コーラス大柳の「ためにならないインディゲームレポート」

第10回記念「艦これおじさんがゆく日本聖地巡礼 ~呉編~」

ゲーマーの楽しみ“聖地巡礼”の正しいやり方お教えします!

 こんにちは、コーラスの大柳です。

 “艦これおじさん”ともなれば、聖地巡礼は横須賀・舞鶴・呉・佐世保といった旧海軍の鎮守府が置かれていたところへ行かねばなりません。ガルパンファンが大洗に行くのと同じように(この話は長くなるのでまた今度)、ごく自然な流れです。

 ただ、「艦これ」の巡礼地は本州の東から西にバラけており、全てを一気に訪れる訳にもいきません(私は当然すべて訪問済みですが)。そこで今回は、まだ聖地巡礼をしていないという不届きな艦これおじさん向けに、最も見所溢れるであろう呉のオススメ巡礼プランを紹介したいと思います。もちろんインディゲームなんて関係ありません。

 広島県呉市といえば、旧海軍呉鎮守府が置かれた一大拠点でした。現在も海上自衛隊の呉地方総監部に各司令部が置かれ、巨大なヘリコプター護衛艦や輸送艦、潜水艦まで自衛隊で配備されている様々な艦艇を間近で見ることができるのが特徴です。また、呉鎮守府に関連した施設や、今や観光地として定番化している大和ミュージアム、少し足を延ばして江田島の第一術科学校(元海軍兵学校)と見所が盛りだくさんで、他の地域と比べて非常に充実した巡礼を楽しめる土地なのです。

【呉巡礼の旅】

交通は新幹線がおすすめ。日程は日曜を含んだ週の後半を狙え

 まず北海道や沖縄といった遠隔地や近県で活躍する諸提督を除いて、現地へは新幹線で向かうことをオススメします。これは単純にJR東海ツアーズなどJR東海直営の旅行代理店で新幹線指定席の往復切符とホテルを含んだパックツアーが安く提供されているためです(2泊3日で3万円~4万円程度)。また東京からであれば、のぞみ号は朝6時台に出発し、帰りは夜19時台までありますから、飛行機に比べると予定が立てやすいのもポイント。

お出かけは呉線で。呉と江田島間は船で移動します

 広島からは呉線で呉駅まで移動しますが、乗車時間は概ね1時間くらいみておけば良いでしょう。広島駅から市電で宇品港まで出てフェリーで行くという手もありますが、実はこちらの方が時間を要します。パックツアーの兼ね合いでホテルは広島駅周辺になると思いますが、艦これという枠を除いても広島には素晴らしい観光名所がたくさんあるので、こちらのほうが却って都合が良いでしょう。無理に呉で宿をとる必要はありません。

 日程は必ず日曜日を含んだ週の後半を選ぶようにしましょう。なぜならば呉地方総監部の庁舎など呉鎮守府にちなんだ施設の見学や、護衛艦の見学は日曜日のみ。平日のみでスケジュールを立てると非常にもったいないことになります。金・土・日の3日間でもっとも充実した巡礼が満喫できるでしょう。今回はこの日程で予定を組んだ場合を前提で紹介します。

まずは呉駅周辺から攻めよ!

 朝に東京を出ると仮定すると、お昼前には呉についていることでしょう。呉駅を出たらまっすぐゆめタウン方面に向かって歩きましょう。ちなみに呉市の表玄関の方には海軍ゆかりの食堂やお土産が買えるお店、夜になると屋台が出るところもあるのですが残念ながら今回はパス。ゆめタウンを通り抜けると、すぐそこに「大和ミュージアム」が見えてくるはずです。

 艦これおじさんド直球のこの施設は戦艦大和を含む旧海軍の艦艇や呉鎮守府や太平洋戦争に関する歴史を学ぶことができます。呉は言わずと知れた戦艦大和の故郷。ネットだけではわからない、様々な資料をじっくり見ることができます。また戦艦長門の軍艦旗や戦艦陸奥の砲身、旧軍の各艦艇のミニチュアモデルなども展示されており、充実した一時を過ごすことができます。

ゆめタウンを抜けると、そこは艦これおじさんのふるさとだった。大和ミュージアムといいつつ、大和だけでなく、戦艦長門の軍艦旗や本物の三式弾も見ることができます

 「大和ミュージアム」を堪能して館を出ると、左手に潜水艦がドーンと見えてくるはずです。これが海上自衛隊の呉資料館、通称「鉄のくじら館」です。なんと入場料は無料。この資料館最大の特徴はなんといっても目に飛び込んできた潜水艦(元あきしお型潜水艦7番艦・あきしお)の中を自由に見学できることです。もちろん海上自衛隊創設以来の歴史資料や展示物も楽しめるのですが、約11年前まで実際に使用されていた潜水艦の中を見れことができる機会はそうありません。

「鉄のくじら艦」では実際の潜水艦の中を見れるの醍醐味ですが、海上自衛隊創設以来の歴史を知ることもできます

江田島に移動して第1術科学校を見学

 2つの資料館を巡るだけでもかなりの満足度を得ることができますが、聖地巡礼はまだ始まったばかりです。午後は江田島に移動して第1術科学校(旧海軍兵学校)を見学しましょう。江田島へは大和ミュージアム隣の呉フェリーターミナルから江田島の小用港へ船で移動します。

