【連載第27回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


【G-Star 2011特別編】オンゲーの祭典で見えてきた韓国ゲーム事情
注目ゲームから、対戦実況、こだわりのブース……確かに感じるG-Starの進化


 オンラインゲームの様々な面を取り上げていく「てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム」。今回は韓国・釜山で行なわれたG-Star2011を僕の視点でふり返りたいと思う。出展されるタイトルは、年末から年頭にサービスされる「これからの韓国オンラインゲーム」で、来場者は専用のコンテンツや見所を凝縮したものまで様々な試遊台が設置されている。

 僕は韓国のゲームショウは2003年から毎年見ているが、改めて振り返ってみると、韓国のゲームショウの進化には驚かされる。昔はルーレットにボールを投げて景品をもらったり、マジシャンを呼んでショウをしていたり、メーカー自身もユーザーに対して未来のゲーム像を提示できていなかった。それが今やG-Starは日本のゲーム業界にとって東京ゲームショウやE3と同じように無視できないゲームショウになっている。何故なら出展されているタイトルのいくつかは日本で確実にサービスされるからだ。

 そして韓国のゲームショウは「韓国ゲーム業界」の縮図でもある。G-Starからは韓国の人達がどのようにゲームに触れているかが見えてくる。さらに会場の「お祭り」ならではの光景も楽しい。今回のコラムでは、「オンゲー好き」の視点から気になったタイトルや、感心したこと、色々な点をピックアップしていきたい。


■ 国民的ゲームに高い期待! 「Blade & Soul」や「Diablo III」を超える期待作「Lineage Eternal」

「Lineage Eternal」のムービーの前は常に黒山の人だかりが

 今年のG-Starでまず気づいたのが「ユーザーがよりゲームを楽しむようになった」ということだ。試遊台ではスキルツリーを調べたり、マップを調べたり、熱心に自分のコンテンツと見比べている。ユーザーがオンラインゲームに対して強い興味と関心を持っていると感じた。韓国と日本はゲームにおける状況が全く違うが、オンラインゲームがメジャーで盛んな様子は興味深く、やはりちょっとうらやましかった。ユーザーのゲームに向ける熱意、メーカーの力の入れ方……全てに勢いを感じた。

 その中でやはりすごいと思わされたのがNCsoftの「Lineage Eternal」だ。ブースの側面に巨大なモニターを設置し、ムービーを流していたのだが、少し見ただけで目を引き付けられる。最も魅力的なのはやはり細部までこだわりを持って作られているところと、アクションゲームとしてとても爽快なゲーム性を持っているところだろう。ムービーから伝わるゲームへの期待感は、僕自身プレイしたいと思ったほどだが、韓国のユーザーにとってこの「Lineage Eternal」はさらに特別な存在なのだ。

 僕ら日本人にとって「Lineage」は多くのMMOの1つに過ぎないが、韓国のオンラインゲームユーザーにとっては特別なゲームだ。ゲーム好きの日本人にとって「スーパーマリオブラザーズ」シリーズが特別な存在のように、韓国オンゲープレーヤーにとっての「Lineage」は特別な思い入れがある作品だと思う。韓国でのオンラインゲームの爆発的ヒットをもたらした作品であり、長い間1番人気の座についていた。「Lineage」が初めてのMMORPGという人も多い。韓国ユーザーにとって“国民的”なゲームであると言える。そして多くの新しいMMORPGが生まれていく中で「Lineage」の次なる進化を夢想するユーザーは多かったと思う。

 彼らの夢の一部は「Lineage 2」で叶えられたが、「クォータービューでハック&スラッシュのゲーム性を持ちながら……」といった方向性でのファンの願いを受け止めたのが本作だと思うのだ。クォータービューの「Lineage Eternal」のグラフィックスは非常に細かく、そして多数のキャラクターが入り交じり大規模戦闘を展開する。雰囲気として「Lineage」を受け継ぎながら別次元の進化を遂げているのがわかる。そしてアクションだ。リアルタイム性の高い敵との駆け引き、仲間を率いての戦闘はムービーを見ているとどんどん期待がふくらんでくる。「Lineage」ファンの期待を上回る進化なんじゃないかと思う。

