 戦国の少数精鋭部隊を演ずるもよし、大量の弱兵を率いて大戦略チックに戦うもよし。いずれにしても本作は、プレーヤーの様々なスタイルを受け入れ、それを戦闘シーンの痛快アクションで見事に昇華するというパワーを持っている。これほどのゲームを未体験というのは勿体無いので、ぜひ1度試してみてほしい。やり尽くして飽きるころには、マルチプレイ対応の拡張パック「Warband」がリリースされるはずだ。


本作の華はやはり野戦。剣、ランス、斧、弓、あらゆる装備の敵と味方が入り乱れて血みどろの戦を演ずる。その中で一騎当千の活躍を果たすのがたまらなく楽しい
1国1城の主を目指すうえでは避けて通れない攻城戦。大量の弓兵が待ち構え、矢の雨が降り注いでくる



・FPSと「DIABLO」のゲーム性を高度に融合させた、魅惑の冒険活劇空間

【Borderlands】
開発元:2K Games
発売元:Gearbox Software
発売日:2009年10月30日
価格:49.99ドル
ジャンル:シューティングRPG

荒廃した世界も、カートゥーン風グラフィックスのおかげで明るい雰囲気
戦闘はFPSスタイル。武器とスキルの組み合わせで戦略が大きく変化する
アイテムを探してついつい旅を続けてしまうゲーム性

 「DIABLO」に代表されるハック&スラッシュ系のRPGは、1度クリアしても2週目、3周目とついつい長くやりこんでしまうものだ。その面白さにFPSのアクション性を組み合わせよう、という試みはこれまで何度か行なわれてきたが、その中でも最高の完成度と呼べるのが本作「Borderlands」だ。

 本作では荒廃した銃とギャングの世界が冒険の舞台となる。プレーヤークラスは4種類あり、銃の射撃に優れた「ソルジャー」、タフで近接攻撃力のある「バーサーカー」、スナイパーライフルの名手「ハンター」、特殊能力で差をつける「サイレン」のいずれかを、ゲームスタート時に選択できる。いずれのクラスにも3つのスキルツリーが用意されており、レベルを上げていく際の育て方によって、異なる戦略が取れるというのもRPGライクにしっかり作りこまれている点だ。

 戦闘は完全にFPSだ。基本は敵の弱点を狙って撃つこと。人間型の敵なら頭が弱点で、命中すれば通常の2倍のダメージを与えることができる。これが動物や珍妙なモンスターとなると、弱点が狙いづらい位置にあったりするので、戦法は一筋縄にはいかない。とはいえ、カートゥーン風で表現されたユニークなグラフィックスのおかげで、敵の視認性が高く、非常にプレイしやすいのが良いところだ。

 戦闘、レベルアップ、という成長要素に加えて、やはり面白いのがトレジャーハンティング要素。例えば武器。ハンドガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、グレネード、ロケットランチャーといった系統でかなりの種類が用意されており、それに「DIABLO」ライクな特殊効果が組み合わさることによって、そのバリエーションはほとんど無限だ。「命中した敵を燃やす」といった強烈な特殊効果がついた武器は非常にレア。それに、武器ごとに連射速度、装弾数、リロード速度といったパラメーターがあり、これもレアなものは凄い性能がついていたりする。

 武器、防具のほかに「クラスMOD」という、クラス毎の特殊能力を強化するアイテムが存在し、トレジャーハンティングの対象はとても豊富。いちどクリアした後の2週目ではより強力なアイテムが出現するようになるので、最強のアイテムを求めてひたすら「Borderlands」の危険地帯を彷徨いたくなるという作りだ。ちなみに本作は4人までのマルチプレイモードも搭載しているが、どちらかというとひとりでじっくりプレイするほうが幸せなゲームでもある。

 この「Borderlands」は、日本でも2010年2月にマイクロソフトよりXbox 360版がリリースされる予定だ。それをPCゲーマーならひと足早く楽しめるということで、その喜びを実感しつつトレジャーハンティングに興じるのも悪くない。


武器はハンドガンからロケットランチャーまで何でもござれ。レベルアップ時のスキル選択により、得意な武器が決まっていくという仕組みもある
広大な世界を探検する1週目、さらに強いアイテムを求めてさすらう2週目。ひとりでじっくりプレイするのに最適なゲームのひとつだ



■ 皆でワイワイ、マルチプレイで盛り上がるゲームタイトル

・強烈なゾンビを相手に、皆で協力プレイ! 少ない弾薬でどう凌ぐか?

