【連載第9回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


原作付オンゲーの楽しさ「まるで“本の世界”の中に入ったようだ!」
「指輪物語」の思い出の世界を、仲間と共に歩ける喜び


 他のプレーヤーと世界を共有し、交流できるオンラインゲームって楽しい。オンラインゲームの様々な面を取り上げていく「てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム」。今回は、 「ロード・オブ・ザ・リングス オンライン アングマールの影(以下、「LOTRO」)」から、「物語の世界を実際に歩ける興奮」を取り上げたい。

 本の中に入ってみたい、僕がこの世界にいたらこうするのに……。原作つきのゲームはこの夢を手軽に実現する最良の手段である。さらにMMORPGの場合、物語と同じところに、友達と一緒に立ち、風景を共有し、展開する事象を一緒に楽しめるという楽しさが加わる。世界を歩くと、開発者達の原作への想いも感じられて、改めて世界の素晴らしさを再確認もできる。原作付ゲームならではの素晴らしさを紹介したい。


■ 目の前に実際に広がる物語世界。驚きと感動をその場で共有できる楽しさ

運営スタッフも交えての「原作の道をたどろう」というイベント。ピクニック気分で楽しめた

 「LOTRO」はJ・R・R・トールキンが書いた「指輪物語」を原作とするMMORPGで、プレーヤーは「指輪物語」の世界を旅し、物語の主人公達と交流し、原作では描かれていない場所での「光と闇の戦い」を体験することになる。「LOTRO」は現在のファンタジー小説の原型とも言える「指輪物語」の世界を見事にMMORPG化していて、僕自身としても特に気に入った作品で、GAME Watchでも歩いて旅する「指輪物語」の世界「ロード・オブ・ザ・リングス オンライン」ガイドブックという連載でこの世界を取り上げたほどだ。

 「LOTRO」の魅力は色々あるが、とにかく歩いているだけで楽しかった。牧歌的なホビット庄を始め、物語に登場する名所が再現されている。多くのプレーヤーが集うブリー郷では、物語で印象深い酒場「踊る小馬亭」がある。故郷を出たホビット達が危機を逃れ一息つく場所であるこの酒場は、実際に多くのプレーヤーが集い、語り合っていた。情報交換や、原作を知らない人達への解説をしたり、関係ない話しをしたり、演奏会などもして実際の酒場のような交流も楽しんだ。

 「LOTRO」のフィールドは、物語の前半の舞台が中心で、それ以降は今後の実装ということだったったが、物語で扱われた地域以上に広大に、オリジナルのフィールドを実装していた。例えば原作では主人公達は追っ手を逃れるため、本来の道から外れ道なき道を進んでいく。ゲームではその道だけでなく、街道や、通り過ぎるだけの遺跡なども再現されている。「彼らはこっちに行ったけど、違う道をいくとこうなるのか」と感心させられることもある。プレーヤーイベントでは「指輪物語」の登場人物達の道をたどる「原作体験ツアー」等も頻繁に開催された。原作の世界を自分のキャラクターの「足」で踏みしめる楽しさを実感できるゲームだった。

 「指輪物語」は映画化されているが、本作には映画では描かれていない「トム・ボンバディル」という印象深いキャラクターがいて、彼と出会える。トムと出会えたときの興奮は忘れられない。他にも原作の後半で出てくる人物の暗躍が描かれていたりと、原作をさらに掘り下げる要素が沢山盛りこまれていた。

 実は、いつもイラストを描いて頂いているミズノ マサト氏も「指輪物語」のファンであり、僕は、ミズノ氏と、共通の友人に薦められて本作を始めたのだ。今回は、ミズノ氏と話し合い2人が特に印象に残っている場所を描いてもらった。それがこの……


イラスト:ミズノ マサト

「裂け谷」

 である。エルフ達の隠れ里であり、物語の重要ポイント。初めて訪れたのは、レベル的にはまだまだ足りなかったが、それでも、モンスターに怯え、道に迷わないように何度も地図を見ながら向かった。裂け谷に行くには、大きな山を越えなくてはいけなかった。山を越えたどり着いたとき目の前に広がっていた光景が、まさにこの絵そのままだった。

 流れる水、紅葉している木々、繊細な建物……これまでの冒険の緊張が解けていく美しい場所だった。ストーリーとしては瀕死の重傷を負った主人公フロドが傷を癒し、そして世界を救うという大きな任務を受けて旅立つ場所だ。裂け谷はゲームでも「指輪の仲間に追い付く」という大きなチェックポイントとなる。それまでは彼らの足取りを追う形だったのだが、彼等の旅立ちの前の準備を手伝うことになるのだ。

 この裂け谷には、物語の鍵を握る里の長であるエルロンドはもちろん、トールキンが「指輪物語」の遙か以前の世界を描いた「シルマリルの物語」の登場人物がいたりする。フロドの養父であり、「ホビットの冒険」の主人公を務めたビルボが余生を過ごしている。僕も仲間達と一緒にこの裂け谷を隅々まで探索し、何かを見つけた場合は友達を呼んでみんなで感動を共有したりした。

 この裂け谷で僕が最も好きなエピソードが「夜のフロドとの散歩」である。フロドは、冥王サウロンの指輪を持ち、その本拠地とも言えるモルドールへ向かわなくてはいけない。世界の命運は、フロドの任務の成功にかかっている。毅然としてその任務を受けたフロドだが、裂け谷の夜、フロドはプレーヤーを散歩に誘い、プレーヤーにだけその不安な胸の内を語るのだ。原作ファンは、ここからフロドがどれだけ苦しい旅をするか知っている。それでもフロドはあきらめず、前進し続ける。そのフロドが思わず漏らす不安……。もちろん原作にはないシーンであるが、このシーンは原作ファンが強く心を打たれるシーンだ。