 その「Lineage」の進化版と言える本作は、「Blade & Soul」を超える期待をかけられるかもしれないとも思うのだ。そしてこの時期にクォータービューのハック&スラッシュのゲームを発表するというのは「Diablo III」への挑戦状ともとれる。Blizzardが大好きな韓国ユーザーはもちろん「Diablo III」に大きな期待を寄せている。「Lineage Eternal」はその「Diablo III」を超えることを目標に作ってるんじゃないかと、期待してしまう。Blizzardは本当に時間をかけて「Diablo III」を開発し、韓国でのヒットは間違い無しだが、「Lineage」を受け継ぐ「Lineage Eternal」は韓国ユーザーの心を刺激し、「Diablo III」を超えるヒット作になるかもしれない。

「Lineage Eternal」のスクリーンショット。“クオータービューでハック&スラッシュのゲーム性”というかつて多くの韓国メーカーが挑戦した「Diablo」のセオリーをあえてそのまま踏襲して、そこから進化を狙っているところが注目点だろう


■ 歓喜も焦燥も克明に映し出すカメラ、数十分しゃべりっぱなしの超ハイテンションの韓国ゲーム実況

敗北にうなだれる選手と慰めるスタッフ。ゲーム中継ではその様子までも映し出していく
立ち上がり叫ぶような大きな声で実況が行なわれる。言葉は数十分途切れない

 韓国には「オンゲームネット」、「MBC ゲーム」というオンラインゲームの情報を中心に扱うケーブルテレビ放送局が2つある。さらにインターネット配信「GOM TV」でもオンラインゲームの情報を中心に扱っている。そのオンラインゲームの放送の中での人気コンテンツは、対戦イベントの実況だ。韓国では対戦イベントの実況放送はエンターテイメントとして市民権を得ている。

 G-Star 2011ではオンラインFPSが多数出展されていることもあり、どこかのブースで常に対戦イベントが行なわれていた。この時イベントを盛り上げるのが“実況放送”である。NHNの「Metro Conflict: Presto」やNeowizの「DIZZEL」ではノリの良いアナウンサーとアシスタントの女性が常にハイテンションでユーザー達の対戦を実況し会場を盛り上げていたし、NCsoft「Guild Wars 2」でも定期的に行なわれる対戦イベントは女性のコンパニオンが実況を盛り上げた。

 その対戦イベントで最も盛り上がっていたのが「World Cyber Games(WCG)2011」のコーナーだ。ここでは様々なタイトルの韓国国内の代表を決める決勝戦が行なわれており、その模様が常にTVで実況されていた。僕が見たのは「Starcraft II」の決勝戦だが、その緊張感は凄まじかった。勝負は1試合数十分にも及び、一進一退の攻防が繰り広げられるのだが、観客達は食い入るようにステージを見続け、実況は常にハイテンションでしゃべりまくる。

 ステージは中央の実況席を中心に、左右に選手が座るコーナーが用意されている。選手のコーナーはガラス張りで彼らの様子は観客に手に取るようにわかる。面白いのはカメラだ。ゲーム画面がメインだが、戦況に変化があったとき選手の顔がカットインする。劣勢に焦る表情や相手を追い詰めるときのエゴイスティックな表情など全てが大画面に映し出される。

 選手はカメラを意識しながらも勝利のために力を振り絞る。そしてカメラは敗北したときの落ち込む表情も容赦なく映し出す。僕が見た試合は3本勝負の1本目だったが、インターバルではまるでボクシングのコーナーのように、スタッフが選手を励ます姿も実況されていた。韓国の選手達は常にこのプレッシャーと視線に囲まれて戦っているのだ。オンラインゲームにおいて「韓国の選手は強い」といわれることが多いが、この状況でいつも戦っているのだからなるほど強いわけだと妙に納得させられた。

 Blizzardブースではプロ選手達によるエキシビションマッチが行なわれていたのだが、こちらもテンションがすごかった。アナウンサー達は立ち上がり、実況席のモニターを見下ろしながら実況し続ける。何を言ってるのかはわからないが、良くそんなにしゃべる内容があるなと思わせるマシンガントークを叫ぶような大音量で試合中続けるのだ。対戦ステージの構成も選手の顔が両コーナーにでかでかと映し出され、WCGブース以上のインパクトだった。

 かつてアナウンサーの古舘一郎さんのプロレスの実況が様々なスポーツ実況に影響を与えたが、ブースの構成や、実況の仕方、カメラアングルなど韓国では「ゲーム実況」において独自の進化をしているとはっきりと感じた。現在オンラインゲームは世界各地に裾野を広げているが、韓国のこの実況スタイルは今後オンラインゲームの普及と共に各国に広がっていくかもしれない。