【Killing Floor】
開発元:Tripwire Interactive
発売元:Tripwire Interactive
発売日:2009年5月14日(北米版)
価格:14.99ドル
ジャンル:サバイバルFPS

敵は硬くて強烈なゾンビの群れ。弾薬不足が心配の種だ
「ウェーブ」の合間には武器屋で買い物。弾薬補充が精一杯ということも多い……
ドアを溶接して安全を確保することも。ただしいつかはゾンビの猛攻で破られてしまう

 「Left 4 Dead」シリーズの台頭でFPS界にゾンビ旋風が吹き荒れているが、本作「Killing Floor」は、それよりも前から欧米で人気を獲得していたゾンビゲームだ。もともと「Unreal Tournament 2004」のMODとして開発がスタートした本作は、その刺激的な面白さから沸々と人気を集め、今年春に念願の製品化を達成。現在では「Steam」上でオンライン販売されている。

 本作のテーマは「サバイバル」。プレーヤーは最大6名のチームで防衛隊を組み、四方八方から攻め来るゾンビの群れを撃退し、生き残ることが目的だ。ゲームは「ウェーブ」という単位で進行し、難易度やプレイ人数にもよるが、1つの「ウェーブ」で数十体から百数十体のゾンビが登場する。ここまでは「Left 4 Dead」シリーズに似ているが、全く違うゲーム性が出てくるのはここからだ。

 本作で重要になるのは装備と弾薬のマネジメント。プレーヤーは戦果によってお金を稼ぐことができ、「ウェーブ」の間(1分ほどしかない)にマップ上を転々とする武器屋を探し、弾薬を補充したり武器を購入することができるのだ。始めはハンドガン1丁で始まるところ、順調に進められればアサルトライフルやショットガン、グレネードランチャーやボウガンといった強力な装備を購入して、より強大な「ウェーブ」に対抗することができる。

 対するゾンビの勢力は強力かつユニークだ。のそのそと歩いて襲い掛かってくる通常ゾンビを筆頭に、ゴキブリのように這い回って飛び掛ってくるゾンビ、泣きわめいて音響で攻撃してくるゾンビ、火炎弾でプレーヤーを焼き尽くそうとするゾンビ……。全体的にゾンビは硬く、弱点である頭に的確に命中させない限り、プレーヤーは簡単に押し切られてしまうほどの勢いだ。あわてて弾をばら撒いていると、ただでさえ少ない弾薬が枯渇して、一気に劣勢になってしまう。

 そこで重要になってくるのが、弾を的確に命中させつつ、有利なポジションで戦う、という戦略性だ。ゴールのある「Left 4 Dead」とは異なり、本作の広大なマップはすべてが戦場であり、プレーヤーはどこで戦おうと自由。家屋に立てこもるか、見晴らしの良い高所で防衛陣地を築くか。康難易度のプレイほど手ごたえのあるチーム連携を楽しめるし、それを上回る敵の攻勢があれば、意外性のある展開に大盛り上がり間違いなしだ。

 本作にはシングルプレイモードもあるが、それはあくまで練習モードと考えていいだろう。メインはやはり、協力プレイ。RPGライクなクラスシステム、レベルアップシステムもあり、本作ではプレーヤー間の役割分担、それによるチーム戦法の組み立てといった要素が際立ったものになっている。共に遊ぶ友人がいれば、真っ先にこのゲームを体験してみて欲しい。