 第1術科学校は毎日一般見学を受け入れていますが、最終回は15時です。この時間までに間に合うように現地へ移動して受付を済ませ、所定の場所で待っている必要があります。船の出港時刻確認をお忘れ無く。小用から第1術科学校まではバスもありますが、タクシーが一番早いです。帰りの際は正門前に大体タクシーが待機しているのでご心配なく。

 見学コースは海自OBの方が大講堂→幹部候補生学校庁舎(旧海軍兵学校生徒館)→教育参考館の順に案内してくれるのですが、今年1月から少し内容が変わったようで第2・第4火曜日は教育参考館ではなく表桟橋にある戦艦陸奥の主砲を見学するコースになっています。

 教育参考館は、旧海軍の貴重な遺物や資料などを展示した資料館で、山本五十六の遺髪や山口多聞の軍帽など、艦これおじさん的に響く遺品や、特攻隊員の手紙など時間いっぱいかけて見るに値する資料に溢れています。荘厳な大講堂や美しい庁舎も良いのですが、個人的にはここに来たからには教育参考館を見学しないで帰るのはあまりにももったいないため、どうせ行くなら第2・第4火曜は避けた方が良いでしょう。

 帰り際に売店で「潜水艦もなか」のようなちょっと変わった特産品や各種自衛隊グッズなどを購入することもできますし、広島に帰る際は小用から宇品まで直行する高速船があるので、これを使って帰るのが手っ取り早いです。

呉に行ったら教育参考館の見学は必須です。館内の写真は撮影不可なのでありませんが、とても充実した一時を過ごせます。桜の咲くちょうど今頃の季節が見学にはうってつけかもしれません
ちなみに戦艦陸奥の砲塔はこんな感じ

日曜日の呉は午前中が勝負!

 第1術科学校では日曜日は特別なことがない限り、呉地方総監部庁舎や艦艇の公開が行なわれます。庁舎見学は午前・午後の2回、艦艇見学は3回行なわれますが、両方を1日で見る場合は朝から行動する必要があります。広島から現地に向かう場合は余裕をもって行動した方が良いでしょう。

 また、今年からルールが変わったようで艦艇見学の際に自衛隊敷地内の駐車場が利用できなくなりました。レンタカーなどで呉に向かう場合は民間の駐車場を利用する必要があります。また、庁舎・艦艇ともに事前に申し込みが必要になり、敷居がかなり上がりました。おそらく参加者が急激に増えたのではないかと考えられます。

 見学の申し込みは実施の10日前が締切です。参加フォームをウェブから入手してFAXで申請する必要があります。スケジュールやルールなどが変わる可能性もありますので、詳細は海上自衛隊・呉地方隊のWebサイトをご覧ください。

当日いきなり受付に行って見学できないなんていう悲惨なことになりかねないため、必ず事前申請を済ませて写真のついた身分証明書を持参していきましょう

 呉地方総監部庁舎は決まった時間になると引率の担当官が庁舎前まで連れて行ってくれます。中に入ることはできません。周囲の写真撮影などは自由ですが、見学時間は正味30分もない感じであっさりとした内容です。見学できる艦艇は実施日によって異なります。この辺は見たい艦艇で旅行スケジュールを決めるのも面白いかもしれません。

 両方を見学した後は、戦艦大和が建造されたドック跡を望める「歴史の見える丘」や、潜水隊司令部前に広がる「アレイからすこじま」で目の前に停泊する潜水艦を見物するのも面白いかもしれません。呉駅から距離がありますので、路線バスを使いましょう。

「アレイからすこじま」は潜水艦を目前に見ることができる貴重な場所。ぜひ立ち寄りを

 呉は他の鎮守府があった地域と異なり「旅先のついでに行くスポット」というよりは「旅のメイン」として、かなり濃い時間を過ごすことができます。移動時間を考慮すると1日でまわるのは難しいため、ぜひ連泊で行ってみることをオススメします。補足ですが、自衛隊関連施設は当たり前ですが見学をもともと前提とした施設ではないので、前述の通りスケジュールやルールが変わる場合もあります。必要な情報はWebサイトで提供されていますので、事前に確認してからお出かけください。

 なお、「艦これ」とは全く関係ありませんが、呉線沿線には旧軍の毒ガス工場があった島「大久野島」(うさぎの島としても有名ですね)があり、忠海駅近くから出ているフェリーで渡ることも可能です。島全体が観光施設になっており、宿泊も可能です。周囲には旧軍の施設が点在しており一見の価値があります。また、もう少し足をのばすとNHKのドラマ「マッサン」の舞台にもなった竹原に行くこともできます。こちらは駅前に貸し自転車屋さんがありますので、古い町並みを自転車で巡るのもいいかもしれません。ではまた次回。

うさぎの島で有名な大久野島は芸予要塞の一部でしたので、毒ガス工場以外に砲台跡などの遺構も残っています。呉から呉線でさらに1時間ほど。忠海駅近くの港から渡ることができます。呉から先は電車の本数が減るのでご注意

(大柳竜児)