会場では選手の様子も常にわかるようになっている。カメラは観客を写すこともあり、カメラが向けられると観客は一斉に手を振る


■ この機会だからやりたいことをやるぜ! 全力で作品世界を主張するブース

 ゲームショウのブースの構成は大きな見所ではある。ゲームのコンセプトに合わせたブースを作り上げるのは、テーマパークか特撮映画のセットのようで、特撮映画好きの僕はついつい細かいところまでチェックしたくなってしまう。

 そんな中で僕が気になったブースが2つある。1つは「熱血江湖 2」を出展していたMgameだ。「熱血江湖」の原作は韓国で50巻以上が出版されている人気漫画で、今回のブースはその作品世界観そのままの木造の建物なのだ。他のブースとは明らかに雰囲気が違い、その空間だけが昔の時代にタイムスリップしてしまったかのようだ。その門をくぐりブースに入るのは、原作世界に足を踏み入れるようで、ファンには嬉しくてたまらないだろうなと思った。

 建物の中には原作で重要なアイテムとなる武器が展示されている。また原作のコスプレをしたスタッフもいて、細部までブースを制作した人のこだわりが強く感じられた。さらに会場の外には「熱血江湖2」の主人公の巨大な立像が展示されていた。見上げるほどに巨大な像は今回のG-Starで間違いなく1番のインパクトがあった。Mgameはこれらの展示物を今回の会場だけでなく、「熱血江湖」のテーマパークに再利用する予定だという。

 もう1つがWargaming.netの「World of Tanks」で、こちらは本物の戦車を会場の外と中の計2台も用意し、他のメーカーとはひと味違った存在感を示していた。ユーザーのニーズに応えると言うよりも、メーカーが「どうしても戦車を置きたかったんだ!」と全力で主張しているようにも感じられた。こちらも見ていてメーカーの気持ちに共感したくなるブースだった。

 この2つのブースを作った人は嬉しかったろうなあと思う。もし僕がゲームに関わる仕事をしていたらこういったこだわったブース作りをやってみたい。作品世界を現実化するというのは、クリエイターの夢じゃないかと思うのだ。キャラクターの巨大な像まで作ってしまう、会場に戦車を2台もどこからか持ち込んできてしまう。コアなゲームファンにとって見れば、それよりも試遊台をもっと多く! と思うかもしれない。インパクトはあるがプロモーションの費用対効果を考えたらマイナスかもしれない。しかし、この“暴走”ともとれる勢いと熱意がいいのだ。この大げさな仕掛を実現したスタッフに、僕は思わず「良くやった」と背中を叩きたくなってしまう。

作品世界観そのままの「熱血江湖 2」のブース。会場外の像は1晩で忽然と現われた
会場の外と中2台の戦車を持ってきた「World of Tanks」


■  てっちゃんの割とどうでもいい話 「韓国ならではのアーケードゲーム達」

「ASTRORANGER」の対戦風景は2人でセッションを行なっているようだ

 毎年の僕の個人的なG-Starの楽しみとして「アーケードゲーム」がある。日本より市場規模の小さい韓国では大きな規模でないが、必ずアーケードゲームが出展されている。BB弾をそのまま発射したり、映像に合わせて椅子が動く小さなアトラクションだったりと“ちょっとダサイ感じ”のゲームがあって面白いのだ。何よりもアーケードゲームは遊んでいる人の動きや表情が面白い。ここでは番外編として韓国のアーケードゲームを取り上げたい。

 韓国に限らず、アーケードゲームをプレイしている人の表情は特別なものがあって面白い。筐体がそのままゲームのコンセプトを表現し、全身でゲームを楽しむ姿は、見ているだけでも楽しい。それはオンラインゲームの“繋がる楽しさ”とは違うものだが、ゲームが持つ多様な楽しさのうち、最も直感的なものと言えるかもしれない。だからこそアーケードゲームは低年齢層に人気だった。進化を遂げたコンピューターゲームは複雑化し、子供には取っつきにくいものになっている1面がある。東京ゲームショウは低年齢専用のゲームコーナーを作り低年齢でも楽しめるゲームコーナーを作っているがG-Starのキッズコーナーでは巨大な滑り台などだけで、ゲームは置いていない。このためアーケードコーナーが子供向けコーナーとしても機能していた。