「Left 4 Dead」シリーズと同じ“サバイバーVSゾンビ”という構図ではあるが、全く違ったテイストを楽しめる。気心の知れた友人とつるんでプレイすれば盛り上がること間違いなし
難易度を上げるとゾンビの勢いは凄まじいことになる。腕とレベルを上げて最高難易度に挑戦してみよう



・撃ちまくり、倒しまくりの元祖「DOOM」テイストを大事に育て上げた、珠玉のFPS

【Serious Sam HD: The First Encounter】
開発元:Croteam
発売元:Devolver Digital
発売日:2009年11月25日(北米版)
価格:19.99ドル
ジャンル:協力型FPS

とにかく撃て!避けろ!というシンプルイズベストなゲーム
エジプト風味の遺跡を舞台に、よくわからない敵が大量に登場する!
武器も弾薬も敵もふんだんに用意されている。あとは撃ちまくるだけ

 凝ったストーリーだとか、重厚な演出だとか、格好良いムービーといったものが逆に、FPSというジャンルの持つ本来の力を殺いでいるのではないか?と考える人もいるだろう。シングルプレーヤーFPSがそういった「手の込んだ」ゲームばかりになって早10年ほどが経過しているが、そんな時代の傾向に真っ向から立ち向かうゲームがきちんと存在する。それが「Serious Sam HD: The First Encounter」だ。

 クロアチアの独立系デベロッパーが生み出した本作は、もともと2001年にPC向けに発売されたゲームのリメイク版だ。2001年当時すでにFPS界は手の込んだゲームの独壇場になっていて、1990年代の「DOOM」を代表するプリミティブなFPSにノルスタジーを抱くプレーヤーは、この「Serious Sam」が提供するシンプルなゲーム性に注目した。

 本作にまともなストーリーは存在しない。舞台は未来、宇宙へのゲートを開いたら極悪モンスターが大量にやってきた。対抗するはわれらがヒーロー、シリアスサム!! 単純明快なプロットで、あとは敵を倒しまくるだけというさわやかさ。本作はFPSが本来持つ、「狙う」、「撃つ」、「避ける」というプリミティブなアクションの追求にすべてを注いでいる。

 エジプト風のステージを舞台とする「The First Encounter(最初の遭遇)」では、ちょっとした謎解き(といっても壁のボタンを押すだけ)を解決しつつ、大量の敵を相手にピストル、ショットガン、チェーンガン、ロケットランチャーといった武器で暴れまわることになる。現われる敵はゾンビっぽい兵士や、骨っぽい生物、巨大な突進牛、ロボっぽい生き物、悪魔っぽいモンスター、などなど何でもござれ。

 見た目にあまり格好よくない敵たちだが、その動きは計算され尽くしている。ゾンビ兵士たちはプレーヤーに「見て避ける」というアクションを強制し、骨っぽい生物「KLEER SKELETON」は、肉薄して飛び掛るというアクションに徹することで、プレーヤーに「間合い」と「振り向き射撃」の感覚を叩き込む。他の敵も、FPSで求められる基本のアクションを忠実に実行することで、初めて攻略が可能な動きと攻撃方法を持っているのだ。

 そして本作の醍醐味はマルチプレーヤーの協力プレイ。プレイ人数が増えるほど敵の数も増すという作りになっており、4、5人以上でプレイすれば画面を埋め尽くさんばかりの勢いで敵が登場してくるのだ。プレーヤー数は最大16名となっており、10名を越えたあたりからプレーヤー側の火力が圧倒し始めるという特性もあるが、それもまた一興。複数種類の敵が大量に同時出現したときに、いかに効率よく立ち回るか、それに本作のすべてが込められている。

 「手の込んだFPS」を長いことプレイしていた人も、本作をプレイすればFPS本来の立ち回りとクイックネスを思い出せること必定だ。これが不思議な魅力を持っており、心の表層では何が面白いのかわからなくとも、もっと深い部分で惹き付けられるものを感じる。延々猛攻が続くゲームであり、1時間もプレイすればヘトヘトになるので、ちょっとした余暇にプレイしてみるのもオススメである。