 この裂け谷から先は、“もう1つの「指輪物語」”といえる、壮大な善と悪の戦いが展開する。プレーヤーはフロド達を裂け谷で見送り、北の地域の脅威に立ち向かうこととなる。このストーリーは、原作の「指輪物語」では設定のみで語られているエピソードをふくらませたもので、原作でも重要な役割を果たす「指輪の幽鬼」達の知られざる暗躍が描かれる。ドラゴンやバルログなど最強モンスター達との戦いなど、原作に勝るとも劣らない壮大な戦いが待っている。裂け谷はゲームでのターニングポイントでもあるのだ。

 オリジナルのフィールドでも、「ゲームのスタッフも間違いなく『指輪物語』のファンだ」ということが感じ取れる。「指輪物語」が好きで、建物の屋根の形、人物の台詞、地形まで原作への思い入れを感じさせられる。この世界にいることが本当に心地良いゲームだった。そして、自分が見つけたスタッフのこだわりを友人に語るのが楽しい。1人でプレイしていたときに見つけた場所に、友人を案内し、驚きと感動を共有する。これこそがオンラインゲームならではの楽しさだと思う。

 「LOTRO」の日本サービスは残念ながら、キャラクターの移動サービスなども行われないまま終了してしまった。北米では拡張が続けられており、コアなファンは北米サーバーでプレイしている。叶わぬ願いだが、もう1度日本でサービスして欲しいと思うゲームだ。


■ てっちゃんの割とどうでもいい話 「千鳥足で川にはまる酔っぱらいイベント」

酒の効果でドンドンぶれていく視界。まっすぐ進むのすら困難になっていく

 「指輪物語」ではフロド達は苦難の冒険を繰り広げていくが、ことあるごとに思い出すのが、のどかで平和な生まれ故郷ホビット庄だ。フロド達、ホビットは人間の半分くらいしかない背丈の体の小さな種族だが、よく笑い、よく食べ、人生そのものを陽気に楽しむ人々だ。臆病ではあるが、仲間の危機には勇気を振り絞り、誰もが驚く活躍をする。ゲームを進めていく上で、プレーヤー達は誰もがこの陽気で勇敢な人々に魅了されていく。

 「LOTRO」のイベントの中で1番楽しかったのが、このホビット達の陽気さにフォーカスした「宿屋連盟」というイベントだ。ホビット庄にはいくつもの村があり、村の中心地には酒場がある。イベントでは村々の酒場を回るのだが、酒場に着く度にビールを何杯もあおり、それから次に向かうのだ。制限時間内に次の酒場に到着しないと、失格になる。

 「LOTRO」のキャラクターは酒を飲むと、酔う。酔うと視界がぶれ、ふらつき始める。プレーヤーがキャラクターをまっすぐ進ませようとしても、ふらふらと千鳥足になる。この状態で次の酒場に行くのはかなり難しい。制限時間があり、ゆっくり進むわけにはいかない。時には道を大きく踏み外し、川にはまってしまうこともあるし、家の壁にゴンゴンぶつかってしまうこともある。

 僕自身は酔うとけっこー陽気になるタイプだが、時々気持ちが悪くなって、飲み会の後半は口数が少なくなることもある。家に帰り、布団の上に立った瞬間、視界が周りそのまま倒れ込んだこともあった。幸いこのイベントのような酔って無理をする状況に立たされたことはない。べろべろになって移動させられるなんて、とてもできないなあと、今でも酔って家に帰るとき、このイベントを思い出すことがある。



~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「ロード・オブ・ザ・リングス オンライン アングマールの影」

プレーヤーが主催した音楽会。映画の音楽を演奏したりしていた

 「LOTRO」は、米Turbineが開発、北米では2007年4月よりサービスを開始、日本では2007年6月よりサービスを開始したが、残念ながら2009年9月でサービスが終了している。実装をアナウンスされていたモリア坑道も結局実装されないままサービスが終了した。

 米Warnerが展開している北米サービスでは、ビジネスモデルを月額制から基本プレイ無料のプレミアム課金制に転換し、モリア坑道のみならず、闇の森など「指輪物語」、「ホビットの冒険」の地域を実装する拡張が行なわれている。開発元のTurbineは「指輪物語」の全地域の実装をアナウンスしており、今後の拡張も楽しみだ。

 「指輪物語」の世界をこれまでにない大スケールで再現し、オリジナル要素も盛りこんだ壮大なストーリーが展開する。コンテンツはトールキン財団から監修を受けており、濃い原作ファンも納得の深い考察の上で作られている、「指輪物語」のゲームの決定版といえる作品だ。


【スクリーンショット】
ゲーム内の裂け谷。高い文化と、歴史を感じさせる。探索することで、ガンダルフやフロド、レゴラスなど原作の主要な登場人物と出会える
最大6人のパーティーで強大な敵と立ち向かう。レイドも盛んに行なわれ、ドラゴンやバルログといった敵とも戦えた
「LOTRO」は本当に景色が美しかった。右は「ブルイネンの浅瀬」。前半の名場面の1つ、仲間達を追いつめる“黒の乗り手”達が、この川を渡ろうとしたとき、エルロンドの娘アルウェンの呪文によって突如川が濁流となって黒の乗り手達を押し流した。原作・映画ファンは、この川を見るとその場面を思い出しただろう

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(2011年 1月 25日)

[Reported by 勝田哲也]