 パンチングマシーンやエアホッケー、クレーンゲーム。ゲームセンターで定番の人気ゲームは、時代と場所を越えて人気を集める。来場者全てが最新ゲームを求めてるわけじゃないし、ゲームってもっと幅広いと言うことを、アーケードゲームコーナーはいつも僕に教えてくれる。このアーケードゲームコーナーは他の場所とは違った活気があった。しかしパンチングマシーンなどは周りの人に当たってしまいそうで、体感型のゲームをプレイするには少々狭すぎで、もうちょっと大きいスペースで展示してもいいのではないかと感じた。

 韓国独自のゲームで面白かったのは「TECHNIKA3」と「ASTRORANGER」という音楽ゲームだ。「TECHNIKA3」は「K-POP」とアニメ絵風の美少女キャラクターの映像が流れるのが面白かったし、「ASTRORANGER」はポップで派手なリズムアクションで、対戦モードでは隣り合った2人が同じ動きをし、戦っていると言うより示し合わせてダンスを踊っているようだった。アーケードゲームは腕前を観客に披露するようなノリがあるが、この対戦モードはギャラリーに受ける要素だと感じた。


K-POPとかわいらしいイラストが画面に現われる「TECHNIKA3」
ポップな雰囲気のヒーローキャラクターが登場する「ASTRORANGER」
左は子供向け対戦ゲーム「MAGIC HANJYA BATTLE」、トラックで移動可能タイプの「MAX RIDER」、ロボットで対戦する「ロボサッカー」


〜今回ぐだってしまったゲームショウ〜

「G-Star2011」

 G-Starは2005年より毎年行なわれている韓国のゲームショウだ。2009年からは釜山で開催されるようになった。首都であるソウルから遠く離れての開催であるがゲームファンは熱心で、毎年来場者は増加し続けており今年の入場者数は289,110人。東京ゲームショウの222,668人を上回る数である。

 僕は2003年から韓国のゲームショウを見続けている。見始めた頃は大手メーカーをのぞいては試遊台もなく、ルーレットにボールを当てたり、竹の筒に矢を投げ入れるようなシンプルな遊びでユーザーを呼び込み、グッズを配っているかなりショボイショウだった。それが今や最新ゲームと華やかなショーアップ、そしてコンテンツの質も比べものにならない。この進化はふり返ると本当に驚かされる。

 繰り返し見ていると面白いところもたくさんある。その1つが「ハンマー」だ。G-Starでは各メーカーが大きなグッズを配り、それらを集めるのが来場者の大きな楽しみなのだが、数年前からやたら空気でふくらませるハンマーを配っている。そこかしこでこの巨大なハンマーを友人に振り下ろしているのが、G-Starの定番の光景になっているのだ。大きな打撃部分を持っているハンマーの見た目の重量感と、実際の軽さというギャップが人気の秘密なのだろう。

 G-Starの最新ゲームは日本でも注目する存在だ。今回出展されたタイトルのうち多くのタイトルが日本に上陸を果たすだろう。数年前僕は「日本の開発者が本気を出せば韓国に負けないオンラインゲームがいつでも作れる」と思っていたが、今はもうその考えが全く間違えていたことに気づかされた。世界で最もオンラインゲームに熱心なユーザーに揉まれ、激しい競争をくぐり抜けて生まれる韓国産オンラインゲームは他国の追随を許さないところがある。E3や東京ゲームショウと同じようにこれからも注目していきたいゲームショウだ。


撮影ブースでのコンパニオン。G-Starでもコンパニオンを撮影するのが目的な来場者も多く、彼らに応えるため各ブースは専用の撮影ブースを用意して、常に撮影会を行なっていた。中央は「World of Warcraft:Mist of Pandaria」のパンダそっくりの新種族をイメージし、中国風の背景にチャイナ服でアピール。右は撮影風景。高価なカメラを持つ人ばかりだ
G-Starでは数年前からやたら空気でふくらませるハンマーを配っている。そこかしこで友人にこの巨大なハンマーを友人に振り下ろしているのが、G-Starの定番の光景になっているのだ。中央は会場の外で縮めていたハンマーをふくらませているところ。会場内では邪魔なのでもらった瞬間空気を抜いてしまい、外で再びふくらませて振り回すのだ。右はWemadeが毎年配ってる、マスコットキャラクターのぬいぐるみだ

(2011年 11月 17日)

[Reported by 勝田哲也]