謎解き的なフィーチャーもあるが、無意識に進んでいても勝手に解けるという難易度なのでアクションに集中できる
マルチプレーヤーゲームをホストしていたら、いつのまにか凄い人数に。全ステージを通してプレイしてしまい、どっと疲れてしまった



・オンラインシューター新時代! 新たな駆け引きを可能にしたメカニカルアクション

【鉄鬼】
開発元:GameHi
発売元:ゲームヤロウ
発売日:2009年12月17日よりオープンβテスト中
価格:無料(アイテム課金を予定)
ジャンル:メカニカルアクションシューティング

プレーヤーは8種のメカを操り、マルチプレーヤーの作戦に挑む
倉庫では現在の所有機体とその装備を確認できる。多数の機体を入手するには長時間のプレイが必要だ
整備型のプレーヤーに修理してもらい、再出撃。クラス間の連携が重要

 今回紹介する中で、今すぐ始められるゲームのひとつがこの「鉄鬼」。ゲームヤロウが現在オープンβサービスを行なっているオンラインゲームで、従来のオンラインFPS的なゲームルールを踏襲しつつ、そのキャラクターとして「メカ」を持ってきたところに新しさがあるアクションシューティングゲームだ。

 本作では最大32人での対戦がサポートされており、従来のFPSに似通ったルールであるデスマッチ、爆破ミッション、占領モードといったゲームモードを搭載している。だが、キャラクターがメカになっていることで、そのプレイ感覚は従来のミリタリー系FPSとは大きく違ったものになっている。

 特に目立つのが、メカの種類による戦法の幅が大きいことだ。本作には8種類の機体が用意されており、その内訳は「軽量型」、「重量型」、「強襲型」、「狙撃型」、「火力型」、「観測型」、「整備型」、「工兵型」。人間キャラクターが戦うゲームに比べ、その差異は非常にドラスティックだ。

 例えば強襲型機体は、前面シールドを閉じることによって正面からの攻撃をほとんど弾くことができ、火炎放射器による近接攻撃は極めて強力。素早い軽量型機体は、ブースターを使って高速移動しながら射撃が強力だ。整備型の機体は本当に整備だけを目的とした内容で、味方機体の修理に力を発揮する一方、直接戦闘には滅法弱い。そのために、自動制御のセントリーガンを設置するという能力が付与されている。

 それに加え本作では、武器の選択による立ち回りが他のオンライン系FPSよりも非常に濃密になっている。あらゆる動作がメカっぽく再現されている中、各武器の攻撃特性がユニークなのだ。基本装備となるマシンガンは基本あまり打撃力がないので、近距離では強力なロケット弾(2発しかない!)を適宜使用するといい。遠距離で持久戦になったら、グレネードランチャー的な武器で牽制攻撃するのが効果的だ。こういった「発射から着弾までタイムラグがある」という武器は、これまでのオンラインFPSに驚くほど欠けていた要素であり、これだけでも新鮮味がある。

 プレーヤーは各ゲームモードで戦闘を重ねていくことで経験値を獲得し、新たな種類の機体をアンロックしていくことができる。いちどアンロックされた機体はそれ以降、ラウンド開始時に自由に選択することができるので、プレイを重ねるほどに戦略性が増すという按配だ。オンラインFPSならではの成長要素を上手く組み合わせている点も好印象である。

 こういった機体毎の差異があることで、よりチームプレイ要素が充実したものとなっているのが本作の特徴だ。普通に「野良」スタイルでプレイするのもよいが、友人とボイスチャットをしながら連携プレイをしてみるというのもいい。他のFPSと同じくクラン戦スタイルの戦いもサポートしているので、色々とチーム戦術や機体の割り振りを研究してみると面白いだろう。

 なお、本作では今後大型のアップデートを多数用意しており、本稿が掲載される直後の12月28日には、巨大なボスメカを巡って攻防を繰り広げる「ボスモード」を実装、次いで、来春にはNPCメカを相手に一騎当千の戦いができる「キャンペーンモード」を実装予定だ。アップデートに備え、今のうちに機体のアンロックを進めておくとよいだろう。


ゲームの基本的なテイストを学ぶためには、基本的なデスマッチ、サバイバルといったルールで通してプレイしてみるといい。ブースターの使い方が板についてきたら次の機体に進む頃だ
「占領モード」では、A~Eと名づけられた拠点を巡って攻防が繰り広げられる。防衛側が守りきるか、攻撃側が最後まで攻めきるか。連携で戦力を集中させることが重要になってくる



■ プレイスキルをストイックに突き詰める。ゲーマー修行にオススメのタイトル

・WindowsでもMacでもLinuxでも! ブラウザー上でプレイする元祖対戦型FPS

【Quake LIVE】
開発元:id Software
発売元:id Software
発売日:正式版未定、現在ベータテスト中
価格:無料
ジャンル:対戦型FPS

ゲーム内容は「Quake III」そのもの。プリミティブなゲーム性を楽しめる
ゲームはブラウザ上で動作するが、スタンドアロン版と変わらぬ操作性
日本国内にもサーバーが用意されている。ラグなどは全くなく、非常に快適だ

 1999年末に登場した元祖対戦型FPSの金字塔「Quake III: Arena」。その磨かれたゲーム性はいまだに世界的に人気があり、賞金をかけた戦いもまだまだ健在。オンライン系FPSなどから入ったプレーヤーにとっては「過去の作品」といった印象もあるだろうが、その「Quake III」が今年春にオンライン化を果たしているので、いちどやってみては如何だろうか?

 本作「Quake LIVE」は、「Quake III: Arena」のブラウザゲームバージョン。Windows、Mac、Linuxで動作し、日本を含む世界各地にゲームサーバーが設置されているので、ノーラグの完璧な環境でプレイを楽しむことができる。しかも、プレイ料金等は完全無料。Quake LIVEのサイトに接続して、必要コンポーネントをインストールすれば、即座にゲームプレイが可能だ。

 ブラウザー版ということで「動作が重いのでは」、「ちゃんとマウス感度が設定できるのか」など心配事もあるかもしれないが、驚くべきことにまったく問題なし。スタンドアローン版の「Quake III」と同等のクイックネスでゲームが動作し、きちんとフルスクリーン描画にも対応しているので、往年の名プレーヤーも納得という出来だ。

 ゲーム内容としては、「Quake III」のデスマッチをベースに、CTFや1on1マッチなど、ゲームルール面でいくつかのバリエーションが加えられている。筆者が特に好きなのは1on1マッチ。参加プレーヤーの見守るなか順繰りでタイマンをやるという形式で、自分のFPS力(ぢから)が明白になるだけでなく、強いプレーヤーの動きをつぶさに見ることができて勉強になるのだ。

 そんな「Quake」の魅力は、やはりゲームの基本がプリミティブでストイックであることだ。プレーヤーはマップ上に散らばる武器やアーマーといったアイテムを効率よく集めつつ、相手よりも有利な状況を作りながら、的確な射撃でスコアを上げていくことを目指す。予測が重要なロケットランチャーと、精密さとクイックネスが求められるレールガン。1瞬の駆け引きがそれまでの蓄積をすべて破壊する、冷血無情なゲームでもある。

 それだけに本作のプレイは、FPSプレーヤーとしての基本スキルを高いレベルで要求するし、射撃、回避、マップ理解度といった実力面の違いを浮き彫りにする力がある。そこにはプレイを重ねるごとに改善されていくものもあるし、筆者のように「ああ、もう若い者にはついていけないなあ」という限界に直面するものもあるだろう。そのすべてが「Quake」の魅力だ。

 現在はベータバージョンということで正式サービスがどういう形になるかは不明だが、サイトの構成や周辺の情報から推測すると、いわゆるアイテム課金的なサービスは行なわないつもりのようだ。ゲームそのものはすでに完璧な完成度となっており、往年の名プレーヤーから、新進気鋭のプレーヤーまで、腕磨きの場所としてこれ以上ないフィールドになっている。未体験の人もぜひ、このストイックなゲームプレイを体験してみて欲しい。


今となっては素朴な「Quake III」のゲーム性だが、シンプルだからこそ練習の成果が数字になって現われやすい。FPSの腕を磨くために抜群の素材だ



・DirectX 11のアドバンテージを楽しめる、優良オフロードレーシングゲーム

【DiRT 2】
開発元:Codemasters Racing Studio
発売元:Codemasters
発売日:2009年12月5日
価格:$39.99
ジャンル:オフロードレーシング

このクオリティ。ラリーゲーム史上最高のグラフィックスと言っていい
コックピットビューが最も迫力あるプレイを楽しめる
レース外の演出も凝っていて、プレーヤーの意欲をあの手この手でかきたててくれる

 レースゲームの老舗、Codemastersのメイン開発スタジオが担当した本作「Colin McRae DiRT 2」。オフロードレースのあれこれを詰め込んだ大作になっており、バギーからラリーカーまで、様々なスタイルのレーシングを楽しむことができる作品だ。

 前回の連載記事で少しだけ取り上げた本作だが、当然、DirectX 11のパワーを実感できるだけが魅力ではない。たとえDirectX 11を使用できない環境でもグラフィックスは過去最高クラスのレベルにあり、かつてないほどオフロードレーシングの迫力を楽しめる。また、レースゲームとして最も肝心なドライビングモデルが非常に秀逸、爽快なのである。

 本作には車高の高いクルマ、車高の低いクルマ、はたまた強力なサスペンションに彫りの深いダートタイヤを履いたクルマなど幅広い車種が登場する。そこで良さを感じられるのは、それらの車両の走行特性の違いがしっかりとプレイ感覚に現われるところだ。

 車高の高いトラック系のレースではサスペンションの弾力が深く入ってくるため、高速を維持するためには車両の揺れを抑えるコース取り、そのための速度制御が重要だ。大角度のドリフトで急カーブを制することもできるが、コーナーの内側にある水溜りに敢えて突っ込んで強引な制動効果を得る、という作戦もアリである。

 対するラリーカー系のレースでは、より地面上を滑る感覚を強く持ちながらプレイすることになる。基本、ちょっとした角度のカーブでもまず確実にドリフトが入ってくるのだが、その途中にグリップを変えてしまう環境要因があると、車両のコントロールは大きく乱れがち。例えばダートコースから舗装コースに入っていく瞬間、ステアリングをそのままにしておくと内側に切れ込んでクラッシュだ。こういった車両制御を無意識にできるようになってきた瞬間、本作のプレイは本当に気持ちよいものになってくる。

 その上で大いにハマるのがタイムアタックだ。ダートコースではちょっとした制御の違いが大きなタイムロスとなって現われてくるため、オンロードレースに比べてさらに神経を使う面がある。地面のちょっとした出っ張りや水溜りを避けるか、敢えて利用するか。タイムを縮めていく走りは本当にストイックに楽しめ、気がつけば何時間ものプレイ時間が経過しているという按配である。

 「自分はサーキットレース派だし」とお思いの方も、レースゲームが好きなら是非本作に挑戦してみよう。スピードと重量、慣性と推力、様々な面で車両を操る楽しさを味わえるはずだ。筆者も本作のおかげでオフロードレーシングが好きになりそうである。


DirectX 11対応による最上級のグラフィックスは、もちろん見所のひとつ。最新鋭のハードウェアをお持ちの方は必携のタイトルだ
純粋にクルマのゲームとしても本作は最高の水準にある作品だ。プレイの際はぜひハンドルコントローラーで臨んで欲しい


(2009年 12月 25日)

[Reported by 佐藤カフジ ]